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二十五刑
しおりを挟む——数日後
少人数授業のクラス発表の日の朝。
生徒には学籍番号の掲示により、昼休みに発表が行われるのだが、指導員の元には一足先に担当生徒の名簿が配られる。
「あーあ。結局、今年もクラスを持たなくて良いと思っていたのに。今年はいきなり3人も見ないといけないのね」
指導員部屋のドアに挟まれていた名簿を見るなり、ヴァージットは愚痴をこぼした。しかし、その言動とは裏腹に、名簿を眺める彼の表情はとても楽しそうに笑った。
「でも……案外楽しみね」
***
昼休み、学園の旧校舎の中庭には人集りが出来ていた。
皆、どこのクラスに配属されたのか、昼休みの鐘が鳴るなり、すぐに教室を飛び出して一目散に掲示板の前に集まった。
かく言う私も、流れに乗じてクラス表を見に行ったのだが……
「ロイ! ハイノ!」
クラス表を見るなり、私は二人の元に駆けつけた。
「なんだ、そんなに焦って。何かあったのか?」
「クラス表! どうして二人もヴァージット指導員に? あんだけ気乗りしていなかったのに!」
ヴァージット指導員の見学授業を最後に、二人はあれからクラスについて話を持ちかけることがなかったから、私はてっきりもう他の指導員のクラスに決めていると思っていたのだが……
「『どうして』って……ムカつく以外に理由があるか?」
「え?」
「生ゴミの分際で俺にあれだけ大口を叩いたのだ! それなりに学ぶ価値があると自負していなければ出来ぬ大技。なら選択してやるのが筋というもの! そうだろう?!」
「そ、そっか……」
……なんだろう。
彼は所謂、絶賛ツンデレ発動中なのかしら?
ヴァージットに言い負かされて悔しいと素直に言えばいいのに、わざわざトゲのある言い方に言い換えて。
本人の意志に異論はないけれど、個人的には彼の幸先に不安しか感じないわ。
「俺もロイと同じく、悔しかったからだ!」
「おい! 俺は別に悔しがってなどない!!」
「ヴァージットに散々言われて、正直放尿するかと思った!」
ハイノに関してはロイを見習って言葉を選ぶべきだと思うわ。
「彼の教授法は新しい形態だ! 補佐官という実績もある彼の斬新な教育方法には興味がある! だから、これからも共に頑張ろう! ラルフ!」
それぞれに不安は大いにあるけれど、それでも今年一年、3人一緒に目標に向かって頑張れるのは嬉しい。同じ目標を目指す仲間以前にライバルではあるけれど、二人が隣にいてくれる心強さは何事にも代え難い。
私も今日を機に、さらに気を引き締めなければ。共に過ごす時間が増えたのだ。二人に女であることを絶対に悟られないようにしなければ!
「ああ、いたいた」
「「!!」」
「ロイ。学園で会うのは初めてですね」
耳障りに近い聞き慣れた声……
登校初日を最後に暫く聞くことがなかった彼の声に反応したのは、私とロイの二人だけだった。
「兄さん」
「ほら! ね、言った通りでしたでしょ? ロイ皇子とラルフはやっぱり仲良くなっていましたわ!」
何故、フランツとリアが揃って旧校舎に?
授業の関係で、旧校舎の一部の人間は新校舎に入る事があれど、新校舎の人間がこちらに来る用は無い。それに、フランツの様子を伺うに、ロイを探していたようだが……。
「ラルフ! このご令嬢は知り合いか?」
「私が奉公している公爵邸の御息女 リア・アルノルト嬢だ」
「そうだったのか! お初にお目にかかる! キルヒホフ男爵家嫡男 ハイノ・キルヒホフと申します!」
「リア・アルノルトです。ラルフのお友達?」
「我々は友達であり、ライバル同士でもある!」
「へぇ~。ライバル……ね」
ああ……ハイノを見て、リアの目の色が変わってしまった。
またも嫌な予感しかしない。
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