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二十六刑
しおりを挟む『ほら! ね、言った通りでしたでしょ? ロイ皇子とラルフはやっぱり仲良くなっていましたわ』
リアのこの発言から察するに、『粗暴な傲慢皇子』と有名なロイが接点を持ちそうにない私と関係を持った事を何処かで知った彼女がフランツに告げ口したのだろう。それに興味を持ったフランツが、わざわざ事実確認に旧校舎に足を運んだと見た。
そして、リアはリアでまたいつもの『隣の芝生は青い現象』が発症したと言ったところか。ロイと仲良くしている私が羨ましくなり、あわよくば自分もロイと関係を持とうという魂胆だろう。さらにその魂胆は当然、同じく私と行動を共にしているハイノも例外ではない。
「友達でありライバルでもある、切磋琢磨し合える関係。それも太陽を閉じ込めたような夕陽の瞳を持つこんな素晴らしい殿方と仲良くできるなんて……ラルフは本当に、私が羨ましがることばかりするのね?」
「何を仰います。リア様も入学されてから私よりも多くのお友達が出来ましたでしょう?」
「友達じゃないわ! ただ一緒にご飯を食べているだけよ!」
「共に食卓を囲むはど素敵なお友達ではありませんか」
「違うわ! 私とフランツ様が二人で話すのが気に食わないからよ! その証拠に私とフランツ様がお話をしていると必ず私に話しかけて邪魔してくるのよ!」
学園に入学しても馬鹿は健在のようね。
リアに本当の友達がいない事なんて考えずとも分かりきっている事だわ。傲慢無能なナルシズムで、自分が一番じゃないと気が済まない難ありな性格の令嬢とまともに会話できる人なんて、どこの貴族令嬢を探しても誰もいないでしょうね。
寧ろ一緒にご飯を食べてくれる人がいた事に驚きだわ。まあ、彼女が公爵令嬢だからせめてものお付き合いなのでしょうけど。
それに一緒に食事をしている人のことをリアは邪魔者扱いしていたけれど、どうせリアがフランツ様にばかり話しかけて彼が生返事しか返さないから、空気を読んでリアに話しかけたのでしょう。実際に見ずともその光景が目に浮かぶわ。こういう事を考えると、貴族間のお付き合いは面倒なものね。
「ロイが一般人と仲良くなれるなんて、思いもしませんでした」
「俺もまさかこうなるとは……。だけど、悪い事をしているとは思っていない。ラルフは今まで会ったゴミ共とは違う。それは俺が保証する」
「どう違うの?」
「あいつは、全く違う視点で世界を見ている。刺激があって面白い。一緒にいると、自分の世界が広がって行くようで楽しいんだ」
「へぇ……」
ロイから私の話を聞いたフランツは、薄っすらと口角を僅かに上げた。その笑みは、普段彼が演じている作り物の笑顔なぞではなく、悪寒を感じさせるほど薄気味悪さがあった。
初めて見る彼のその表情は恐らく、彼自身が初めて私とリアの前で見せた本心の時の顔だ。
「ロイがそこまで言うのなら、僕も興味があるなぁ」
「兄さん?」
「僕にも分けてくれて問題は無いよね?」
するとフランツは、真っ直ぐ私の前に立ちはだかった。
「ラルフさん、弟のロイがいつもお世話になっております」
「い、いえ、こちらの方こそ」
いきなりの改まった挨拶に私は動揺を隠すことが出来ず、吃って可笑しな返事になってしまった。彼がラルフに面と向かって話すのは、ラルフとして最初に挨拶をした日以来のことだ。
この時にはすでに、一瞬見せたあの笑みは消えて彼の表情はいつもの製造スマイルに戻っていた。
「リア嬢の事も、婚約者である僕がしっかりついていなければならないのに、色々と助けて頂いて……僕の大切な人達がお世話になっているのです。よろしければ、細やかではありますが美味しいお茶をご馳走させて頂いても?」
——!?
フランツとお茶……! 私が貴方と茶を共にすることによって、貴方に何の利益を生むの?!
侯爵令嬢だった私にすらメリットを見出さなかったのよ? 今の私に彼は何の利益を見つけたの?
でもそれ以前に、男装こそしているものの私は女よ?! 婚約者がいる男女が異性と二人でお茶なんて言語道断よ! フランツは気づいていないから仕方がないけれど、リアは私が女である事を知っているわ! バカなあの子は例え私が男装していても嫉妬に狂うこと間違い無いわ。
それに私の本心としても、彼とこれ以上関わるなんて断固として嫌よ!
「身に余るお言葉ですが……」
「そう! それでは僕の行きつけの店に行きましょう」
まだ最後まで言い切っていないのですが?!
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