【オススメネット小説】秘められた異次元( シークレットディメンション) ムッツリスケベは異世界を救う!?

猫パンチ

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第一章 『秘められた異次元(シークレットディメンション)』への扉!

第10話 恐怖のエルフ村散策!

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 オーガをはるかに超える鬼が、オレの前に姿を現す。
エルフのリーダーは、もはや美女ではなく、鬼と化していた。
エルフの女性を妻にする場合は、恐ろしいと感じていたかもしれない。

しかし、オレの目的は彼らと交流して、新しい事業を開始する事だ。
怒った時の恐ろしさなど大した問題じゃない。
むしろ、オレにはオーガを調教してくれそうで嬉しい事だった。

図体だけの根性無しのオーガを、彼女なら強くしてくれる。
オレは思わず笑みを浮かべる。
ある意味、お似合いかもしれない。
そう思ってオーガを見ると、本来は鬼のオーガが、可愛い子猫のように小さくぶるぶると震えていた。
さすがに、今のオーガでは、彼女の殺気を処理する事は出来ていない。

エルフのリーダーの名前はアビナといい、魔法が優秀である。
エルフ達も魔法は得意だが、バランス良く習得している為に超強力な魔法技術を持つ者は少ない。
彼女がリーダーになったのも、強力な火炎魔法を習得した事で認められたのだ。
その証に、髪の毛は炎の様に真っ赤に染められ、ショートカットよりも更に短い。
そして、赤いルビーの付いた首飾りをしている。

本来ならば、敬われても良い所を、エルフ達の嫉妬に苦しんでいたという。
今回の件で、村を追放されたのと同じ扱いになり、怒りを感じていた。
その恐ろしい鬼は、ゆっくりと近づき、オレ達に語りかける。

「おい! 付いて来い。貴様らと共に、あの雌豚共を血祭りにあげるぞ!」

そう言って、アビナはオレ達をエルフ村へと強制的に案内する。
果たして、行くべきだろうか? 
異世界に来て、初めて戦慄を覚える。

行った先に待っている美女は、戦闘を整えた化け物軍団だ。
鬼のオーガを超える鬼神であり、並みの男性ならば一気に女性への憧れとか、幻想を奪われる。最悪、男好きにされるかもしれない!

「はーい」

シルビアさんは、状況が理解できていないのか、サクサクと彼女に付いていく。
オレとオーガとオークは、しばし考えようとするが、アビナとシルビアさんに手を引かれ、森の奥へと引きずり込まれていく。

アビナの方は、オーガとオークの手首を掴み、引っ張って行く。
キレたエルフは、オーガをも超える強力の持ち主となっていた。
筋力で強制的にというよりか、催眠術的な物も使っているのだろう。

頭では行きたくないと思っているのに、身体が引き寄せられるようだ。
恐怖に震えるオーガ達だったが、抵抗する事は出来ない。
シルビアさんは気付いていないのか、エルフ村に行くようにオレの背中を軽く押す。

「はい、しっかり歩いてくださいよ! 
親切なエルフさんが案内してくれるみたいですから。
女性だらけだからって、緊張しなくてもいいですって!」

シルビアさんはオレの背中を押して、歩かせようとする。
このまま、シルビアさんと二人で逃げてしまおうか?
オーガとオークは、エルフ村に招待されて、幸福な生活を送ることだろう。

オレとシルビアさんがその楽園に入るのは、無粋に感じられた。
今まで、彼女が出来ずに苦しんでいたオーガ達だからこそ手に入れた栄冠なのだ。
それを、シルビアさんのいるオレが手にするなどあってはいけない事だ。

オーガとオークは、アビナに手を引かれ、無抵抗のまま催眠術にかかったかのように、森の奥をずんずんと進んで行って見えなくなってしまった。
オレとシルビアさんの二人きりになり、オレはシルビアさんの手を握って振り返る。

「え?」という感じでシルビアさんが驚いていた。
まだ媚薬の効果が残っているのか、ほんのりと身体が熱い。
シルビアさんは、オレの顔をまともに見る事が出来ず、照れながら顔を背ける。

おそらく、オレの顔を見てしまうと、また暴走してしまう危険がある事を感じていたのだ。
ちょっとツンデレみたいな感じでシルビアさんは訊いて来た。

「どうしたんですか?
早くしないと、オーガさん達とはぐれてしまいますよ?」

「オレは、たくさんの美女のいるエルフ村に行くより、君と一緒にいたい!
ダメかな?」

「ダメです。私、まだ身体がおかしいんですよ。
このまま、二人だけになったらまた暴走してしまいます!
こんな所で、またあんな失態をあなたに見せるわけにはいきません!」

「良いよ、オレは……」

「ダメ、ダメ……、やっぱりダメです!
オーガさん達と、彼女が出来るまでは協力すると言ったんです。
こんな所で、別れてはいけません。

マモルさんの協力が無いと、彼らの力量ではまだうまくいきませんよ。
私も一緒に行きますから、マモルさんも協力してくださいね。
私は、先に行きますから……」

媚薬の効果にあらがう為、シルビアさんは先に行こうとする。
オレは、シルビアさんの手を握り、脚を止めさせた。
身体は熱くなっており、何とか踏みとどまっているのが分かる。

「はあ、はあ、お願い、ですから……」

「うん、一緒にエルフ村に行こう!」

オレは、シルビアさんを抱えて歩き出した。
媚薬の効果は思ったよりも強力で、シルビアさんは立つ事もやっとのようだった。
オレが抱っこすると、身体を震わせていたが、大人しくオレの腕に収まっていた。

「じゃあ、行こうか?」

シルビアさんは、黙ってオレの答えに頷いていた。
オレとシルビアさんは、ゆっくりと歩いて付いて来る。
果たして待っているのは、この世の楽園か、それとも地獄の入口か?

 森を抜けると、そこにはエルフ達が生活している村があった。
女性らしい可愛いデザインの建物が立てられ、並んでいる。
女性の住む楽園という様に、周囲には花の香が漂っていた。

村を良く見ると、レースのカーテンや花をモチーフにした屋根瓦などが見てとれた。
彼女の家がこんな感じなら、思わず可愛くて笑ってしまうだろう。
しかし、そんな想いも冷めるような光景が眼の前に広がっていた。

オレがそこの入り口に付く頃には、すでに激しい戦闘が開始されていた。
オーガとオークは、入口付近で恐怖に身を震え、姿を隠している。
エルフ達の死角に入っているようだが、オレには丸見えだ。

オレは、とりあえずオーガに近づき、状況を聞く。
油断をすれば命は無いという緊張が漂う。

「状況はどうなんだ? 何が起こった?」

「あのエルフが、村のエルフ達に戦いを仕掛けたべ。
ただ、あのエルフが強すぎて、村のエルフ達が押されているだ」

オーガにそう言われ、オレがエルフ達を見ると、凄まじい戦場の中で、エルフ達の声が聞こえる。
戦場の中に居るよりも、時たま見えるエルフ達の顔が、美しいと思う反面、非常に恐ろしく感じられた。

たとえ美人でも、内面が残念な人は好きになれないんだなと、オレは改めて思う。
シルビアさんは厳しい時もあるけど、怒った顔も可愛いと惚気てしまう。
エルフ達の怒り顔とは、似ても似つかない。

「この! よくも私を見捨てたわね!」

そう言って、あのエルフのアビナは、炎の魔法を繰り出す。
呪文は長いのに、全て暗記しているようだ。
ちなみに、オレには般若心経を丸暗記するようなものだ。

常人には、一つか二つが限度だろう。
しかし、エルフ達はいくつかの呪文を複合して唱えているようだ。
オレのように、異次元に来て間もない者にはできない事だった。

そのアビナに対抗して、村のエルフ達も数人が集まって、魔法を複合させて立ち向かう。
マジックポイントが無くなった者が消えるという、恐るべき戦いが続いていた。
戦いが終わるまで、オレ達は待つことにした。

シルビアさんも震えて、戦闘できる身体じゃないし、オレも女性を攻撃する気はない。
オーガとオークも戦力外だしな。
村の掟とか、一般人には理解に苦しむ物だろう。

「素人が手出しできる問題ではないな。
彼らの共倒れを待って、生き残った者をオーガの妻にしよう!
怪我したエルフを優しく介抱すれば、エルフもオーガに心を許すはずだ」

オレがそう言うと、オークが賛成する。

「んだ、んだ。こんなのケンカじゃねえ。
魔法戦争だ!か弱いオラ達が参戦することはできねえ!」

オレ達はしばらくエルフ達の戦いを見守る。
次第にあのアビナが押され始めた。
多勢に無勢、さすがに魔法が尽きて来たようだ。

エルフ達の攻撃をさばききれなくなってきていた。
どうやら、魔法とは、精神力での戦いというものが主らしい。
たとえマジックポイントが高くても、精神力を折られた方が負ける。

オレには分からないが、彼らの中では、激しいせめぎ合いが行われているようだ。
まあ、雑魚のエルフをオーガの妻にするよりか、優秀な方が助けになるだろう。
オレのビジネスの為にも嬉しい事だ。

「くっそ! もうダメだ! 
どんなに優秀でも、これだけの人数では、私の能力も追い付かない! 
私はこのままでは、殺される! せめて、誰かの手助けでも無ければ……」

リーダーのアビナは死期を悟り、最後は抵抗を止めた。
それでも、エルフの村に多大なダメージを与えたようだ。
エルフ村の奴らも全く手加減していない。

火と風の魔法を合わせた特大の火炎が、リーダーのアビナを襲う。
抵抗を止めれば、誰かが助けてくれると思った様だが、現実はそれほど甘くはない。
エルフ村を攻撃した時点で、処刑が決まったような物だった。

「ふっ、どうやらここまでか? 誰も助けには来なかったようだ。
私は孤独に死ぬようだな……。彼氏でもいれば、結果は違ったかもしれないが……」

アビナがそう思った瞬間、大きな巨体が姿を露わした。
そう、オーガが自らの身体で、アビナを守ったのだ。
オーガは、大ダメージを負いながらも、何とか攻撃に耐えていた。

男のオレでも、一瞬惚れてしまいそうになる。
オレは一瞬ダメだと思っていたが、オーガの勇気と愛が、恐怖を上回ったようだ。
オレがどんなに助けても、結局はオーガが勇気を出さなければ、結婚は決まらない。

「ふっ、こんな弱い俺でも、好きになった女を見捨てるわけにはいかねえ! 
腹いせは、もう充分だろ! 俺が守っている内に、速く逃げろ!」

そう言って、オーガは倒れ込む。
オーガの怪我が相当ひどいようだ。
オーガの行動に、オレは悪態を吐く。
それは、オーガを認めている証拠だった。

「え? エルフのどこに惚れる要素があったけ? 
オーガが原因で、怒り出したんだぞ!」

それを聞き、シルビアさんが擁護する。

「えーと、エルフのリーダーさんの優しい顔を知っているのは、オーガさんだけですから、たぶんエルフさんが寝ている寝顔に惚れたのだと……。
普段は美人さんですから……」

それを聞き、オレも納得する。いや、せざるをえなかった。
アビナは、オーガが身を呈した事に驚いたようで、もう怒りを感じていなかった。
他のエルフ達もそうだ。

攻撃を止め、二人を見守る。
アビナはするどい形相を保ったまま、オーガを睨み付ける。
オーガは、ダメージが酷いのか、完全に気を失っていた。

「ふん! バカな男だよ、全く……。
どの道これじゃあ、村にいられないな!」

リーダーエルフはそう言って、オーガを連れて、どこかへ行ってしまった。
それ以来、誰もその二人を見ていない。
オレ達は混乱に乗じて、エルフの森を逃げ出した。

オレは魔法戦の威力に恐怖に脅えるも、何とか近くの街まで避難することができた。
オーガは無事なのだろうか?
オークは無事であり、オレとオークは推察し始める。

「オーガはどうしたのだろうか? あのリーダーエルフに制裁を加えられたのか?」

「かもしれません。もしかしたら、エルフ村の調理場で料理になっているかも。
他のエルフ達との仲直りの印として……」

「あり得るな。リーダーエルフの全ての怒りが、全てオーガに集中し、豪勢な肉料理として振る舞われていたり……。
それによって、エルフの村の連中と和解しようとしているとか」

オレ達のその会話を、シルビアさんは否定する。シルビアさんは恋する乙女のように言う。

「きっと、オーガさんの愛が通じて、エルフさんは二人で生きようと決めたんですよ! 
素晴らしい愛じゃないですか!」

真相は闇の中だ。
オレは、オーガが幸せに暮らしている事を願う。それと同時に、オーガに謝る。
置いて来てごめんねと……。




エルフ達

年齢 18~40歳 女 エルフ
職業: 魔術師・アーチャー・剣士
称号: 恐るべき美女軍団
HP(体力): 50
MP(魔力): 90
攻撃力: 20 (魔法により高くなる)
防御力: 20 (精神的強さ60)
スピード: 60 
知力: 80 (イケメンの前だと40になる)

得意技: 魔法攻撃(個性により得意な物も違う) 美女だけど怖い顔(男は震えあがり、能力ダウン) 弓術や剣術
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