【オススメネット小説】秘められた異次元( シークレットディメンション) ムッツリスケベは異世界を救う!?

猫パンチ

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第二章 クラン街の悪夢

第38話 異次元の英雄から無能力者へ!

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 亜空間の出口を目指し、深い井戸の底を降りていく。
ロープをかなり長くしたつもりだったが、二十分ほどでロープが足らなくなってしまった。

それでも底はまだ見えず、引き返すしか方法が無かった。
どれだけ深い場所なんだと思いつつも、この場所が亜空間の出口である可能性は高い。

街中のロープを剥ぎ取り、相当長いロープを作る事にした。
その途中でオレは考える。
まさか街の大きさと井戸の深さも関係があるのだろうか? 

そうなると、街全部のロープを集めなくてはならないかもしれない。
さすがにそれはありえない事だと思い、ロープを可能な限り結び合わせた。

もし、これで底まで辿り着かなければ、外の荒野と同じように出口ではないのかもしれない。
外の荒野は遠くへ行こうとしても、この街に戻されてしまうという。

この井戸も同じように底が無いのかもしれない。
そんな不安を抱きつつ、オレは下へ降りていく。
一時間くらいは経っただろうか。気温は暑いし、体力も無くなっていく。

さすがに、ここは亜空間の出口ではないのかと思った瞬間、冷たい空気が流れ込んで来た。
気持ちのいい風だと思ったら、いつの間にか日本の元の街に戻って来たのである。
オレを支えていたロープも無くなり、どこかの街路地を立ちつくしていた。

人通りは少ない所だったが、近くを見ると井戸に落としたはずの石が粉々に砕けていた。どうやら亜空間の井戸に落ちると、元の世界へ戻って来るようだが、重力の法則はそのままになって落ちるようだ。

シルビアさんの説明によると、サキュバスの存在が明らかになった事件の被害者は、発見が間に合わず衰弱死と言っていたが、実際にはこの重力落下で死んだのではないかと推測できた。

または、食糧が出現しないような亜空間だったのかもしれない。
人が少ない街が舞台になると、食糧の供給も難しいだろうからな。
オレは運よく食糧が豊富に出て来て、確保する事ができたのだろう。

確かに、七日過ぎれば亜空間の出口は、被害者の元に近づいて来るが、最後の罠であるこの落下によって死んだのだろう。
そうなると、サキュバスはやはり恐るべき暗殺者なのだ。

食糧や飲み物の配給があるから大丈夫と油断していると、準備も無しに井戸を落ちていく事になるのだ。
サキュバスの全ての攻撃を耐えきったオレだが、背筋がぞっとする恐怖を感じていた。

(ふっ、オレでなければ死んでいたぜ! 
決して落ちない、勝ち組のオレだからこそ生き残れたぜ! 
みんなも早く勝ち組に来いよな!)

五分ほど固まっていたオレだったが、街路地を確認すると知っている場所だった。
そのため、歩いてシルビアさんの待つ愛の巣へと向かう。

二日ほど離れていただけだが、もう会えないかもしれないと思っていた。
それがようやく会えるのである。
オレの脚は次第に早くなっていく。

シルビアさんの待つ家に辿り着くと、チャイムを鳴らす事や家族を呼ぶ事はしない。
そのまま扉を開けて、シルビアさんの待つ部屋へと直行した。
部屋の扉を開けると、そこには最愛の妻の姿が飛び込んできた。

「あ、マモルさん、無事に帰って来られたのですね。良かった!」

そう言って喜ぶシルビアさんの口を、自分の口で塞ぐ。
サキュバスの熟練の技ではない、シルビアさんのぎこちないキスが堪らなく愛おしく思った。

オレとシルビアさんは五分ほどキスをしていると、オレは次第に周りの様子が分かるように冷静さを取り戻した。
オレの部屋の中には、キーリアや嵐山、ギンロウと日本科学庁長官がいたのである。

「お前ら、いつからそこにいたんだ?」

オレがそう言うと、長官が咳払いをしながら答える。
お年寄りには少々きつい場面だったのだろうか?

「君が行方不明になったとシルビアさんが言ってきた時からだから、だいたい一日前くらいからかな。
よく無事で帰って来てくれたよ。

しかし、今はみんなもいるし、思春期のキーリアもいる。
愛し合いたい気持ちは分かるが、我慢してくれないかね?」

長官は優しくそう言うが、キーリアは逆に関心があるようだ。
続けるようにオレ達を促す。

さすがに、みんなが見ている中で燃え上がることはできず、冷静さを取り戻して話し合いに加わる事にした。
キーリアは残念そうにつぶやいた。

「あーん、もっと見たかったのに……」

キーリアの態度と幼い表情を見てオレは悟る。
こいつには早めに性教育をしてやらないとダメだなと……。

オレはみんなにどうやって帰って来たかを説明する。
サキュバスはどれほど危険か、亜空間とはどのようなものかを絵を描きつつ説明する。

絵が苦手なオレを見かねて、キーリアが分かり易く書き直した。
みんながキーリアを誉めると、嵐山が口をはさむ。

「最近はこんな物を描いたり、読んだりしているからな。
ちなみに、私は萌え絵を描けるようになったぞ!」

キーリアが読んでいたのは、恋愛物の少女漫画だった。
中にちょっとエロ描写もある。

しかし、もっと問題だったのは、嵐山の描いた萌え絵だ。
キーリアよりうまく、熟練の苦労が感じられ、オレは軽く引いてしまった。
嵐山は空気を読まずに言う。

「こいつは二時間もかかった大作だぞ! どれ、シルビアさんにあげよう!」

シルビアさんはそれを受け取り、普通に喜んでいた。
その表情を見てオレは思う。あの難しさを分からなくて、本当に幸せだなと……。
きっと戦闘訓練から一線退いた嵐山は、暇を持て余し絵の訓練を開始したのだろう。

数か月ほどしか経っていないのに、このレベルになるにはかなりの努力がいるはずだ。
漫画が大変な作業である事を知っているオレは、嵐山の才能に改めて敬意を示した。
みんなが嵐山の絵のうまさに見いっていると、ギンロウがこう言う。

「あの、話を戻しませんか? 亜空間の事やサキュバスについて……」

嵐山の絵により中断した時間を、ギンロウが元に戻してくれた。
本来、オタクであるギンロウはこういう話題に興味があるはずだが、みんなに関係する重要な話をしているため、真面目になっている。

実は、ギンロウが精神的に一番の年長者なのだ。
ギンロウの勧めに従い、オレ達は話を戻す事にした。

長官は最近発覚した恐ろしい事実を教えてくれる。
どうやら、サキュバス以外にも亜空間を作り出せる魔物がいるそうなのだ。
そして、そいつらはオレの命を狙っているという。

「え? なんでオレの命を?」

オレは思わずそう尋ねる。長官は静かにこう言い出す。

「どうやら異次元世界の魔物達には、異次元世界を行き来している人間がいるという噂が流れているようだ。

魔物達は本来、今いる世界にも暮らしていたのだが、人間が力を持ち始めて生活するのに困難になったため、異世界に逃げ込んだ。

ところが、最近になって人間が異次元空間を使って、異世界に来るようになった事を脅威に感じたのだろう。
そこで、異世界の大使である君を攻撃し、パイプラインを断つ事にしたんだ。

サキュバスは優秀な暗殺者だが、本来はそれほど凶暴な魔物で無い事が分かっている。
依頼された人物だけを狙い、暗殺しているようだ。

今回は幸いにも、シルビアさんが標的にならなかったので元の世界に帰されたが、他の魔物達だったら二人とも殺していただろう。
どうやら、異世界に行こうとする事を阻む魔物を駆除する必要があるな。

いずれにしても、異世界に行こうとする以上、魔物に襲われる危険はあるようだ。
くれぐれも注意してくれたまえ!」

長官はそう言うが、異世界と交流する事を止める事はないようだ。
オレは不安を感じ始める。

(しまった。オレが異次元を使う魔物達に目を付けられるなんて……。
アルスター王国で守護者なんて言われて、調子に乗ったのが原因か。

オレが襲われないようにする方法が一つだけある。
魔物達にオレが脅威の存在である事を悟られないようにする事だ。

アニメでやっていた身体は子供、頭脳は大人の主人公のように、誰かを有能に仕立て上げれば、オレへの攻撃は止み、平和に異世界を行き来する事ができるだろう。
異次元の無能力者になるんだ! そうすれば襲われずに済む!)

オレはそう考え、誰かを英雄に仕立て上げる事にした。
とりあえず候補は二人上がる。ギンロウか嵐山火焔、このどちらかだ。

ギンロウは異次元の知識もあり、戦闘にも優れている。
仮に、英雄に仕立て上げなくとも標的になっているだろう。

ならば嵐山火焔はどうか? 
はっきり言って、危険度的には最高レベルのはずなのにまだ標的になっていない。
うまく情報をコントロールしているのだろう。

そして、戦闘スタイルもナイフを使うという点で、オレに似ている。
嵐山にはかつて武器を捨てて平和に生きろと言った事があるが、魔物との抗争が終了するまでは現役でいてもらいたい。

オレの勝手なわがままだが、嵐山火焔をオレの代理として影武者にしておく事にした。
魔物が脅威を感じて攻撃して来ても、まず嵐山の方に行くだろう。

嵐山が襲われた場合はもちろん助けに行くが、魔物が脅威を感じるのは嵐山だけにしてもらおうと考えていた。

そのためには、今回のサキュバスを嵐山に捕まえてもらう必要がある。
まずは、嵐山の提案により、オレが亜空間を脱出した事にしようと試みる。

「さすが嵐山さんですね。あなたの指示した通りにした結果、オレは生きて戻ることができました。ありがとうございます」

「はあ? 私は君がいなかった時、絵の練習をしていただけだが……」

「いえ、インキュバス・サキュバスの情報を教えてくれたのはあなたでしょう。
過去の事件の事まで知っているのは、あなたくらいしかいませんよ。
その情報のおかげでオレは助かったんですから……」

その言葉を聞き、嵐山は長官に助けを求めた。
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