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第三章 七人の赤い悪魔
第53話 火焔(子供バージョン)VS赤い悪魔(スピア)
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嵐山が服を着ると、すぐさま槍を持った魔物は姿を顕わした。
小さな部屋での戦いならば、ナイフを持っている嵐山が有利だった。
しかし、近くにはキーリアがいる。
もしも、さっきのように魔物がキーリアを狙った場合は、同じ状況になる可能性があった。そのため、嵐山は敢えて広い場所で戦う事にする。
自分を囮にして、魔物を広い空間に誘い込んだ。
槍を使える魔物にとっては戦い易い場所だろう。
嵐山にとっても、キーリアを魔物から離しつつ、見守りながら戦う事ができる。
万が一、魔物がキーリアを標的に変更しても、辿り着くまでかなりの時間がかかるため、嵐山が全力で走れば追い付けない距離ではない。
だが、キーリアからしてみれば、この距離は援護するのに不便だった。
確かに、遠距離系の攻撃を持つ彼女のビームなら、広い空間の方が使いやすい。
問題なのは、嵐山も魔物も同じ格好をしている事だ。
嵐山の速い動きに付いて行くのがやっとの彼女は、うまくサポートできないと感じる。
ビームを撃つ事をためらっていた。
嵐山はナイフを構えて言う。
「やはり、こっちの方がしっくり来るな。剣ではどうにも慣れていなくて……」
それを聞いたキーリアは反射的に突っ込んでしまう。
お前がそれを選択したんだろと……。
突っ込みを入れた拍子に、ビームも出てしまった。
キーリアは反射的に撃ってしまった事で焦るが、ビームはもう方向を変えられない。
無情にも嵐山の方に飛んで行く。
キーリアが嵐山に当たると思った瞬間、ビームは曲がり魔物を攻撃する。
嵐山がナイフを利用し、ビームを曲げていたのだ。
咄嗟の攻撃に魔物は驚いたが、俊敏な動きで何とかかわした。
嵐山は魔物を見ていながら、キーリアに対して言う。
「ナイフの方が槍よりリーチが短い。お前のビーム攻撃に全てがかかっている。
オレを気にせずどんどん攻撃して来い。それがこの魔物の攻略に不可欠だ!」
嵐山のその言葉に安心したのか、キーリアは全力でビーム攻撃を撃ち出した。
たとえビーム攻撃しかできないとしても、魔法を操る精神力は変わっていなかった。
そのため、無数のビームが嵐山と魔物の両方に襲いかかる。
魔物は持つ武器によって、大きさを自在に変えられるようだ。
オノを持っていた時はだいたい百三十センチ前後なのに対し、槍を持っている魔物は百七十センチを優に超えている。
おそらく武器を扱いやすい大きさで戦うのだろう。
状況に応じて大きさを変えるという戦い方ではなく、一定の大きさで戦い続けるようだ。嵐山はわずかな時間の中でそれを分析した。
ナイフによる攻撃を受けても、魔物は身体の大きさを変えるのではなく、身体をそらす事によって避けた。
もしも、大きさを自在に変えられるのであれば、頭部を狙われた時に身体を小さくして回避するはずだ。
それをせず、身体を後ろに引いて避けたという事は、大きさを自由自在に変えることはできないという事だ。
身体を状況によって変えられる能力があればかなり厄介だったが、それが無いならまだ勝ち目がある。
ビームやナイフ攻撃を当てられる事ができるのであれば、仮に力の差があっても対応できる。
ナイフで敵の攻撃を防ぎつつ、ビームを当てることで体格差と槍のリーチを対処できる。
嵐山の筋力は無くなったが、経験はまだ活かせるのだ。
槍を使い慣れていないためか、最初は嵐山が押していた。
しかし、魔物は武器の使い方を学んで行き、次第に嵐山が押され始める。
槍の形状は、前に付き刺す部分があり、後ろに棍棒のようなクリスタルが付いている。
真ん中を持つ事によって、棍棒と槍を巧みに使い分けるタイプだ。
嵐山は槍の突きに対応できるが、棍棒による攻撃はうまく防ぎきれないでいた。
遠心力による重い一撃を防ぐ事ができず、身体ごと吹き飛ばされてしまう。
その攻撃に倒れ込んでしまえば、槍による攻撃に対応できずに突き刺されてしまうだろう。女性にも使いこなせるという槍が真価を発揮すると、嵐山でさえ無力と化してしまうのだ。
嵐山は吹き飛ばされるのを、身体を後ろに転がる事で耐えているが、まさに曲芸のような防御だった。
転がった後に素早く立てるため槍の突きに対応できているが、一瞬でもタイミングがずれると串刺しになっているだろう。
嵐山は対応できているのが不思議なくらい、追い込まれていた。
嵐山が追い込まれている事により、キーリアは反対に狙いが定めやすかった。
時折来るキーリアのビーム攻撃により、赤い魔物は攻め切れずにいた。
しかし、嵐山が無事なのも時間の問題だった。
本来嵐山が想定していた戦いは、キーリアの無差別攻撃による接近戦だった。
ビーム攻撃をナイフに反射させる事により軌道を変え、自分を守りつつ相手にダメージを与える。
かなり危険だが、槍の攻撃範囲と相手の力強さを考えれば、この攻撃が唯一勝てる戦法だった。
しかし、嵐山自身が追い込まれ、キーリアが敵に狙いを定めやすくなったため、その戦法ができなくなっていたのだ。
デスマッチのような周りの状況を考えながら敵と戦う戦法ならば、嵐山は経験から有利に戦う事ができる。
しかし、強い敵に一対一の場合はどうしても身体能力の差が出てしまうのだ。
しかも、キーリアのビーム攻撃は直線的すぎて、相手に当たる事は無い。
攻撃が予想されるのならば、どんな強い攻撃も無駄になってしまうのだ。
この状況を打開する手をすぐに考え出さなければならない。
キーリアはビームを撃つ事に集中し過ぎて、他の策を考えることも、自分の任務さえも気付いていなかった。
戦闘のサポートも経験と連携が肝心ではあるが、幼いキーリアにはそれがまだ分からなかったのだ。
嵐山の方で何か良いアドバイスをしてやらなければ、いずれはどちらも魔物にやられてしまうだろう。
嵐山に何か状況打開の秘策はあるのだろうか?
小さな部屋での戦いならば、ナイフを持っている嵐山が有利だった。
しかし、近くにはキーリアがいる。
もしも、さっきのように魔物がキーリアを狙った場合は、同じ状況になる可能性があった。そのため、嵐山は敢えて広い場所で戦う事にする。
自分を囮にして、魔物を広い空間に誘い込んだ。
槍を使える魔物にとっては戦い易い場所だろう。
嵐山にとっても、キーリアを魔物から離しつつ、見守りながら戦う事ができる。
万が一、魔物がキーリアを標的に変更しても、辿り着くまでかなりの時間がかかるため、嵐山が全力で走れば追い付けない距離ではない。
だが、キーリアからしてみれば、この距離は援護するのに不便だった。
確かに、遠距離系の攻撃を持つ彼女のビームなら、広い空間の方が使いやすい。
問題なのは、嵐山も魔物も同じ格好をしている事だ。
嵐山の速い動きに付いて行くのがやっとの彼女は、うまくサポートできないと感じる。
ビームを撃つ事をためらっていた。
嵐山はナイフを構えて言う。
「やはり、こっちの方がしっくり来るな。剣ではどうにも慣れていなくて……」
それを聞いたキーリアは反射的に突っ込んでしまう。
お前がそれを選択したんだろと……。
突っ込みを入れた拍子に、ビームも出てしまった。
キーリアは反射的に撃ってしまった事で焦るが、ビームはもう方向を変えられない。
無情にも嵐山の方に飛んで行く。
キーリアが嵐山に当たると思った瞬間、ビームは曲がり魔物を攻撃する。
嵐山がナイフを利用し、ビームを曲げていたのだ。
咄嗟の攻撃に魔物は驚いたが、俊敏な動きで何とかかわした。
嵐山は魔物を見ていながら、キーリアに対して言う。
「ナイフの方が槍よりリーチが短い。お前のビーム攻撃に全てがかかっている。
オレを気にせずどんどん攻撃して来い。それがこの魔物の攻略に不可欠だ!」
嵐山のその言葉に安心したのか、キーリアは全力でビーム攻撃を撃ち出した。
たとえビーム攻撃しかできないとしても、魔法を操る精神力は変わっていなかった。
そのため、無数のビームが嵐山と魔物の両方に襲いかかる。
魔物は持つ武器によって、大きさを自在に変えられるようだ。
オノを持っていた時はだいたい百三十センチ前後なのに対し、槍を持っている魔物は百七十センチを優に超えている。
おそらく武器を扱いやすい大きさで戦うのだろう。
状況に応じて大きさを変えるという戦い方ではなく、一定の大きさで戦い続けるようだ。嵐山はわずかな時間の中でそれを分析した。
ナイフによる攻撃を受けても、魔物は身体の大きさを変えるのではなく、身体をそらす事によって避けた。
もしも、大きさを自在に変えられるのであれば、頭部を狙われた時に身体を小さくして回避するはずだ。
それをせず、身体を後ろに引いて避けたという事は、大きさを自由自在に変えることはできないという事だ。
身体を状況によって変えられる能力があればかなり厄介だったが、それが無いならまだ勝ち目がある。
ビームやナイフ攻撃を当てられる事ができるのであれば、仮に力の差があっても対応できる。
ナイフで敵の攻撃を防ぎつつ、ビームを当てることで体格差と槍のリーチを対処できる。
嵐山の筋力は無くなったが、経験はまだ活かせるのだ。
槍を使い慣れていないためか、最初は嵐山が押していた。
しかし、魔物は武器の使い方を学んで行き、次第に嵐山が押され始める。
槍の形状は、前に付き刺す部分があり、後ろに棍棒のようなクリスタルが付いている。
真ん中を持つ事によって、棍棒と槍を巧みに使い分けるタイプだ。
嵐山は槍の突きに対応できるが、棍棒による攻撃はうまく防ぎきれないでいた。
遠心力による重い一撃を防ぐ事ができず、身体ごと吹き飛ばされてしまう。
その攻撃に倒れ込んでしまえば、槍による攻撃に対応できずに突き刺されてしまうだろう。女性にも使いこなせるという槍が真価を発揮すると、嵐山でさえ無力と化してしまうのだ。
嵐山は吹き飛ばされるのを、身体を後ろに転がる事で耐えているが、まさに曲芸のような防御だった。
転がった後に素早く立てるため槍の突きに対応できているが、一瞬でもタイミングがずれると串刺しになっているだろう。
嵐山は対応できているのが不思議なくらい、追い込まれていた。
嵐山が追い込まれている事により、キーリアは反対に狙いが定めやすかった。
時折来るキーリアのビーム攻撃により、赤い魔物は攻め切れずにいた。
しかし、嵐山が無事なのも時間の問題だった。
本来嵐山が想定していた戦いは、キーリアの無差別攻撃による接近戦だった。
ビーム攻撃をナイフに反射させる事により軌道を変え、自分を守りつつ相手にダメージを与える。
かなり危険だが、槍の攻撃範囲と相手の力強さを考えれば、この攻撃が唯一勝てる戦法だった。
しかし、嵐山自身が追い込まれ、キーリアが敵に狙いを定めやすくなったため、その戦法ができなくなっていたのだ。
デスマッチのような周りの状況を考えながら敵と戦う戦法ならば、嵐山は経験から有利に戦う事ができる。
しかし、強い敵に一対一の場合はどうしても身体能力の差が出てしまうのだ。
しかも、キーリアのビーム攻撃は直線的すぎて、相手に当たる事は無い。
攻撃が予想されるのならば、どんな強い攻撃も無駄になってしまうのだ。
この状況を打開する手をすぐに考え出さなければならない。
キーリアはビームを撃つ事に集中し過ぎて、他の策を考えることも、自分の任務さえも気付いていなかった。
戦闘のサポートも経験と連携が肝心ではあるが、幼いキーリアにはそれがまだ分からなかったのだ。
嵐山の方で何か良いアドバイスをしてやらなければ、いずれはどちらも魔物にやられてしまうだろう。
嵐山に何か状況打開の秘策はあるのだろうか?
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