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第四章 白と黒の遭遇
第74話 黒沢エレンとバルベロ
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バルベロは、黒沢エレンによって捕らえられていた。
しかも、全身の電気系統を一時的に遮断されているため、拘束具が無くても動く事ができない。
バルベロは喋る人形と化していた。
黒沢エレンがどのような衣装を着せようと、口で抵抗する以外に方法がない。
「さあて、次はこの体操服を着てもらおうかしら。
ほら、今は絶滅危惧種に指定されたブルマよ!
下半身をしっかり守り、身体にフィットさせる事によって、人体の極限まで引き出す幻のアイテムなのにね。
さあ、お着替えしましょうか?」
黒沢エレンは、バルベロの服を脱がし、まずはブルマを着用させる。
十七歳くらいのバルベロが、中学生くらいの年齢に感じられる。
黒髮ショートカットの童顔で、小学校でも行けそうな感じだった。
ブラのカップもAカップであり、思っていたより小さい。
「ふふふ、身体はすっかり女の子ね♡」
これも、バルベロの身体を調べるのに大切な事なのだ。
体操服は動き易いから、関節部分もしっかりと見る事ができる。
このジョイント部分も人類の英知が詰まっているのだ。
そして、ブルマによって隠された秘部にも……。
「どういうつもり? 今さら私の身体になんて興味はないんじゃないの?
全て作り物なのよ。あなたならどこでも作り出す事が可能でしょう。
全体の設計図のコピーさえ持っているんだから」
バルベロはそう尋ねるのは、すでに制作されてから五十年は経っているからだ。
今さらバルベロに興味を持って捕らえに来たとは考えにくい。
「そうね。バルベロちゃんには興味ないわ。
でも、あなたの作ったアルスター王国には興味があるの。
誤魔化していた様だけど、あの異次元空間を作り出したのは、バルベロちゃんでしょう?
他の人じゃあ、知識が無いし、あれほど強大な異次元空間は作り出せないわ。
それに、あの私にそっくりなシルビアさんの事もね。
どうやってあの異次元空間を作ったか聞かせてね。
目的はだいたい見当が付いているけど……」
「なるほど。あなたの大切な妹が関わっている可能性があるものね。
見た目は私そっくりで、その子黒沢ノレンをモデルにしたのでしょう。
いいわ、隠さずに教えてあげる。
まず、アルスター王国を作ったのは、あなたの研究資料をハッキングしていたから。
こっちの仕事が私の本職だもの。
あなたの行動や私を作った後の事もだいたい知っているわ。
そして、不老長寿の薬を開発した事も異次元空間を作り出せる事も……。
あの村に関わりのある日本政府関係者は、あなたの行動について逐一聞いて来たわ。
危険がないかとか、恨みを抱いて復讐する気じゃないかとか……。
あまりにも不安がっていたから、私があなたに対抗できる戦力として訓練していたのよ。
あなたの異次元空間技術とは違う次元能力(シルビアさんは魔法と呼んでいる)という名前を付けてね」
「なるほど。私の不老長寿の妙薬は、身体の内側を異次元空間にする技術。
あなたが開発したのは、身体の外側を異次元空間の様にする技術か。
呪文は、水や風、炎など種類を限定するのにイメージとして用いている様ね。
言葉の設計図と言うわけか。上手く考えたものね。
私の技術が防御系なら、そちらの魔法技術は攻撃系という感じね。
あのシルビアとかいう女の子も水魔法と風魔法を合わせて氷魔法にするなんて、かなり使いこなしているようだし……」
「そのシルビアさんですが、あなたに似ているのは三つ理由があります。
一つは、あなたの妹達をニ十年ほど前に保護した事です。
アルスター王国の王族として迎え入れました。子供も生まれ、幸せに暮らしていますよ。
そして、二つ目の理由は、あなたの遺伝子を使い、クローン技術によって子供を作った為です。
これは、あの村の日本政府関係者があなたに対しての嫌がらせとして実行していました。
私の手元に置いておく方が安全と判断し、アルスター王国の王族達の子供と結婚させました。
最後の理由は、もう分かっていると思いますが血が濃い事です。
あなたのクローンと、あなたの妹達の産んだ男性を結婚させたために容姿と性格があなたに似たのでしょう。
あなたとシルビアさん達からしてみたら、私を怒る対象にするかもしれませんが、これが精一杯の結果でした」
「そうなの。で、あなたが発見した当時、妹達はどんな様子だったのかしら?
ニ十年間の様子が気がかりだわ」
バルベロは陰鬱な表情をする。
「う……、言えません。
機械の私から見ても酷い有様だったとしか……。
私がもっと早く助けていれば良かったのですが……。すいません」
「ふー、まあ、村を滅ぼした親族がどうなるかはある程度覚悟していたわ。
今は幸せなのでしょう。それだけでも、あなたには感謝するわ。
妹達と数人の私を保護してくれてありがとう。でも、ごめんね」
黒沢エレンは、バルベロに電気ショックを与え強制的に眠らせた。
「あなたには感謝しているわ、それは本当よ。
でも、もう一人の私という素晴らしい存在と全力で戦ってみたいの。
こんな機会滅多にないでしょう♡
あなたはしばらく眠ってなさい。
余計な情報を言われて、彼女達の士気が落ちても困るからね。
さあ、シルビアかかって来なさい!」
黒沢エレンは、オレ達と戦う準備をし始めた。
研究所の別の部屋に入ると、黒沢エレンの旦那と思われる男性がいた。
怪しい仮面を被り、マントを身に付けていた。
「あなた、お客さんがもうすぐいらっしゃいますよ。楽しいお祭りの時間です!」
黒沢弘毅は興奮で震えていた。
仮面を少し取り、決めポーズでエレンと会話をし出す。
おそらく鏡で自分の姿を確認し、仮面を持つ仕草などを調整し、どの位置がカッコいいかを研究したのだろう。
「そうか。ついに、この俺様と本気で戦えるだけの敵が現れたか!
科学を超越した最強のヒーロー・『魔術王ヴォルデ』の真の力を公開する時がな!」
「弘毅さん、嬉しそうですね」
「嬉しいとも!
わずかに力を使う機会さえもなかったが、ついに本気で相手ができる奴がいるのだ。
まあ、俺様が本気を出してしまえば、光宮守とかいう奴はただのゴミと化すのだがな!」
黒沢弘毅は仮面を付け直し、不敵に笑う。
どうやら姿を見られたくないようだが、何か秘密があるのだろうか?
黒沢エレンも微笑し、オレとシルビアさんが来るのを心待ちにしている様だ。
黒い傘を手に持ち、屋敷を出て庭園を歩き出す。
色取り取りの薔薇に囲まれ、優雅な香りに包まれていた。
バラに囲まれた庭園の中心に来るとこう言う。
「ここでシルビアと戦いましょうか。もう一人の私とね……」
黒沢エレンが傘を閉じて、一振りする。
すると、剣の様な形に変化した。
「ふふふ、この庭園は、日当たりが良くて、温かい。
だからシルビアには最悪の空間でしょうけど、私には最高の環境よ。
日焼けはしないし、何よりバラが美しい。
シルビアをこのイバラでセクシーな格好にして、存分にお茶タイムを楽しませてもらおうかしらね。
自分と同じ人物を存分に弄ぶ(もてあそぶ)機会なんて滅多にないモノね♡」
黒沢エレンはお茶を準備し、自分のお気に入りの服を着ている。
傘の様な屋根のある場所で、テーブルと椅子が準備してあった。
いつもここでお茶を楽しんでいるらしい。
まるで舞踏会に誘ったかの如く恍惚とした表情で屋敷の門を見ていた。
「あっ、でも彼らも子供がいたんだけ……。
それなら今日はもう来ないわね。
子供を小学校に預けて来るとなると、明日の十時くらいかしら?
私の娘も彼らの子供と同い年くらいだから気が付いて良かったわ。
まあ、私の奏子ちゃんは変わり者だから、自分の部屋で大人しくしているけど……。
もしかして、彼らの子供と私の奏子ちゃんも同じ小学校だったりしてね♡」
オレとシルビアさんが悟を小学校に預ける時間も考慮し、黒沢エレンは早めの就寝を心がけた。
娘が小学校に出かける為の食事とお弁当の準備をし、オレとシルビアさんが来る準備をする。
彼女の娘の奏子は、黒沢エレンと瓜二つだった。
まるで双子の様に同じ格好をしている。
年齢と背丈が違うが、縮小コピーをした様に同じだった。
違う点といえば、娘の方は悲しい表情を見せていた。
黒沢エレンは、その事に気付いていない様だ。
「ふう、何とか間に合って良かったわ♡」
案の定、オレとシルビアさんは悟を小学校に預けてから黒沢エレンお屋敷へ潜入する。
黒沢エレンと同様、朝ご飯や学校の用意をした後で出掛ける。
敵に全ての行動を悟られているが、果たして勝てるのだろうか?
翌日の朝十時になり、オレは目を覚ました。
オレが寝坊した事も重なり結構な時間になってしまったようだ。
ゆっくりと朝食を食べ終わり、地図を見ながら屋敷に辿り着く。
昼を超えてしまった。
仕方なくオレ達は昼ご飯を食べ、だいたい昼の一時頃に黒沢家に入る事になった。
オレ達は黒沢家の屋敷へ侵入しようと試みる。
普通に入るのは危険なので、屋敷の周辺にあるフェンスを切り取り、床下へ潜入しようと考えた。
屋敷のフェンスをくぐったと思った瞬間、異次元空間の罠により謎の庭園に飛ばされていた。
そこには、黒沢エレンが待ち構えている。
「あらかじめこの屋敷内に入ると、この場所に辿り着くようにしていました。
門から入れば無料でしたが、フェンスを壊したので修理代は払ってくださいね。
後、シルビアさんには着替えを要求します!
ジャージを着て来るとか、お姫様としてどうかと思います。
ちゃんと、ドレスを着て来てくださいよ」
「えー、どうせ服が破けたり、切れる様に攻撃して来るんでしょう?
精神的に有利な条件の方が良いじゃないですか。
それに、ジャージでも可愛いなら許されます!」
「ダメ! 絶対ダメ!
ひらりと膨らむスカートとか、チラ見えするパンティとかが剣対決の醍醐味でしょう。
そこが無くて戦うとか無意味じゃないですか!
折角、あなたが剣を作り出せる事や、私が剣を持っている設定なのに……」
「はいはい、分かりましたよ!」
シルビアさんは、黒沢エレンの訴えを聞き、白いドレスを着て戻って来た。
これにより更に時間がかかってしまった。
だいたい昼のニ時くらいに黒沢エレンの薔薇庭園に突入した。
シルビアさんは、白いドレスを指してこう言う。
「これ、もうすぐ捨てる予定なので、最後に着る事にしました。これで良いですよね?」
「あくまでも無駄を省きたいわけか……」
「すでに精神的な戦いは始まっているのです。
お気に入りの服で戦うとか、自分の精神力を削る自殺行為に他なりませんね」
黒沢エレンはそれを聞き、不敵に笑う。
ちょっと動揺している様にも見えた。
彼女は、自分のお気に入りを着て来てしまったのである。
破れたり、切れたりしただけでかなりの精神的ダメージを負うのだ。
「ふふふ、丁度良いハンデでしょう?
ぐず、圧倒的に勝っても面白くないものね……」
「強がり言っちゃって……」
時刻は昼の三時になろうとしていた。
オレ達の貯金とバルベロを取り戻さなければ、オレ達の生活が終わってしまうのだ。
命懸けのバトルが今始まろうとしている。
勝って最高級の紅茶の味を堪能するのは、どちらであろうか?
しかも、全身の電気系統を一時的に遮断されているため、拘束具が無くても動く事ができない。
バルベロは喋る人形と化していた。
黒沢エレンがどのような衣装を着せようと、口で抵抗する以外に方法がない。
「さあて、次はこの体操服を着てもらおうかしら。
ほら、今は絶滅危惧種に指定されたブルマよ!
下半身をしっかり守り、身体にフィットさせる事によって、人体の極限まで引き出す幻のアイテムなのにね。
さあ、お着替えしましょうか?」
黒沢エレンは、バルベロの服を脱がし、まずはブルマを着用させる。
十七歳くらいのバルベロが、中学生くらいの年齢に感じられる。
黒髮ショートカットの童顔で、小学校でも行けそうな感じだった。
ブラのカップもAカップであり、思っていたより小さい。
「ふふふ、身体はすっかり女の子ね♡」
これも、バルベロの身体を調べるのに大切な事なのだ。
体操服は動き易いから、関節部分もしっかりと見る事ができる。
このジョイント部分も人類の英知が詰まっているのだ。
そして、ブルマによって隠された秘部にも……。
「どういうつもり? 今さら私の身体になんて興味はないんじゃないの?
全て作り物なのよ。あなたならどこでも作り出す事が可能でしょう。
全体の設計図のコピーさえ持っているんだから」
バルベロはそう尋ねるのは、すでに制作されてから五十年は経っているからだ。
今さらバルベロに興味を持って捕らえに来たとは考えにくい。
「そうね。バルベロちゃんには興味ないわ。
でも、あなたの作ったアルスター王国には興味があるの。
誤魔化していた様だけど、あの異次元空間を作り出したのは、バルベロちゃんでしょう?
他の人じゃあ、知識が無いし、あれほど強大な異次元空間は作り出せないわ。
それに、あの私にそっくりなシルビアさんの事もね。
どうやってあの異次元空間を作ったか聞かせてね。
目的はだいたい見当が付いているけど……」
「なるほど。あなたの大切な妹が関わっている可能性があるものね。
見た目は私そっくりで、その子黒沢ノレンをモデルにしたのでしょう。
いいわ、隠さずに教えてあげる。
まず、アルスター王国を作ったのは、あなたの研究資料をハッキングしていたから。
こっちの仕事が私の本職だもの。
あなたの行動や私を作った後の事もだいたい知っているわ。
そして、不老長寿の薬を開発した事も異次元空間を作り出せる事も……。
あの村に関わりのある日本政府関係者は、あなたの行動について逐一聞いて来たわ。
危険がないかとか、恨みを抱いて復讐する気じゃないかとか……。
あまりにも不安がっていたから、私があなたに対抗できる戦力として訓練していたのよ。
あなたの異次元空間技術とは違う次元能力(シルビアさんは魔法と呼んでいる)という名前を付けてね」
「なるほど。私の不老長寿の妙薬は、身体の内側を異次元空間にする技術。
あなたが開発したのは、身体の外側を異次元空間の様にする技術か。
呪文は、水や風、炎など種類を限定するのにイメージとして用いている様ね。
言葉の設計図と言うわけか。上手く考えたものね。
私の技術が防御系なら、そちらの魔法技術は攻撃系という感じね。
あのシルビアとかいう女の子も水魔法と風魔法を合わせて氷魔法にするなんて、かなり使いこなしているようだし……」
「そのシルビアさんですが、あなたに似ているのは三つ理由があります。
一つは、あなたの妹達をニ十年ほど前に保護した事です。
アルスター王国の王族として迎え入れました。子供も生まれ、幸せに暮らしていますよ。
そして、二つ目の理由は、あなたの遺伝子を使い、クローン技術によって子供を作った為です。
これは、あの村の日本政府関係者があなたに対しての嫌がらせとして実行していました。
私の手元に置いておく方が安全と判断し、アルスター王国の王族達の子供と結婚させました。
最後の理由は、もう分かっていると思いますが血が濃い事です。
あなたのクローンと、あなたの妹達の産んだ男性を結婚させたために容姿と性格があなたに似たのでしょう。
あなたとシルビアさん達からしてみたら、私を怒る対象にするかもしれませんが、これが精一杯の結果でした」
「そうなの。で、あなたが発見した当時、妹達はどんな様子だったのかしら?
ニ十年間の様子が気がかりだわ」
バルベロは陰鬱な表情をする。
「う……、言えません。
機械の私から見ても酷い有様だったとしか……。
私がもっと早く助けていれば良かったのですが……。すいません」
「ふー、まあ、村を滅ぼした親族がどうなるかはある程度覚悟していたわ。
今は幸せなのでしょう。それだけでも、あなたには感謝するわ。
妹達と数人の私を保護してくれてありがとう。でも、ごめんね」
黒沢エレンは、バルベロに電気ショックを与え強制的に眠らせた。
「あなたには感謝しているわ、それは本当よ。
でも、もう一人の私という素晴らしい存在と全力で戦ってみたいの。
こんな機会滅多にないでしょう♡
あなたはしばらく眠ってなさい。
余計な情報を言われて、彼女達の士気が落ちても困るからね。
さあ、シルビアかかって来なさい!」
黒沢エレンは、オレ達と戦う準備をし始めた。
研究所の別の部屋に入ると、黒沢エレンの旦那と思われる男性がいた。
怪しい仮面を被り、マントを身に付けていた。
「あなた、お客さんがもうすぐいらっしゃいますよ。楽しいお祭りの時間です!」
黒沢弘毅は興奮で震えていた。
仮面を少し取り、決めポーズでエレンと会話をし出す。
おそらく鏡で自分の姿を確認し、仮面を持つ仕草などを調整し、どの位置がカッコいいかを研究したのだろう。
「そうか。ついに、この俺様と本気で戦えるだけの敵が現れたか!
科学を超越した最強のヒーロー・『魔術王ヴォルデ』の真の力を公開する時がな!」
「弘毅さん、嬉しそうですね」
「嬉しいとも!
わずかに力を使う機会さえもなかったが、ついに本気で相手ができる奴がいるのだ。
まあ、俺様が本気を出してしまえば、光宮守とかいう奴はただのゴミと化すのだがな!」
黒沢弘毅は仮面を付け直し、不敵に笑う。
どうやら姿を見られたくないようだが、何か秘密があるのだろうか?
黒沢エレンも微笑し、オレとシルビアさんが来るのを心待ちにしている様だ。
黒い傘を手に持ち、屋敷を出て庭園を歩き出す。
色取り取りの薔薇に囲まれ、優雅な香りに包まれていた。
バラに囲まれた庭園の中心に来るとこう言う。
「ここでシルビアと戦いましょうか。もう一人の私とね……」
黒沢エレンが傘を閉じて、一振りする。
すると、剣の様な形に変化した。
「ふふふ、この庭園は、日当たりが良くて、温かい。
だからシルビアには最悪の空間でしょうけど、私には最高の環境よ。
日焼けはしないし、何よりバラが美しい。
シルビアをこのイバラでセクシーな格好にして、存分にお茶タイムを楽しませてもらおうかしらね。
自分と同じ人物を存分に弄ぶ(もてあそぶ)機会なんて滅多にないモノね♡」
黒沢エレンはお茶を準備し、自分のお気に入りの服を着ている。
傘の様な屋根のある場所で、テーブルと椅子が準備してあった。
いつもここでお茶を楽しんでいるらしい。
まるで舞踏会に誘ったかの如く恍惚とした表情で屋敷の門を見ていた。
「あっ、でも彼らも子供がいたんだけ……。
それなら今日はもう来ないわね。
子供を小学校に預けて来るとなると、明日の十時くらいかしら?
私の娘も彼らの子供と同い年くらいだから気が付いて良かったわ。
まあ、私の奏子ちゃんは変わり者だから、自分の部屋で大人しくしているけど……。
もしかして、彼らの子供と私の奏子ちゃんも同じ小学校だったりしてね♡」
オレとシルビアさんが悟を小学校に預ける時間も考慮し、黒沢エレンは早めの就寝を心がけた。
娘が小学校に出かける為の食事とお弁当の準備をし、オレとシルビアさんが来る準備をする。
彼女の娘の奏子は、黒沢エレンと瓜二つだった。
まるで双子の様に同じ格好をしている。
年齢と背丈が違うが、縮小コピーをした様に同じだった。
違う点といえば、娘の方は悲しい表情を見せていた。
黒沢エレンは、その事に気付いていない様だ。
「ふう、何とか間に合って良かったわ♡」
案の定、オレとシルビアさんは悟を小学校に預けてから黒沢エレンお屋敷へ潜入する。
黒沢エレンと同様、朝ご飯や学校の用意をした後で出掛ける。
敵に全ての行動を悟られているが、果たして勝てるのだろうか?
翌日の朝十時になり、オレは目を覚ました。
オレが寝坊した事も重なり結構な時間になってしまったようだ。
ゆっくりと朝食を食べ終わり、地図を見ながら屋敷に辿り着く。
昼を超えてしまった。
仕方なくオレ達は昼ご飯を食べ、だいたい昼の一時頃に黒沢家に入る事になった。
オレ達は黒沢家の屋敷へ侵入しようと試みる。
普通に入るのは危険なので、屋敷の周辺にあるフェンスを切り取り、床下へ潜入しようと考えた。
屋敷のフェンスをくぐったと思った瞬間、異次元空間の罠により謎の庭園に飛ばされていた。
そこには、黒沢エレンが待ち構えている。
「あらかじめこの屋敷内に入ると、この場所に辿り着くようにしていました。
門から入れば無料でしたが、フェンスを壊したので修理代は払ってくださいね。
後、シルビアさんには着替えを要求します!
ジャージを着て来るとか、お姫様としてどうかと思います。
ちゃんと、ドレスを着て来てくださいよ」
「えー、どうせ服が破けたり、切れる様に攻撃して来るんでしょう?
精神的に有利な条件の方が良いじゃないですか。
それに、ジャージでも可愛いなら許されます!」
「ダメ! 絶対ダメ!
ひらりと膨らむスカートとか、チラ見えするパンティとかが剣対決の醍醐味でしょう。
そこが無くて戦うとか無意味じゃないですか!
折角、あなたが剣を作り出せる事や、私が剣を持っている設定なのに……」
「はいはい、分かりましたよ!」
シルビアさんは、黒沢エレンの訴えを聞き、白いドレスを着て戻って来た。
これにより更に時間がかかってしまった。
だいたい昼のニ時くらいに黒沢エレンの薔薇庭園に突入した。
シルビアさんは、白いドレスを指してこう言う。
「これ、もうすぐ捨てる予定なので、最後に着る事にしました。これで良いですよね?」
「あくまでも無駄を省きたいわけか……」
「すでに精神的な戦いは始まっているのです。
お気に入りの服で戦うとか、自分の精神力を削る自殺行為に他なりませんね」
黒沢エレンはそれを聞き、不敵に笑う。
ちょっと動揺している様にも見えた。
彼女は、自分のお気に入りを着て来てしまったのである。
破れたり、切れたりしただけでかなりの精神的ダメージを負うのだ。
「ふふふ、丁度良いハンデでしょう?
ぐず、圧倒的に勝っても面白くないものね……」
「強がり言っちゃって……」
時刻は昼の三時になろうとしていた。
オレ達の貯金とバルベロを取り戻さなければ、オレ達の生活が終わってしまうのだ。
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