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第六章 水の底から襲い来る死神
第ニ十ニ話 カタナちゃんの決断!
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カタナちゃんは、黄泉津大神に扮した同級生の磯辺霊子に好かれているようだ。
見た目は美少女かもしれないが、中身は重度のオカルト好きという変態だ。
レズじゃないだけましだが、それでも狂気を感じさせる女の子だ。
顔が可愛いだけの男子では、彼女を納得される事は出来ない。
リアルホラー化した彼女とラブラブしなければならないのだ。
オレには絶対出来そうもない事を強要されていた。
カタナちゃんは、彼女に語りかける。
「確かに、理想としては、相手がどんな姿になっていようとも愛を貫いて欲しい物だね。でも、現実はそう簡単ではないよ。僕も、その立場になってみたら逃げ出すかもしれない」
「いいえ。あなたなら私の理想を叶えてくれますわ。
今も、こうして恐れずに近付いてくださるのですから……」
「僕は、それほどすごい人間じゃないよ。でも、愛する様に努力はする」
「いいえ、その想いを持っているからこそ、あなたが素晴らしいのです」
カタナちゃんと磯辺霊子が近付きながら話し合っていると、オレはある事に気が付いた。
霊子は、オバケに変身するのに、ワンタッチで変身できる仮面の様な被り物を付けていた。
タネはシンプルだが、仮面の出来が凄過ぎて、オレでさえ気絶させられたほどだ。
作り物とはいえ、かなりの破壊力がある。
しかし、霊子は仮面を外して、カタナちゃんを待っている。
あれでは、変身して脅かす事は出来ない。
(なるほど。カタナちゃんには、あの変化を見せないつもりか。
彼女は普通の女の子、オバケの振りとはいえ、醜くなる変身はしたくないという事か。
でも、それで愛とか言っているのは、反則だよな)
オレは立ち上がり、霊子に近付く。
オレを見るや、霊子は不機嫌な顔でオレを見つめていた。
折角のラブラブ会話を邪魔されたのだから、そういう顔になるのも仕方ないが、オレもある事を確かめないと納得できない。
「あら、もう起きたの?」
「ああ、気絶は三度目なんでね。
ちょっと驚いたが、数分間の気絶で済んだよ。
まあ、夜はぐっすり眠るのが怖いけどね」
オレは、霊子の外した仮面を拾い、更に近付いて行く。
霊子は脅えた様にうろたえていた。
いくら彼女でも、肉体的な力は弱いからだ。
「何よ……。脅かしたのは悪かったと思うけど、これは勝負なんだから仕方ないじゃない。
それに、私はこのダンジョンのボスを一番早く倒したわ。
このダンジョンをどう使おうが、私の自由じゃなくて?」
「ああ、そっちは問題ないよ。むしろ、ボスを倒してことに尊敬すら感じる。
だが、ここで、その素顔のままでカタナちゃんと会うのはいただけないな。
オレも怖がらせたんだ。カタナちゃんとの試練もしてもらうぜ!」
オレは霊子に仮面を返した。
「う、これは……。その……」
仮面は、素顔と作り物を一瞬で切り替える事が出来る優れモノだ。
薄く作られていて、構造を知らなければ誰も気が付かない。
霊子は仮面を付けようとせず、うろたえている。
「ふふ、恐いのか? カタナちゃんがいくら理解しているとはいえ、醜い作り物を見せるのは女として不安だろうな。
本来なら、素顔の自分で出迎えたい。
もしも、カタナちゃんが君を見て拒絶したら困るからね。
でも、それは反則行為じゃないのか?」
「くっ、お前の言う通りだ。私は確かに、彼に嫌われている事を恐れている。
だが、私の理想とする恋愛を確かめるには、私がオバケに扮装しなければなるまい。
しかし、女の子として、どうしても剣冴君(カタナちゃんの本名)に冷たい目で見られたくない」
磯辺霊子は、身体を震わせ、恐怖を顕わしていた。
好きな男に、醜い姿を見せるというのはそれほど辛い事なのだろう。
「大丈夫だ。カタナちゃんは、君の素顔を知っているのだろう。
君の疑問をきっと解消してくれるはずだ」
霊子は、しばらく自分の仮面を見つめていたが、決心したように言う。
「分かった。このまま逃げては、いずれ失敗するだけだろう。
私に必要なのは、わずかばかりの勇気だ。
それは、きっと普通の恋愛でも変わらない」
霊子は、オレに自信たっぷりの笑顔を見せると、仮面を付ける。
彼女の自信あふれる姿を見て、オレも変化に気が付いていた。
「さっきの時より、美人になった様に感じるよ。
今なら、カタナちゃんと出会う資格があるのかもな」
「ふん、私に後押ししてくれた事に感謝するよ」
オレが磯辺霊子の笑顔に見とれていると、カタナちゃんが到着していた。
「霊子ちゃん、着いたよ」
カタナちゃんに名前を呼ばれ、彼女は喜んで振り向いた。
「剣冴様、お待ちしておりましたわ!」
霊子は、何の疑いも無く、姫野剣冴の方を振り向いた。
本来、可愛い女の子に見間違うほどの姫野剣冴の顔は、ズタズタに切り刻まれていた。
オレも、一瞬それを見て驚く。
だが、磯辺霊子の驚きはそんな物ではない。
「ギャアアアアアアア!」
本来、オバケに変装するのが得意な霊子だが、カタナちゃんのあまりの変わり様に気絶してしまった。
「ええ! ちょっと、磯辺霊子ちゃん?」
オレとカタナちゃんは、磯辺霊子を介抱し、気が付くのを待った。
しばらくすると、磯辺霊子は眼を覚ました。
すでに、気絶してから一時間ほど経過しており、ダンジョンの入り口近くに来ていた。
「霊子ちゃん、大丈夫?」
カタナちゃんが元の顔に戻り、霊子が起きた事を確認する。
霊子は、一瞬何が起こったか分からない表情をしていたが、徐々に記憶を思い出したようだ。
「剣冴君、ここは……。さっきのあれは……」
戸惑う霊子に、カタナちゃん(剣冴)は、ある物を見せる。
それは、ズタズタに切られた顔の作り物だ。
「ふふ、驚かせてごめんね。
これは、ダンジョンに入る前に、ゆたかちゃんが持っていたアンデットモンスターの顔だよ。
僕なりにアレンジして、オバケの振りをしたけど、効果は抜群だったようだね。
僕もかなりびっくりしたよ。
ちょっとビビるくらいだと思っていたから……」
磯辺霊子は、カタナちゃんの持っている仮面を確認する。
まさか、自分の作った作品(ゆたかがアレンジしたけど)を利用されるとは思ってもいなかったのだろう。
納得した反面、恥ずかしさを感じていた。
「まさか、自分の作った作品に驚かされるとはね。
黄泉津大神を見て逃げ出した伊邪那岐命(いざなぎのみこと)を蔑んでいたのに、自分が気絶するとはね。
まだ、私は姫野剣冴君と恋愛できるレベルじゃないという事ね」
磯辺霊子は、笑いながら納得していた。オレは、後ろめたさを感じる。
「いや、オレが霊子ちゃんの気を逸らしていたというのも関係している。
カタナちゃん(剣冴)と一対一だったら、気絶する事は無かったのかも……」
「いえ、これは私の弱さです。まだ、人を愛する資格はありません。
でも、いずれは、またリベンジいたします!」
磯辺霊子は、微笑しながらそう言った。
ツインテールの髪型をしており、ロングヘアーだった時の暗さは全く無い。
これは、カタナちゃんが髪型をセットした物だ。
カタナちゃんは、オレにひそひそとこう説明する。
「実は、磯辺霊子ちゃんはロングヘアーの時は、顔が見えにくくなるからか、人を驚かすのが好きなんだ。
でも、ツインテールにして、顔が見える様にすると、ちょっとシャイな女の子になるんだ。だから、ロングヘアーの時は気を付けた方が良いよ」
良く分からないが、彼女自身が決めたルールがあるらしい。
カタナちゃんが言う通り、霊子はツインテールだとオレの顔をちらちら見ながら照れていた。どうやら男性の存在が気になるらしい。
しかし、しばらくすると、自分のいる場所が気にし出した。
「ペンペンペン……」
「ここはどこですか? そして、この音はいったい何?」
異様な音が聞こえ、彼女は不安を感じ始めていた。身体を起こし、辺りを確認する。
「ここは、オレ達の作った船の中だ。丁度五人乗りだったんで良かった。
オレとカタナちゃん、先生達とキミとグ―ラだ。
残りは、持ち運べないから置いて来たけど……。
そして、この音は、ゆたかが作ったエアバイクのエンジン音だ。
今、運転してくれている」
ゆたかの方を見ると、新しいIPETシリーズのペンギン型水陸両用エアバイク『フンバル』が、エンジンとして活躍していた。
倒れていた女先生を回収し、後ろに乗せている。
もう一人はおっさんだったので、置き去りにして出発した。
ゆたかは、興味の無い者には、とことんまで冷たくなる性格らしい。
まあ、モンスターもいないし、日を改めて回収しに来よう。
オレがそう考えていると、霊子がゆたかに喧嘩を売り始める。
「出たわね、この変態ゆたか! 一年前の屈辱を忘れた事は無いわ!」
「誰? あんまり記憶にないけど。ボインじゃないし、顔を覚えるのは苦手で……」
ゆたかは真面目な顔をしてそう言った。
「私よ、私! ロボットコンクールジュニア大会の準優勝者よ!」
「ああ、そういえば出ていたような気がする。
司会者のお姉さんがボインだった事は覚えているけど、自分の順位も記憶にないな。
何位だったっけ?」
「順位としては、自宅へ強制送還よ。
司会者のお姉さんのオッパイに触ったとかで……」
「なら良いじゃん! 何、怒っているの?」
おそらく才能を無駄にしてもったいないとか、そんな所だろうかと、オレは想像する。
ゆたかの実力ならば、優勝も可能だったはずだ。
または、司会者のお姉さんが身内だったとかだろうか。
それならば怒るのも仕方ない。
「私の作ったアンドロイドロボット『乙姫』を、あなたが勝手に改造したせいで負けちゃったのよ。
オッパイが足りないとかで盛ったせいで、アームが上手く動かなくて……」
「それは、制作者のミスじゃん。
あらかじめ巨乳にしておけば、私も弄ったりしないよ」
別に、ゆたかのライバルでも何でもなかった。
ただのセクハラ被害者だった。
こうして、オレ達はダンジョンから脱出し、明日から普通に授業ができるようになった。磯辺霊子は、オレ達の家の隣に、謎の研究所を作り住み始めた。
小さい貝の形をした研究所だった。
学校の先生方は、ダンジョンを攻略に成功した為、五人に増えていた。
明日は無事に、授業を受ける事が出来るのだろうか?
見た目は美少女かもしれないが、中身は重度のオカルト好きという変態だ。
レズじゃないだけましだが、それでも狂気を感じさせる女の子だ。
顔が可愛いだけの男子では、彼女を納得される事は出来ない。
リアルホラー化した彼女とラブラブしなければならないのだ。
オレには絶対出来そうもない事を強要されていた。
カタナちゃんは、彼女に語りかける。
「確かに、理想としては、相手がどんな姿になっていようとも愛を貫いて欲しい物だね。でも、現実はそう簡単ではないよ。僕も、その立場になってみたら逃げ出すかもしれない」
「いいえ。あなたなら私の理想を叶えてくれますわ。
今も、こうして恐れずに近付いてくださるのですから……」
「僕は、それほどすごい人間じゃないよ。でも、愛する様に努力はする」
「いいえ、その想いを持っているからこそ、あなたが素晴らしいのです」
カタナちゃんと磯辺霊子が近付きながら話し合っていると、オレはある事に気が付いた。
霊子は、オバケに変身するのに、ワンタッチで変身できる仮面の様な被り物を付けていた。
タネはシンプルだが、仮面の出来が凄過ぎて、オレでさえ気絶させられたほどだ。
作り物とはいえ、かなりの破壊力がある。
しかし、霊子は仮面を外して、カタナちゃんを待っている。
あれでは、変身して脅かす事は出来ない。
(なるほど。カタナちゃんには、あの変化を見せないつもりか。
彼女は普通の女の子、オバケの振りとはいえ、醜くなる変身はしたくないという事か。
でも、それで愛とか言っているのは、反則だよな)
オレは立ち上がり、霊子に近付く。
オレを見るや、霊子は不機嫌な顔でオレを見つめていた。
折角のラブラブ会話を邪魔されたのだから、そういう顔になるのも仕方ないが、オレもある事を確かめないと納得できない。
「あら、もう起きたの?」
「ああ、気絶は三度目なんでね。
ちょっと驚いたが、数分間の気絶で済んだよ。
まあ、夜はぐっすり眠るのが怖いけどね」
オレは、霊子の外した仮面を拾い、更に近付いて行く。
霊子は脅えた様にうろたえていた。
いくら彼女でも、肉体的な力は弱いからだ。
「何よ……。脅かしたのは悪かったと思うけど、これは勝負なんだから仕方ないじゃない。
それに、私はこのダンジョンのボスを一番早く倒したわ。
このダンジョンをどう使おうが、私の自由じゃなくて?」
「ああ、そっちは問題ないよ。むしろ、ボスを倒してことに尊敬すら感じる。
だが、ここで、その素顔のままでカタナちゃんと会うのはいただけないな。
オレも怖がらせたんだ。カタナちゃんとの試練もしてもらうぜ!」
オレは霊子に仮面を返した。
「う、これは……。その……」
仮面は、素顔と作り物を一瞬で切り替える事が出来る優れモノだ。
薄く作られていて、構造を知らなければ誰も気が付かない。
霊子は仮面を付けようとせず、うろたえている。
「ふふ、恐いのか? カタナちゃんがいくら理解しているとはいえ、醜い作り物を見せるのは女として不安だろうな。
本来なら、素顔の自分で出迎えたい。
もしも、カタナちゃんが君を見て拒絶したら困るからね。
でも、それは反則行為じゃないのか?」
「くっ、お前の言う通りだ。私は確かに、彼に嫌われている事を恐れている。
だが、私の理想とする恋愛を確かめるには、私がオバケに扮装しなければなるまい。
しかし、女の子として、どうしても剣冴君(カタナちゃんの本名)に冷たい目で見られたくない」
磯辺霊子は、身体を震わせ、恐怖を顕わしていた。
好きな男に、醜い姿を見せるというのはそれほど辛い事なのだろう。
「大丈夫だ。カタナちゃんは、君の素顔を知っているのだろう。
君の疑問をきっと解消してくれるはずだ」
霊子は、しばらく自分の仮面を見つめていたが、決心したように言う。
「分かった。このまま逃げては、いずれ失敗するだけだろう。
私に必要なのは、わずかばかりの勇気だ。
それは、きっと普通の恋愛でも変わらない」
霊子は、オレに自信たっぷりの笑顔を見せると、仮面を付ける。
彼女の自信あふれる姿を見て、オレも変化に気が付いていた。
「さっきの時より、美人になった様に感じるよ。
今なら、カタナちゃんと出会う資格があるのかもな」
「ふん、私に後押ししてくれた事に感謝するよ」
オレが磯辺霊子の笑顔に見とれていると、カタナちゃんが到着していた。
「霊子ちゃん、着いたよ」
カタナちゃんに名前を呼ばれ、彼女は喜んで振り向いた。
「剣冴様、お待ちしておりましたわ!」
霊子は、何の疑いも無く、姫野剣冴の方を振り向いた。
本来、可愛い女の子に見間違うほどの姫野剣冴の顔は、ズタズタに切り刻まれていた。
オレも、一瞬それを見て驚く。
だが、磯辺霊子の驚きはそんな物ではない。
「ギャアアアアアアア!」
本来、オバケに変装するのが得意な霊子だが、カタナちゃんのあまりの変わり様に気絶してしまった。
「ええ! ちょっと、磯辺霊子ちゃん?」
オレとカタナちゃんは、磯辺霊子を介抱し、気が付くのを待った。
しばらくすると、磯辺霊子は眼を覚ました。
すでに、気絶してから一時間ほど経過しており、ダンジョンの入り口近くに来ていた。
「霊子ちゃん、大丈夫?」
カタナちゃんが元の顔に戻り、霊子が起きた事を確認する。
霊子は、一瞬何が起こったか分からない表情をしていたが、徐々に記憶を思い出したようだ。
「剣冴君、ここは……。さっきのあれは……」
戸惑う霊子に、カタナちゃん(剣冴)は、ある物を見せる。
それは、ズタズタに切られた顔の作り物だ。
「ふふ、驚かせてごめんね。
これは、ダンジョンに入る前に、ゆたかちゃんが持っていたアンデットモンスターの顔だよ。
僕なりにアレンジして、オバケの振りをしたけど、効果は抜群だったようだね。
僕もかなりびっくりしたよ。
ちょっとビビるくらいだと思っていたから……」
磯辺霊子は、カタナちゃんの持っている仮面を確認する。
まさか、自分の作った作品(ゆたかがアレンジしたけど)を利用されるとは思ってもいなかったのだろう。
納得した反面、恥ずかしさを感じていた。
「まさか、自分の作った作品に驚かされるとはね。
黄泉津大神を見て逃げ出した伊邪那岐命(いざなぎのみこと)を蔑んでいたのに、自分が気絶するとはね。
まだ、私は姫野剣冴君と恋愛できるレベルじゃないという事ね」
磯辺霊子は、笑いながら納得していた。オレは、後ろめたさを感じる。
「いや、オレが霊子ちゃんの気を逸らしていたというのも関係している。
カタナちゃん(剣冴)と一対一だったら、気絶する事は無かったのかも……」
「いえ、これは私の弱さです。まだ、人を愛する資格はありません。
でも、いずれは、またリベンジいたします!」
磯辺霊子は、微笑しながらそう言った。
ツインテールの髪型をしており、ロングヘアーだった時の暗さは全く無い。
これは、カタナちゃんが髪型をセットした物だ。
カタナちゃんは、オレにひそひそとこう説明する。
「実は、磯辺霊子ちゃんはロングヘアーの時は、顔が見えにくくなるからか、人を驚かすのが好きなんだ。
でも、ツインテールにして、顔が見える様にすると、ちょっとシャイな女の子になるんだ。だから、ロングヘアーの時は気を付けた方が良いよ」
良く分からないが、彼女自身が決めたルールがあるらしい。
カタナちゃんが言う通り、霊子はツインテールだとオレの顔をちらちら見ながら照れていた。どうやら男性の存在が気になるらしい。
しかし、しばらくすると、自分のいる場所が気にし出した。
「ペンペンペン……」
「ここはどこですか? そして、この音はいったい何?」
異様な音が聞こえ、彼女は不安を感じ始めていた。身体を起こし、辺りを確認する。
「ここは、オレ達の作った船の中だ。丁度五人乗りだったんで良かった。
オレとカタナちゃん、先生達とキミとグ―ラだ。
残りは、持ち運べないから置いて来たけど……。
そして、この音は、ゆたかが作ったエアバイクのエンジン音だ。
今、運転してくれている」
ゆたかの方を見ると、新しいIPETシリーズのペンギン型水陸両用エアバイク『フンバル』が、エンジンとして活躍していた。
倒れていた女先生を回収し、後ろに乗せている。
もう一人はおっさんだったので、置き去りにして出発した。
ゆたかは、興味の無い者には、とことんまで冷たくなる性格らしい。
まあ、モンスターもいないし、日を改めて回収しに来よう。
オレがそう考えていると、霊子がゆたかに喧嘩を売り始める。
「出たわね、この変態ゆたか! 一年前の屈辱を忘れた事は無いわ!」
「誰? あんまり記憶にないけど。ボインじゃないし、顔を覚えるのは苦手で……」
ゆたかは真面目な顔をしてそう言った。
「私よ、私! ロボットコンクールジュニア大会の準優勝者よ!」
「ああ、そういえば出ていたような気がする。
司会者のお姉さんがボインだった事は覚えているけど、自分の順位も記憶にないな。
何位だったっけ?」
「順位としては、自宅へ強制送還よ。
司会者のお姉さんのオッパイに触ったとかで……」
「なら良いじゃん! 何、怒っているの?」
おそらく才能を無駄にしてもったいないとか、そんな所だろうかと、オレは想像する。
ゆたかの実力ならば、優勝も可能だったはずだ。
または、司会者のお姉さんが身内だったとかだろうか。
それならば怒るのも仕方ない。
「私の作ったアンドロイドロボット『乙姫』を、あなたが勝手に改造したせいで負けちゃったのよ。
オッパイが足りないとかで盛ったせいで、アームが上手く動かなくて……」
「それは、制作者のミスじゃん。
あらかじめ巨乳にしておけば、私も弄ったりしないよ」
別に、ゆたかのライバルでも何でもなかった。
ただのセクハラ被害者だった。
こうして、オレ達はダンジョンから脱出し、明日から普通に授業ができるようになった。磯辺霊子は、オレ達の家の隣に、謎の研究所を作り住み始めた。
小さい貝の形をした研究所だった。
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