【オススメネット小説】秘められた異次元( シークレットディメンション) ムッツリスケベは異世界を救う!?

猫パンチ

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第八章 極限のサバイバル 食材争奪戦!

第三十八話 試食開始!

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 オレは、絶望的な状況を確認し、光子先生に抗議する。
このままでは、オレの昼食は、炭と硬い肉の塊になってしまうのだ。

「光子先生、冷菓と霊子ちゃんは、失格を取り消しませんか? 
ゆたかが米を炊けなかっただけですし、それを省けば問題ないはずです。
このままでは、オレ達の昼食が……」

「言いたい事は分かります。でも、これもルール。
たとえ食事抜きでも公平に審査しなくては……」

「じゃあ、審査対象外で良いんで、食べさせてください。
それなら、誰も文句は言わないはず……」

「それなら問題ないですね。
要は、あの炭と硬い肉の戦いになりますけど、それが済めば各自の料理を食べる事を許可しましょう。お腹も本当に限界ですし……」

(ふー、危なく昼飯抜きになる所だったぜ!)

オレは、安堵のため息を付いた。
しかし、目の前に硬い肉の塊と炭が置かれると、どうやって処理すれば良いのだろうかと不安になる。

一口や味身程度ならともかく、一キロほどもある黒い物体が二つ並んでいた。
黒鉛岩と言われれば、疑う事さえないように黒光りしている物体だ。

確かに、炭と一緒にご飯を炊けば美味しくなると言うが、炭だけでは健康に悪いだろう。これのどこを審査しろと言うのだろうか? 
オレは、恐る恐る黒鉛岩を二つに割って見た。

「むむ、カタナちゃんのピザは、完全に炭と化しているが、アビナ先生のトンカツは、わずかながら食える部分がある。
これは、料理の厚さの差か……」

「じゃあ、アビナ先生の勝利と言う事で」

「賛成!」

結局、審査員は料理をほとんど食べずに判決を下した。

(こんなんで良いのか、本当に……)

オレがそう思って料理を見ていると、冷菓とゆたかが味見をする。

「まっず! これで本当に家庭科の先生ですか?」

「うえ、私の米と同じ味がするよ!」

審査員の食べ残した料理は、全て彼らが平らげてくれた。
文句は言っていても、本当に腹が減っているのだ。
そして、彼らは、得意げにこう言う。

「ふふん! 私達の愛情のこもった料理を召し上がれ!」

オレの前に美味しいビーフシチューとイカリング、おにぎりが並べられた。
匂いを嗅ぐだけで、食欲が抑えられない。

「ゆたかちゃんがマモル君の為に握ったおにぎりはどれなの?」

「えっと、この二つだよ。これだけ特別な塩味だよ」

「よし! 他のおにぎりは安全だ! あの二つだけ避けなさい!」

「はい、分かりました!」

光子先生の巧みな指導により、オレの元にピンポイントで股間を触った後に握ったおにぎりが用意された。
恐るべき指導力だ! 

安全なおにぎりは、冷菓と霊子に食べられてしまった。
もう、特別な塩味が美味しい事を期待するしか方法が無い。

「考え様によっては、ラッキーですよ。
美少女味のおにぎりですから。
何も知らなければ美味しいはず……」

「改めて思い出させなくても良かったんじゃないですか? 
ちょっと食欲が落ちましたよ。
まずは、ビーフシチューとイカリングから頂きます」

ゆたかの特別製のおにぎりは、飢えていても誰も手を出そうとしない。
時間をゆっくりかけても、誰も盗み食いしようとしないほど大丈夫な物だった。
オレは、先に無くなる危険のあるビーフシチューとイカリングを食べる。

気を抜けば、一瞬で消えてしまうだろう。
近くで物欲しそうに見ているゆたかがそう無言で注意していた。

よだれを垂らし、一点を凝視している。
オレは、ゆたかの圧力を無視し、ビーフシチューを口に運んだ。

「うっ、美味い!」

(審査さえ出来ていれば、これが一番だっただろう)

口には出さなかったが、そう確信させる味だった。
牛肉もトロトロだし、野菜も程よく煮えている。
味のバランスも絶妙だった。

「ふふ、マモル君がビーフシチューを好きなのは知っていますからね。
多少苦労してでも、これを作りたかったんです!」

冷菓はそう言って、隠された異次元(シークレットディメンション)と名付けたノートを見せてきた。

オレの好きな物をピンポイントで知っているとは、もしかしたら本当の事かも知れない。
冷菓の事は気になっていたが、本気で結婚していたのかもと考え出す。

(これもオレを惚れさせるための作戦なのだろうか? 
嫌いじゃないが、正直に好きと言って欲しいモノだな)

オレは、少し照れていた。そっけなく冷菓にこう言う。

「まあ、美味しいよ。次も機会があれば食べてみたい」

「ふふ、また来週あたりに作って差し上げますよ。
明日は、ロールキャベツの予定ですけど……」

冷菓は、微笑みながらそう言う。すると、ゆたかが喰い付いた。

「ロールキャベツだと! あれ、コマイヌもうまく作れなかった料理だぞ! 
実際、キャベツが硬くて不味かった。本当は、好きなんだけど美味く行かなくて……」

「じゃあ、一緒に作りましょうか? 私は、料理を教えるのも好きですからね♡」

昔の冷菓を知っている光子先生は、冷菓の変わり様に驚いていた。
実際、十二歳くらいの時、料理の事で本気の姉妹喧嘩をした事があるのだ。
何人かの尊い犠牲の元に、再び仲良くする事ができた。

あの頃の教訓が活かされているのだろう。
そんな事全く知らないオレは、不思議な感じで光子先生と冷菓を眺めていた。

「では、私のイカリングを召し上がってくださいね。キャベツも用意したんですよ」

イカの事には負けず嫌いな霊子がそう言った。
確かに、イカリングを見る限り、冷菓に匹敵するほどの完成度をしていた。
香ばしい匂いがオレの所まで漂って来る。

「くっそ! 本来なら、私のトンカツもこのレベルに達していたというのに……」

アビナ先生は、霊子のイカリングを見ながら、自分のトンカツに思いを馳せていた。
まあ、気持ちは分からんでもない。

何事もなければ、サックサックの美味しいトンカツだった事だろう。
悔やまれてならない。

「まあ、アビナ先生の分もありますからどうぞ。
お腹が空くと、怒り易いですからね。
これで少しは、お腹の空きと怒りを抑えてください」

「うう、ありがとう。あんたとは、良い関係になれそうだよ」

イカリングを酒の魚に食べるアビナ先生を見ながら、霊子が居酒屋の女将になれそうだなと感じる。
客の愚痴を聞き、料理を出す姿はまさにそれっぽかった。

着物を着て、高級旅館に住んでいれば、旅館の女将にもなれるだろう。
しかし、今は水着にエプロン。
思いっ切りイメージと違う感じだ。

「なんか、コスプレして欲しいですよね。
着物を着てくれれば、高級リゾートに来た気分になります」

「もう水着を着ていますけどね。あれもコスプレの一種です」

そうつぶやく光子先生と、オレの考えは一致していた。
イカリングは、普通に美味しかった。
さすがに、イカ好きなだけはある。

 オレは、勇気を持って切り出した。

「さてと、そろそろお腹も満たされたし、ここらでお開きにしますか?」

「そうですね。粗方、料理も食べ終わりましたし……。
いえ、あなたのおにぎりだけ残っていますけど?」

「こっ、これは……。ちょっと食べられないかな。残す感じで……」

オレは、何とかゆたかのおにぎりから逃げようとするが、冷菓がそれを許さなかった。

「ダメです! 女の子が一生懸命作った料理を食べないなんてダメです! 
私、ゆたかちゃんが頑張っているの見ていますからね!」

冷菓の必死の訴えに、光子先生は驚いていた。

「まあ、お姉様。子供ができた事でこんなに変わって、昔の冷徹な姿がかけらもありませんね。私、少し感動さえもします」

「そんなに酷い扱いをした記憶はないんだけどね」

冷菓に促され、オレは決心する。別に死ぬわけじゃないんだ。
ちょっと変な味がするかもしれないが、ゆたかの味なんだ。潮の香りが、別の意味で食欲を奪い去る。果たして、美味しいのだろうか?
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