【オススメネット小説】秘められた異次元( シークレットディメンション) ムッツリスケベは異世界を救う!?

猫パンチ

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第九章 古代遺跡 続・学校編最後の試練!

第五十七話 次元相殺(ディメンションオフセット)

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 ヴォルデが退場し、オレ一人で奏子を説得しなければならない。
ヤンデレと化した奏子は、驚異の能力を持ってオレを攻撃する。
対抗するには、オレのワープ能力を更に昇華させた異次元能力を生み出す必要がある。

ヴォルデのアドバイスにより、だいたいの想像はできたが、それには、奏子を異次元空間に捕らえなければいけない。
うまくオレと奏子が近付くタイミングを計る。

攻撃を避けるだけなら、いつでも相手の力を使い、異次元空間に逃れられれば良いが、相手が一緒となるとかなり難しい。

(奏子は、オレとのキスを狙っている。
その瞬間を狙い、別の力を使って異次元空間に逃れる事が出来れば、あるいは……)

オレは、奏子が使っていた傘を確認する。
この傘は、人造精霊達の核となっていた傘であり、異次元能力を増幅させる効果を持っていた。

(これを使えば、オレ自身の能力を増幅させ、奏子と一緒に異次元空間へ逃れる事が出来るかもしれない。だが、どんな能力を増幅すれば良いんだ? 

単純に言えば、ワープ能力だろうが、それだとあの技は使えない気がする。
何か、爆発系や自然エネルギーを利用しないと……)

オレが考え事をしていると、奏子が攻撃して来た。
風を鎧の様にして、オレに体当たりして来る。攻防一体の恐るべき技だった。
この技により、オレはかなりダメージを受けているのだ。

「私との戦闘中に考え事とは、余裕なんですね。
それとも、私と結婚する気になりましたか?」

「うん、そうしようかな?」

奏子はそれを聞き、かなり慌てる。

「ええ! 本当? いや、何かの作戦ですね。
そんなあっさりと結婚を認めてくれるはずが……。本気にしても良いのかな?」

奏子は、動揺して攻撃の手を休めていた。オレが本気かどうかを確かめているようだ。
ゆっくりと警戒しながら近付いて来る。これで、しばらくは時間を稼げるぞ。
オレは、真面目な顔をして、奏子を倒す算段を考えていた。

奏子は、オレの近くまで寄って来る。
手を伸ばせば触れるギリギリ手前の位置にまで近付くが、警戒しているのか中々それ以上近付いて来ない。

「お兄様、本気?」

奏子は、オレの眼をじっと見て尋ねる。オレと目が合うと、奏子の方が照れ始めた。

「あ、私の唇が渇いているかも。キスをするなら、リップを塗った方が良いですね」

奏子は、自分の唇にリップを塗り、照れ隠しをする。
こんな可愛い状態の妹を騙すのは気が引けるが、勝負は時に非常にならなければいけないのだ。奏子は、オレを信じたのか、顔に息がかかる位置にまで近付いて来た。

「この位置まで来れば、キスを受け入れたも同然ですよね。
ちょっと触れるだけで、私の勝利ですし……」

「ごめん、奏子」

オレは、奏子がキスしようと目を閉じた瞬間の隙を狙い、ボディーブローを繰り出す。
奏子は、キスをする為に、元の身体に戻っていた。
この状態ならば、オレの攻撃も普通に決まるはずだ。

本来ならば、こんな攻撃はしたくないが、今の奏子を止めなければ、彼女の人生は無茶苦茶になってしまうだろう。
オレと結婚したとしても、本当の幸福を手にする事は出来ない。

冷静に考えられる状態になってこそ、正しい判断が出来るようになるのだ。
オレがそう思い奏子を攻撃するが、手応えがまるでなかった。
この状態は、ヴォルデと戦った時とまるで同じだ。

ヴォルデは、身体を水に変化させていたが、奏子は風に変化していた。
オレが、自分を攻撃した事を悟り、本気で怒り始める。

「お兄様、私を騙して、ボディーブローですか? 
乙女の純情を踏みにじった罪は重い。
その腕、切り落として差し上げますわ!」

奏子の身体は、削断機の様に風でオレの腕を切り刻もうとしていた。
物凄い風が起こり、オレを攻撃する。オレの腕が切られると思った瞬間、奏子はただの人間に戻っていた。オレの腕も切られずに無事だった。

「身体のコントロールが効かない? 何で? 
今の私は風になって、マモルお兄様を攻撃しているはずなのに……」

驚いて自分の身体を確認する奏子に、オレはこう告げる。

「どんなに能力を使おうとしても無駄だ! 
お前の能力は、オレの異次元空間により、維持する為のエネルギーに変換されている。
無理をすれば、ずっとこの空間に居続ける事になるぞ!」

「なるほど、マモルお兄様のせいでしたか。でも、どうやって私の能力を……」

「ふっ、オレのワープ能力は、龍脈を利用する以外に、爆発のエネルギーや風の力なんかをエネルギーにして、この空間を作り出していた。
力が無くなれば、自然と戻って来られるが、その技の応用だ。

オレは、お前の風エネルギーを利用して、お前と一緒にこの空間に来た。
この空間は、お前のエネルギーを利用して出現している。
お前が異次元能力を使おうと、それは全てオレの異次元空間の糧となってしまう。

つまり、お前の異次元能力を完全に封じる能力だ。
物理攻撃には使えないが、身体を風に変化させるお前の技なら無効化できるようだな。
この状態のお前なら、無防備と同じ。オレの攻撃で倒す事が出来る。
もう、降参するんだ!」

奏子は、オレから離れて間合いを取る。

「まさか、マモルお兄様の能力にこんな使い方が出来るとは思いませんでしたよ。
肉弾戦に持ち込まれるとは……。
しかし、この空間、必ずしも私の不利ではありませんよ。

マモルお兄様は、妹の私を傷付ける事は出来ない。
私の勝利条件は、マモルお兄様にキスをする事。

ディープキスではなくても、唇が重なれば私の勝ちです! 
長い時間を使い、マモルお兄様の隙を付けばあるいは……」

奏子は、オレの行動に警戒しつつも、オレの隙を窺っていた。
隙が一瞬でも出来ようものなら、キスの嵐が襲って来るだろう。

「くうう、隙が全然ない」

奏子は、オレとの実力があり過ぎる事を知り、唇を噛み締めていた。
確かに、身体能力ではオレの方が圧倒的に上だが、奏子の仕草が可愛くてオレも追い込まれていた。

早く決着を付けないと、感情に流されてしまいかねない。
オレは一気に間合いを詰める。
奏子は、身動き一つできないでいた。

「ひっ、お兄様が私を攻撃するわけが無いわ」

「いや、お前の為だと思うなら、オレはお前を攻撃するよ。
自分を化け物だと言って、自分自身を傷付ける奏子にはね!」

オレは、奏子の鳩尾にボディーブローを叩き込んだ。
奏子は、眠る様に気絶する。

「マモルお兄様、なぜ?」

「ふん、自分を化け物なんていう奴には、たとえオレと結婚したとしても幸福にはなれない。
まずは、自分自身を好きにならないと、誰もお前を本当に愛してくれないぜ! 

お兄ちゃんが、奏子が友達をたくさん作れるように協力してやるぜ! 
だから、もう悲しむ必要なんてない!」

奏子の意識が無くなると、オレ達のいる空間は消え、元の場所に戻って来た。
化け物の様に強かったオレの妹は、オレの腕の中で可愛く眠り込んでいた。

「ふう、何とか止める事が出来だぜ!」

オレがそう言ってお姫様抱っこで抱きかかえていると、逆に真槍ちゃんが意識を取り戻した。これで、冷菓か、真槍ちゃんにキスすれば、オレの勝利条件は満たされる。
冷菓は眠り込んでいるし、真槍ちゃんは何も知らないのか、無防備に近くへ寄って来た。

「真槍ちゃん、オレの勝利条件を果たさせてくれ! ちょっとこっちへ来て!」

「へ、別に良いけど、勝利条件って何?」

オレは、真槍ちゃんが今までの戦いを知っているものだと思い、唇に優しくキスをした。
これで、オレと奏子の戦いは、オレの勝利で幕を下ろしたのだ。
かなり良い香りが口の中を広がる。

ゆたかでは、この良い香りがあるか分からないから、良い選択だと判断した。
何も知らなかった真槍ちゃんは、一気に動揺し始める。

「なっ、何すんの? え、キスした? 唇が当たった気がしたけど……」

目が覚めたばっかりだからか、真槍ちゃんは反応が遅い。
もしも、普段ならば、彼女の鉄拳がオレの顔面をヒットしている事だろう。
オレは、警戒して間合いを取る。真槍ちゃんの目から、一筋の涙がこぼれた。

「あ、ごめん。嫌だった? 真槍ちゃんの顔が可愛いからつい……」

ここで、奏子との勝利条件がキスだったから仕方なく、と言えば殺されるだろう。
男が女の子に許可なくキスした場合、裁判沙汰になる事もあるから、みんなは気軽にキスしないでね。

ファーストキスとか、賠償額がかなり大きくなるよ! 
真槍ちゃんは、涙を拭きながら言う。

「いや、一瞬の事で驚いただけ。その、初めてだったし、キスするの」

不味い、賠償額の高くなるファーストキスだった。
何とか、裁判にならない様に機嫌を取らなければ! 

オレがそう思っていると、ゆたかも風の精霊シルフから解放され、自由に動き始めていた。おそらく奏子の気絶と同時に封印が解かれたのだろう。
そして、オレと真槍ちゃんのキス現場を目撃された。

(このままでは、いろいろ不味い。早く奴を消さなければ!)

オレが冗談交じりでそう思っていると、ゆたかがオレ達に近付いて来る。
風に抑えつけられていた為、髪がぼさぼさの寝起き状態だった。
二ートの様な風貌で、オレ達に近付いて来て、恐怖の言葉を口にする。

「あー、私もキスしたい!」

その言葉を聞き、オレに戦慄が走る。このままでは、ゆたかにキスされてしまう。
折角、真槍ちゃんとキスしたのに、ゆたかにキスされてたまるかよと……。

しかし、オレの考えとは裏腹に、ゆたかの魔の手は真槍ちゃんに向かって行った。
おそらく直感で、真槍ちゃんの方が唇の感触が気持ち良い事を悟ったのだろう。
普段なら許せないが、今のオレには助けになる事だった。
おそらく慰謝料は全てゆたかが被ってくれる事だろう。

(ナイス、ゆたか!)

ゆたかは、真槍ちゃんにキスをし、陶酔する。
それほど気持ち良かったようだ。

「ちょっと、何にすんのよ! 女の子同士なのよ? この変態!」

「甘い! 何でこんなに良い香りなの? ねえ、もう一回しても良い?」

ゆたかは危ない階段を上り始めていた。
真槍ちゃんは、優しくゆたかを諭す。

「ダメよ! あんた、もうエロい事は禁止だよ! 
男の子に人気が取れるから良いと思っているだろうけど、今のあんたじゃあ、誰も近付いて来ないよ。

いや、危険過ぎて近付けない! 
ちょっとくらい女の子らしい謹みを持ちなさいよ」

「えー、噛ませの真槍が何か言っている」

「誰が噛ませよ! 
エロい感じの女の子なんて、バカな男とかが最初の内は好きとか言うけど、結局は、清楚系とかに取られるのよ。

実際、エロい子は、結婚対象外にされるからね。
可愛いから、身体の関係は持ちたいけど、結婚には俺だけを愛してくれる子が良いとかほざいているから!」

「うわ、最低だね!」

「そう、少しはエロを控えなさい!」

こうやって、のどかにゆたかを説得する真槍ちゃんだったが、オレ達に新たな脅威が近付いていた。
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