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第十章 引き離されたオレと冷菓!
第六十六話 謎解き!
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オレ達の間に緊張が走る。
お母さんが昼ドラの影響で不倫を疑い始めた事により、興奮し始めていた。
もしもチャイムを押した人物が父親なら、何が起こっても不思議ではない。
チャイムが二回鳴っても、誰も出て来ないので、ドアを開ける音がする。
鍵はかかっていないので、何者かがドアを開けた。
「あ、開いている」
その瞬間、母親が持っていた包丁がダーツの様にドアに突き刺さった。
ドアを開けた人物を勝手に想像し、父親だと思い込んでいたようだ。
更に、衝動でその人物にトドメを刺しに行く。
もう一つの隠し武器、ケーキ取りナイフを取り出す。
本来は、刃の無いケーキ取りナイフが、忍者のクナイの様に人を殺傷できるだけの威力を誇っていた。
あれで力いっぱい切り付けられたら、最悪死ぬかもしれないと思わせる。
「あなた、覚悟!」
母親は、相手の喉元を正確に狙い澄ましていた。
相手の顔を確認し、夜叉の様な顔が元に戻る。
喉元に当たる寸前で止め、笑顔の表情を見せる。
切り付けていた相手は、オレの父親ではなく、オレと同い年の男の子だった。
姫野剣冴がそこに立っていた。
「あら、マモル君のお友達? 入って、入って。丁度ケーキもあるのよ!」
オレの母親は、突然高い声になり、剣冴君と霊子ちゃんをリビングへ案内する。
「お邪魔します」
霊子ちゃんは、飛んで来た包丁や、ケーキ取りナイフ、母親の表情などに驚いているが、剣冴君は普通に対応する。
こういった修羅場を難無く切り抜けてこそ、美少女アイドルや俳優業はやっていけるのだ。
いつ何時、豹変したファンや役者に殺されかけるか分からない。
普通に対応できなければ、逆上した犯人に襲われる危険があるのだ。
そこを冷静に切り抜けてこそ、人気アイドルや俳優を続けて行く事が出来る。
当然、真槍ちゃんもそのスキルを身に付けていた。普通に、剣冴君に挨拶する。
「あら、剣冴じゃない。アタシ達の方が先に着いちゃったみたいね」
真槍ちゃんと剣冴君の会話に、オレの母親は尋ねる。
一気に和やかなムードになった。
ドアに刺さった包丁だけが、ここが一瞬戦場になった事を知っている。
なぜか包丁だけは不自然に突き刺さったままの状態になっていた。
誰一人として包丁を抜こうとする勇気のあるも者はいない。
オレ達がいない時に、母さんが思い出したように包丁を回収する事だろう。
オレ以外は、それに気にする事無く会話は続けられる。
一番年上の真槍ちゃんが、オレの母親に事情を話し始めた。
「実は、アタシと剣冴は兄弟なんですよ。そっちは、友達の磯辺霊子ちゃん。
本日は、ちょっと緊急事態が発生したので、お知らせに来たんです。
できれば、協力していただけたらなと……」
「何々? まさか、うちの主人がセクハラ行為をしちゃったとか、それとも何か御迷惑をおかけしたとか?」
「まあ、セクハラ行為はされかけましたけど、その事ではなくて……。
マモル君の妹の奏子ちゃんが茨木童子とかいう奴に攫われたんです。
友達の光宮冷菓も捕われてしまって、何とかお力を貸していただけないかなと……。
警察では、対応してくれるかも分かりませんし、場所が異次元ですので……」
そう、オレはデートという単語に踊らされ、真槍ちゃんが父親とデートする為に帰って来たと勘違いしたが、本来は真面目な内容だった。
冷菓と奏子を助ける為に、協力者を探していたのだ。
姫野剣冴と磯部霊子が先にオレの家を訪問する事になっていたが、オレと真槍ちゃんが異次元から帰還する先を家の近くにしていた為に、オレ達の方が先に訪問する形になったのだ。
まあ、父親が危険に遭遇した以外は、大した問題ではない。
「あらあら大変! 私達、こう見えても異次元を研究している科学者なんです。
その関係もあって、マモル君を引き取って育てているんですよ。
あ、この事は、マモル君には内緒に……」
オレの母親は、オレを見て口を紡ぐ。
急いで口を閉じたのだろうが、もう知っているし、今さら黙っても意味が無い。
もう正直に言ってもらった方がありがたかった。
「大丈夫だよ、母さん。事情は、だいたい奏子と父親から聞いている。
異次元世界に来た時点で、それとなく教師から教えられていたし……。
正直、あんまり本気にはしてなかったけど……」
「そう、知っているのね。でも、安心して。
マモル君のお母さんはちゃんと生きているから……。
ちょっと高齢で、子供の世話は酷だから、私と弘毅さんが代理で育てていただけだから……」
「うん、分かっているよ」
「そして、私達は、あなたを本当の息子の様に愛しているわ!
私達の異次元能力もすぐに覚えて使えるようになっていたし、愛情を持って育てたわ!」
「分かっているよ、心配しないで。オレは、母さんと父さんに感謝している。
それよりも問題なのは、奏子なんだ。かなり強い敵に捕まっちゃって。
それに、オレの妻だったという光宮冷菓も一緒に捕まっちゃって。
どうか、助ける為に力を貸して欲しい!」
オレの母さんは、思い出す様に語る。
「そう、冷菓さんに会ったのね。あなたと彼女が夫婦だったのは本当よ。
短い期間だったけど、私と本当の姉妹の様に仲良くなっていたわ。
まさか、異次元調査に行って、行方不明になるとは思わなかった。
私と主人は、マモル君と奏子を育てるので精一杯だったし、妹の光宮光子さんに任せる事にしていたの。
七年も経って死んだと諦めていたけど、無事で良かったわ!」
オレの母さんは、冷菓の事を思って涙を流す。
それほどまでに気の合った仲の様だ。
感情的になるオレの母親に、真槍ちゃんはこう警告する。
「時間がありません。
冷菓も怪我をしていましたし、奏子ちゃんの体力もかなり限界の様でした。
早めに助け出さないと、いろいろ危険かもしれません。
なのに、敵の居場所も分からず、戦力も勝てるかどうか分からないくらいなんです。
少しでも味方が欲しい。それが今の状況なんです」
オレの母さんは、冷静な表情で冷酷な事を言う。
「そうですか。でも、これだけは覚悟していてください。
女性が凶悪犯に捕まった場合、レイプされる可能性は非常に高いです。
レイプという行為は、女性に肉体的苦痛と精神的苦痛を与え、従わせ易くするもっとも簡単な行為ですからね。
子供が出来た場合にも上手く利用できますし、仮に流産したとしてもうまい具合に利用できます。
全ての罪を女性に押し付け、さも彼女達が子供を殺した様に見せ掛けるのです。
女性が自分の子供を育てられなかった場合、かなりの罪悪感が残りますからね。
そこを利用しているわけです。
もしも、彼女達が子供を宿していた場合、私が責任を持って育てます。
だから、彼女達を攻めずに優しく接してあげてください。
悪いのは、全て凶悪犯のせいですからね。
でも、私の娘の奏子も、友人の冷菓も、一筋縄ではいきませんからね。
かならず脱出方法や、対抗策を見付け出すでしょう。
ただ、最悪のケースも考慮しておいてください。
敵から助け出す時に、動揺していてはどうにもなりませんからね。
むしろ、更なる危険を招く可能性もあります。それだけは覚悟していてください」
オレの母さんは、コーヒーを口に含んで言葉を止めた。
確かに、無事でいて欲しいのが理想だが、凶悪犯がオレの事を考えてくれるはずもない。たとえ冷菓達が酷い状況に陥っていたとしても、冷静に対処しなければならないのだ。
救出に失敗し、オレ達まで敵に捕まる様な事があるなら、真槍ちゃんやゆたかも危険にさらされる。
それだけは避けなければいけない。
慎重に行動する必要があるのだ。
オレ達は、その事を悟り、自分の感情を抑えるように努力する。
心の奥底では、今すぐにでも冷菓と奏子を助けに行きたかったが、それは危険な行為だと悟る。
確実に、敵の情報を集め、対策を講じなければならない。
冷酷なほどの冷静さが必要なのだ。
オレの母さんは、不敵に笑い、こう語り出す。
「ふふ、中々良い顔になりましたね。
もしもあなた達が冷静さ欠いて、敵のアジトに乗り込んでいた場合は、本当にそうなっていたかもしれませんね。
でも、安心しなさい。
一番スタイルの良い真槍ちゃんが連れ去られなかったという事は、敵の目的は性的な行為じゃありませんからね。
それよりも、冷菓の怪我の方が気になります。
敵が適切な治療をしてくれていれば良いのですが……」
真槍ちゃんは、不安そうな表情で言う。
「これからどうしましょうか?
アタシ達では、敵のアジトを見付ける事もできるかどうか分かりません。
教師達も捕まっているようですし……」
「まずは、敵の情報を集めてください。
私も、知り合いに連絡して、戦力を可能な限り集めます。
ただ、学園をその援軍にしようと考えていたので、戦力を探すだけでもかなりの時間が必要になります。
戦力が集まり次第、あなた達と連絡を取り合って、必要な時は応援に駆け付けます。
あなた達は、調査に専念して、冷菓達の居場所を突き止めてください。
マモル君、危険が付き纏うと思うけど、彼女達を頼んだわよ!」
オレの母さんは、オレの眼を見てそう言った。
その眼差しには、真剣さが込められていた。
オレが、冷菓も奏子も、真槍ちゃんも守らなければいけないと訴える目だ。
「ああ、みんな必ず無事に連れ帰って見せる。
その時は、みんなに母さんを紹介するよ。パーティーの準備をして待っていてくれ!」
「その言葉が聞きたかったわ。今日は、みんなで泊まって行きなさい。
真槍ちゃんと霊子ちゃんは、奏子の部屋を……。
剣冴君は、マモルの部屋で一緒に寝なさい。
厳しい戦いになるわ。今日くらいは、ゆっくり休んで行きなさい」
「マモル君のお母様、ありがとうございます! お言葉に甘えさせてもらいます!」
真槍ちゃんは、みんなを代表して丁寧に挨拶する。
話し合いが終わり、各自寝室へ入って行った。
すると、いつの間にかオレの父親が家に帰って来ており、母さんと話し出す。
日々の鍛錬により、自宅へ音も無く侵入する事が出来たのだ。
「オレの息子は、立派に育ってくれたな! 父親として嬉しい限りだ!」
「ええ、そうですね。それより、真槍ちゃんとは、どんな関係なんですか?
セクハラ行為をしたって聞きましたけど……」
オレの父親は、焦りながら言う。
「違う! 何もしていない! ちょっと誤解する様な事を言っただけだ!」
母親は、納得するような表情をする。
こんなおっさんに女子高生が関係あるわけないか、と思い始めていた。
すると、どこからともなく真槍ちゃんの声が聞こえて来た。
「いやーん、あの夜にあんなに愛し合った事を忘れちゃったの? 真槍、寂しい!」
「何ですって?」
母さんはキレ出し、ヴォルデをボコボコにしていた。
かつてのホラー系のヴォルデがリメイクされていた。
それは、磯辺霊子がドッペる真槍を回収するまで続けられた。
ドッペる真槍は、人工知能に問題があり、修復する必要があった。
本当の真槍ちゃんとの戦いにより、人工知能が破損したようだ。
元々それほど時間をかけている部分じゃない為、誤作動が起きやすい。
アンドロイドを運ぶ鞄に入れて、担いで運んでいたが、荷物が重いのでしばらくリビングに置いておいたのだ。
それが会話に合わせて語り始めただけだった。
そのせいで、かつてのヴォルデが甦ったのだ。
オレの父親は、ボロボロになりながらも何とか生きていた。
命懸けで、母親を説得してギリギリ納得してもらえた。
お母さんが昼ドラの影響で不倫を疑い始めた事により、興奮し始めていた。
もしもチャイムを押した人物が父親なら、何が起こっても不思議ではない。
チャイムが二回鳴っても、誰も出て来ないので、ドアを開ける音がする。
鍵はかかっていないので、何者かがドアを開けた。
「あ、開いている」
その瞬間、母親が持っていた包丁がダーツの様にドアに突き刺さった。
ドアを開けた人物を勝手に想像し、父親だと思い込んでいたようだ。
更に、衝動でその人物にトドメを刺しに行く。
もう一つの隠し武器、ケーキ取りナイフを取り出す。
本来は、刃の無いケーキ取りナイフが、忍者のクナイの様に人を殺傷できるだけの威力を誇っていた。
あれで力いっぱい切り付けられたら、最悪死ぬかもしれないと思わせる。
「あなた、覚悟!」
母親は、相手の喉元を正確に狙い澄ましていた。
相手の顔を確認し、夜叉の様な顔が元に戻る。
喉元に当たる寸前で止め、笑顔の表情を見せる。
切り付けていた相手は、オレの父親ではなく、オレと同い年の男の子だった。
姫野剣冴がそこに立っていた。
「あら、マモル君のお友達? 入って、入って。丁度ケーキもあるのよ!」
オレの母親は、突然高い声になり、剣冴君と霊子ちゃんをリビングへ案内する。
「お邪魔します」
霊子ちゃんは、飛んで来た包丁や、ケーキ取りナイフ、母親の表情などに驚いているが、剣冴君は普通に対応する。
こういった修羅場を難無く切り抜けてこそ、美少女アイドルや俳優業はやっていけるのだ。
いつ何時、豹変したファンや役者に殺されかけるか分からない。
普通に対応できなければ、逆上した犯人に襲われる危険があるのだ。
そこを冷静に切り抜けてこそ、人気アイドルや俳優を続けて行く事が出来る。
当然、真槍ちゃんもそのスキルを身に付けていた。普通に、剣冴君に挨拶する。
「あら、剣冴じゃない。アタシ達の方が先に着いちゃったみたいね」
真槍ちゃんと剣冴君の会話に、オレの母親は尋ねる。
一気に和やかなムードになった。
ドアに刺さった包丁だけが、ここが一瞬戦場になった事を知っている。
なぜか包丁だけは不自然に突き刺さったままの状態になっていた。
誰一人として包丁を抜こうとする勇気のあるも者はいない。
オレ達がいない時に、母さんが思い出したように包丁を回収する事だろう。
オレ以外は、それに気にする事無く会話は続けられる。
一番年上の真槍ちゃんが、オレの母親に事情を話し始めた。
「実は、アタシと剣冴は兄弟なんですよ。そっちは、友達の磯辺霊子ちゃん。
本日は、ちょっと緊急事態が発生したので、お知らせに来たんです。
できれば、協力していただけたらなと……」
「何々? まさか、うちの主人がセクハラ行為をしちゃったとか、それとも何か御迷惑をおかけしたとか?」
「まあ、セクハラ行為はされかけましたけど、その事ではなくて……。
マモル君の妹の奏子ちゃんが茨木童子とかいう奴に攫われたんです。
友達の光宮冷菓も捕われてしまって、何とかお力を貸していただけないかなと……。
警察では、対応してくれるかも分かりませんし、場所が異次元ですので……」
そう、オレはデートという単語に踊らされ、真槍ちゃんが父親とデートする為に帰って来たと勘違いしたが、本来は真面目な内容だった。
冷菓と奏子を助ける為に、協力者を探していたのだ。
姫野剣冴と磯部霊子が先にオレの家を訪問する事になっていたが、オレと真槍ちゃんが異次元から帰還する先を家の近くにしていた為に、オレ達の方が先に訪問する形になったのだ。
まあ、父親が危険に遭遇した以外は、大した問題ではない。
「あらあら大変! 私達、こう見えても異次元を研究している科学者なんです。
その関係もあって、マモル君を引き取って育てているんですよ。
あ、この事は、マモル君には内緒に……」
オレの母親は、オレを見て口を紡ぐ。
急いで口を閉じたのだろうが、もう知っているし、今さら黙っても意味が無い。
もう正直に言ってもらった方がありがたかった。
「大丈夫だよ、母さん。事情は、だいたい奏子と父親から聞いている。
異次元世界に来た時点で、それとなく教師から教えられていたし……。
正直、あんまり本気にはしてなかったけど……」
「そう、知っているのね。でも、安心して。
マモル君のお母さんはちゃんと生きているから……。
ちょっと高齢で、子供の世話は酷だから、私と弘毅さんが代理で育てていただけだから……」
「うん、分かっているよ」
「そして、私達は、あなたを本当の息子の様に愛しているわ!
私達の異次元能力もすぐに覚えて使えるようになっていたし、愛情を持って育てたわ!」
「分かっているよ、心配しないで。オレは、母さんと父さんに感謝している。
それよりも問題なのは、奏子なんだ。かなり強い敵に捕まっちゃって。
それに、オレの妻だったという光宮冷菓も一緒に捕まっちゃって。
どうか、助ける為に力を貸して欲しい!」
オレの母さんは、思い出す様に語る。
「そう、冷菓さんに会ったのね。あなたと彼女が夫婦だったのは本当よ。
短い期間だったけど、私と本当の姉妹の様に仲良くなっていたわ。
まさか、異次元調査に行って、行方不明になるとは思わなかった。
私と主人は、マモル君と奏子を育てるので精一杯だったし、妹の光宮光子さんに任せる事にしていたの。
七年も経って死んだと諦めていたけど、無事で良かったわ!」
オレの母さんは、冷菓の事を思って涙を流す。
それほどまでに気の合った仲の様だ。
感情的になるオレの母親に、真槍ちゃんはこう警告する。
「時間がありません。
冷菓も怪我をしていましたし、奏子ちゃんの体力もかなり限界の様でした。
早めに助け出さないと、いろいろ危険かもしれません。
なのに、敵の居場所も分からず、戦力も勝てるかどうか分からないくらいなんです。
少しでも味方が欲しい。それが今の状況なんです」
オレの母さんは、冷静な表情で冷酷な事を言う。
「そうですか。でも、これだけは覚悟していてください。
女性が凶悪犯に捕まった場合、レイプされる可能性は非常に高いです。
レイプという行為は、女性に肉体的苦痛と精神的苦痛を与え、従わせ易くするもっとも簡単な行為ですからね。
子供が出来た場合にも上手く利用できますし、仮に流産したとしてもうまい具合に利用できます。
全ての罪を女性に押し付け、さも彼女達が子供を殺した様に見せ掛けるのです。
女性が自分の子供を育てられなかった場合、かなりの罪悪感が残りますからね。
そこを利用しているわけです。
もしも、彼女達が子供を宿していた場合、私が責任を持って育てます。
だから、彼女達を攻めずに優しく接してあげてください。
悪いのは、全て凶悪犯のせいですからね。
でも、私の娘の奏子も、友人の冷菓も、一筋縄ではいきませんからね。
かならず脱出方法や、対抗策を見付け出すでしょう。
ただ、最悪のケースも考慮しておいてください。
敵から助け出す時に、動揺していてはどうにもなりませんからね。
むしろ、更なる危険を招く可能性もあります。それだけは覚悟していてください」
オレの母さんは、コーヒーを口に含んで言葉を止めた。
確かに、無事でいて欲しいのが理想だが、凶悪犯がオレの事を考えてくれるはずもない。たとえ冷菓達が酷い状況に陥っていたとしても、冷静に対処しなければならないのだ。
救出に失敗し、オレ達まで敵に捕まる様な事があるなら、真槍ちゃんやゆたかも危険にさらされる。
それだけは避けなければいけない。
慎重に行動する必要があるのだ。
オレ達は、その事を悟り、自分の感情を抑えるように努力する。
心の奥底では、今すぐにでも冷菓と奏子を助けに行きたかったが、それは危険な行為だと悟る。
確実に、敵の情報を集め、対策を講じなければならない。
冷酷なほどの冷静さが必要なのだ。
オレの母さんは、不敵に笑い、こう語り出す。
「ふふ、中々良い顔になりましたね。
もしもあなた達が冷静さ欠いて、敵のアジトに乗り込んでいた場合は、本当にそうなっていたかもしれませんね。
でも、安心しなさい。
一番スタイルの良い真槍ちゃんが連れ去られなかったという事は、敵の目的は性的な行為じゃありませんからね。
それよりも、冷菓の怪我の方が気になります。
敵が適切な治療をしてくれていれば良いのですが……」
真槍ちゃんは、不安そうな表情で言う。
「これからどうしましょうか?
アタシ達では、敵のアジトを見付ける事もできるかどうか分かりません。
教師達も捕まっているようですし……」
「まずは、敵の情報を集めてください。
私も、知り合いに連絡して、戦力を可能な限り集めます。
ただ、学園をその援軍にしようと考えていたので、戦力を探すだけでもかなりの時間が必要になります。
戦力が集まり次第、あなた達と連絡を取り合って、必要な時は応援に駆け付けます。
あなた達は、調査に専念して、冷菓達の居場所を突き止めてください。
マモル君、危険が付き纏うと思うけど、彼女達を頼んだわよ!」
オレの母さんは、オレの眼を見てそう言った。
その眼差しには、真剣さが込められていた。
オレが、冷菓も奏子も、真槍ちゃんも守らなければいけないと訴える目だ。
「ああ、みんな必ず無事に連れ帰って見せる。
その時は、みんなに母さんを紹介するよ。パーティーの準備をして待っていてくれ!」
「その言葉が聞きたかったわ。今日は、みんなで泊まって行きなさい。
真槍ちゃんと霊子ちゃんは、奏子の部屋を……。
剣冴君は、マモルの部屋で一緒に寝なさい。
厳しい戦いになるわ。今日くらいは、ゆっくり休んで行きなさい」
「マモル君のお母様、ありがとうございます! お言葉に甘えさせてもらいます!」
真槍ちゃんは、みんなを代表して丁寧に挨拶する。
話し合いが終わり、各自寝室へ入って行った。
すると、いつの間にかオレの父親が家に帰って来ており、母さんと話し出す。
日々の鍛錬により、自宅へ音も無く侵入する事が出来たのだ。
「オレの息子は、立派に育ってくれたな! 父親として嬉しい限りだ!」
「ええ、そうですね。それより、真槍ちゃんとは、どんな関係なんですか?
セクハラ行為をしたって聞きましたけど……」
オレの父親は、焦りながら言う。
「違う! 何もしていない! ちょっと誤解する様な事を言っただけだ!」
母親は、納得するような表情をする。
こんなおっさんに女子高生が関係あるわけないか、と思い始めていた。
すると、どこからともなく真槍ちゃんの声が聞こえて来た。
「いやーん、あの夜にあんなに愛し合った事を忘れちゃったの? 真槍、寂しい!」
「何ですって?」
母さんはキレ出し、ヴォルデをボコボコにしていた。
かつてのホラー系のヴォルデがリメイクされていた。
それは、磯辺霊子がドッペる真槍を回収するまで続けられた。
ドッペる真槍は、人工知能に問題があり、修復する必要があった。
本当の真槍ちゃんとの戦いにより、人工知能が破損したようだ。
元々それほど時間をかけている部分じゃない為、誤作動が起きやすい。
アンドロイドを運ぶ鞄に入れて、担いで運んでいたが、荷物が重いのでしばらくリビングに置いておいたのだ。
それが会話に合わせて語り始めただけだった。
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