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第十一章 金(ゴールド)と星(ランジェリー)
第七十二話 金熊童子の盗む理由
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(注意・ここは、金熊童子の視点で話を書いています。
まあ、犯罪者の経歴なんで、多少は重い話です)
金熊童子は、犯行予告の場所と時刻を確認する。
今まで失敗した事は無いが、念の為に一番仲が良く、犯行動機も自分に似た星熊童子に連絡する。星熊童子は、必要に応じて、四天王のリーダーである熊童子に連絡する事だろう。
金熊童子は、相当に星熊童子を信頼していた。
仮に、自分が失敗したとしても、彼女が助け出してくれると……。
そして、自分の犯行が失敗した事は、仲間内以外では一件も無かった。
それで、少なからず油断はしている。
しかし、圧倒的に警察を封じ込めて来た自分だ。
ピンチになろうとも彼女の助けがあれば事が足りるだろう。
「よし、そろそろパフォーマンスの時間だ!」
金熊童子は、犯行時刻になった事を自分の時計で確認し、銀行付近に近付く。
彼自身は、孤児院で育てられており、悲惨な境遇に耐えていた。
それだけなら彼が泥棒(強盗に近いけど)に手を染める事は無かった。
昔の彼は、自分の能力を信じて、誰かの役に立つ人間になりたいと考える普通の子供だ。その考えは変わらないが、悪に手を染める様になったのは、ある小さな事件が原因だった。事件と言っても、刑事事件になる様な大きな事件ではない。
誰も知らず、彼だけが記憶の中に留めているような小さな事件だ。
それでも、彼の人生経験の中では、人生を変えるほどの大事件だったのだ。
ほとんどの養育施設は、金を稼ぐのが目的であり、子供の部屋の掃除や日々の食事などを機械的に世話してくれる。
だが、子供の精神的、道徳的なケアは、中々してもらえない。
大企業の援助という形で資金が提供されている以上、そうした世話が精一杯だった。
その為、多くの子供は本当の笑顔をする事が出来ず、機械的に笑うしかない。
職員に注意され、仕方なく従う。感謝も言葉だけは言うが、感情が籠っていない。
孤独な中で生活をし、必要な教育を受けているが、その事を幼い彼らは理解できるはずもない。時には、虐待され、仲間達が酷い怪我を負う。
彼もその一人だったが、ある人物の登場によって、人間としての感情と愛情を知る事になった。役職としては、ただの育児施設の若い女性職員という肩書だったが、彼女は子供達の世話と精神的なケアをしてくれていた。
正しい事をしたら誉め、間違った事をしたら優しく叱ってくれる。
金熊童子は、彼女の事をお母さんと呼んでいた。それは、他の子供達も同じだろう。
そういう幸福な日々が、何年間か続いた。
彼らにとっては、まさに幸福な一時であった事だろう。
彼らの中にいつしか、人間としての感情と本当の笑顔をし始めていた。
ただ彼女の喜ぶ顔が見たい。その一心で、子供達は競う様に正しい事や喜ぶ事をし始めた。
中には、施設の周りの掃除を自主的にする子供も出始め、地域社会全体が微笑ましい空気に包まれていた。しかし、彼女は美人過ぎた。
懸命に働く女性は、誰の目から見ても美しく映る。
仕事が忙しいから容姿を気にしている余裕などないにもかかわらず、光り輝いて見えるのだ。そのせいで、大企業の社長の息子に目を付けられてしまう。
彼が、彼女を愛し、寿退社というのなら、金熊童子も他の子供達も涙を見せるが、彼女の幸せを喜んだ事だろう。
しかし、大企業の社長の息子は、彼女を性的な目で見ていただけだった。
彼女と結婚する気も、彼女を養う気も、責任を取る気さえも全く無かった。
彼女の帰宅ルートを調べ、夜晩い時間帯に彼女を襲ったのだ。
彼女はレイプされ、後日妊娠が発覚した。
犯人は、紛れも無く大企業の社長の息子だったのだ。
彼女は、警察に訴え、強姦事件になった。
しかし、待っていた結果は、彼女の退職という事で終わりを迎えた。
彼女は良く知りもしない男と交際し、挙句の果てに妊娠。
自分の子供を養う費用が無いので、大企業の社長の息子を訴え、養育費を奪おうとしたという。
大企業から資金を受けていた育児施設は彼女の素行を丁稚上げ、男遊びの激しい女性という事にした。警察は、その情報を鵜呑みにし、彼女の訴えを取り下げた。
結果、彼女だけが子供を抱えて退職したのだ。もうこの街にはいられない。
金熊童子が彼女達を養える年齢だったら求婚していたが、金熊童子は当時十二歳。
とても結婚をできる年齢ではなかった。金熊童子と彼女が最後に会った時、彼女は思わず涙を流してしまった。金熊童子は、その姿を一生忘れる事は無い。
それでも、彼は正しい方法で人の役に立つ人物になろうという考えは変わらなかった。
彼女ともう会う機会も無く、どこへ行ったかも分からないが、金熊童子は彼女が幸せに生きる事を願っていた。
そして、月日は流れ、金熊童子と他の子供達は独り立ちした。
悲しい事件を経験したが、彼女の影響により子供達はみんな立派に成長していたのだ。
一人一人の胸に、彼女の様な人と自分達の様な弱い人を助けたいという想いを抱いていた。
金熊童子は、巨大な身体を活かし、引っ越し業などの運搬業を営んでいた。
最初は、会社に雇ってもらい、数年して会社を設立する。
経営者としては、至って普通の出発だ。
自分の部下もいるが、自分でも尽力して働く。その姿勢に部下も尊敬の念を抱いていた。そして、稼いだお金のいくらかを育児施設に寄付していた。
彼は、これが正しい方法だと考え始めていた。そんな時、星熊童子と出会う。
彼女もまた孤児院で育った女性だった。
スタイルも良く、魅力的な女性だったが、集団レイプされ道端に捨てられていた。
幸い、酷い怪我は無いが、金熊童子が育児施設の女性を思い出すには、十分過ぎる状況だ。
「どうしたんですか? 誰かに襲われましたか?」
「ちょっと集団レイプされただけです。放っといてください、いつもの事ですから……」
金熊童子は、星熊童子を助けたいと思うが、彼女は強がってそれを拒否する。
警察でもないのに、男が女を助けようとするなど、下心があると思っているのだろう。
彼女は、去りながらも涙を流す。その状況は、育児施設の職員と重なる。
金熊童子は、星熊童子を助けたいと思う。
せめて、乱れた服を直すのと身体を洗う為に、部屋を貸すくらいは手助けできる。
そう思って彼女に近付く。
「おい、服を着替えるのと、シャワーを使う事くらいはできるぞ!」
「放っておいてください!
そう言って優しくして部屋に呼び寄せ、また私を襲う気でしょう。
男なんて、みんな一緒ですよ……」
星熊童子は暴言を吐くが、どこかを殴られたのだろう。
次第に、声が小さくなり、金熊童子の眼の前で気絶した。
金熊童子は、彼女を自分の家に運び、身体の手当てをする。
従業員の奥さんの助けを借り、彼女の身体を洗い、服を着替えさせる。
ベッドに寝かし、傷の手当てをした。警察にも通報したが、誰も相手にしてくれなかった。とりあえず彼女が目覚めなければ、状況を説明する事も出来ない。
手伝ってくれた女性が言うには、彼女の傷は多く、ほとんどが打撲痕らしい。
相当酷い扱いを受けていたそうだ。数時間して、彼女は目を覚ました。
自分の状況を理解し、金熊童子と話し始める。
「どうですか、私の身体を堪能しましたか?」
「いや、俺は君をここへ運んだだけだ。
打撲痕は酷いらしいが、病院に連れて行くほどの怪我は見当たらなかったのでね。
一応、知り合いの女性を呼んで、身体を洗ってもらい、服を着替えさせてもらった。
看護士の経験があるらしいから、怪我の程度も調べてもらった。
打撲痕はあるが、命に別状は無いらしい。良かったな。
ただ、警察はまともに取り合ってくれなかった。
ただの喧嘩という事で、処理されてしまった。
助けになれなくてすまない!」
「そうでしょうね。私を襲った連中は、大企業の幹部関係者ですからね。
警察も所詮は組織、資金源となる大企業との関係を重要視するでしょうからね。
もう慣れていますよ。さて、あなたもこんな阿婆擦れには興味ないでしょう?
早々に帰りますよ。助けてくれた事には、感謝しています。では、失礼します!」
星熊童子は、部屋を出て行こうとする。
怪我をしているのに、痛がっていない振りをする。
「待ってくれ! もう少しここで休んでいけ」
「はあ? 厄介事はごめんでしょう。それとも、私の身体に興味がありますか? 抱きたいの?」
「君を助けたい! 俺にできる事なら何でもする。偽善だと言われても良い!」
「はあ、じゃあ、結婚でもしましょうか? 私、行くあても、住む家もありませんから!」
「分かった。結婚を前提にお付き合いしよう。
君の当面の世話は、俺がする」
金熊童子は、真剣に交際を申し込むが、星熊童子は狂った様に笑う。
冗談を言っただけの様だ。それを本気にした彼を笑ったのだろう。
「バッカじゃないの? 私は、もう女としての資格がありませんよ!
ほら、これを見なさいよ!」
星熊童子は、シャツをめくり、自分のお腹を見せる。そこには、殴られた痕があった。
「私はね、三回妊娠しているのよ。そして、同じ男達に殴られて、流産しているの。
私が幹部の子供を孕まない様にね。私は、もう子供を産めない身体なのですよ。
三回目の流産の時に医者にそう告げられたわ。
まあ、その診断も嘘かも知れないのだけれどね。これで、分かったでしょう。
私と結婚しても、あなたのメリットなんてないのよ!」
「俺がその大企業を潰す。そうしたら、お前は安心できるんだろう?
復讐したいなら、俺がしてやる!」
「あなた、何言っているの?」
星熊童子は、金熊童子の発言に驚く。
初めて、真剣な顔になった。
「私の事を気遣ってくれるのは嬉しいけど、復讐が私の夢じゃないのよ。
そんな小さな女じゃないの。私の夢は、私みたいな孤児の子供を助ける事だから。
ただそれだけなの。復讐なんかじゃないわ……」
「分かっている。俺の夢も同じだ。だが、お前をそんな目に遭わせた奴らは許せない!」
金熊童子は、大企業幹部の銀行を調べ上げ、銀行強盗を鮮やかに行った。
いくら警察と言っても、一つの都市だけで機能しているような警察だ。
警備の人数は少なく、大した武力も無い。
鍛え上げられた金熊童子の身体には、傷一つ付ける事が出来なかった。
強盗に成功し、この街から少し離れた場所に居住にすると、茨木童子に出会う。
金熊童子の巨漢と、大胆過ぎる勇気を買われ、彼らは仲間になった。
そして、異次元の能力を訓練され、誰にも負けない能力を手に入れた。
星熊童子にも泥棒の才能があり、異次元の能力を訓練された後は、金熊童子にも負けない能力を手に入れていた。二人は、同じ目的を持ち、犯行を重ねて行った。
最初の内は、養育施設に金を寄付していた。
しかし、職員達の私腹が肥えるだけという事を知り、別の方法を考案する。
今回は、大手の中央銀行だ。警官も多いだろうし、警備も厳重だろう。
そう思って作業を開始するが、手応えがまるで無い。
もうすでに、何者かに侵入された後の様だ。熊童子が犯行に及んだのだろうか?
しかし、犯行予告はしていない。
警察官が眠らされている所を見ると、警察の罠でもない。
得体の知れない何者かが、金熊童子よりも先に銀行を襲ったのだ。
彼が銀行の巨大金庫の前まで来ると、可愛らしい少女が一人座っている。
物騒な槍を手にし、彼を待ち構えていた。
「ハーイ、待っていたわよ。金熊童子!」
少女は、不敵な笑みで彼を見る。
七天童子特有の強さを彼女も所有しているようだ。
まあ、犯罪者の経歴なんで、多少は重い話です)
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金熊童子は、相当に星熊童子を信頼していた。
仮に、自分が失敗したとしても、彼女が助け出してくれると……。
そして、自分の犯行が失敗した事は、仲間内以外では一件も無かった。
それで、少なからず油断はしている。
しかし、圧倒的に警察を封じ込めて来た自分だ。
ピンチになろうとも彼女の助けがあれば事が足りるだろう。
「よし、そろそろパフォーマンスの時間だ!」
金熊童子は、犯行時刻になった事を自分の時計で確認し、銀行付近に近付く。
彼自身は、孤児院で育てられており、悲惨な境遇に耐えていた。
それだけなら彼が泥棒(強盗に近いけど)に手を染める事は無かった。
昔の彼は、自分の能力を信じて、誰かの役に立つ人間になりたいと考える普通の子供だ。その考えは変わらないが、悪に手を染める様になったのは、ある小さな事件が原因だった。事件と言っても、刑事事件になる様な大きな事件ではない。
誰も知らず、彼だけが記憶の中に留めているような小さな事件だ。
それでも、彼の人生経験の中では、人生を変えるほどの大事件だったのだ。
ほとんどの養育施設は、金を稼ぐのが目的であり、子供の部屋の掃除や日々の食事などを機械的に世話してくれる。
だが、子供の精神的、道徳的なケアは、中々してもらえない。
大企業の援助という形で資金が提供されている以上、そうした世話が精一杯だった。
その為、多くの子供は本当の笑顔をする事が出来ず、機械的に笑うしかない。
職員に注意され、仕方なく従う。感謝も言葉だけは言うが、感情が籠っていない。
孤独な中で生活をし、必要な教育を受けているが、その事を幼い彼らは理解できるはずもない。時には、虐待され、仲間達が酷い怪我を負う。
彼もその一人だったが、ある人物の登場によって、人間としての感情と愛情を知る事になった。役職としては、ただの育児施設の若い女性職員という肩書だったが、彼女は子供達の世話と精神的なケアをしてくれていた。
正しい事をしたら誉め、間違った事をしたら優しく叱ってくれる。
金熊童子は、彼女の事をお母さんと呼んでいた。それは、他の子供達も同じだろう。
そういう幸福な日々が、何年間か続いた。
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ただ彼女の喜ぶ顔が見たい。その一心で、子供達は競う様に正しい事や喜ぶ事をし始めた。
中には、施設の周りの掃除を自主的にする子供も出始め、地域社会全体が微笑ましい空気に包まれていた。しかし、彼女は美人過ぎた。
懸命に働く女性は、誰の目から見ても美しく映る。
仕事が忙しいから容姿を気にしている余裕などないにもかかわらず、光り輝いて見えるのだ。そのせいで、大企業の社長の息子に目を付けられてしまう。
彼が、彼女を愛し、寿退社というのなら、金熊童子も他の子供達も涙を見せるが、彼女の幸せを喜んだ事だろう。
しかし、大企業の社長の息子は、彼女を性的な目で見ていただけだった。
彼女と結婚する気も、彼女を養う気も、責任を取る気さえも全く無かった。
彼女の帰宅ルートを調べ、夜晩い時間帯に彼女を襲ったのだ。
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犯人は、紛れも無く大企業の社長の息子だったのだ。
彼女は、警察に訴え、強姦事件になった。
しかし、待っていた結果は、彼女の退職という事で終わりを迎えた。
彼女は良く知りもしない男と交際し、挙句の果てに妊娠。
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金熊童子は、巨大な身体を活かし、引っ越し業などの運搬業を営んでいた。
最初は、会社に雇ってもらい、数年して会社を設立する。
経営者としては、至って普通の出発だ。
自分の部下もいるが、自分でも尽力して働く。その姿勢に部下も尊敬の念を抱いていた。そして、稼いだお金のいくらかを育児施設に寄付していた。
彼は、これが正しい方法だと考え始めていた。そんな時、星熊童子と出会う。
彼女もまた孤児院で育った女性だった。
スタイルも良く、魅力的な女性だったが、集団レイプされ道端に捨てられていた。
幸い、酷い怪我は無いが、金熊童子が育児施設の女性を思い出すには、十分過ぎる状況だ。
「どうしたんですか? 誰かに襲われましたか?」
「ちょっと集団レイプされただけです。放っといてください、いつもの事ですから……」
金熊童子は、星熊童子を助けたいと思うが、彼女は強がってそれを拒否する。
警察でもないのに、男が女を助けようとするなど、下心があると思っているのだろう。
彼女は、去りながらも涙を流す。その状況は、育児施設の職員と重なる。
金熊童子は、星熊童子を助けたいと思う。
せめて、乱れた服を直すのと身体を洗う為に、部屋を貸すくらいは手助けできる。
そう思って彼女に近付く。
「おい、服を着替えるのと、シャワーを使う事くらいはできるぞ!」
「放っておいてください!
そう言って優しくして部屋に呼び寄せ、また私を襲う気でしょう。
男なんて、みんな一緒ですよ……」
星熊童子は暴言を吐くが、どこかを殴られたのだろう。
次第に、声が小さくなり、金熊童子の眼の前で気絶した。
金熊童子は、彼女を自分の家に運び、身体の手当てをする。
従業員の奥さんの助けを借り、彼女の身体を洗い、服を着替えさせる。
ベッドに寝かし、傷の手当てをした。警察にも通報したが、誰も相手にしてくれなかった。とりあえず彼女が目覚めなければ、状況を説明する事も出来ない。
手伝ってくれた女性が言うには、彼女の傷は多く、ほとんどが打撲痕らしい。
相当酷い扱いを受けていたそうだ。数時間して、彼女は目を覚ました。
自分の状況を理解し、金熊童子と話し始める。
「どうですか、私の身体を堪能しましたか?」
「いや、俺は君をここへ運んだだけだ。
打撲痕は酷いらしいが、病院に連れて行くほどの怪我は見当たらなかったのでね。
一応、知り合いの女性を呼んで、身体を洗ってもらい、服を着替えさせてもらった。
看護士の経験があるらしいから、怪我の程度も調べてもらった。
打撲痕はあるが、命に別状は無いらしい。良かったな。
ただ、警察はまともに取り合ってくれなかった。
ただの喧嘩という事で、処理されてしまった。
助けになれなくてすまない!」
「そうでしょうね。私を襲った連中は、大企業の幹部関係者ですからね。
警察も所詮は組織、資金源となる大企業との関係を重要視するでしょうからね。
もう慣れていますよ。さて、あなたもこんな阿婆擦れには興味ないでしょう?
早々に帰りますよ。助けてくれた事には、感謝しています。では、失礼します!」
星熊童子は、部屋を出て行こうとする。
怪我をしているのに、痛がっていない振りをする。
「待ってくれ! もう少しここで休んでいけ」
「はあ? 厄介事はごめんでしょう。それとも、私の身体に興味がありますか? 抱きたいの?」
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「はあ、じゃあ、結婚でもしましょうか? 私、行くあても、住む家もありませんから!」
「分かった。結婚を前提にお付き合いしよう。
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金熊童子は、真剣に交際を申し込むが、星熊童子は狂った様に笑う。
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ほら、これを見なさいよ!」
星熊童子は、シャツをめくり、自分のお腹を見せる。そこには、殴られた痕があった。
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私と結婚しても、あなたのメリットなんてないのよ!」
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復讐したいなら、俺がしてやる!」
「あなた、何言っているの?」
星熊童子は、金熊童子の発言に驚く。
初めて、真剣な顔になった。
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鍛え上げられた金熊童子の身体には、傷一つ付ける事が出来なかった。
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そして、異次元の能力を訓練され、誰にも負けない能力を手に入れた。
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今回は、大手の中央銀行だ。警官も多いだろうし、警備も厳重だろう。
そう思って作業を開始するが、手応えがまるで無い。
もうすでに、何者かに侵入された後の様だ。熊童子が犯行に及んだのだろうか?
しかし、犯行予告はしていない。
警察官が眠らされている所を見ると、警察の罠でもない。
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物騒な槍を手にし、彼を待ち構えていた。
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