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第十三章 空中都市『エムロード』 酒呑童子との死闘!
第九十五話 茨木童子の分析
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オレと再び対峙し、茨木童子は溜息を付いた。
視線をオレから逸らし、独り言のようにつぶやく。
「はあ、またマモル君か……。君、分かってないね。
自分がどれだけ弱いかを……。
君の七天童子達との対決を振り返ってみなよ。
茨木童子である僕に負け、金熊童子には戦いで勝利するも金庫を奪われ敗北。
星熊童子との戦いは、善戦するも結局敗北。
幾島童子に性別を変えられて、夕景ゆたかちゃんと同志討ちをして、ギリギリ勝利。
光宮冷菓に扮した熊童子と戦い、相打ち。
どうだい? まともに勝った事が極端に少ないだろう?
君では、冷菓も奏子も守る事はできないよ。善戦して、敵に連れ去られるのが落ちさ。
ここで諦めて帰りなよ。そうすれば、僕が二人を守ってあげるからさ!」
「茨木童子、どうしてそこまで分かるんだ?
オレと七天童子達との戦いに、お前が居ない戦いさえ記録しているのはどうしてだ?
幾島童子と熊童子の戦いは、お前が知る時間さえもないはずだ!」
「はあ、そんな事も分からないのか。
酒呑童子は、この異世界のほぼ全ての都市に、監視カメラを仕掛けているのさ。
君達の行動など、手に取るように分かる。
せいぜい学園内が監視されていなかった唯一の場所さ。
だから、学園の外に出た瞬間、僕達に襲撃されただろう?」
「くっ、奏子と戦っていた時には、すでにオレの行動はもろバレだったという事か?」
「そう言う事。これで分かっただろう?
君が酒呑童子と僕に勝てる理由は、これっぽっちも無いんだ。
全ての行動を観察し、君の攻撃パターンは全て対策済みさ。
まさに、絶対必勝の天の主(てんのあるじ)・主天童子という名にふさわしいだろう?」
「ん? 天の主・主天童子だと? 酒呑童子じゃないのか?」
「ふふ、本来、主天童子という名前は、自らを皇帝に等しい地位を持つ天の主と宣言したのさ。だが、皇帝からして見たら、ただの生意気な盗賊だ。
そこで、酒呑童子と改名されたのさ。
まあ、平安時代の鬼達は、負けてしまったからそう呼ばれても仕方ない。
でも、この空中都市『エムロード』にいるのは、本当の主天童子かもしれないよ!」
「ふん、過大評価され過ぎじゃないのか?
そう言う風に名乗って負けた奴らが、どれだけいる事か……」
「そうだな。なら、お前自身で確かめてみると良い!
僕を倒して、主天童子まで辿り着けたのならな!」
茨木童子は、髪の毛が白色に変化し、身体中の筋肉が変化していた。
腕力と脚力は、人間を超えた体格となり、一瞬にしてオレの懐に飛び込んで来る。
圧倒的なパワーとスピードを武器に、一気に勝負を決めてしまう気の様だ。
オレの立っていた場所は、茨木童子の剣攻撃により、床が割れてクレーターが出来ていた。オレは、得意のワープ能力を使い、その圧倒的な攻撃を回避する。
茨木童子を焦らせ、オレのペースに乗せるのが狙いだ。
正直に言うと、体格差で勝負すれば、確実に負けてしまう。
「くっ、ワープ能力か!
あらかじめ龍脈のある場所を陣取って、僕の攻撃に対応していたか」
「ふん、この空中都市『エムロード』、オレにとっては戦い難い場所じゃない。
機械で支えられている為、エネルギーが豊富にあるからな。
それに引き換えお前は、パワーを制御する必要があるんじゃないのか?
暴れ過ぎると、この空中都市の維持装置まで破壊してしまうかもしれないぞ!」
オレの言う通り、空中都市は素晴らしい科学技術で出来ているが、作りもかなり複雑だ。ある程度までは衝撃にも耐えられるのだろうが、修復不可能な状態まで行けば、一気に墜落や倒壊してしまう危険があった。
茨木童子の強過ぎるパワーでは、数発の攻撃で倒壊してしまうかもしれない。
茨木童子は慎重にならざるを得なかった。
オレは、ワープ能力を使い、茨木童子を翻弄する。
「くっそ! ちょこまかと逃げ回る気か?」
茨木童子が次第に焦り出すのが、手に取るように分かる。
茨木童子が冷静さを失った時を見計らい、オレは攻撃する。
その時に隙ができ易く、防御し辛い体勢になるからだ。
「ずっと逃げ回る気はないさ!」
オレは、ナイフを投げて茨木童子を攻撃する。
ただのナイフではなく、後ろに火薬を仕込んだ高速で飛んで行くナイフだ。
更に、大きさの違うナイフを同時に投げる事で遠近感を狂わせる。
茨木童子は、一瞬無防備に攻撃を受けそうになったが、小太刀を使い、オレの攻撃を回避した。それでも、完全には対応できず、軽い傷を負う。
飛んで来るナイフの大きさが違い、オレの思惑通りに遠近感を掴む事が出来なかったのだ。
「はあ、はあ、ナイフ攻撃……。
こんな攻撃は、今まで一回もしなかったはず……。
新しく開発したのか?」
茨木童子は、オレの攻撃に対応し切れず、驚きと焦りを感じていた。
息を切らし、かなりの体力を消耗しているようだ。
「ふっ、昔の記憶を取り戻しただけさ。
オレが大人で、光宮冷菓と夫婦だった時の記憶をな。
そこで、熊童子の空母から必要な道具を借り、この武器を作り出したんだ。
元々オレが開発した技、ヒントがあれば完成させるのは簡単だった」
「くっ、いつの間に……。
熊童子の空母の監視も怠らなかったけど、記憶を取り戻す様な怪しい行動や準備時間は無かったはずだぞ!」
「ふふ、時間は必要ないさ。オレは、熊童子の次元能力を使い、記憶を取り戻した。
熊童子の次元能力に興味を持った振りをして、記憶を甦らせたのさ。
オレの行動が自然過ぎて、お前も気付かなかったようだがな。
そして、記憶が戻ったら、戦闘による分析能力も向上した。
お前の次元能力も、お前の正体も気付く事が出来たよ。
もう、お前に勝ち目はないよ。茨木童子、いや光宮悟!」
オレの言葉を聴き、茨木童子は動きを止めた。
真面目な顔をし、オレを睨み付ける。
しかし、怒りは感じられない。
「僕の正体にまで気付いたか。そう、僕は君の息子の光宮悟だ。
今は、同い年の姿をしているが、君の方が圧倒的に年上なんだ。
その様子だと、本当に僕の次元能力まで分かっているようだな」
茨木童子は、小太刀を構えたまま、大剣を肩に乗せて話し合いの意志表示を示す。
しかし、警戒は怠っていない。
「ああ、お前の次元能力は、人体の年齢を操る能力だ。
オレと冷菓を六歳の姿にしたのも、お前の能力が原因だ。
それに伴い、オレ達は記憶を失った。
本来は、数十年の経験があるにもかかわらず、脳は子供の状態に戻ったわけだからな。
お前は逆に、自分の年齢を十五歳の年齢にまで成長させたんだ。
記憶はそのままでも、遺伝子によってある程度は成長が決まるからな」
「ああ、そうだ。それが僕の次元能力さ。
ただし、君と違い光宮冷菓の方は、事前に記憶を他の場所に記憶させていた為に、ある程度の事までは思い出させる事が出来た。
人間の記憶も所詮は、電気記憶だ。
細かい部分は失われても、重要な記憶は残す事が出来る。
それでも、ある程度は準備時間が必要だけどね。
しかし、君は一体どうやって思い出したんだい?
君達の記憶を保存している酒呑童子にも会っていないのに……」
「そこは、熊童子の次元能力に関係がある。
熊童子の次元能力は、他人の次元能力や身体能力、記憶までも真似する能力だ。
それは、自分以外の他人でも真似させる事が出来る。
その次元能力を使い、オレの記憶を取り戻したのさ」
茨木童子は、オレの話を聴いていたが、疑問を感じていた。
昔のオレに会った事のない熊童子が、昔のオレの記憶を持っているわけはない。
それに、ずっと監視していたのに、怪しい行動はしてなかったからだ。
どうやっても、オレの記憶を取り戻す方法が思い付かなかったようだ。
「理論上は、その方法で記憶を甦らせる事が出来るよね。
でも、熊童子は、昔の君に会った事が無い。記憶を取り戻すのは不可能なはずだよ!
現に、僕達が監視していた時には、君は昔の姿になっていなかった」
「ああ、昔のオレの記憶を取り戻す事は不可能だったよ。
でも、オレと一緒に生活し、愛し合った人物の記憶なら取り戻す事が出来た。
多少は、記憶違いがあるだろうが、それでも大まかに思い出す事が出来た。
オレの妻・光宮冷菓の記憶をな!」
茨木童子は納得していた。
そこまで理解しているならば、薄々分かっている事だろうが、質問を投げ掛ける。
「なるほど、空母で熊童子と休憩している時に、光宮冷菓になっていたな。
男性特有の好奇心だとばかり思っていたけど、そんな狙いがあったとは……。
それなら愛し合った記憶も攻撃方法も思い出せるという事か。
でも、熊童子の次元能力は、同性にしか成り切れないはずだよ。
その部分はどうしたの?」
茨木童子は、オレが女性になった事を悟って笑っていた。
監視カメラで、オレがオッパイを触っていた事も知っているのだろう。
男が女性に変身した場合、とりあえずしてみたい事だからな。
「ふん、分かっている事を聴くな。
幾島童子の次元能力は、自分の性別と他人の性別を入れ替える事だ。
二つの次元能力を使えば、不可能が可能になる!」
茨木童子は、オレの洞察力に驚いていた。
いや、尊敬さえも感じているのだろう。
子供が親を見る様な尊敬の眼差しを向けながら、最後の質問をする。
「七天童子達が傷を治していたのは、僕の次元能力を吸収していた治療石さ。
という事は、僕の次元能力を駆使すれば、不死身になる事が可能だよね?
君は、本気の僕を倒せるのかい?」
戦う意志は全く感じられないが、茨木童子は大剣を構える。
オレを試している様な表情だった。
「いや、お前の能力を駆使しても不死身にはならない。
お前は、確かに他人を治療する事はできるが、お前自身は怪我を治せないはずだ。
次元能力は、人間の脳を極限まで使いこなして使える能力だ。
お前が怪我を治せるのは、人体を若返らせているにすぎない。
自分の肉体を急激に若返らせるには、記憶を失うリスクを伴う。
お前の次元能力で、お前自身が記憶を無くす事はできないよ。
怪我をした状態で、狙った個所だけを正確に治療する事は不可能だ。
お前は他人の肉体を若返らせる事が出来ても、自分の脳を若返らせる事はできない。
つまり、お前は自分の治療だけは出来ないのさ。
他の筋肉や運動機能を強化する事は可能だけどな!
そして、逆に、他人の肉体を部分的に強化する事はできない。
治療石に自分の次元能力を吸収させ、治療させる事は出来てもな。
これがお前の次元能力の限界さ」
「その通りさ、さすがは、お父さん。
僕は、自分の身体だけは、自然治癒に任せるしかない。
治療石を用いても、そこだけは変わらなかった。
だから、父さんが僕の戦闘力に匹敵するなら、僕に勝ち目はない。
徐々に傷を負わされ、経験の差から敗北する」
茨木童子こと光宮悟は、オレの戦闘力と洞察力を確認し、自分の負けを認めた。
「ここまで父さんが強くなっているのなら、僕が母さんの冷菓を守る必要はないね。
冷菓と奏子さんは、僕が大切に匿って来た。しかし、危険が迫っている事も事実だ。
頼む、父さん、酒呑童子を……。バルベロを助けてやってくれ!」
悟は、一転してオレにそう助けを求めて来た。
バルベロとは、オレと冷菓と共に、悟を育てていたアンドロイドロボットだ。
そいつが酒呑童子であり、料理評論家の姫状瑠璃でもあるのだ。
事情は良く分からないが、冷菓と奏子、姫状瑠璃というアンドロイド、この三人に危険が迫っているらしい。
視線をオレから逸らし、独り言のようにつぶやく。
「はあ、またマモル君か……。君、分かってないね。
自分がどれだけ弱いかを……。
君の七天童子達との対決を振り返ってみなよ。
茨木童子である僕に負け、金熊童子には戦いで勝利するも金庫を奪われ敗北。
星熊童子との戦いは、善戦するも結局敗北。
幾島童子に性別を変えられて、夕景ゆたかちゃんと同志討ちをして、ギリギリ勝利。
光宮冷菓に扮した熊童子と戦い、相打ち。
どうだい? まともに勝った事が極端に少ないだろう?
君では、冷菓も奏子も守る事はできないよ。善戦して、敵に連れ去られるのが落ちさ。
ここで諦めて帰りなよ。そうすれば、僕が二人を守ってあげるからさ!」
「茨木童子、どうしてそこまで分かるんだ?
オレと七天童子達との戦いに、お前が居ない戦いさえ記録しているのはどうしてだ?
幾島童子と熊童子の戦いは、お前が知る時間さえもないはずだ!」
「はあ、そんな事も分からないのか。
酒呑童子は、この異世界のほぼ全ての都市に、監視カメラを仕掛けているのさ。
君達の行動など、手に取るように分かる。
せいぜい学園内が監視されていなかった唯一の場所さ。
だから、学園の外に出た瞬間、僕達に襲撃されただろう?」
「くっ、奏子と戦っていた時には、すでにオレの行動はもろバレだったという事か?」
「そう言う事。これで分かっただろう?
君が酒呑童子と僕に勝てる理由は、これっぽっちも無いんだ。
全ての行動を観察し、君の攻撃パターンは全て対策済みさ。
まさに、絶対必勝の天の主(てんのあるじ)・主天童子という名にふさわしいだろう?」
「ん? 天の主・主天童子だと? 酒呑童子じゃないのか?」
「ふふ、本来、主天童子という名前は、自らを皇帝に等しい地位を持つ天の主と宣言したのさ。だが、皇帝からして見たら、ただの生意気な盗賊だ。
そこで、酒呑童子と改名されたのさ。
まあ、平安時代の鬼達は、負けてしまったからそう呼ばれても仕方ない。
でも、この空中都市『エムロード』にいるのは、本当の主天童子かもしれないよ!」
「ふん、過大評価され過ぎじゃないのか?
そう言う風に名乗って負けた奴らが、どれだけいる事か……」
「そうだな。なら、お前自身で確かめてみると良い!
僕を倒して、主天童子まで辿り着けたのならな!」
茨木童子は、髪の毛が白色に変化し、身体中の筋肉が変化していた。
腕力と脚力は、人間を超えた体格となり、一瞬にしてオレの懐に飛び込んで来る。
圧倒的なパワーとスピードを武器に、一気に勝負を決めてしまう気の様だ。
オレの立っていた場所は、茨木童子の剣攻撃により、床が割れてクレーターが出来ていた。オレは、得意のワープ能力を使い、その圧倒的な攻撃を回避する。
茨木童子を焦らせ、オレのペースに乗せるのが狙いだ。
正直に言うと、体格差で勝負すれば、確実に負けてしまう。
「くっ、ワープ能力か!
あらかじめ龍脈のある場所を陣取って、僕の攻撃に対応していたか」
「ふん、この空中都市『エムロード』、オレにとっては戦い難い場所じゃない。
機械で支えられている為、エネルギーが豊富にあるからな。
それに引き換えお前は、パワーを制御する必要があるんじゃないのか?
暴れ過ぎると、この空中都市の維持装置まで破壊してしまうかもしれないぞ!」
オレの言う通り、空中都市は素晴らしい科学技術で出来ているが、作りもかなり複雑だ。ある程度までは衝撃にも耐えられるのだろうが、修復不可能な状態まで行けば、一気に墜落や倒壊してしまう危険があった。
茨木童子の強過ぎるパワーでは、数発の攻撃で倒壊してしまうかもしれない。
茨木童子は慎重にならざるを得なかった。
オレは、ワープ能力を使い、茨木童子を翻弄する。
「くっそ! ちょこまかと逃げ回る気か?」
茨木童子が次第に焦り出すのが、手に取るように分かる。
茨木童子が冷静さを失った時を見計らい、オレは攻撃する。
その時に隙ができ易く、防御し辛い体勢になるからだ。
「ずっと逃げ回る気はないさ!」
オレは、ナイフを投げて茨木童子を攻撃する。
ただのナイフではなく、後ろに火薬を仕込んだ高速で飛んで行くナイフだ。
更に、大きさの違うナイフを同時に投げる事で遠近感を狂わせる。
茨木童子は、一瞬無防備に攻撃を受けそうになったが、小太刀を使い、オレの攻撃を回避した。それでも、完全には対応できず、軽い傷を負う。
飛んで来るナイフの大きさが違い、オレの思惑通りに遠近感を掴む事が出来なかったのだ。
「はあ、はあ、ナイフ攻撃……。
こんな攻撃は、今まで一回もしなかったはず……。
新しく開発したのか?」
茨木童子は、オレの攻撃に対応し切れず、驚きと焦りを感じていた。
息を切らし、かなりの体力を消耗しているようだ。
「ふっ、昔の記憶を取り戻しただけさ。
オレが大人で、光宮冷菓と夫婦だった時の記憶をな。
そこで、熊童子の空母から必要な道具を借り、この武器を作り出したんだ。
元々オレが開発した技、ヒントがあれば完成させるのは簡単だった」
「くっ、いつの間に……。
熊童子の空母の監視も怠らなかったけど、記憶を取り戻す様な怪しい行動や準備時間は無かったはずだぞ!」
「ふふ、時間は必要ないさ。オレは、熊童子の次元能力を使い、記憶を取り戻した。
熊童子の次元能力に興味を持った振りをして、記憶を甦らせたのさ。
オレの行動が自然過ぎて、お前も気付かなかったようだがな。
そして、記憶が戻ったら、戦闘による分析能力も向上した。
お前の次元能力も、お前の正体も気付く事が出来たよ。
もう、お前に勝ち目はないよ。茨木童子、いや光宮悟!」
オレの言葉を聴き、茨木童子は動きを止めた。
真面目な顔をし、オレを睨み付ける。
しかし、怒りは感じられない。
「僕の正体にまで気付いたか。そう、僕は君の息子の光宮悟だ。
今は、同い年の姿をしているが、君の方が圧倒的に年上なんだ。
その様子だと、本当に僕の次元能力まで分かっているようだな」
茨木童子は、小太刀を構えたまま、大剣を肩に乗せて話し合いの意志表示を示す。
しかし、警戒は怠っていない。
「ああ、お前の次元能力は、人体の年齢を操る能力だ。
オレと冷菓を六歳の姿にしたのも、お前の能力が原因だ。
それに伴い、オレ達は記憶を失った。
本来は、数十年の経験があるにもかかわらず、脳は子供の状態に戻ったわけだからな。
お前は逆に、自分の年齢を十五歳の年齢にまで成長させたんだ。
記憶はそのままでも、遺伝子によってある程度は成長が決まるからな」
「ああ、そうだ。それが僕の次元能力さ。
ただし、君と違い光宮冷菓の方は、事前に記憶を他の場所に記憶させていた為に、ある程度の事までは思い出させる事が出来た。
人間の記憶も所詮は、電気記憶だ。
細かい部分は失われても、重要な記憶は残す事が出来る。
それでも、ある程度は準備時間が必要だけどね。
しかし、君は一体どうやって思い出したんだい?
君達の記憶を保存している酒呑童子にも会っていないのに……」
「そこは、熊童子の次元能力に関係がある。
熊童子の次元能力は、他人の次元能力や身体能力、記憶までも真似する能力だ。
それは、自分以外の他人でも真似させる事が出来る。
その次元能力を使い、オレの記憶を取り戻したのさ」
茨木童子は、オレの話を聴いていたが、疑問を感じていた。
昔のオレに会った事のない熊童子が、昔のオレの記憶を持っているわけはない。
それに、ずっと監視していたのに、怪しい行動はしてなかったからだ。
どうやっても、オレの記憶を取り戻す方法が思い付かなかったようだ。
「理論上は、その方法で記憶を甦らせる事が出来るよね。
でも、熊童子は、昔の君に会った事が無い。記憶を取り戻すのは不可能なはずだよ!
現に、僕達が監視していた時には、君は昔の姿になっていなかった」
「ああ、昔のオレの記憶を取り戻す事は不可能だったよ。
でも、オレと一緒に生活し、愛し合った人物の記憶なら取り戻す事が出来た。
多少は、記憶違いがあるだろうが、それでも大まかに思い出す事が出来た。
オレの妻・光宮冷菓の記憶をな!」
茨木童子は納得していた。
そこまで理解しているならば、薄々分かっている事だろうが、質問を投げ掛ける。
「なるほど、空母で熊童子と休憩している時に、光宮冷菓になっていたな。
男性特有の好奇心だとばかり思っていたけど、そんな狙いがあったとは……。
それなら愛し合った記憶も攻撃方法も思い出せるという事か。
でも、熊童子の次元能力は、同性にしか成り切れないはずだよ。
その部分はどうしたの?」
茨木童子は、オレが女性になった事を悟って笑っていた。
監視カメラで、オレがオッパイを触っていた事も知っているのだろう。
男が女性に変身した場合、とりあえずしてみたい事だからな。
「ふん、分かっている事を聴くな。
幾島童子の次元能力は、自分の性別と他人の性別を入れ替える事だ。
二つの次元能力を使えば、不可能が可能になる!」
茨木童子は、オレの洞察力に驚いていた。
いや、尊敬さえも感じているのだろう。
子供が親を見る様な尊敬の眼差しを向けながら、最後の質問をする。
「七天童子達が傷を治していたのは、僕の次元能力を吸収していた治療石さ。
という事は、僕の次元能力を駆使すれば、不死身になる事が可能だよね?
君は、本気の僕を倒せるのかい?」
戦う意志は全く感じられないが、茨木童子は大剣を構える。
オレを試している様な表情だった。
「いや、お前の能力を駆使しても不死身にはならない。
お前は、確かに他人を治療する事はできるが、お前自身は怪我を治せないはずだ。
次元能力は、人間の脳を極限まで使いこなして使える能力だ。
お前が怪我を治せるのは、人体を若返らせているにすぎない。
自分の肉体を急激に若返らせるには、記憶を失うリスクを伴う。
お前の次元能力で、お前自身が記憶を無くす事はできないよ。
怪我をした状態で、狙った個所だけを正確に治療する事は不可能だ。
お前は他人の肉体を若返らせる事が出来ても、自分の脳を若返らせる事はできない。
つまり、お前は自分の治療だけは出来ないのさ。
他の筋肉や運動機能を強化する事は可能だけどな!
そして、逆に、他人の肉体を部分的に強化する事はできない。
治療石に自分の次元能力を吸収させ、治療させる事は出来てもな。
これがお前の次元能力の限界さ」
「その通りさ、さすがは、お父さん。
僕は、自分の身体だけは、自然治癒に任せるしかない。
治療石を用いても、そこだけは変わらなかった。
だから、父さんが僕の戦闘力に匹敵するなら、僕に勝ち目はない。
徐々に傷を負わされ、経験の差から敗北する」
茨木童子こと光宮悟は、オレの戦闘力と洞察力を確認し、自分の負けを認めた。
「ここまで父さんが強くなっているのなら、僕が母さんの冷菓を守る必要はないね。
冷菓と奏子さんは、僕が大切に匿って来た。しかし、危険が迫っている事も事実だ。
頼む、父さん、酒呑童子を……。バルベロを助けてやってくれ!」
悟は、一転してオレにそう助けを求めて来た。
バルベロとは、オレと冷菓と共に、悟を育てていたアンドロイドロボットだ。
そいつが酒呑童子であり、料理評論家の姫状瑠璃でもあるのだ。
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