4 / 4
甘い毒
しおりを挟む
翌朝、再びノルツ殿下は公爵邸を訪れた。
「やぁ、リンカ。調子はどう?」
ノルツ殿下は、新緑の瞳を細めて微笑む。今までよりもどこか甘い柔らかな視線に、どくん、と胸が高鳴る。
……ああ。ノルツ殿下は本当にわたしに復讐するつもりなんだわ。
だったら、わたしにできることは。
ノルツ殿下の張りぼてで復讐のための愛を喜ぶこと。
「……はい、お陰さまでかなりよくなりました」
わたしが頷くと、ノルツ殿下は表情を曇らせた。
「本当に?」
そういって、わたしの頬に手を添えて、額と額をくっつける。
「……っ!」
かぁっと体温が上がり、どくどくと心臓が脈打つ。
ノルツ殿下!? いくら、わたしに復讐するためとはいえ、それはやりすぎじゃないかしら。
でも、今までにないほどの急激な接触に、復讐のことなんて忘れて喜んで、視界が滲む。
「熱い。それに、瞳も潤んでいるね。やっぱりリンカ、君はまだ安静にしていた方がいい」
そういって、ノルツ殿下はわたしを抱き上げた。
「ノルツ殿下!?」
「暴れないで。落とすと危ない」
で、でも。
こんなのって。
困惑するわたしをよそにそのまま応接室を出て、ノルツ殿下はわたしの部屋のベッドに横たわらせた。
そして、ご丁寧に布団もかけてくれる。
ポンポンと、布団を優しく叩かれれば、まるで幼い頃お母様に寝かしつけられた時みたいで、なんだか胸がくすぐったい。思わず、頬が緩む。
「──リンカ」
そんなわたしの名前を愛おしそうに、呼んでノルツ殿下は指を絡めた。
「愛しているよ」
愛してる。それは、ノルツ殿下から、初めて聞く言葉だった。
これが、本当だったなら。どんなに嬉しかっただろう。
何度も何度も夢想した。ノルツ殿下にそういわれる日を。
でも、それが嘘だとわかっていると、こんなに虚しいなんて。
空虚な気持ちに蓋をしてわたしは微笑む。
「はい。わたしも愛しています」
「本当に?」
ノルツ殿下が瞬きをして、それから嬉しそうに頬を緩めた。柔らかなその表情に息が詰まる。
──心の底から、あなたのことを愛しています。たとえ、あなたがわたしを愛していなかったとしても。
「ずっと、一緒にいよう」
今まで一度も聞いたことがないほど、甘い甘い言葉。砂糖菓子みたいに口の中でほどけたそれを飲み込んだ。
いつか、この言葉が致死量に達するまで、わたしはあなたを更に好きになり、愛し続けましょう。
──その先にあるのが、別れだとしても。
「やぁ、リンカ。調子はどう?」
ノルツ殿下は、新緑の瞳を細めて微笑む。今までよりもどこか甘い柔らかな視線に、どくん、と胸が高鳴る。
……ああ。ノルツ殿下は本当にわたしに復讐するつもりなんだわ。
だったら、わたしにできることは。
ノルツ殿下の張りぼてで復讐のための愛を喜ぶこと。
「……はい、お陰さまでかなりよくなりました」
わたしが頷くと、ノルツ殿下は表情を曇らせた。
「本当に?」
そういって、わたしの頬に手を添えて、額と額をくっつける。
「……っ!」
かぁっと体温が上がり、どくどくと心臓が脈打つ。
ノルツ殿下!? いくら、わたしに復讐するためとはいえ、それはやりすぎじゃないかしら。
でも、今までにないほどの急激な接触に、復讐のことなんて忘れて喜んで、視界が滲む。
「熱い。それに、瞳も潤んでいるね。やっぱりリンカ、君はまだ安静にしていた方がいい」
そういって、ノルツ殿下はわたしを抱き上げた。
「ノルツ殿下!?」
「暴れないで。落とすと危ない」
で、でも。
こんなのって。
困惑するわたしをよそにそのまま応接室を出て、ノルツ殿下はわたしの部屋のベッドに横たわらせた。
そして、ご丁寧に布団もかけてくれる。
ポンポンと、布団を優しく叩かれれば、まるで幼い頃お母様に寝かしつけられた時みたいで、なんだか胸がくすぐったい。思わず、頬が緩む。
「──リンカ」
そんなわたしの名前を愛おしそうに、呼んでノルツ殿下は指を絡めた。
「愛しているよ」
愛してる。それは、ノルツ殿下から、初めて聞く言葉だった。
これが、本当だったなら。どんなに嬉しかっただろう。
何度も何度も夢想した。ノルツ殿下にそういわれる日を。
でも、それが嘘だとわかっていると、こんなに虚しいなんて。
空虚な気持ちに蓋をしてわたしは微笑む。
「はい。わたしも愛しています」
「本当に?」
ノルツ殿下が瞬きをして、それから嬉しそうに頬を緩めた。柔らかなその表情に息が詰まる。
──心の底から、あなたのことを愛しています。たとえ、あなたがわたしを愛していなかったとしても。
「ずっと、一緒にいよう」
今まで一度も聞いたことがないほど、甘い甘い言葉。砂糖菓子みたいに口の中でほどけたそれを飲み込んだ。
いつか、この言葉が致死量に達するまで、わたしはあなたを更に好きになり、愛し続けましょう。
──その先にあるのが、別れだとしても。
34
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(12件)
あなたにおすすめの小説
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。
しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。
破滅を回避するために決めたことはただ一つ――
嫌われないように生きること。
原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、
なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
退会済ユーザのコメントです
退会済ユーザのコメントです
更新待ってました〜♡
この盛大な勘違いから
どうなっていくのが楽しみです(о´∀`о)