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演じる悪女2
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夫。そう、旦那様――このラルフ・マドリューは私の夫なのだ。
平民に熱を挙げた結果、妻を毒殺しようとする愚かな男でもある。
「あなたは……ラルフ様。そして私の夫……」
噛み締めるように、その事実を口にする。
まぁ、あと数か月でこの事実はなくなるんでしょうけど。
「……ああ」
旦那様は頷くと、私を見つめた。
「君は、侯爵夫人なんだ。貴族の階級はわかるかい?」
「……はい。この世界の常識のようなものはわかるのですが、私自身のことも、あなたのことも。そういったことは何一つわからないのです」
どうしましょう、と不安げに肩を揺らし、俯いて、シーツを握る。
「イザベラ……」
そっと、旦那様が私の手に自分の手を重ねようとしたところで、ぱっと顔をあげる。
「ですが、あなたは私の夫……なんですよね?」
「あ、ああ」
旦那様の行き場を失くした手が宙に浮く。
それを視界の端に収めながら、にっこりと微笑んだ。
「だったら、安心です。あなたのような素敵な方が、私の旦那様だなんて」
それに、と私は胸の前で手を握った。
「私たちは夫婦、ということは愛し合っていたのでしょう?」
平民に熱を挙げた結果、妻を毒殺しようとする愚かな男でもある。
「あなたは……ラルフ様。そして私の夫……」
噛み締めるように、その事実を口にする。
まぁ、あと数か月でこの事実はなくなるんでしょうけど。
「……ああ」
旦那様は頷くと、私を見つめた。
「君は、侯爵夫人なんだ。貴族の階級はわかるかい?」
「……はい。この世界の常識のようなものはわかるのですが、私自身のことも、あなたのことも。そういったことは何一つわからないのです」
どうしましょう、と不安げに肩を揺らし、俯いて、シーツを握る。
「イザベラ……」
そっと、旦那様が私の手に自分の手を重ねようとしたところで、ぱっと顔をあげる。
「ですが、あなたは私の夫……なんですよね?」
「あ、ああ」
旦那様の行き場を失くした手が宙に浮く。
それを視界の端に収めながら、にっこりと微笑んだ。
「だったら、安心です。あなたのような素敵な方が、私の旦那様だなんて」
それに、と私は胸の前で手を握った。
「私たちは夫婦、ということは愛し合っていたのでしょう?」
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