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乱入者

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 セオドア殿下と出会ってから、数年後。数年たっても、私たちはとっても仲良く暮らしていた。

 「ふふ、キャロル。口の端にジャムがついてるよ」
セオドア殿下が、私の口をナプキンでぬぐってくれた。
「ありがとうございます、セオドア殿下」 
私は相変わらずセオドア殿下に恋をしていたから、少し触れあうだけでもドキドキしてしまう。そんな自分が少し恥ずかしくて、下を向くと、セオドア殿下は笑った。

 「僕だって、キャロルにドキドキしてる」
「本当に?」
「本当だよ」

 でも、最近は頬にするキスの回数だってずうっと減ったし、あんまりハグもしてくれなくなったわ。

 「それは、その……、僕も男だから歯止めがきかなくならないようにしてるんだよ」

 「歯止めって?」

私が首をかしげると、セオドア殿下は困ったような顔をした。

 「僕がキャロルにもっとキスしたくなるってこと」

 「私だって、セオドア殿下にキスしたいわ!」


私がセオドア殿下の頬にキスすると、セオドア殿下は目元を赤くして、でも、少し拗ねたような顔をした。
 「僕がいってるのはね、もっと大人な──。ううん、いい。キャロルに伝わる気がしないから。まぁ、キャロルはそこが可愛いんだけれど」

 そういって、私の頭をぽんと撫でる。
「私、子供じゃないわ」
「知ってる。でも、大人でもない。違う?」
「……そうね」

 そう言われたら、おしゃべりな私でも何も言えない。思わず黙りこむと、セオドア殿下は笑った。

 「焦らなくていいんだ。僕たちのペースでゆっくり進もう」
「……はい」

 結局、セオドア殿下の笑顔に敵うものはないから、それで納得するしかないんだけれど。

 そんな穏やかないつものお茶会は、いつものように過ぎ去らなかった。乱入者がいたのだ。

 「……セオドア殿下」

 可憐な声に振り向くと、見たこともない少女が立っていた。どうして? 人払いはしていたはずだけれど。そう思う前に、彼女の容姿に釘付けになる。煌めく金色の髪。それだけなら、美しいけれど、他の人にもあてはまる。けれど。


 「……私だけがあなたの悲しみを理解できる」
「え──」
セオドア殿下と彼女の目が合う。セオドア殿下も、そして、彼女も──綺麗な青い瞳だった。
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