とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko

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舞台初日とマルシェ

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「わー!すごい熱気!すごいお客様!」
 
 サザーランド家の馬車に揺られ、無事孤児院に到着した私たちは、何とか初日の舞台に間に合い、関係者席から舞台を観劇することになった。
 
 客入りは満席。見たところ、一般市民から貴族と思われる層まで幅広く集まってきていた。
 「これはやりがいがあるわね!」
 
 何とも言えない高揚感に包まれ、これから始まる劇にくぎ付けになる。
 
 「みんなで頑張ったからな。きっと成功するよ」
 
 レイは少し汗ばむ私の手をぎゅっと握りしめてくれた。

 先ほど1回目の舞台が無事終了したが、幕が閉じても割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
 
「私もまだ興奮が収まらない感じ……」
 
 お客がようやく退席し、舞台裏では、出演者一同が会して打ち上げをする準備をしていた。そんな中で、とある女性に呼び止めらた。

 「あの……。ミスボス!」
 
 振り返るとそこにいたのは、先ほどのステージで脚光を浴びていた主演女優だった。
 
 「プリシラと申します。この度はこのような機会を与えていただき、ありがとうございましたっ」
 
 そういうと彼女は深くおじぎをした。
 
 「プリシラさん。こちらこそ、ありがとう。昨日のリハーサルから見させもらって、とっても感動しました!私、白薔薇のワンピースも買わせてもらいました!」
 
 「……ありがとうございます!これで、孤児院のみんなでお仕事もできて、お金を稼ぐことも出来ます。まずは2週間頑張って、次の劇にも挑むつもりです!」
 
 ……おおう、頼もしい言葉!
 私は亀の歩みで進めている次作の脚本を思い、苦笑いした。
 
 「次作の脚本も執筆中だから、楽しみにまっていてね。今回好評だったらまた来月開催する予定らしいから、まずは2週間頑張りましょう!」
 
 そこへオスカーがなにやらワゴンを押しながら入ってくると、舞台が一瞬暗くなった。
 
「ミスボス、お誕生日おめでとう!そして、商会設立おめでとう!舞台初日、満員御礼おめでとう!」
 
 ワゴンには、お祝い用のホールケーキに16本のろうそくに火が灯されていた。
 
「えー!みんな、ありがとう!こんなオーナーだけど、これからよろしくお願いします!」
 
 私がろうそくの火を消すと、大きな拍手が起こり、舞台が明るくなった。
 
 「めでたいことはいくつ重なってもうれしいものだな、ミスボス。おめでとう!」
 
 「オスカー、ありがとう。いろいろ手伝ってくれて。やっぱり私は幸せ者だ!」
 
 そういうと、オスカーは私を軽くハグしてくれた。
 
 「……そういえば、昨日、オスカーのお姉様がいらしたわ」
 
 それを聞くと、オスカーは頭を抱えてしまった。
 
 「……悪い、面倒かけた……」
 
 「……全然大丈夫なんだけど、その……言いにくいけど、何というか……。強烈だった」
 
 私がそういうと、オスカーが噴出した。
 
 「あははははっ!そうそう!強烈、そう、強烈なんだよ!あいつは!」
 
 「そんなに笑わなくても……」
 
 「いや、まじで的確!あのさ、俺はまだあそこに籍もあるし、監視もついてるけど、頼ろうと思ったこともないしな。勝手にあっちの都合で追い出されて虫がいい話だよ。でも、あっちは気になってるんじゃないのか」
 
 「……まあ、そうなのかな?」
 
 「だって、ミスボスとレイが結婚して、あの姉貴がレイの兄貴と結婚するんだろう?どのみちみんなつながるってことだしな。仲良くやるしかないんだろうけど。まあ、必要な時は力借りるかもしれないしな」
 
 案外すべてを見通して動いているのかな、オスカーは。頭がいいとは思ったけど、意外とその先を読むのが上手いのかも知れない。
 
 「……ちょっとケーキを配ったら、マルシェを覗きに行こうぜ。と、おい……。レイが鬼の形相で見てる……!」
 
 振り返るとレイがすごい勢いで私をオスカーから引き剥がした。
 
「ちょ……ちょっと、レイ!」
 
 私はあたふたしながらオスカーに目配せした。
 
「……マルシェは俺が案内する……。他の男とイチャイチャするな……」

 「……!!」
 レイが消え入りそうな声で耳元でささやく。
 吐息が耳に触れる。

 (……反則っ!もう、レイの吐息だけでキュンキュンしちゃうのに……!!)
 
 これが嫉妬?と嬉しくなる。
 私は俯きながらコクンと頷いた。きっと、顔は赤くなっていたと思う。
 急につながれた手は、私を逃がさないようにぎゅっと握られている。

 (……私、レイから逃げないよ?)
 
 レイは恥ずかしいのか顔を見せないように、私の手を引っ張る。
 しばらくいくと人気のない廊下で、レイが不意に立ち止まる。私は勢い余ってレイの背中に顔を埋めた。

 「……なあ、リリー?リリーはオスカーも好きなのか?」
 
 私はレイの背中を見つめる。
 
 「ほぇ?」
 
 またしても間抜けな声が出てしまった。
 
 (……レイが可愛いすぎる……!!嫉妬、ばんざーい!)

 「……レイ?私はオスカーも好きだけど、それはお母様やマリアが好き、と一緒の好きだよ?……だから、レイだけは特別だよ?」
 
 私は頬を更に背中に埋めたま思いを告げる。

 (……やっぱり、大きくて、温かいなぁ。男の人の身体って、女性と違う温かさがあるんだよねぇ……)

 また無言眼福星人になってるレイは微動だにしない。
 
 しばらくすると、また私の手を引っ張るように歩き出した。
 途中、院長にばったり出くわし、一緒にマルシェを見学することにした。

 (ちょ…レイ!無言すぎるでしょ!)
 
 院長が心配そうに私の手を引っ張るレイを見ていた。

 「……院長、劇は満員御礼で素晴らしかったです。孤児院の皆さんにも本当に頑張って頂いて……」

 院長は嬉しそうに初日を迎えるまでのエピソードを話して下さった。

 「えー?あのプリシラさんとオスカーが?」
 
 院長の見立てでは、あの二人は恋仲に発展中だそう。院長の観察力の凄さを思い知る。
 
 レイは全く興味がないかと思いきや、先ほど話題に出たオスカーがプリシラと恋仲と聞くと満足そうな笑顔を浮かべた。

 (……院長、グッジョブ!)

 「マルシェも皆さんのおかげで行列が出来る程大盛況ですよ」
 
 院長の案内に期待を胸にマルシェに向かう。
 
 そして私はそこで一番見たくない……いやいや、会いたくない人を見つけてしまうのだった。
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