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3章
32・作戦開始(2)
招待状を渡して会場入りしたオスマンを、少し離れた場所から様子を伺う。
「オスマン様はお酒を嗜みながら、今日のお相手を探すので、お酒を手に取ったら声を掛けに行ってください。」
「了解。」
「ジャスミンは、無理して話さなくても良いわよ。」
「ありがとう、プルメリア。でも大丈夫よ、アレクもいるし。」
何の気なしに言ったジャスミンを見て、プルメリアが腰に両手を当て首を傾けてアレクを見た。
「難儀ですわね。」
「いやいや、楽しいですよ。」
「何が?」
プルメリアが飲み物のテーブルを指差した。
「あっ、始まりましたわ!さあ、行って!私は後から行きます!」
オスマンは、ワインを口に含み周りを見渡している。
最近、どうも女の子が捕まらず、心身共に欲求不満であった。こういうこともある、と言い聞かせてはいるが、今まで百発百中だった為、焦りと不安を感じているのだ。
それはあの王宮舞踏会から始まった。
自分の慢心が引き起こした残念な一件が、スランプに陥らせているのかもしれない。もっと女性の気持ちを考えて、真摯に誘わなければ…と思っていたがうまく行かず、今は名折れ。残念無念の下半身騎士であった。
今夜も招待状をもらったから来てみたが、なんだか気分が乗らない。
ぼんやりと会場を眺めていると、毎日聞いている声がした。
「やあ、オスマンサス卿。ごきげんいかがかな。」
「珍しい場所でお会いしますね、アレキサンダー卿。」
振り返れば、同期である上司とこの状況のきっかけとなった女性が、並んで立っていた。
「レディジャスミンもご一緒とは…」
やっぱりこの二人デキてるんじゃないか、オスマンは内心面倒になった。
ジャスミンが優雅に礼をし、そっとアレクに寄り添った。
「堅苦しい挨拶はここまでにしよう。息がつまる。」
「騎士団じゃ、こんな挨拶しないもんな。」
「無理だろ。団内階級以外は、あってないようなもんだからな。」
オスマンがグラスを取り、二人に渡した。アレクは一口含み、ジャスミンは舌先でペロリと舐める。
「で、舞踏会嫌いのアレク隊長殿は何しに?」
「珍しく、招待状をもらったから。」
「普段は送られることすら断ってるのに。」
アレクの視線が横に向き、柔らかく口が緩む。
「ジャズの誘いは断れないよ。」
アレクの腕をぎゅっと握り、ジャスミンが頬を染める。
オスマンは、自分が情けなく惨めに感じた。
「見せつけてくれるね。あーあ、俺にも見つからないかなぁ、全部を受け止めてくれる女神が。」
「そういうことなら、普段の行いを改めたらどうだ。」
グラスの中を空け、首を振る。
「待ってるだけじゃ、見つからないだろ。自分から行かなきゃ。」
「オスマン様は、情熱的な方なんですね。」
ニッコリと笑って、また首を振る。
「最近は、空回ってますよ。」
二杯目のグラスを半分ほど空け揺らしていると、ふわりとしたシルエットが見えた。
「あの…お話中に申し訳ありません。お久しぶりです、オスマン様。覚えていらっしゃいますか。」
目の前に現れたのは、可愛らしくふわふわとした美少女で、名前は覚えていないが、一度ダンスをしたことがあった。あの時は、あまりに幼過ぎて食指が動かなかった。今も、そんなにタイプではない。どちらかといえば、ジャスミンのようなクールビューティが好みなのだ。
「ああ、もちろん覚えていますよ。あなたとのダンスは、雲の上にいるような心地でした。」
大きな瞳を潤ませて喜ぶプルメリアを見て、オスマンは微笑んだ。
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