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4章
36・お茶会(1)
しおりを挟む昼前、一通の手紙が届いた。
差出人はプルメリア。内容は、明日お茶会を開くから来い、というものだった。
相変わらず急だったが、家にいるのも辛いので、行くことにした。
ミュゲと一緒に馬車で揺られ、たどり着いたのは小さな屋敷。庭は広く、可愛らしい花々が咲いていた。
「いらっしゃい、よく来たわね。」
出迎えはプルメリア本人で、あまり人のいる気配がしなかった。
「お誘いありがとう。」
「こっちよ。」
挨拶もそこそこに庭先に用意されたお茶会テーブルに案内され、座った。
お給仕のメイドが一人、温かなお茶を入れてくれる。
目の前には焼き菓子やプディングなどが置かれており、とても美味しそうだ。
プルメリアがメイドを下がらせて、ジャスミンとミュゲの3人のみになる。
「今朝用意したから出来立てだけど、口に合わなかったらごめんなさいね。」
「プルメリアが作ったの?」
クッキーを口に放り込み、プルメリアが頷く。
「見ての通り、うちは人が少ないから何でも自分でやるのよ。」
「とても良いと思うわ。」
フルーツ入りのパウンドケーキをかじると、口の中で柑橘類の甘酸っぱさが広がった。
「美味しい。」
「ありがとう。あなたも立ってないで座りなさいよ。」
急に話しかけられたミュゲが、驚いて自分を指差す。
「私ですか?」
「それ以外誰がいるのよ。紅茶が冷めるわ。」
ジャスミンが頷き、ミュゲは恐る恐る椅子に座った。
「さて、今日は報告会よ。それぞれ起きたことを話すの。包み隠さずね!」
「まあ!楽しい恋話ですわね。」
「分かってるじゃないの、ミュゲ。」
「もちろんでございます、プルメリア様。」
あんなにこまっしゃくれと言っていたのに、ミュゲは既にプルメリアと打ち解けている。
「じゃあ、プルメリアからどうぞ。」
ニンマリと笑って、プルメリアが一口お茶を飲んだ。
「ミュゲの為に説明するけど、私はオスマン様からダンスを誘ってもらうことに成功した訳。その後、こっちの二人と別れて庭園を散歩することになったの。」
待機組だったミュゲは、こくりと頷く。
「どうして散歩できるようになったかっていうと、ジャスミンのおかげね。」
「どういうこと?」
ジャスミンが首を傾げると、プルメリアは少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「あなたが、オスマン様に襲われそうになった原因ね。ゲーム上は和姦だけど、プレイは断るのよ。」
「…お花摘みのこと?」
「そう、それ。そのワードが出ない限り、私はオスマン様と結ばれないってやっと分かった。だから、ジャスミンには本当に申し訳なかったけど、感謝してる。」
顔の前で手を合わせて、プルメリアが謝った。
きちんとした謝罪は初めてのことで、ジャスミンは少々驚いたが頭を振った。
「もう良いわよ、過ぎたことだし。それに、オスマン様と結ばれた…んでいいのよね?」
「体はね!」
「かっ、体?!えっ!?ええっ?!」
急な爆弾発言に、ジャスミンはイスから転げ落ちそうになった。
「何やってんの、危ないでしょ。」
「いや、だって、体って!…その、お庭でしたってこと?」
「そうなるわね。すっごくロマンチックだった…星空の下、オスマン様と一つになって…んふふふ。」
「ジャスミン様より何歩も先をいってらっしゃるんですね。ジャスミン様も頑張ってください!」
なぜかミュゲが励ましてくる。
「でもね、心はまだよ!いかにオスマン様の心を掴めるかにかかってるの!これから騎士団は遠征もあるし…それまでにどうにかしないと。」
初めて聞く単語に、ジャスミンは引っかかった。
「遠征って…?」
キョトンとしたプルメリアが答える。
「アレク様から聞いてないの?」
「ええ、特に何も。」
「ごめん、知ってると思ってた。もしかしたらアレク様は、後できちんと言うつもりだったのかも。」
ソワソワと落ち着かず、両手をギュッと握りしめた。
「お願い、教えて。遠征って何?」
プルメリアは、しばし考えてからコクリと頷いた。
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