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第4話 怒りの脱出(2)
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セブンは、気を失っているおクウを見守りつつ、周囲を警戒していた。どうにか二人とも無事だった。
けれどセブンの方は、防弾チョッキを身に着けていたものの、敵の弾丸を受けたことで肩や腕に傷を負い多少なりとも出血していた。応急処置として腕だけでもハンカチで縛る。それと頼りのボウガンも、奴らに撃ち抜かれたせいで使い物にならなくなっていた。今は何の武器もなく、反撃するのもままならない様相だ。
彼女たちは散々逃げ回り、とうとう丘を背景とする小さな建物の裏に逃げ込んでいた。
ところで、一緒に逃げた学生はどうなったのか? 彼は不運にも、建物に隠れる前に撃たれ、数十メートル離れた丸見えの地面の上で倒れていた。それも背中から夥しい血を流して。どう見定めても、容易に起き上がれないほど重症であることは間違いなかった。
そんな中、突如慌ただしい風が吹き抜ける。砂塵が舞い、辺りの風景を土煙で隠そうとしているかのように……。それでも、その深部から間隙を突いてずんずんと近づいてくる、荒野の息吹を己一身に浴びた獣のごとき気配だけは窺い知れた。
――まさしく、皇虎の出現だ!――
黄色味の強い土に覆われた、広い大地の上に堂々と姿を見せたのだ。ちょうどセブンたちが隠れる小屋から五十メートル以上離れた所で、仁王立ちしての御出まし。加えて奴のうしろには、銃を持った男たちと逃げ道を塞ぐため取り囲むように連ねられた車の列が見えている。この陣形では、無論機捜隊のトラックが入れる余地など、寸分もなかった。
そしてすぐに、皇虎の進攻が始まった。いつの間にか、倒れた学生の側へ寄ったかと思ったら、何の躊躇いも見せずその学生の首を掴んで高々と持ち上げ――男はまるで道化人形みたいに吊り下げられる――それと同時にセブンへ向かって、
「この虫けらめ。隠れていないでさっさと出てきなさい」と叫んだのだ。学生は酷い傷を負って瀕死の状態なのに、奴はさらに情け容赦ない仕打ちを平然と行っていた。
「ぐぐう……」すると学生は、苦しそうに呻いた後、手足をダランと垂らしたまま殆ど動かなくなってしまった。……これは、明らかに危険な状態か? 早く何とかしないと息が絶えて死亡するかもしれないぞ。
こうなっては、セブンも焦り始めた。やはり彼を助け出すためには、攻めるしかないと考えた。とはいえ、言うまでもなく手元に武器は存在せず……ただ辛うじて、建物から少し離れた所に矢が一本だけ落ちていることに気づいた。
ならば、その矢を使うまでか! 彼女はすぐさま決死の覚悟で物陰から走り出た。最後まで戦う気構えを奴に見せつける。
その結果、どうにか矢を手にした。
ところが、その行動を目にした皇虎は、
「馬鹿な奴、まだ逆らう気か!」と言うが早いか、己の怒りを非道なことに学生へと向けたみたいだ。唐突に鈍い音を鳴らし、男の首を握り潰していた!
「うっ!」学生は嗚咽にも似た声を上げ、微動だにしなくなっていた。……まさか、命を奪われてしまった?
「おやおや、殺ったのかな? でも、しょせん役に立たないクズだろうし、気にすることもないかね。さてさてもう一匹ぐらい、消してもいいかしら」奴はそう言って、男を雑巾のように投げ捨てた。
何ということだ! セブンの目の前で、見知らぬ者とはいえ呆気なく人が葬られたのだ。不遇にもこんな光景を目の当たりにするとは。彼女はその残忍な殺害に憤慨を覚えずにはいられない。こうなれば、この悪鬼へ一太刀でも浴びせる決意だ!
セブンは持っている矢に力を込める。次いで狙いを澄ましたなら、渾身の力を込めて、皇虎へ投げつけた!
矢は唸りを上げ、真直ぐ巨漢へ飛んだ。
これで一矢報いられるかー?
……と思ったが、駄目だ! いとも簡単に、その手で受け止められてしまう。やはり並の飛び道具など物ともしない。全く、無駄な足掻きだった。
「ふふふ、こんなへなちょこで私を殺れるとでも?」そうして奴は、余裕の表情で毒づいた。だが、その後、気になる動きも見せる。掴んだ矢を慎重に握り直しながら、その目が標的を狙う眼差しへと変わったのだ。
うむっ? これは何を意味する……
大変だ! 今度はその飛び道具が奴の武器、矢弾となってしまった。逆にセブンが、狙われる番になったという訳だ。しかも奴ほどの強肩ともなれば 到底逃げられはしない。紛れもなく危機的な状況に陥っていた!
皇虎は肩を回し始めた。腕の筋肉をほぐすかのように。
続いて、既に照準は合わせたと言わんばかりに彼女を見据え、分厚い丸太のごとき上腕に力を漲らせた……
となれば、来るぞ!
「死ねー!」奴は、雄たけびとともに矢を投げ返した。
物凄い風切り音が鳴った。セブンが放ったものとは全く異なる速さの矢が、彼女の喉を目掛けて迫ってきた!
……危ない! このままでは矢が突き刺さるぞ。
が、その時――突然、爆音が轟いた!――
えっ、目の前に……現れたのか? いかにも、まるで黒い稲妻のごとく大空高く舞い上がり、前方の敵車を跳び越え、しかも着地した瞬間、ウイリー走行でセブンの直前へと割り込めば、何と! その浮かせたバイクの前輪で矢を受け止めていた。セブンの命を瞬く間に死守する。
――レディM!――
そうだ。遂に彼女の登場。
レディが、忽然と現れ、すんでの所でセブンを救ったのだ!
けれどセブンの方は、防弾チョッキを身に着けていたものの、敵の弾丸を受けたことで肩や腕に傷を負い多少なりとも出血していた。応急処置として腕だけでもハンカチで縛る。それと頼りのボウガンも、奴らに撃ち抜かれたせいで使い物にならなくなっていた。今は何の武器もなく、反撃するのもままならない様相だ。
彼女たちは散々逃げ回り、とうとう丘を背景とする小さな建物の裏に逃げ込んでいた。
ところで、一緒に逃げた学生はどうなったのか? 彼は不運にも、建物に隠れる前に撃たれ、数十メートル離れた丸見えの地面の上で倒れていた。それも背中から夥しい血を流して。どう見定めても、容易に起き上がれないほど重症であることは間違いなかった。
そんな中、突如慌ただしい風が吹き抜ける。砂塵が舞い、辺りの風景を土煙で隠そうとしているかのように……。それでも、その深部から間隙を突いてずんずんと近づいてくる、荒野の息吹を己一身に浴びた獣のごとき気配だけは窺い知れた。
――まさしく、皇虎の出現だ!――
黄色味の強い土に覆われた、広い大地の上に堂々と姿を見せたのだ。ちょうどセブンたちが隠れる小屋から五十メートル以上離れた所で、仁王立ちしての御出まし。加えて奴のうしろには、銃を持った男たちと逃げ道を塞ぐため取り囲むように連ねられた車の列が見えている。この陣形では、無論機捜隊のトラックが入れる余地など、寸分もなかった。
そしてすぐに、皇虎の進攻が始まった。いつの間にか、倒れた学生の側へ寄ったかと思ったら、何の躊躇いも見せずその学生の首を掴んで高々と持ち上げ――男はまるで道化人形みたいに吊り下げられる――それと同時にセブンへ向かって、
「この虫けらめ。隠れていないでさっさと出てきなさい」と叫んだのだ。学生は酷い傷を負って瀕死の状態なのに、奴はさらに情け容赦ない仕打ちを平然と行っていた。
「ぐぐう……」すると学生は、苦しそうに呻いた後、手足をダランと垂らしたまま殆ど動かなくなってしまった。……これは、明らかに危険な状態か? 早く何とかしないと息が絶えて死亡するかもしれないぞ。
こうなっては、セブンも焦り始めた。やはり彼を助け出すためには、攻めるしかないと考えた。とはいえ、言うまでもなく手元に武器は存在せず……ただ辛うじて、建物から少し離れた所に矢が一本だけ落ちていることに気づいた。
ならば、その矢を使うまでか! 彼女はすぐさま決死の覚悟で物陰から走り出た。最後まで戦う気構えを奴に見せつける。
その結果、どうにか矢を手にした。
ところが、その行動を目にした皇虎は、
「馬鹿な奴、まだ逆らう気か!」と言うが早いか、己の怒りを非道なことに学生へと向けたみたいだ。唐突に鈍い音を鳴らし、男の首を握り潰していた!
「うっ!」学生は嗚咽にも似た声を上げ、微動だにしなくなっていた。……まさか、命を奪われてしまった?
「おやおや、殺ったのかな? でも、しょせん役に立たないクズだろうし、気にすることもないかね。さてさてもう一匹ぐらい、消してもいいかしら」奴はそう言って、男を雑巾のように投げ捨てた。
何ということだ! セブンの目の前で、見知らぬ者とはいえ呆気なく人が葬られたのだ。不遇にもこんな光景を目の当たりにするとは。彼女はその残忍な殺害に憤慨を覚えずにはいられない。こうなれば、この悪鬼へ一太刀でも浴びせる決意だ!
セブンは持っている矢に力を込める。次いで狙いを澄ましたなら、渾身の力を込めて、皇虎へ投げつけた!
矢は唸りを上げ、真直ぐ巨漢へ飛んだ。
これで一矢報いられるかー?
……と思ったが、駄目だ! いとも簡単に、その手で受け止められてしまう。やはり並の飛び道具など物ともしない。全く、無駄な足掻きだった。
「ふふふ、こんなへなちょこで私を殺れるとでも?」そうして奴は、余裕の表情で毒づいた。だが、その後、気になる動きも見せる。掴んだ矢を慎重に握り直しながら、その目が標的を狙う眼差しへと変わったのだ。
うむっ? これは何を意味する……
大変だ! 今度はその飛び道具が奴の武器、矢弾となってしまった。逆にセブンが、狙われる番になったという訳だ。しかも奴ほどの強肩ともなれば 到底逃げられはしない。紛れもなく危機的な状況に陥っていた!
皇虎は肩を回し始めた。腕の筋肉をほぐすかのように。
続いて、既に照準は合わせたと言わんばかりに彼女を見据え、分厚い丸太のごとき上腕に力を漲らせた……
となれば、来るぞ!
「死ねー!」奴は、雄たけびとともに矢を投げ返した。
物凄い風切り音が鳴った。セブンが放ったものとは全く異なる速さの矢が、彼女の喉を目掛けて迫ってきた!
……危ない! このままでは矢が突き刺さるぞ。
が、その時――突然、爆音が轟いた!――
えっ、目の前に……現れたのか? いかにも、まるで黒い稲妻のごとく大空高く舞い上がり、前方の敵車を跳び越え、しかも着地した瞬間、ウイリー走行でセブンの直前へと割り込めば、何と! その浮かせたバイクの前輪で矢を受け止めていた。セブンの命を瞬く間に死守する。
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そうだ。遂に彼女の登場。
レディが、忽然と現れ、すんでの所でセブンを救ったのだ!
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