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第十四部:それぞれの思惑
町の名前と宗教と米
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「シュウジ様、新しい町の名前が決まりました」
社会政策省に顔を出すと、ベルトが嬉しそうに俺に話を振ってきた。
実験都市は先日から動き始めた。まだまだ建設中で、とりあえず城壁と城門、そして田畑を用意しただけだ。家はまだほとんど建っていないので、住民たちは魔物の骨と皮で作ったテントを仮の家にしている。
この町の建設には社会政策省だけではなくて建設省、財務省など、いくつもの省庁動いた。俺が動くとなれば何かあると考えた大臣が多く、職人や術者を雇うためにそれなりの金が用意された。だからこそかなり予定が前倒しで進められたようだ。国としても様々な政策が行き詰まっているのは分かってたんだろう。
「そうか。揉めなかったか?」
「はい。さすがに移住政策を進めたのがシュウジ様ですので」
実験都市への移住は問題なく終ったけど、今後も移住の募集は続けるそうだ。王都にやって来る者はそう簡単には減らないからだ。
これまでは仕事を探しに王都に来て、仕事が見つからないのでスラムに入り、そこで何とか生きながらえていた。ただ環境は最悪だから死ぬ者も多かった。飢え死にじゃなくて病気で。それが今後は変わる。王都から半日歩けば働ける場所ができたからだ。体力があるうちに移動すれば死ぬことはないだろう。
俺が最初にできることはやった。後は他の者たちに任せた。俺としてはそんな感じだ。感覚としては……そうだな、俺は子供を持ったことがないから分からないけど、子供が独り立ちしたくらいの気分なんだろうか。そんなに長期に関わったわけじゃないし、まだまだやることは多いだろうけど、いつまでも俺が関わることはできない。そう思って今後はたまに見にいく程度に決めている。
「それでどんな名前になったんだ?」
「はい、サン=シュウジになりました」
「……もう一度言ってくれ」
「はい。サン=シュウジです」
「……」
「崇敬されていますね」
サンだからな。でも聖人って死んでから認定されるんじゃないのか?
「大臣が女神様に連なる存在だということはそこそこ知られていますので、それもあってのことだと思います」
「あながち間違いではないが……」
聖人を通り越して神だけどな。それを口にすることはできないけど。
「今さら変えろと言うのも彼らに悪いよな?」
「まあ彼らの好意というか敬意でしょうから」
ベルトの言葉のニュアンスから、どうも変えるのは難しいらしい。主に心情的に。まあ絶対に嫌ってわけじゃない。ただトラブルにならないかだ。
「それより俺が聖人みたいになっていることについては教会の方では問題にはなってないのか? 教会と揉めるのは嫌だぞ」
宗教関係者から敵認定されるのはキツいな。迫害とかされたくないぞ。
「シュウジ様が聖人認定されたわけではなく、単なる町の名前に使っただけですので。それにシュウジ様なら問題ないでしょう」
「そうか?」
アッサリと大丈夫だと言われたけど、端から見ればそんなもんか?
「はい。それこそミレーヌ様に一言口添えをお願いすれば」
「……そうだな」
何でもかんでもミレーヌ頼みもカッコ悪いけど、その時は頼るのが一番だろう。守護天使扱いだからだ。
この大陸で信仰されているのは、今さら名前を挙げるとアンフィニ教という宗教で、形としては多神教になる。アンフィニって無限のことだ。創造神の下に様々な神がいて、神話の内容としてはギリシャ神話やローマ神話に近い。その神々を信仰するのがアンフィニ教だ。教会組織はカトリックに近い。
ちなみにアンフィニ教では神々の名前は明らかになっていない。神の名を口にするのは失礼なことだと考えられているようで、創造神とか光の神、海の神、音楽の神などの呼び方がされている。その神の使いが天使になる。
天使にも色々な種類がいると考えられ、メッセンジャーとしての天使もいれば、特定の人物を守る守護天使もいる。「いずれこの人が天に召される時には私たちが迎えにきます」という神による一種のマーキング行為を行うのが守護天使ということにアンフィニ教ではなっている。だから俺は神の関係者になる予定者ということだ。俺の側に神の使いがいるんだから教会としては何も言えないだろう。もしかしたらホントに聖シュウジと呼ばれるかもしれないからだ。でもな……。
「まあ名前はそれでいいか。それでここのところで何か問題はないか?」
死んだ後のことは死後に考えればいい。いや、死んだことにしてどこかに隠居するんだけどな。
「大きな問題はなさそうです。衣食住に関してであれば、衣食は問題なし、住については進行中です。畑と……水田でしたか、そちらも準備を進めています。クロド王国出身の者もいますので、何から何まで手探りではなさそうです」
「それは心強いな」
俺も何となく日本の米作りを知っているだけで、しかもこの大陸の米とは違う。育て方が違うと知っているだけだ。必要があれば技術者を呼ぼうと思っていたけど、最初からいるなら大丈夫だな。
「気候的にもそこまで寒くはないので大丈夫だろうということでした。年に二回の収穫を目指すそうです」
「もうそこまで話が進んでるのか?」
まだ家を建てている段階だ。
「はい。最初に収穫した米をシュウジ様に食べてもらいたいと言っていました」
「それは楽しみだと俺が言っていたと伝えてくれ」
俺は基本的に米派だからな。ただインディカ米(タイ米)は日本人の俺にはどうしてもモソモソした食感に感じてしまう。そして茶碗を手に持って食べるというのは下品だとされているから茶碗でご飯を食べるのも無理だ。
タイ料理やベトナム料理では白米も出てくる。でもその場合はそのまま口に運ぶんじゃなくて濃い味付けをした料理を上に乗せることが多い。カオマンガイやコムタムがいい例だな。インディカ米は日本の米のように粘りがなく、甘みも少ないからだ。そうやって皿に白米を盛って上や横におかずを添える和食のレパートリーを開発したいと思っている。でもそうなると丼ものになるんだよな。
社会政策省に顔を出すと、ベルトが嬉しそうに俺に話を振ってきた。
実験都市は先日から動き始めた。まだまだ建設中で、とりあえず城壁と城門、そして田畑を用意しただけだ。家はまだほとんど建っていないので、住民たちは魔物の骨と皮で作ったテントを仮の家にしている。
この町の建設には社会政策省だけではなくて建設省、財務省など、いくつもの省庁動いた。俺が動くとなれば何かあると考えた大臣が多く、職人や術者を雇うためにそれなりの金が用意された。だからこそかなり予定が前倒しで進められたようだ。国としても様々な政策が行き詰まっているのは分かってたんだろう。
「そうか。揉めなかったか?」
「はい。さすがに移住政策を進めたのがシュウジ様ですので」
実験都市への移住は問題なく終ったけど、今後も移住の募集は続けるそうだ。王都にやって来る者はそう簡単には減らないからだ。
これまでは仕事を探しに王都に来て、仕事が見つからないのでスラムに入り、そこで何とか生きながらえていた。ただ環境は最悪だから死ぬ者も多かった。飢え死にじゃなくて病気で。それが今後は変わる。王都から半日歩けば働ける場所ができたからだ。体力があるうちに移動すれば死ぬことはないだろう。
俺が最初にできることはやった。後は他の者たちに任せた。俺としてはそんな感じだ。感覚としては……そうだな、俺は子供を持ったことがないから分からないけど、子供が独り立ちしたくらいの気分なんだろうか。そんなに長期に関わったわけじゃないし、まだまだやることは多いだろうけど、いつまでも俺が関わることはできない。そう思って今後はたまに見にいく程度に決めている。
「それでどんな名前になったんだ?」
「はい、サン=シュウジになりました」
「……もう一度言ってくれ」
「はい。サン=シュウジです」
「……」
「崇敬されていますね」
サンだからな。でも聖人って死んでから認定されるんじゃないのか?
「大臣が女神様に連なる存在だということはそこそこ知られていますので、それもあってのことだと思います」
「あながち間違いではないが……」
聖人を通り越して神だけどな。それを口にすることはできないけど。
「今さら変えろと言うのも彼らに悪いよな?」
「まあ彼らの好意というか敬意でしょうから」
ベルトの言葉のニュアンスから、どうも変えるのは難しいらしい。主に心情的に。まあ絶対に嫌ってわけじゃない。ただトラブルにならないかだ。
「それより俺が聖人みたいになっていることについては教会の方では問題にはなってないのか? 教会と揉めるのは嫌だぞ」
宗教関係者から敵認定されるのはキツいな。迫害とかされたくないぞ。
「シュウジ様が聖人認定されたわけではなく、単なる町の名前に使っただけですので。それにシュウジ様なら問題ないでしょう」
「そうか?」
アッサリと大丈夫だと言われたけど、端から見ればそんなもんか?
「はい。それこそミレーヌ様に一言口添えをお願いすれば」
「……そうだな」
何でもかんでもミレーヌ頼みもカッコ悪いけど、その時は頼るのが一番だろう。守護天使扱いだからだ。
この大陸で信仰されているのは、今さら名前を挙げるとアンフィニ教という宗教で、形としては多神教になる。アンフィニって無限のことだ。創造神の下に様々な神がいて、神話の内容としてはギリシャ神話やローマ神話に近い。その神々を信仰するのがアンフィニ教だ。教会組織はカトリックに近い。
ちなみにアンフィニ教では神々の名前は明らかになっていない。神の名を口にするのは失礼なことだと考えられているようで、創造神とか光の神、海の神、音楽の神などの呼び方がされている。その神の使いが天使になる。
天使にも色々な種類がいると考えられ、メッセンジャーとしての天使もいれば、特定の人物を守る守護天使もいる。「いずれこの人が天に召される時には私たちが迎えにきます」という神による一種のマーキング行為を行うのが守護天使ということにアンフィニ教ではなっている。だから俺は神の関係者になる予定者ということだ。俺の側に神の使いがいるんだから教会としては何も言えないだろう。もしかしたらホントに聖シュウジと呼ばれるかもしれないからだ。でもな……。
「まあ名前はそれでいいか。それでここのところで何か問題はないか?」
死んだ後のことは死後に考えればいい。いや、死んだことにしてどこかに隠居するんだけどな。
「大きな問題はなさそうです。衣食住に関してであれば、衣食は問題なし、住については進行中です。畑と……水田でしたか、そちらも準備を進めています。クロド王国出身の者もいますので、何から何まで手探りではなさそうです」
「それは心強いな」
俺も何となく日本の米作りを知っているだけで、しかもこの大陸の米とは違う。育て方が違うと知っているだけだ。必要があれば技術者を呼ぼうと思っていたけど、最初からいるなら大丈夫だな。
「気候的にもそこまで寒くはないので大丈夫だろうということでした。年に二回の収穫を目指すそうです」
「もうそこまで話が進んでるのか?」
まだ家を建てている段階だ。
「はい。最初に収穫した米をシュウジ様に食べてもらいたいと言っていました」
「それは楽しみだと俺が言っていたと伝えてくれ」
俺は基本的に米派だからな。ただインディカ米(タイ米)は日本人の俺にはどうしてもモソモソした食感に感じてしまう。そして茶碗を手に持って食べるというのは下品だとされているから茶碗でご飯を食べるのも無理だ。
タイ料理やベトナム料理では白米も出てくる。でもその場合はそのまま口に運ぶんじゃなくて濃い味付けをした料理を上に乗せることが多い。カオマンガイやコムタムがいい例だな。インディカ米は日本の米のように粘りがなく、甘みも少ないからだ。そうやって皿に白米を盛って上や横におかずを添える和食のレパートリーを開発したいと思っている。でもそうなると丼ものになるんだよな。
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