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4話
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翌日、京弥は迎えにきた部下とともにイタリアへ帰っていった。やっと訪れた平和な日常。新は縁側に座り日向ぼっこをする葵の隣に座る。
久々の2人きりの日常。どきどきと胸が鳴る。
「京弥、帰っちゃったね」
「うん」
「寂しい?」
「ちょっとだけ」
新は横に座る葵をちらりと見る。久々に近くで見る葵。気づかれないように少しだけ近寄る。
「京弥はね、海外にいる親戚に引き取られたんだけど、あの性格だから馬が合わなくて親戚の家から追い出されたんだ。一時期、ストリートチルドレンになったらしいんだけど、その時拾ってくれたのが今のマフィアのボスだったんだって」
日本に帰る金もなく、住む家もなかった京弥は必然的にストリートチルドレンとなった。ストリートチルドレンとして過ごしていたある日、たまたま通りかかったイタリアのマフィアのボスに気に入られた京弥は、暖かい食べ物と寝床を与えることを条件にボスの養子になったらしい。マフィアの環境が京弥には合ってたらしく、すぐに才能が開花した。
あれほどのサディストならマフィアは天職だろう。毎日のように人をいたぶれるのだから。
「根は優しいよね」
怖いけど。
「京弥は今も昔も優しいよ」
京弥を思いながら、ふふふ、と葵は笑う。新はそっと葵の手に自分の手を重ねた。
「手握っていい?」
「もう握ってるようなもんじゃん」
「ちゃんと握りたい」
「……いいよ」
新は葵の手のひらと自分の手のひらを重ねて、貝殻繋ぎをする。じんわりと伝わってくる葵の体温。表情筋が緩む。
「こうしてみたかった」
幸せだなと、新は幸福を噛みしめる。
「先生は俺でいいの?」
葵は申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「それまだ言うの。いい加減聞き飽きたんだけど」
「だって自信ない。俺、そういうの今まで避けてたから……」
「じゃあ、僕が初めてってこと?」
葵は控えめに頷いた。
ああ、神様。ありがとう。葵の初めては全部僕のものなんですね。
今日ほど幸せだと思った日はない。真面目に生きてきてよかった。
「でも、番になるのは病気が治ってからがいい」
「それはいつでもいい。葵のタイミングに合わせるから」
「ありがとう」
葵はこてんと新の肩に頭をすり寄せた。
か、可愛い~‼︎‼︎
必死に理性を総動員させる。
ここで手を出したらダメだ。節操のないすぐ手を出す大人だと思われてしまう。
そんなことしていたら我慢の限界を迎えて葵を襲うんじゃないか、と悪魔アラタが囁く。
そんなことない。葵は初めてなんだし、襲われた経験もある。下手に手を出したら嫌われるぞ。と天使アラタが囁く。
悪魔と天使の言い争いの結果、新は手を出さない結論に至った。
葵とはじっくりゆっくりと時間をかけて愛を育んでからキッスを…。
そんなことを考えていたときだった。下から葵の顔が近づいてきて、ふにっと柔らかいものが触れた。
驚き目を丸くする新を見て、葵は微笑む。
「さて、昼ごはんの準備をするか」
葵は立ち上がるとそのままリビングに行った。
残された新は、そのまま後ろへと倒れ、畳の上に仰向けになる。未だに残る葵の唇の感触。
柔らかかった。
先ほどの葵からのキスを思い出しながら、新はごろごろと左右に転がったり足をバタつかせ、しばらく幸せ悶えるのであった。
久々の2人きりの日常。どきどきと胸が鳴る。
「京弥、帰っちゃったね」
「うん」
「寂しい?」
「ちょっとだけ」
新は横に座る葵をちらりと見る。久々に近くで見る葵。気づかれないように少しだけ近寄る。
「京弥はね、海外にいる親戚に引き取られたんだけど、あの性格だから馬が合わなくて親戚の家から追い出されたんだ。一時期、ストリートチルドレンになったらしいんだけど、その時拾ってくれたのが今のマフィアのボスだったんだって」
日本に帰る金もなく、住む家もなかった京弥は必然的にストリートチルドレンとなった。ストリートチルドレンとして過ごしていたある日、たまたま通りかかったイタリアのマフィアのボスに気に入られた京弥は、暖かい食べ物と寝床を与えることを条件にボスの養子になったらしい。マフィアの環境が京弥には合ってたらしく、すぐに才能が開花した。
あれほどのサディストならマフィアは天職だろう。毎日のように人をいたぶれるのだから。
「根は優しいよね」
怖いけど。
「京弥は今も昔も優しいよ」
京弥を思いながら、ふふふ、と葵は笑う。新はそっと葵の手に自分の手を重ねた。
「手握っていい?」
「もう握ってるようなもんじゃん」
「ちゃんと握りたい」
「……いいよ」
新は葵の手のひらと自分の手のひらを重ねて、貝殻繋ぎをする。じんわりと伝わってくる葵の体温。表情筋が緩む。
「こうしてみたかった」
幸せだなと、新は幸福を噛みしめる。
「先生は俺でいいの?」
葵は申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「それまだ言うの。いい加減聞き飽きたんだけど」
「だって自信ない。俺、そういうの今まで避けてたから……」
「じゃあ、僕が初めてってこと?」
葵は控えめに頷いた。
ああ、神様。ありがとう。葵の初めては全部僕のものなんですね。
今日ほど幸せだと思った日はない。真面目に生きてきてよかった。
「でも、番になるのは病気が治ってからがいい」
「それはいつでもいい。葵のタイミングに合わせるから」
「ありがとう」
葵はこてんと新の肩に頭をすり寄せた。
か、可愛い~‼︎‼︎
必死に理性を総動員させる。
ここで手を出したらダメだ。節操のないすぐ手を出す大人だと思われてしまう。
そんなことしていたら我慢の限界を迎えて葵を襲うんじゃないか、と悪魔アラタが囁く。
そんなことない。葵は初めてなんだし、襲われた経験もある。下手に手を出したら嫌われるぞ。と天使アラタが囁く。
悪魔と天使の言い争いの結果、新は手を出さない結論に至った。
葵とはじっくりゆっくりと時間をかけて愛を育んでからキッスを…。
そんなことを考えていたときだった。下から葵の顔が近づいてきて、ふにっと柔らかいものが触れた。
驚き目を丸くする新を見て、葵は微笑む。
「さて、昼ごはんの準備をするか」
葵は立ち上がるとそのままリビングに行った。
残された新は、そのまま後ろへと倒れ、畳の上に仰向けになる。未だに残る葵の唇の感触。
柔らかかった。
先ほどの葵からのキスを思い出しながら、新はごろごろと左右に転がったり足をバタつかせ、しばらく幸せ悶えるのであった。
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