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第47話 グループD 前半
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『えー、お待たせしました。出場選手の皆様、準備はよろしいでしょうか?』
巨大なスクリーンに待機室の映像が映し出された。
ファシリ・テイトと復活したポテトが居る3Dのスタジオとは違う。ポテトが大会を実現するために用意した仮想空間であり、それぞれ別の場所から配信している五人のアバターが集まっている。
並び順は、直前に紹介した順番と同じ。
フードを被ったミーコは、右端にちょこんと立っている。
『皆様の表示、非表示は我々運営が制御します。負けたら即消しますので、せいぜい頑張ってください』
チョットォ! イイカタァ!
アツカイヒドクナイカナァ!?
『元気いっぱいですねぇ』
早速、司会と出場選手による愉快なやり取りが始まった。
もちろんミーコは一言も喋らない。何か言いたい気持ちはあるけれど、知らない人が沢山居る状況で、彼女にそれを要求するのは酷な話であった。
『早速ですが、抽選を始めます!』
デデン!
画面が切り替わり、ルーレットが現れた。
『二つの矢印に示された選手は、裏で配布した対戦部屋に入室してください!』
ミーコを除く出場選手達が返事をした。
『記念すべき第一戦は……ジャラララララララ』
セルフBGM。
数秒後、ルーレットが止まる。
『イノ選手! そして、いきなり来ました! 真希の弟子、ミーコ選手です!』
* * *
ミーコは事前に共有された手順に従って対戦会場に入室した。
実は予選が始まる前に一度だけリハーサルが行われているため、その動きは非常にスムーズだった。
『えー、お二人とも、聴こえますか?』
『ふひっ、感度良好です』
ミーコは無言で頷いた。
それから、声を出す代わりにゲーム画面でカーソルを右に左に移動させる。
『ミーコ選手、大丈夫そうですね』
現在、スクリーンの中央にはゲーム画面が表示されている。また、それを挟む形で出場選手のアバターが表示されており、視聴者は出場選手の目や口の動きを見ることができる。
『待ってください!』
『イノ選手、どうしましたか?』
:命乞いか?
:命乞いやろうな
:普通にやったら絶対負ける
イノのファンによるコメント。
『小娘。あなたァ、ミーコだったかしらァ?』
イノは粘着質な声で言った。
『真希の弟子だか何だか知らないけど、勝つのはイノちゃんよ!』
『おぉっと! これは見事なフラグ構築です!』
『無礼ねぇ!? 宣戦布告と言いなさい!』
『そうですか。ミーコ選手、何かコメントはありますか?』
…………。
『ミーコ選手?』
…………。
『………………にゃ、にゃほぉ。ミーコでーす』
『あはは。ボットかな?』
そのツッコミを受け、コメント欄には「草」という文字が大量に流れた。ほとんどの視聴者は今日を心待ちにしていたものであることが分かる。
このように、とても良い雰囲気の中で予選が進行していた。
『さぁ、まもなく初戦が始まります。試合は、この私、ファシリ・テイトによる実況と、ポテト氏による解説で提供いたします』
『よろしくぅ』
『ありがとうございます。さて、イノ選手、ミーコ選手、共にぽよを選択しました。そしてゲーム画面に移動します。向かって左側がイノ選手、右側がミーコ選手です』
レディ・ゴー!
『始まりました! おぁぉ! ミーコ選手速い! 速過ぎる!』
『おー、GMRだねぇ』
『ポテトさん、GMRとは?』
『グレート・真希・連鎖の略だよ。真希が得意とする組み方だねぇ』
『なるほど。弟子として、しっかり技を継承しているようですね……おっとぉ!? 言っている間に連鎖が始まったァ! これは……』
ぽよは連鎖が終わるまでに時間を要する。
ポテトはミーコの盤面を凝視して、四連鎖目のぽよが昇天したところで言った。
『八連鎖だねぇ』
『いきなりの八連鎖! イノ選手、これに対応できるのかぁ!?』
視聴者達の目がイノの盤面に集まる。
どこか慌てた様子でぽよを積み上げ――発火!
『イノ選手反撃だぁ! あまり繋がっていないように見えるがこれは……?』
『二連鎖だねぇ』
イノはミーコの攻撃を相殺できず、画面上部に「落下予告ぽよ」が現れる。それは盤面全域を余裕で埋める量だった。イノは次のぽよが落下するまでに、最低でも五連鎖を達成する必要がある。
『詰みだねぇ』
ポテト、冷静な解説。
『イノ選手、諦めたのかミュート芸をしているようです』
ファシリ・テイトも冷静に実況する。
そして数秒後、イノ・チ・ゴーイの断末魔が響き渡った。
『決着ぅ! 初戦を制したのはミーコ選手! 圧倒的な実力を見せつけました!』
『いやぁ強かったねぇ』
『やはり、ポテトさんの目から見ても強かったと?』
『このグループはミーコで決まりかもね』
『これは珍しく高評価だ! ミーコ選手、何かコメントはありますか?』
『…………』
『ミーコ選手? 聴こえますか?』
『…………』
『おっと、これは……マイクのトラブルでしょうか?』
『…………にゃ、にゃほぉ。ミーコでーす』
『それしか言わない!』
ファシリ・テイトは鋭くツッコミを入れ、視聴者の反応を伺うようにしてコメント欄を凝視した。
:てめぇミーコに舐めた口きいてんじゃねぇぞ
:真希から人見知りって注意されてんだろうがクソ司会者がよぉ
なんか怖いやつおるな。
ファシリ・テイトはチラと見えた強いコメントから目を逸らし、司会を再開する。
『というわけで、初戦はミーコ選手の勝利でした! しかし、敗北したイノ選手にもまだまだチャンスはあります! またポテト氏からの高評価が出ましたが、グループDには他にも注目選手が残っております! これはもう目が離せない! 早速、次の抽選を始めましょう!』
流れるようなコメント。
その後、スクリーンにルーレットが現れる。
――このような流れで、予選はテンポ良く進行する。
二戦目以降、しばらくミーコの出番が無いまま時間が過ぎた。
まずはセーヌがまさしと馬に二連敗。
崖っぷちのセーヌがイノに勝利して、まさしが馬に敗北する。
その後、イノが絶叫しながらまさしに勝利したところで六戦目が終了。
現在の戦績は以下のようになっている。
・イノ・チ・ゴーイ
××〇
カーマ・セーヌ
××〇
ポヨブレッド
〇〇
まさし
〇××
ミーコ
〇
『意外にも混戦模様となったグループDィ!』
『馬と猫の一騎打ちかなぁ』
『ここまで三者が二敗という状況! 次で初めての脱落者が出てしまう予感です!』
ファシリ・テイトはポテトによる冷静な解説を無視して声を張り上げる。
そして、七度目のルーレットが動き始めた。
『――おぉっとこれはぁ!? ここで再びミーコ選手の出番! 相手はなんと、初戦と同じイノ選手だ!』
『なぁんでよぉ!?』
――後半に続く
巨大なスクリーンに待機室の映像が映し出された。
ファシリ・テイトと復活したポテトが居る3Dのスタジオとは違う。ポテトが大会を実現するために用意した仮想空間であり、それぞれ別の場所から配信している五人のアバターが集まっている。
並び順は、直前に紹介した順番と同じ。
フードを被ったミーコは、右端にちょこんと立っている。
『皆様の表示、非表示は我々運営が制御します。負けたら即消しますので、せいぜい頑張ってください』
チョットォ! イイカタァ!
アツカイヒドクナイカナァ!?
『元気いっぱいですねぇ』
早速、司会と出場選手による愉快なやり取りが始まった。
もちろんミーコは一言も喋らない。何か言いたい気持ちはあるけれど、知らない人が沢山居る状況で、彼女にそれを要求するのは酷な話であった。
『早速ですが、抽選を始めます!』
デデン!
画面が切り替わり、ルーレットが現れた。
『二つの矢印に示された選手は、裏で配布した対戦部屋に入室してください!』
ミーコを除く出場選手達が返事をした。
『記念すべき第一戦は……ジャラララララララ』
セルフBGM。
数秒後、ルーレットが止まる。
『イノ選手! そして、いきなり来ました! 真希の弟子、ミーコ選手です!』
* * *
ミーコは事前に共有された手順に従って対戦会場に入室した。
実は予選が始まる前に一度だけリハーサルが行われているため、その動きは非常にスムーズだった。
『えー、お二人とも、聴こえますか?』
『ふひっ、感度良好です』
ミーコは無言で頷いた。
それから、声を出す代わりにゲーム画面でカーソルを右に左に移動させる。
『ミーコ選手、大丈夫そうですね』
現在、スクリーンの中央にはゲーム画面が表示されている。また、それを挟む形で出場選手のアバターが表示されており、視聴者は出場選手の目や口の動きを見ることができる。
『待ってください!』
『イノ選手、どうしましたか?』
:命乞いか?
:命乞いやろうな
:普通にやったら絶対負ける
イノのファンによるコメント。
『小娘。あなたァ、ミーコだったかしらァ?』
イノは粘着質な声で言った。
『真希の弟子だか何だか知らないけど、勝つのはイノちゃんよ!』
『おぉっと! これは見事なフラグ構築です!』
『無礼ねぇ!? 宣戦布告と言いなさい!』
『そうですか。ミーコ選手、何かコメントはありますか?』
…………。
『ミーコ選手?』
…………。
『………………にゃ、にゃほぉ。ミーコでーす』
『あはは。ボットかな?』
そのツッコミを受け、コメント欄には「草」という文字が大量に流れた。ほとんどの視聴者は今日を心待ちにしていたものであることが分かる。
このように、とても良い雰囲気の中で予選が進行していた。
『さぁ、まもなく初戦が始まります。試合は、この私、ファシリ・テイトによる実況と、ポテト氏による解説で提供いたします』
『よろしくぅ』
『ありがとうございます。さて、イノ選手、ミーコ選手、共にぽよを選択しました。そしてゲーム画面に移動します。向かって左側がイノ選手、右側がミーコ選手です』
レディ・ゴー!
『始まりました! おぁぉ! ミーコ選手速い! 速過ぎる!』
『おー、GMRだねぇ』
『ポテトさん、GMRとは?』
『グレート・真希・連鎖の略だよ。真希が得意とする組み方だねぇ』
『なるほど。弟子として、しっかり技を継承しているようですね……おっとぉ!? 言っている間に連鎖が始まったァ! これは……』
ぽよは連鎖が終わるまでに時間を要する。
ポテトはミーコの盤面を凝視して、四連鎖目のぽよが昇天したところで言った。
『八連鎖だねぇ』
『いきなりの八連鎖! イノ選手、これに対応できるのかぁ!?』
視聴者達の目がイノの盤面に集まる。
どこか慌てた様子でぽよを積み上げ――発火!
『イノ選手反撃だぁ! あまり繋がっていないように見えるがこれは……?』
『二連鎖だねぇ』
イノはミーコの攻撃を相殺できず、画面上部に「落下予告ぽよ」が現れる。それは盤面全域を余裕で埋める量だった。イノは次のぽよが落下するまでに、最低でも五連鎖を達成する必要がある。
『詰みだねぇ』
ポテト、冷静な解説。
『イノ選手、諦めたのかミュート芸をしているようです』
ファシリ・テイトも冷静に実況する。
そして数秒後、イノ・チ・ゴーイの断末魔が響き渡った。
『決着ぅ! 初戦を制したのはミーコ選手! 圧倒的な実力を見せつけました!』
『いやぁ強かったねぇ』
『やはり、ポテトさんの目から見ても強かったと?』
『このグループはミーコで決まりかもね』
『これは珍しく高評価だ! ミーコ選手、何かコメントはありますか?』
『…………』
『ミーコ選手? 聴こえますか?』
『…………』
『おっと、これは……マイクのトラブルでしょうか?』
『…………にゃ、にゃほぉ。ミーコでーす』
『それしか言わない!』
ファシリ・テイトは鋭くツッコミを入れ、視聴者の反応を伺うようにしてコメント欄を凝視した。
:てめぇミーコに舐めた口きいてんじゃねぇぞ
:真希から人見知りって注意されてんだろうがクソ司会者がよぉ
なんか怖いやつおるな。
ファシリ・テイトはチラと見えた強いコメントから目を逸らし、司会を再開する。
『というわけで、初戦はミーコ選手の勝利でした! しかし、敗北したイノ選手にもまだまだチャンスはあります! またポテト氏からの高評価が出ましたが、グループDには他にも注目選手が残っております! これはもう目が離せない! 早速、次の抽選を始めましょう!』
流れるようなコメント。
その後、スクリーンにルーレットが現れる。
――このような流れで、予選はテンポ良く進行する。
二戦目以降、しばらくミーコの出番が無いまま時間が過ぎた。
まずはセーヌがまさしと馬に二連敗。
崖っぷちのセーヌがイノに勝利して、まさしが馬に敗北する。
その後、イノが絶叫しながらまさしに勝利したところで六戦目が終了。
現在の戦績は以下のようになっている。
・イノ・チ・ゴーイ
××〇
カーマ・セーヌ
××〇
ポヨブレッド
〇〇
まさし
〇××
ミーコ
〇
『意外にも混戦模様となったグループDィ!』
『馬と猫の一騎打ちかなぁ』
『ここまで三者が二敗という状況! 次で初めての脱落者が出てしまう予感です!』
ファシリ・テイトはポテトによる冷静な解説を無視して声を張り上げる。
そして、七度目のルーレットが動き始めた。
『――おぉっとこれはぁ!? ここで再びミーコ選手の出番! 相手はなんと、初戦と同じイノ選手だ!』
『なぁんでよぉ!?』
――後半に続く
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