コレット・アグリネスの誤算【完結】

その後（婚外恋愛編）

ドミニク・ヴィレオン先生は、私の最初で最後の愛しい人だ。
私をレイプした男たちの策略で、強制的に５人の男と結婚させられ、輝かしい未来が閉ざされた後も、その愛は途切れることはなかった。結婚した事で、夫たちに接する時間が増え、その人となりも見えてくる。

それぞれに事情があり、悪い人ばかりじゃないって事も、頭では理解している。可愛い子供もいるし、情だって湧くけど、私の気持ちは、今も昔も変わらない。ドミニク先生を愛しているし、尊敬している。
先生は、危険を冒しながらも、こっそり通ってくれていた。口付けだけで、私を身を心も蕩けさせるのは、先生だけだ。こんなに愛し合っているのに、こそこそと隠れて密通するようなことはしたくないけど、仕方がない。私も先生も子供がいて、既婚者なのだから。

「先生……♡　来てくれたの？♡」
「ああ。今日は邪魔者が全員いないんだろ？」
「嬉しい♡　お仕事忙しいって聞いてたのに」

先生の子を身籠ってバレた時、ひどい折檻を受けた。けれど、念願の先生の子に、私は笑顔が絶えなかった。「初恋は実らないものよ」と友人には言われたけど、ついに実ったのだ。

「まるで学生の時みたいよねぇ♡」
「思い出すな。あの時は、本当に幸せだったよ」

私は信じられなかった。だって、ずっと夫に抱かれていたのに、たった１日先生としただけで、先生の子を身籠ったのだから。

「この尻軽女め…！　ちょっと目を離すと、すぐ他の男を咥えるんだから……！　こんな堂々と妊娠するなんて、５人も夫がいるのに足りないって言うの？　次、その男の子供を身籠ったら許さないよ？」

サミュエルは笑っていたけど、目は笑っていなかった。
「先生と逢えないなら死ぬ」と言って護身用の短刀を自身の手首に当てたら、渋々夫たちも矛を収めたけど「今度この男の子を妊娠したら赤子を殺すからね」と言われたので避妊には気を付けている。

「僕だって、コレットの夫なんですよ？　いくらコレットのお願いとはいえ……」
「アラン、お願ぁい…♡　私には貴方しか頼る人がいないの……」
「……！　兄様たちには、内緒ですからね」

アランに頼んで、避妊薬と、いざという時の堕胎薬も貰った。先生との子供は欲しかったけど、うんざりするほど子供は居るから、もうこれ以上欲しいとも思わなかった。

「またいらっしゃったのですか。その神経、見習いたくなるほど図太いですわね」

侍女のマリアは、先生を冷たい態度で出迎えるけど、気にならなかった。

マティアスだって他に女を作っているのに、なぜ私だけはだめなのか。サミュエルは「遊びと本気は違う」と言うけど、違わないと思う。

喜々として先生と逢引きを重ねていると、マリアが密告でもしているのか、次第に夫たちの笑顔が消え「監禁が好きなのかな？　鎖もいるかもしれないねえ」とサミュエルが最終通達をしてきたので、さすがに先生と逢う回数を減らすしかなかった。
でも逢えなければ逢えないほど、その恋は輝きを増した。

「せんせ…♡　私を愛して。めちゃくちゃにして♡」

やっぱり愛する人とのセックスは、全然違うし、いっしょにいて、すごい楽しかった。

「先生、傷増えた？　前はこんなところになったのに……」
「ああ、これか？　大した事のないかすり傷だよ。コレットは心配性だね」

先生は訪れる事に、胸が躍る冒険劇をお話してくれた。最近は魔物も増えて、先生であっても、いや先生だからこそ、学園の周辺に現れる魔物を間引く義務があるらしい。

「いいなあ。私も貴族じゃなかったら、冒険者になれたのかな」
「コレットは男に襲われそうだから、自衛できるぐらいの強さは身に着けないとだめだな」
「なんでよぉ」
「ほら、そんな可愛い顔をするからだ」と言って、笑って頭を撫でてくれるから好きだ。先生の笑顔は素敵すぎて、まともに直視できない。

「収納スキルは優秀だが、コレットは実習さぼって、魔物を倒したことがないから、レベル１のままだからなあ。収納上限も大したことないだろ？」
「それはほんと失敗したって思ってる。血臭くなるだろうし、魔力が上がってしまうと思ったから嫌だったんだけど、出るべきだったわね」
「血が苦手で失神する女の子もいるから、あまり強くは言えないが、レベル上げたら便利だと思うぞ」
「先生、今度連れてって♡」
「それはコレットの旦那さんに頼むんだね。きっと傷一つつかないように、護衛をたくさん雇ってくれるよ」

ぷん、とむくれていると先生が私を抱きしめ「コレット。そろそろ、先生と呼ぶのはやめないか？」と囁いた。
「はい。……私のドミニク♡」

ドミニクは口付けをして、愛してくれた。愛する者に愛される喜びに、狂喜する。

色々あったけれど、私はきっと、幸せ者なのだろう。