白薔薇姫は愛に溺れる【完結】

ちゃむにい

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レティアの亡骸は、エルファーンの教会に移された。レティアが亡くなった事を知り、実の娘のように可愛がっていた母も憤り、また嘆き悲しんだ。

「何時か君の眠るところへ行くから。それまで待っていておくれ」

涙を零しながら生前レティアが好きだった白い薔薇を棺に入れた。
レティアの顔は青白かったが、美しく死化粧を施され、まだ生きているかのようだった。
ああ、これが嘘だったら、どんなに良いことか。
今でも信じられないのだ。
レティアが、この世を去ってしまったという現実に。しかし、どうあがいても、目の前にある現実は変えられない。

彼女は亡くなってしまったのだ。
子供たちの母親であった存在は、もう動くことはない。
手の届かぬところにいってしまった母親を想い、棺の周りで泣き崩れる子供たちに、何と声を掛けたらいいのだろう。
愛する我が子に、何も出来ない自分の不甲斐なさを、痛感するだけだった。

レティアが亡くなった夜、女神様が嘆き悲しむかのように、星が闇夜に降り注いだ。

それから何日が経ったのだろうか。

もう、どこにもレティアはいない。
レティアが埋葬された墓には、毎日のように通っているが、心が晴れることはなかった。息子は深い悲しみに沈み、部屋に閉じこもって出てこようとはしない。
目の前で母親を殺されたことにショックを受け、娘も食事を取ることさえ出来ない。
なんとか子供に元気を出してもらおうとしたが、どれも逆効果となってしまった。

そして季節が過ぎ、夏になろうとした頃、思いもしなかった情報がもたらされた。

それは、レティアの妹であるエレノア王妃腹心の侍女からだった。
彼女は決意を込めた表情でガタガタと手を震わせながら、涙を零した。

「私……聞いて、しまったんです……! 小人に、あの方が命令するところを!」

その証言には証拠がなかった。
けれども、エレノア王妃の言動を見ていると、それは確かなものであるように感じた。しかし、それは今更だ。
レティアは、家族の中心だった。
残された家族は憔悴しきっている。
控えめな性格ゆえに優しく思慮深い彼女は、自分にとって自慢の王妃だった。国民を、家族を、まるで太陽のように照らして、守り慈しんでくれた。
レティアという太陽を失って、家族の心はバラバラになってしまった。

どんなに望んでも彼女が戻ってくることはない。

イシュラスの王に使者を送ると、エレノア王妃の侍女に伝えた時、怒りに満ちた叫びが聞こえた。それはロアンだった。私に隠れてその部屋にいたロアンは、エレノア王妃の侍女に詰め寄った。

「それは、本当なのか!?」

「ロアン!? なぜここにいる!?」

「お父さまは、腰ぬけだ!!! なぜ、戦をしないのです!!!」

「レティアが、戦争をして喜ぶと思うか?」

泣きそうになるのを堪えて、王子を見詰めた。

「戦争をしてもさらなる憎悪で帰ってくるだけだ。犠牲になるのは、何時も国民だ」

「けれどッ、それでは! お父さまが許しても、僕は許したくない……!!!」

「ロアン!」

部屋から飛び出していくロアンに、私は途方にくれた。
きっと今、何を言っても聞く耳を持たないだろう。

(レティア、君がいなければ僕は、こんなにも無力だ。君がいたらもっと違う言葉をかけたのだろうか……)

どう接したらいいのか、わからなかった。あの小人のせいで、小人として生きなければいけなかった時も、レティアが居たから頑張れた。

でも、もうレティアは居ない。

後日、長男であるロアンとイシュラス国のルナ姫は婚約が内定していたが、ロアンの強い希望により、取りやめとなってしまった。

自分自身の力で、家族を守らないといけない。
けれど、それは可能なんだろうか。
自分がつくった指輪で彼女は死んでしまったというのに。子供達はその事を知っているから、尚更自分のことを嫌っている。
不安に押しつぶされて、睡眠もあまりとれなくなっていった。

こんなに人は弱くなるのだということを、自分は知らなかった。

彼女が死んだ時の夢を良く見るようになった。

泣きながら起きて、レティアが横に居ないことに絶望した。

自分は一生の愛を誓った。
子供にとっての母親がレティアであるように。
自分にとっての王妃はレティアだけだった。

この悲しみを乗り越えられる日が来るのだろうか。

ただ、自問自答する日々だった。
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