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一章 ギルと名乗る男
答えあわせ(2)
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じわ、と広がるなんとも言えない温もりと痺れのような感覚を味わう暇もなく、ギルの手は容赦無く門を擦って、快感で追撃してくる。
「いっ、や……やめ、っんゃあああっ、ギル、ギルやめっ、て、……い、ゃんっ」
腰をひねって足をばたつかせ、甘い感覚に力が抜けそうになりながらどうにか要求を伝えると、ギルは訝りながらも手を止めてくれた。
息を整え、一息つく。
「痛むか?」
俺の顔を覗き込むギルに、首を横へ振る。
「ちが、……も、イったから」
気持ちよすぎておかしくなりそうだと伝えると、ギルはピタリと呼吸を止めた後、俺の昂りを見下ろした。
「まだ辛そうだが」
「あんっ」
つい、と指でつつかれ、はちきれそうなそこがぎりぎりのところで震える。
「こっちも……間が空いたせいかまだきつい」
「ふぁああぁぁあ……っ」
くちゅりと音を立ててゆっくりと指を引き抜かれ、ぞくぞくする感覚のまま声を絞り出す。ひくん、と物欲しそうにそこが窄んでしまう。
違う。だってもうギルの指が三本も入るんだから、解れてるはずだ。ギルがキツイと感じるのは、気持ち良くてたまらなくて、俺が締め付けてしまっていただけだ。
足を広げて、自分で股座の肉を指に引っ掛け、そこを開く。ギルを見つめながら、もう入れて、とか細い声でねだると、ギルはまた一瞬固まってから舌打ちをした。
「っ……ああもう、クソ……!」
軽い悪態をついて、俺の誘ったそこへ熱をあてがい、一気に俺を穿つ。
「ひ、っい、あぁあああああっ」
急に押し入ってきた太いものに、さっき弄られてイってしまったほど敏感でいやらしい場所で快感がほとばしる。
同時にその奥の、気持ちいい場所をギルの先端が掠め、擦って、胸まで達した甘くて大きなその感覚に、俺は耐え切れずに射精してしまった。
触れられてないのに勢い良く放たれた俺のもの。見上げたギルは満足そうに口元を歪めていて、余韻も相俟ってふるりとした。
さっきから短時間でイっている俺のことなど構わず、ギルが腰を揺らし始める。いつも最初は震えるようにして動いてくれるのに、今日はいきなり大胆なピストンで、俺は嫌がる間も無く快感を打ち付けられた。
「やあああっ、やあっ、いっ、や! まっ、……ギル、待っ……! イっ……ま、っあ、また、イ、ちゃ……ああっ」
ずく、ずちゅ、と力強い律動。容赦のない快感が俺を圧迫し、なのにたまらなく甘く疼くような感覚が抵抗する力を奪う。
上手く力の入らない身体で意思を示すにはもはや言葉しかないのに、それさえも断片と化し、声色は蕩けて快いということばかりを先に伝えてしまう。快いから、よすぎるからこそゆっくりして欲しいのに、ギルを煽る結果にしかなってないのは明白だった。
「んんんっ、ギル、ギルぅっ」
「ヒューイ……っ」
俺の腰を掴んで前屈みで腰を振るギルはまるで動物で、唸るような声で名前を呼ばれてぞわりとしたものが頭の上へ抜けていく。肌を撫でるような感覚は絶え間なく続いて、おかしくなりそうだった。いっそ絶頂を迎えて、おかしくなってしまいたかった。
射精の時はもうイくことしか考えられないけど、中でギルに突かれて生まれるそれはあまりにも強くて、俺の手から離れてしまう。制御できなくて、怖い。
その怖さが限りなく少ないのは、ギルだからだ。自分でどうにもできないけど、ギルが相手だから大丈夫だろうという気持ち。ギルは俺を気持ち良くしてくれると知っている。経験に裏打ちされたある種の信頼があって、俺はベッドの上で俺の身体を全てギルに預ける。
「あ、また、イっ……!」
射精し続けてるような気持ちよさに加えて、力を奪うような甘いときめきに似た疼きと、そして門を擦る鋭い快感。下腹部の中で蓄積されたものが弾けそうになる。
「くっ……はあっ、あ、」
感じているギルの声が聞こえた後直ぐ、ギルの熱がどくんと震えた。その後もびくびくして、その感覚でまた小さな絶頂がやってきて、ぎゅっとギルのものを締め付けた。
「う、ぁ……っ、締めすぎ、だ……」
荒い息に、情欲の滲んだ声が混じる。だって、と俺もどうにか言葉を発したものの、ぞくぞくした感覚が止まなくて、それを耐えるため口を噤んだ。
もっと大きなものが来そうだったのに、ギルがイく方が早くて遠のいてしまった。おかしくなりたい、と思った一線の向こうが見えた気がしたのに。
「またイった、か?」
それでも身体は快感に震えていて、俺の中もそうなのだろうか、ギルはふと笑みを乗せながらそう呟いた。
恥ずかしながらも肯定すると、ギルの唇が落ちてくる。重なった互いの唇は柔らかくて、イったせいだろうか、ぴりぴりとした快感が走って肩が跳ねた。
ギルが俺の首の下に両腕を回し、抱きしめてくる。俺もギルの肩や背中、腰を撫でると、色っぽい声が間近で響いた。
「……本当、お前すげえ良い」
ギルの舌が耳から顎を辿って首筋へ移動する。それだけなのに無性にぞくぞくしてしまう。思わずきゅっと下に力を入れると、まだまだ硬さを保ったままのギルを強く意識してしまった。
「んっ……あ、あっ……ん、なん、で、ギル、大っきいままっ……」
「取り敢えず出しただけで、『良かった』とは言ってない」
暴発とも言うべき早さをカバーするが如く、再びギルが動き始める。今までも一回で終わることはなかったけど、ここまでハイスピードで一回目が終わったことはなくて戸惑う。それも、繰り返されるキスに溶けていく。
「あっ……ふぁ、ん、ああん……」
打って変わってゆっくりとした腰つきに、甘えるような声が出て行く。甘ったるい気持ちをそのまま出したような正直な声だという自覚はあった。でも、取り繕おうとは思わない。何度やっても恥ずかしいけど、それ以上に気持ちいいし、そちらの方に気持ちが向いている。もう一方的に奪われることもないのだと思うと、ほっと力が抜ける思いがする。
お互いがお互いのものになるのなら、あとは共有するだけだ。失うわけじゃない。得るだけしかない。そのことが俺の気持ちを軽くする。心をほぐす。
「ん、ギル……ギル……」
名前を呼んで、ギルの腕に手を添え、さすり、肩へ滑り、そのまま腕を回して、ギルの後頭部とうなじに手を添え、キスに応える。緩やかに動くギルに合わせて腰をくねらせ、お互いを食べるように睦み合う。
ギルの手のひらが脇の下から腰へ滑り、そこで止まることなく、俺の太ももへ流れ、また登ってくる。暖かいそれに心地よさが染み入るようで、俺は一層足を絡めるようにギルの身体を挟み込んだ。
繋がった場所では門で摩擦が起こるほど動いているわけではないものの、ギルの動きに合わせて内壁が動いていて、穏やかな気持ちよさが湧き出している。
すごく、すごく気持ちいい。心地いい。
「ふぁっ……!」
うっとりしていると、ギルに乳首を弄られて身体が跳ねた。ぎゅっと門でギルを締め付けているのが分かる。
じんじんとした胸の二つの突起は、優しくつままれたかと思うと指の腹でぎゅっと押さえひっかけられて、強弱のついた快感に腰が揺れてしまう。
「ヒューイ……」
囁かれ、ギルの低い声が敏感な乳首へ響く。ギルの両手が俺の腰を掴んで、その腰がぐっと俺にのしかかるようにして押し付けられる。
「ギル……っ、ああっ……」
名前を呼ぶと、ギルの腰が引いて行き、門が擦れて快感が飛び散った。ぐぷり、と音がしてギルが抜け、そしてまた直ぐにくちゅ、といわせて入ってくる。大きな先端の凸凹で門を刺激され、遠のいていた快感が戻ってきた。心地よさよりもいやらしい気持ちよさが勝り、俺の制御下を離れて、今度は逆に、俺を服従させる。
「んっあっ、あっ」
徐々に早くなっていく律動。ギルに腕を回しながら揺さぶられるまま、生み出される快感に震え、鳴く。女のような音色が俺から発せられているのに、ギルは萎えるどころかますます力強くなっていく。耳元で呻くような声と息が繰り返されて、興奮しているそれに俺も気持ちが高まるばかりで、夢中になる。
油を足してないのにギルのピストンは何処か滑らかだ。多分、さっき中に出したものが助けてるのだと思う。
中を押され、門を擦られて、蕩ける感覚に徐々に舌や顎からも力が抜けて呂律が怪しくなる。
「あっやあっ、ぎりゅ、ふぁ、ふぅっ」
「快いか? ヒューイ」
「いいっ、きもち、い……っんゃ! はう、んっ、んっあ、はぁああっ」
ギルの声にぞくぞくするのが止まらない。二の腕のあたりから頭へ抜けていく寒気のようなそれに、射精した時のように震えてしまう。ギルが中を穿つ度に感じる射精感に、もう俺の股間は馬鹿になったような感じがする。ずっとイき続けているようで、出てるのか出てないのかさえ見ていないと分からず、でも見る力も必要性もなくて、気持ちいいという確かな感覚だけを追いかける。
「んっ……は、中、すげえいい。お前の中、出した後滑りがよくなる」
知ってたか? とギルが微かに笑う。知ってるわけないし、ギルの声はまるで俺に、俺の身体がどんな風なのか言い聞かせているようだった。
「きつめに締まるし温い。お前の尻も、このおっ勃ててるこれも、」
「ふゃっ」
つん、とそこをつつかれて、触れられてもいないのに溌剌としているものが弾けそうになる。
「汚いと思ったことはない。お前のケツの穴も……胸のこれと」
「ひゃん!」
乳首を引っかかれ、身体が弾む。
「この唇みたく薄っすら赤くなってて、舐めるのも楽しいし」
それはちょっと抵抗を覚えた方がいいと思う。
そんな理性的な言葉が出る間も無く、ギルが腰を寄せて俺を貫いた。
「あぁああぁあぁあっ」
「口と変わらねえなってずっと思ってた。……こっちは上のと違って、全部俺を咥えられるし、なッ」
「――っ!」
じわじわと引き抜かれ、また奥深くまで穿たれる。俺の尻とギルの股間が合わさった瞬間、一瞬目の奥が白く弾けた錯覚をした。足先が熱いような冷たいような、変な感じ。喉は引き攣れて声こそ出なかったが、身体は絶え間無く痙攣し、震えていた。
絶頂の余韻が僅かに引いていくと、ギルの言葉と今の状態がしっかり頭の中に入ってくる。
門さえ潜れば長さに余裕のあるそこは、ギルの全てを飲み込んでいた。フェラと違って、動くと俺まで気持ちいい。やらしい、穴。
急に羞恥心が湧いてきて顔をそむけると、ギルは俺の鎖骨を舐めながら両方の乳首をそれぞれの親指でこねくり回した。イったばかりでまだまだ感度の高い身体の中で、胸の高鳴りにも似た快感が点滅するようにあちこちで生まれる。そっとしておいてくれれば俺の身体は俺の思い通りにまた戻ってくるのに、ギルはそれを許してくれない。腰を小刻みに動かして、どちらかというと限界以上に俺の奥を突こうと腰を押し付けてくる。そのせいで、いつになく深いところまで届いた熱の先で新しい快感が生まれている。頭まで痺れるような、電気風呂に入ったときみたいな快感。
そんな身体の感覚が先走って、心の方がついていけない。これ以上されたら、いくらギル相手でも怖い。快感に溶けて、理性が焼き切れて、戻ってこられなくなりそうで。
「ギっ……ギル、俺もう、むり」
涙声でそう告げると、ギルは緩やかに腰を動かしながら唇を重ねてきた。宥めるようなそれを受け止める。
「そう言わずにもう少し付き合えよ……」
「やあんっ」
ギルが腰を打ち付けて、俺はまた引きずり出されるような感覚に混じる強い快感に思考が溶け始める。
「ふゃっ、あっんっ、らめっ、ぎぅ、っふううううっ」
腹筋がびくびくして、なのにつながった場所には力は入らなくて、ギルのされるがままに中を侵される。また波が引いていくような前触れが来て、ギルが刺激する場所に冷たくも思える快感が溜まっていく。身体いっぱいに感じるどんな気持ちよさもそこへ集まって、ぎゅっと圧縮していく。
「ヒューイ……っ、ヒューイっ……!」
「あっあっ、やんっ、ふぁ、あ、ああっ」
肌と肌がぶつかる音が遠い。ギルのくれる快感ばかりが強くて、なのに俺を呼ぶ声は俺の鼓膜を振るわせて、愛撫するように俺の肌を這う。
「っあ、あ、あ! っ、ぎ……も、ぁ、……イ、くっ イくぅっ!」
先に限界が来たのは俺の方だった。中で溜まった快感が一層強くなり、今まで早くおかしくなりたいと焦れていたのが嘘のようにあっさりと、まるで駆け上がるかのように一線を越える波。
「ああああー……っ!!!」
ぐずぐずなまま溺れもがくように声が揺れる。足の付け根が痙攣して、射精なんか目じゃないほどの気持ちよさが押し寄せ、俺を踏み荒すようにして駆け抜けていく。
「っうぁ……! きつ、っ」
「ひぃ、やあっああああっ」
ギルが律動を早め、終わりへ向かう。でもその動きは俺には激しすぎた。
びくびくと、もはやどこがひくついてるのか分からない震えの中、既に絶頂を迎えている最中の俺をさらに突くそれは、行き着く間もなく次の波を引っ張ってきた。
もう俺の手には負えない。受け入れるしか選択肢のない状況で、少しでも快感を逃がすためだろうか涙がこぼれた。それも、もう遅い。
「らめ、らめええっやあっまたくる、く、ふううっ……!」
「っ……あ、ああっ……出る、……ぁ、出るッ」
「ひ、んぁ、っあぁああああぁあぁあああ……!」
ほぼ同時だった。ギルのものがぐっと膨張し、痙攣する。俺は抱えきれない快感にもう一度身体を押し流され、一回目とは比べ物にならないほどに背がしなり、四肢が暴れた。ギルが押さえつけるようにしていなければもっと跳ねていたかもしれない。
少しの間、お互いに余韻に浸り、沈黙が落ちる。相手を気遣う余裕も失せ、自分の中に迸る嵐のような快感が過ぎるのを、息を荒らげて待つ。少ししてから、全てを俺の中で出し切るようにギルが動いた。
「んゃ……っ、ぁ、ん……」
ざわざわとしたものが肌を登っていく。見上げたギルの顔はしどけなくて、凄く色っぽかった。
その目が、俺へと合わせられる。見つめあった後、ギルがそっと俺に被さってきて、唇が重なった。
ちゅ、と小さな音が繰り返される。一通り余韻が引いた後は、気怠くもまったりとした心地よさが残るだけだ。そう、思っていたのに。
「んっ」
ギルの手が俺のものに添えられ、動き出した。
「っや、……」
「お前も出しとかないと収まらないだろ」
あんなに気持ちよかったのに、前は出ていなかったらしい。ギルの手淫で、門をひくつかせながら俺が射精すると、ようやくギルは俺を解放してくれた。
おざなりに指を振り、ぐちゃぐちゃになったものを消す。いい加減でもちゃんと振っていれば発動するのは素晴らしい。それも終えると、ギルは俺を抱え込むようにしてベッドへ横になった。
「……ねむたい」
腕の中で辛うじてそう呟くと、ギルは黙って俺の頭を撫でて頬に口づけた。覚えているのはそこまでだ。
目を開けると、既に部屋の照明は全て全開にしてあった。俺でないのならギルがしたことになるが、そのギルの熱はまだ俺のそばにある。時間は午前9時。……寝すぎかもしれない。
ゆっくり身体の状態を確かめつつ横向きになり、手をついて上半身を持ち上げる。腰の怠さが半端ないが、いつになく乱れてしまったのだから当然の結果だろう。目が覚めて、ベッドにギルがいる喜びの方が強いから、それで気持ちが沈むことはない。柔らかな布団とシーツが肌に心地いい。
……そういえば、服、全部脱いだままだ。
ふう、と息をついてまた俯せに潜り込んで布団を引き上げると、何の前触れもなく声をかけられた。
「よう」
「ひゃ」
慌てて隣を見ると、ギルの目はぱっちりと開いていて、今起きたわけではなさそうだった。きれいな肌や筋肉が惜しげもなく晒されていて、逞しいその身体に抱かれたのだと思うと今更、胸の鼓動が早くなる。
いつの間にこんな風に感じるようになったのだろう。女々しいと思われても仕方がないが、どう見ても男以外の何者でもない彼の身体を見て、身体が熱く反応するようになるとは思ってなかった。思うはずもない。そんな環境の中にはいなかったんだから。
「お、おはよう」
「おう」
初夜明けか! とでも突っ込まれそうなぎこちなさに、頭の一部が冷静になる。
それでも気恥ずかしさは消えなくて、枕に顔を埋めると、腰を撫でられ、上半身だけのしかかられた。
「具合は?」
「だ、だいじょうぶ。でも……今日はあんまりあちこちいけそうにないかも」
耳元で優しく囁かれてどぎまぎする。対するギルは余裕のある態度でそうかと言うだけだ。でも、その声に僅かに甘さを感じて、眠る前のことが頭をよぎる。
そうだ、ギルの話を聞かないと。
「……ギルの話、聞かせてくれない?」
空腹感はあるものの、今の空気じゃないと聞きにくい気がする。服を着て支度をしてしまえば朝食……いや、ブランチになるだろうし、捕まる云々というからには人には聞かれたくない話になるだろう。
ギルは即答はしなかった。でも、ゆっくり俺の上から退くと、仰向けになって語り始めた。
いわく、王都の貧民街で、スリを含め盗みをして生きていたという。
王都とはアルカディアにある人間の街の中でも一際大きく、王や貴族といった支配階級の人間が世襲で受け継がれている場所のことだ。アルカディアは城郭都市ごとに政治体制が異なっており、プレイヤーからするとそれがそのまま街の特徴として出てくるだけで終わるが、今はそれが大きな壁となって存在する、現実だ。王都は特に階級が固定されており、奴隷は奴隷、商人は商人、というように、階級の変更はほぼ受け付けられない。貧民街にいるのは奴隷でこそないものの、働かねば食うに困る層である。ギルの場合はストリートチルドレンのようなもの、といえば分かりやすいだろうか。
生まれは分からない。物心着いた時には孤児院にいて、真っ当とは言い難いそこを逃げ出した。
幸いにもギルは身体能力、ひいては戦闘能に長け、逞しく生きていくうちに冒険者として身を立てられるようになった。
ギルのような類稀なる能力を持って生まれた者は多数おり、それはプレイヤーの有するスキルに匹敵する。アルカディアの現地人である彼らはその能力のことを『ギフト』と呼んでおり、神々から与えられた特別な力であると考えている。ギフトの種類はスキル並に様々存在するが、違う点は決していい能力ばかりではなく、コントロールできるかどうかは当人の力量次第、しかも物によってはどうにもならないものまであるところだ。
モンスターの討伐依頼をこなせるギルは順調に稼いでいたが、ある時報酬の高さにつられて請け負った貴族の護衛依頼で、護衛対象である貴族の子女に気に入られてしまった。これがとんでもなく我儘で困った子だったらしく、ギルを飼うなどと言い出した。
奴隷ならまだしも、ギルは曲がりなりにもれっきとした、市民として認められた冒険者である。それもあって当然断ったのだが、子女は諦めずにギルを軟禁。そこから逃げ出したギルを有り余る家の権力でごり押しし指名手配。ギルの有能さを惜しんだ組合は真偽のほどを追及したがったが、その貴族の子女の家は王都でも有数の力を持っていたため敢え無く失敗。ギフト持ちとはいえ化け物級の強さを有しているわけではなかったギルは追われる身となった。
幸い姿絵などはそこまで似せられたわけではなく、ギルも本名を明かすことはやめて偽名を使うことにしたため、バレることはほぼなかった。城郭都市に出入りするのも最低限に留めたのもよかった。しかし、気持ちは収まるはずもない。ギルは腹いせに圧政を敷く貴族やそれに連なる荷馬車を襲う盗賊行為に走りはじめた。殺しこそはしなかったが、襲われた貴族らから賞金を懸けられてしまう。
それでも襲うという行為を終えた後は置いて行かれた金目の物や馬を必要に応じてばら撒いていたため、村を襲うこともなく、むしろ既に指名手配されていた盗賊や、違法な奴隷商人を潰すこともしていたのがいい方向に働いた。市民の多くからは義賊として慕われていることもあり、流れるまま盗賊行為を繰り返しているうちに後をついてくる者が出始めた。
暴走されないようにとギルは彼らを率いて一つのチームを作り、チーム単位での組合登録を行うことにした。これはゲームではクランと呼ばれる集団のことで、同じ目的のもとに活動する集まりを指す。特に冒険者組合では個人での登録のほかに、クランとしての登録が可能だ。そこに個人名は記されないため、クラン用のドッグタグさえあればそれで諸々の手続きが行える。城郭都市への出入りも、だ。
賞金首を仕留めてクラン名義で手続きをすることで、資金はそこまで枯渇することもなかった。
個人的なタグは使わないようにしながら盗賊潰しや貴族狩りを繰り返したギルだったが、賞金首としては捕まれば犯罪奴隷としての道しか残されていない。犯罪奴隷は奴隷の中でも厳しい労働を課せられ、待遇も悪い。それが罪に対する罰であるからだ。
クランの顔ぶれについてもそこまで気を許せるわけでもなく、そしてまた全ての元凶である子女の手もしつこく、ある時遂に追いつめられた。仲間には全員散り散りに逃げるように言い渡した後で、ギルは辛くも追っ手を返り討ちにしたが、自身も深手を負ってしまった。不運にも追っ手が持っていた解毒剤と思しきものは戦いの最中にダメになってしまい、更なる追っ手を警戒したギルは麻痺と毒に侵されながら這う這うの体でそこから離れたが、ついに力尽きた。
「……そこで俺を拾ったのが、お前だったわけだ」
「はぁ……」
ある意味奇跡的な出会いを果たしたギルだが、俺のことは最初から全く信用していなかった。俺を言葉遣いや態度、身を置く環境から貴族に連なる者であると思ったギルは、身体が回復するまでと言って留まり、俺からどうにかして素性を探ろうとした。
が、当然俺には、『この世界で今まで生きてきた年月』自体がほぼないに等しい。
なにも収穫がないことを不審に思いつつも、俺が助けたのは偶然ではなくそのように追いつめられたのではないかという疑いが払拭できなかったギルは長居は無用と立ち去ることにした。その際、いつもの盗賊行為を働くことは忘れずに。
手癖以上に、そうすることで限りなく可能性としては低いものの、子女に手配された手下かもしれない俺に対して溜飲を下げるために。
とはいえ、ギルはクランのメンバーを集めるより何より、俺に利用価値を見出した。持ち出したアイテムは必要だからそうしたわけではなく、やはり村々でばら撒かれており、この≪ゼクスシュタイン≫へ来るまでの村人たちの反応はそのせいだったというわけだ。そりゃあそんなことをしていれば評判も立つ。
が、どんなに盗もうと俺は変わらずギルを迎え入れたため、苛立ち半分、詰問半分に俺を犯そうと思ったと、こういうことのようだった。件の子女とは関係がなくても、貴族であろう俺を犯すことで貴族に対する鬱憤を晴らすため。……それほど腹に据えかねていたのだろう。普段かかわることのない階級の人間故に、俺は正しく『格好の獲物』であったわけだ。
それ以降の顛末は、昨晩の通り――。
「最初は不当な指名手配でも、略奪行為からは弁解の余地はないんだけど」
「なんとでもいえ。別に後悔をしているわけじゃない」
権力にものを言わせた貴族の子もそうだが、それがまかり通ってしまうという王都の力関係は看過できない。
今のところ王都に行かなければならないことはないが、それでも樹生のことを考えれば、その必要も出てくるかもしれない。
「でも、王都には近づかない方がよさそうだなあ」
呟くと、ギルはそれを否定した。
「そうでもない」
「え?」
眠気の覚めてきた頭と身体で疑問を口にする。ギルは寝返りを打って俺の目を覗き込んだ。
「合法的に俺が追っ手と賞金稼ぎどもから逃げることができる方法が一つある」
「いっ、や……やめ、っんゃあああっ、ギル、ギルやめっ、て、……い、ゃんっ」
腰をひねって足をばたつかせ、甘い感覚に力が抜けそうになりながらどうにか要求を伝えると、ギルは訝りながらも手を止めてくれた。
息を整え、一息つく。
「痛むか?」
俺の顔を覗き込むギルに、首を横へ振る。
「ちが、……も、イったから」
気持ちよすぎておかしくなりそうだと伝えると、ギルはピタリと呼吸を止めた後、俺の昂りを見下ろした。
「まだ辛そうだが」
「あんっ」
つい、と指でつつかれ、はちきれそうなそこがぎりぎりのところで震える。
「こっちも……間が空いたせいかまだきつい」
「ふぁああぁぁあ……っ」
くちゅりと音を立ててゆっくりと指を引き抜かれ、ぞくぞくする感覚のまま声を絞り出す。ひくん、と物欲しそうにそこが窄んでしまう。
違う。だってもうギルの指が三本も入るんだから、解れてるはずだ。ギルがキツイと感じるのは、気持ち良くてたまらなくて、俺が締め付けてしまっていただけだ。
足を広げて、自分で股座の肉を指に引っ掛け、そこを開く。ギルを見つめながら、もう入れて、とか細い声でねだると、ギルはまた一瞬固まってから舌打ちをした。
「っ……ああもう、クソ……!」
軽い悪態をついて、俺の誘ったそこへ熱をあてがい、一気に俺を穿つ。
「ひ、っい、あぁあああああっ」
急に押し入ってきた太いものに、さっき弄られてイってしまったほど敏感でいやらしい場所で快感がほとばしる。
同時にその奥の、気持ちいい場所をギルの先端が掠め、擦って、胸まで達した甘くて大きなその感覚に、俺は耐え切れずに射精してしまった。
触れられてないのに勢い良く放たれた俺のもの。見上げたギルは満足そうに口元を歪めていて、余韻も相俟ってふるりとした。
さっきから短時間でイっている俺のことなど構わず、ギルが腰を揺らし始める。いつも最初は震えるようにして動いてくれるのに、今日はいきなり大胆なピストンで、俺は嫌がる間も無く快感を打ち付けられた。
「やあああっ、やあっ、いっ、や! まっ、……ギル、待っ……! イっ……ま、っあ、また、イ、ちゃ……ああっ」
ずく、ずちゅ、と力強い律動。容赦のない快感が俺を圧迫し、なのにたまらなく甘く疼くような感覚が抵抗する力を奪う。
上手く力の入らない身体で意思を示すにはもはや言葉しかないのに、それさえも断片と化し、声色は蕩けて快いということばかりを先に伝えてしまう。快いから、よすぎるからこそゆっくりして欲しいのに、ギルを煽る結果にしかなってないのは明白だった。
「んんんっ、ギル、ギルぅっ」
「ヒューイ……っ」
俺の腰を掴んで前屈みで腰を振るギルはまるで動物で、唸るような声で名前を呼ばれてぞわりとしたものが頭の上へ抜けていく。肌を撫でるような感覚は絶え間なく続いて、おかしくなりそうだった。いっそ絶頂を迎えて、おかしくなってしまいたかった。
射精の時はもうイくことしか考えられないけど、中でギルに突かれて生まれるそれはあまりにも強くて、俺の手から離れてしまう。制御できなくて、怖い。
その怖さが限りなく少ないのは、ギルだからだ。自分でどうにもできないけど、ギルが相手だから大丈夫だろうという気持ち。ギルは俺を気持ち良くしてくれると知っている。経験に裏打ちされたある種の信頼があって、俺はベッドの上で俺の身体を全てギルに預ける。
「あ、また、イっ……!」
射精し続けてるような気持ちよさに加えて、力を奪うような甘いときめきに似た疼きと、そして門を擦る鋭い快感。下腹部の中で蓄積されたものが弾けそうになる。
「くっ……はあっ、あ、」
感じているギルの声が聞こえた後直ぐ、ギルの熱がどくんと震えた。その後もびくびくして、その感覚でまた小さな絶頂がやってきて、ぎゅっとギルのものを締め付けた。
「う、ぁ……っ、締めすぎ、だ……」
荒い息に、情欲の滲んだ声が混じる。だって、と俺もどうにか言葉を発したものの、ぞくぞくした感覚が止まなくて、それを耐えるため口を噤んだ。
もっと大きなものが来そうだったのに、ギルがイく方が早くて遠のいてしまった。おかしくなりたい、と思った一線の向こうが見えた気がしたのに。
「またイった、か?」
それでも身体は快感に震えていて、俺の中もそうなのだろうか、ギルはふと笑みを乗せながらそう呟いた。
恥ずかしながらも肯定すると、ギルの唇が落ちてくる。重なった互いの唇は柔らかくて、イったせいだろうか、ぴりぴりとした快感が走って肩が跳ねた。
ギルが俺の首の下に両腕を回し、抱きしめてくる。俺もギルの肩や背中、腰を撫でると、色っぽい声が間近で響いた。
「……本当、お前すげえ良い」
ギルの舌が耳から顎を辿って首筋へ移動する。それだけなのに無性にぞくぞくしてしまう。思わずきゅっと下に力を入れると、まだまだ硬さを保ったままのギルを強く意識してしまった。
「んっ……あ、あっ……ん、なん、で、ギル、大っきいままっ……」
「取り敢えず出しただけで、『良かった』とは言ってない」
暴発とも言うべき早さをカバーするが如く、再びギルが動き始める。今までも一回で終わることはなかったけど、ここまでハイスピードで一回目が終わったことはなくて戸惑う。それも、繰り返されるキスに溶けていく。
「あっ……ふぁ、ん、ああん……」
打って変わってゆっくりとした腰つきに、甘えるような声が出て行く。甘ったるい気持ちをそのまま出したような正直な声だという自覚はあった。でも、取り繕おうとは思わない。何度やっても恥ずかしいけど、それ以上に気持ちいいし、そちらの方に気持ちが向いている。もう一方的に奪われることもないのだと思うと、ほっと力が抜ける思いがする。
お互いがお互いのものになるのなら、あとは共有するだけだ。失うわけじゃない。得るだけしかない。そのことが俺の気持ちを軽くする。心をほぐす。
「ん、ギル……ギル……」
名前を呼んで、ギルの腕に手を添え、さすり、肩へ滑り、そのまま腕を回して、ギルの後頭部とうなじに手を添え、キスに応える。緩やかに動くギルに合わせて腰をくねらせ、お互いを食べるように睦み合う。
ギルの手のひらが脇の下から腰へ滑り、そこで止まることなく、俺の太ももへ流れ、また登ってくる。暖かいそれに心地よさが染み入るようで、俺は一層足を絡めるようにギルの身体を挟み込んだ。
繋がった場所では門で摩擦が起こるほど動いているわけではないものの、ギルの動きに合わせて内壁が動いていて、穏やかな気持ちよさが湧き出している。
すごく、すごく気持ちいい。心地いい。
「ふぁっ……!」
うっとりしていると、ギルに乳首を弄られて身体が跳ねた。ぎゅっと門でギルを締め付けているのが分かる。
じんじんとした胸の二つの突起は、優しくつままれたかと思うと指の腹でぎゅっと押さえひっかけられて、強弱のついた快感に腰が揺れてしまう。
「ヒューイ……」
囁かれ、ギルの低い声が敏感な乳首へ響く。ギルの両手が俺の腰を掴んで、その腰がぐっと俺にのしかかるようにして押し付けられる。
「ギル……っ、ああっ……」
名前を呼ぶと、ギルの腰が引いて行き、門が擦れて快感が飛び散った。ぐぷり、と音がしてギルが抜け、そしてまた直ぐにくちゅ、といわせて入ってくる。大きな先端の凸凹で門を刺激され、遠のいていた快感が戻ってきた。心地よさよりもいやらしい気持ちよさが勝り、俺の制御下を離れて、今度は逆に、俺を服従させる。
「んっあっ、あっ」
徐々に早くなっていく律動。ギルに腕を回しながら揺さぶられるまま、生み出される快感に震え、鳴く。女のような音色が俺から発せられているのに、ギルは萎えるどころかますます力強くなっていく。耳元で呻くような声と息が繰り返されて、興奮しているそれに俺も気持ちが高まるばかりで、夢中になる。
油を足してないのにギルのピストンは何処か滑らかだ。多分、さっき中に出したものが助けてるのだと思う。
中を押され、門を擦られて、蕩ける感覚に徐々に舌や顎からも力が抜けて呂律が怪しくなる。
「あっやあっ、ぎりゅ、ふぁ、ふぅっ」
「快いか? ヒューイ」
「いいっ、きもち、い……っんゃ! はう、んっ、んっあ、はぁああっ」
ギルの声にぞくぞくするのが止まらない。二の腕のあたりから頭へ抜けていく寒気のようなそれに、射精した時のように震えてしまう。ギルが中を穿つ度に感じる射精感に、もう俺の股間は馬鹿になったような感じがする。ずっとイき続けているようで、出てるのか出てないのかさえ見ていないと分からず、でも見る力も必要性もなくて、気持ちいいという確かな感覚だけを追いかける。
「んっ……は、中、すげえいい。お前の中、出した後滑りがよくなる」
知ってたか? とギルが微かに笑う。知ってるわけないし、ギルの声はまるで俺に、俺の身体がどんな風なのか言い聞かせているようだった。
「きつめに締まるし温い。お前の尻も、このおっ勃ててるこれも、」
「ふゃっ」
つん、とそこをつつかれて、触れられてもいないのに溌剌としているものが弾けそうになる。
「汚いと思ったことはない。お前のケツの穴も……胸のこれと」
「ひゃん!」
乳首を引っかかれ、身体が弾む。
「この唇みたく薄っすら赤くなってて、舐めるのも楽しいし」
それはちょっと抵抗を覚えた方がいいと思う。
そんな理性的な言葉が出る間も無く、ギルが腰を寄せて俺を貫いた。
「あぁああぁあぁあっ」
「口と変わらねえなってずっと思ってた。……こっちは上のと違って、全部俺を咥えられるし、なッ」
「――っ!」
じわじわと引き抜かれ、また奥深くまで穿たれる。俺の尻とギルの股間が合わさった瞬間、一瞬目の奥が白く弾けた錯覚をした。足先が熱いような冷たいような、変な感じ。喉は引き攣れて声こそ出なかったが、身体は絶え間無く痙攣し、震えていた。
絶頂の余韻が僅かに引いていくと、ギルの言葉と今の状態がしっかり頭の中に入ってくる。
門さえ潜れば長さに余裕のあるそこは、ギルの全てを飲み込んでいた。フェラと違って、動くと俺まで気持ちいい。やらしい、穴。
急に羞恥心が湧いてきて顔をそむけると、ギルは俺の鎖骨を舐めながら両方の乳首をそれぞれの親指でこねくり回した。イったばかりでまだまだ感度の高い身体の中で、胸の高鳴りにも似た快感が点滅するようにあちこちで生まれる。そっとしておいてくれれば俺の身体は俺の思い通りにまた戻ってくるのに、ギルはそれを許してくれない。腰を小刻みに動かして、どちらかというと限界以上に俺の奥を突こうと腰を押し付けてくる。そのせいで、いつになく深いところまで届いた熱の先で新しい快感が生まれている。頭まで痺れるような、電気風呂に入ったときみたいな快感。
そんな身体の感覚が先走って、心の方がついていけない。これ以上されたら、いくらギル相手でも怖い。快感に溶けて、理性が焼き切れて、戻ってこられなくなりそうで。
「ギっ……ギル、俺もう、むり」
涙声でそう告げると、ギルは緩やかに腰を動かしながら唇を重ねてきた。宥めるようなそれを受け止める。
「そう言わずにもう少し付き合えよ……」
「やあんっ」
ギルが腰を打ち付けて、俺はまた引きずり出されるような感覚に混じる強い快感に思考が溶け始める。
「ふゃっ、あっんっ、らめっ、ぎぅ、っふううううっ」
腹筋がびくびくして、なのにつながった場所には力は入らなくて、ギルのされるがままに中を侵される。また波が引いていくような前触れが来て、ギルが刺激する場所に冷たくも思える快感が溜まっていく。身体いっぱいに感じるどんな気持ちよさもそこへ集まって、ぎゅっと圧縮していく。
「ヒューイ……っ、ヒューイっ……!」
「あっあっ、やんっ、ふぁ、あ、ああっ」
肌と肌がぶつかる音が遠い。ギルのくれる快感ばかりが強くて、なのに俺を呼ぶ声は俺の鼓膜を振るわせて、愛撫するように俺の肌を這う。
「っあ、あ、あ! っ、ぎ……も、ぁ、……イ、くっ イくぅっ!」
先に限界が来たのは俺の方だった。中で溜まった快感が一層強くなり、今まで早くおかしくなりたいと焦れていたのが嘘のようにあっさりと、まるで駆け上がるかのように一線を越える波。
「ああああー……っ!!!」
ぐずぐずなまま溺れもがくように声が揺れる。足の付け根が痙攣して、射精なんか目じゃないほどの気持ちよさが押し寄せ、俺を踏み荒すようにして駆け抜けていく。
「っうぁ……! きつ、っ」
「ひぃ、やあっああああっ」
ギルが律動を早め、終わりへ向かう。でもその動きは俺には激しすぎた。
びくびくと、もはやどこがひくついてるのか分からない震えの中、既に絶頂を迎えている最中の俺をさらに突くそれは、行き着く間もなく次の波を引っ張ってきた。
もう俺の手には負えない。受け入れるしか選択肢のない状況で、少しでも快感を逃がすためだろうか涙がこぼれた。それも、もう遅い。
「らめ、らめええっやあっまたくる、く、ふううっ……!」
「っ……あ、ああっ……出る、……ぁ、出るッ」
「ひ、んぁ、っあぁああああぁあぁあああ……!」
ほぼ同時だった。ギルのものがぐっと膨張し、痙攣する。俺は抱えきれない快感にもう一度身体を押し流され、一回目とは比べ物にならないほどに背がしなり、四肢が暴れた。ギルが押さえつけるようにしていなければもっと跳ねていたかもしれない。
少しの間、お互いに余韻に浸り、沈黙が落ちる。相手を気遣う余裕も失せ、自分の中に迸る嵐のような快感が過ぎるのを、息を荒らげて待つ。少ししてから、全てを俺の中で出し切るようにギルが動いた。
「んゃ……っ、ぁ、ん……」
ざわざわとしたものが肌を登っていく。見上げたギルの顔はしどけなくて、凄く色っぽかった。
その目が、俺へと合わせられる。見つめあった後、ギルがそっと俺に被さってきて、唇が重なった。
ちゅ、と小さな音が繰り返される。一通り余韻が引いた後は、気怠くもまったりとした心地よさが残るだけだ。そう、思っていたのに。
「んっ」
ギルの手が俺のものに添えられ、動き出した。
「っや、……」
「お前も出しとかないと収まらないだろ」
あんなに気持ちよかったのに、前は出ていなかったらしい。ギルの手淫で、門をひくつかせながら俺が射精すると、ようやくギルは俺を解放してくれた。
おざなりに指を振り、ぐちゃぐちゃになったものを消す。いい加減でもちゃんと振っていれば発動するのは素晴らしい。それも終えると、ギルは俺を抱え込むようにしてベッドへ横になった。
「……ねむたい」
腕の中で辛うじてそう呟くと、ギルは黙って俺の頭を撫でて頬に口づけた。覚えているのはそこまでだ。
目を開けると、既に部屋の照明は全て全開にしてあった。俺でないのならギルがしたことになるが、そのギルの熱はまだ俺のそばにある。時間は午前9時。……寝すぎかもしれない。
ゆっくり身体の状態を確かめつつ横向きになり、手をついて上半身を持ち上げる。腰の怠さが半端ないが、いつになく乱れてしまったのだから当然の結果だろう。目が覚めて、ベッドにギルがいる喜びの方が強いから、それで気持ちが沈むことはない。柔らかな布団とシーツが肌に心地いい。
……そういえば、服、全部脱いだままだ。
ふう、と息をついてまた俯せに潜り込んで布団を引き上げると、何の前触れもなく声をかけられた。
「よう」
「ひゃ」
慌てて隣を見ると、ギルの目はぱっちりと開いていて、今起きたわけではなさそうだった。きれいな肌や筋肉が惜しげもなく晒されていて、逞しいその身体に抱かれたのだと思うと今更、胸の鼓動が早くなる。
いつの間にこんな風に感じるようになったのだろう。女々しいと思われても仕方がないが、どう見ても男以外の何者でもない彼の身体を見て、身体が熱く反応するようになるとは思ってなかった。思うはずもない。そんな環境の中にはいなかったんだから。
「お、おはよう」
「おう」
初夜明けか! とでも突っ込まれそうなぎこちなさに、頭の一部が冷静になる。
それでも気恥ずかしさは消えなくて、枕に顔を埋めると、腰を撫でられ、上半身だけのしかかられた。
「具合は?」
「だ、だいじょうぶ。でも……今日はあんまりあちこちいけそうにないかも」
耳元で優しく囁かれてどぎまぎする。対するギルは余裕のある態度でそうかと言うだけだ。でも、その声に僅かに甘さを感じて、眠る前のことが頭をよぎる。
そうだ、ギルの話を聞かないと。
「……ギルの話、聞かせてくれない?」
空腹感はあるものの、今の空気じゃないと聞きにくい気がする。服を着て支度をしてしまえば朝食……いや、ブランチになるだろうし、捕まる云々というからには人には聞かれたくない話になるだろう。
ギルは即答はしなかった。でも、ゆっくり俺の上から退くと、仰向けになって語り始めた。
いわく、王都の貧民街で、スリを含め盗みをして生きていたという。
王都とはアルカディアにある人間の街の中でも一際大きく、王や貴族といった支配階級の人間が世襲で受け継がれている場所のことだ。アルカディアは城郭都市ごとに政治体制が異なっており、プレイヤーからするとそれがそのまま街の特徴として出てくるだけで終わるが、今はそれが大きな壁となって存在する、現実だ。王都は特に階級が固定されており、奴隷は奴隷、商人は商人、というように、階級の変更はほぼ受け付けられない。貧民街にいるのは奴隷でこそないものの、働かねば食うに困る層である。ギルの場合はストリートチルドレンのようなもの、といえば分かりやすいだろうか。
生まれは分からない。物心着いた時には孤児院にいて、真っ当とは言い難いそこを逃げ出した。
幸いにもギルは身体能力、ひいては戦闘能に長け、逞しく生きていくうちに冒険者として身を立てられるようになった。
ギルのような類稀なる能力を持って生まれた者は多数おり、それはプレイヤーの有するスキルに匹敵する。アルカディアの現地人である彼らはその能力のことを『ギフト』と呼んでおり、神々から与えられた特別な力であると考えている。ギフトの種類はスキル並に様々存在するが、違う点は決していい能力ばかりではなく、コントロールできるかどうかは当人の力量次第、しかも物によってはどうにもならないものまであるところだ。
モンスターの討伐依頼をこなせるギルは順調に稼いでいたが、ある時報酬の高さにつられて請け負った貴族の護衛依頼で、護衛対象である貴族の子女に気に入られてしまった。これがとんでもなく我儘で困った子だったらしく、ギルを飼うなどと言い出した。
奴隷ならまだしも、ギルは曲がりなりにもれっきとした、市民として認められた冒険者である。それもあって当然断ったのだが、子女は諦めずにギルを軟禁。そこから逃げ出したギルを有り余る家の権力でごり押しし指名手配。ギルの有能さを惜しんだ組合は真偽のほどを追及したがったが、その貴族の子女の家は王都でも有数の力を持っていたため敢え無く失敗。ギフト持ちとはいえ化け物級の強さを有しているわけではなかったギルは追われる身となった。
幸い姿絵などはそこまで似せられたわけではなく、ギルも本名を明かすことはやめて偽名を使うことにしたため、バレることはほぼなかった。城郭都市に出入りするのも最低限に留めたのもよかった。しかし、気持ちは収まるはずもない。ギルは腹いせに圧政を敷く貴族やそれに連なる荷馬車を襲う盗賊行為に走りはじめた。殺しこそはしなかったが、襲われた貴族らから賞金を懸けられてしまう。
それでも襲うという行為を終えた後は置いて行かれた金目の物や馬を必要に応じてばら撒いていたため、村を襲うこともなく、むしろ既に指名手配されていた盗賊や、違法な奴隷商人を潰すこともしていたのがいい方向に働いた。市民の多くからは義賊として慕われていることもあり、流れるまま盗賊行為を繰り返しているうちに後をついてくる者が出始めた。
暴走されないようにとギルは彼らを率いて一つのチームを作り、チーム単位での組合登録を行うことにした。これはゲームではクランと呼ばれる集団のことで、同じ目的のもとに活動する集まりを指す。特に冒険者組合では個人での登録のほかに、クランとしての登録が可能だ。そこに個人名は記されないため、クラン用のドッグタグさえあればそれで諸々の手続きが行える。城郭都市への出入りも、だ。
賞金首を仕留めてクラン名義で手続きをすることで、資金はそこまで枯渇することもなかった。
個人的なタグは使わないようにしながら盗賊潰しや貴族狩りを繰り返したギルだったが、賞金首としては捕まれば犯罪奴隷としての道しか残されていない。犯罪奴隷は奴隷の中でも厳しい労働を課せられ、待遇も悪い。それが罪に対する罰であるからだ。
クランの顔ぶれについてもそこまで気を許せるわけでもなく、そしてまた全ての元凶である子女の手もしつこく、ある時遂に追いつめられた。仲間には全員散り散りに逃げるように言い渡した後で、ギルは辛くも追っ手を返り討ちにしたが、自身も深手を負ってしまった。不運にも追っ手が持っていた解毒剤と思しきものは戦いの最中にダメになってしまい、更なる追っ手を警戒したギルは麻痺と毒に侵されながら這う這うの体でそこから離れたが、ついに力尽きた。
「……そこで俺を拾ったのが、お前だったわけだ」
「はぁ……」
ある意味奇跡的な出会いを果たしたギルだが、俺のことは最初から全く信用していなかった。俺を言葉遣いや態度、身を置く環境から貴族に連なる者であると思ったギルは、身体が回復するまでと言って留まり、俺からどうにかして素性を探ろうとした。
が、当然俺には、『この世界で今まで生きてきた年月』自体がほぼないに等しい。
なにも収穫がないことを不審に思いつつも、俺が助けたのは偶然ではなくそのように追いつめられたのではないかという疑いが払拭できなかったギルは長居は無用と立ち去ることにした。その際、いつもの盗賊行為を働くことは忘れずに。
手癖以上に、そうすることで限りなく可能性としては低いものの、子女に手配された手下かもしれない俺に対して溜飲を下げるために。
とはいえ、ギルはクランのメンバーを集めるより何より、俺に利用価値を見出した。持ち出したアイテムは必要だからそうしたわけではなく、やはり村々でばら撒かれており、この≪ゼクスシュタイン≫へ来るまでの村人たちの反応はそのせいだったというわけだ。そりゃあそんなことをしていれば評判も立つ。
が、どんなに盗もうと俺は変わらずギルを迎え入れたため、苛立ち半分、詰問半分に俺を犯そうと思ったと、こういうことのようだった。件の子女とは関係がなくても、貴族であろう俺を犯すことで貴族に対する鬱憤を晴らすため。……それほど腹に据えかねていたのだろう。普段かかわることのない階級の人間故に、俺は正しく『格好の獲物』であったわけだ。
それ以降の顛末は、昨晩の通り――。
「最初は不当な指名手配でも、略奪行為からは弁解の余地はないんだけど」
「なんとでもいえ。別に後悔をしているわけじゃない」
権力にものを言わせた貴族の子もそうだが、それがまかり通ってしまうという王都の力関係は看過できない。
今のところ王都に行かなければならないことはないが、それでも樹生のことを考えれば、その必要も出てくるかもしれない。
「でも、王都には近づかない方がよさそうだなあ」
呟くと、ギルはそれを否定した。
「そうでもない」
「え?」
眠気の覚めてきた頭と身体で疑問を口にする。ギルは寝返りを打って俺の目を覗き込んだ。
「合法的に俺が追っ手と賞金稼ぎどもから逃げることができる方法が一つある」
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