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第三章 幸せへの道
64、岩峰家 3
しおりを挟む「二人とも、穏やかじゃないな……心中なんてやめてよ? 残された僕、泣いて暮らすことになっちゃうよ、いいの?」
勇吾さんが嘆いていた。うん、二人だけの世界にいて忘れていたよ、ごめん。
勇吾さんは、僕も家族なのに……って。入り込めないのはわかっていたけど、寂しいよって。
俺がストレス無いようにこの二年を過ごす努力はしよう、最悪になったら、そういうこともあるかもだけど、まずはあがこうと言った。
「一応、僕は君の未来の旦那さんになるんだからね? 絢香さんのことは一番でもいいけど、二番目に僕がいるのも忘れないでよ? 君を愛しているのは、絢香さんだけじゃないからね?」
もちろん、絢香のことも勇吾さんは家族として大切に思っているから、二人が悲しい結末を選ぶのは見たくないって、泣いちゃうって。
俺と絢香は抱き合っている腕を解いて、二人でふてくされている勇吾さんを見て吹き出した。
「確約とったし二年我慢すれば、俺は最高の幸せを手に入れるんだった。だから嘆いてばかりじゃだめだね、ほんとごめんね」
「ねえ? さらりと言っていたけど、未来の旦那さんってなに? それに二年後の最高の幸せって? それくらい私にも教えてくれるよね?」
そうだった、絢香に話さなくちゃ。少し小恥ずかしいけどこれは言っとかないと! これくらいは自分の口から言える。
絢香に番になった経緯と、これからの俺と勇吾さんのことも全て話した。
「今回の番も今だけ我慢したら、もうアルファと結婚しなくていい未来がある、俺には勇吾さんのお嫁さんになるというご褒美の人生が待っているんだ。そう思ったら噛まれたのも悪く無いかなって。そしたら、本当にみんな家族として暮らせるよ!」
絢香が驚いている。
どうしたらそんな話になったのか、そりゃ、俺だって番にされて嘆いていたが、まさかこんな話になるなんてびっくりした。さすがジジイだよ、食えなさすぎ!
「でも、その……良もだけど、いや、あなたはなんか納得しているみたいだけど、勇吾さんもそれでいいの? いつからあなたたちそんな仲だったの?」
いやいや、そんな仲じゃないよって今話したじゃん! 勇吾さんが捕捉してくれた。
「絢香さんが心配するのもわかるし、良太君がほだされているのでは無いかとも思うよね?」
ジジイからの提案だったが、婚姻には桐生と岩峰の相互利害の一致もある。それに、勇吾さんは俺のことをそういう意味でも可愛いって思えると言っていた。
俺も勇吾さんを受け入れると言ったので、保護者から、二年後は夫として愛すると約束を交わした。そしたら絢香は勇吾さんの姉になって、華は姪? 関係性はどうでもいいけど、勇吾さんは俺たちみんなを名実ともに守っていけるって喜んでいた。
それを聞いた絢香は、心から安心したみたい。絢香が不安になる未来なんて俺は選べないから、絢香に安心してもらえてほっとした。
「絢香さんはこれじゃ納得できないかな? さすがに絢香さんが嫌がるなら、この話を進めるのも待った方がいいし」
勇吾さんも俺の一番は絢香だってわかっているから、絢香への説明は丁寧だった。
「ううん、私の好きな二人がそうなるなら嬉しいわ、私と華のことまでありがとう、良、これから辛いけれど、未来だけを思って頑張りましょう、愛しているわ」
「うん、絢香、ありがとう。好き」
「未来の夫としては、妬けるな。でも素敵な光景でいい家庭が築けそうで楽しみだ」
「あはっ、勇吾さんのことも好きだよ」
勇吾さんも絢香も笑っていた。穏やかな、幸せな家庭が岩峰の家には溢れている。
ここは俺にとって癒しの場所、朝起きたら岬がベッドに潜りこんでいて寝ていた。きっと俺の不安定な思いを察知して、こうやってこっそり入ってきてくれたんだな。
今後、隣ですやすやと眠るこの子の母親になるんだ、俺は強く生きていかないと、そう思って俺の決意は固まった。
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