ローズゼラニウムの箱庭で

riiko

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第六章 本心

137、冬の休暇 3(桜 side) ※

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「あっ、雪」

 気を失ったまま眠りについた俺は、目が覚めたとき自分の体が綺麗になって、石鹸の匂いがすることから、お風呂に入れてもらったのだと察した。

 いつもながら俺のアフターケアまで完璧で、世界一かっこいい隣で寝ているつがいを見て自然と微笑んでいた。外を見ると雪が降っているのが見え、思わず俺はそれをつぶやいていた。

「ん、良太? もう朝?」

 その声で先輩が目を覚ましてしまった。

「まだ明け方です、ごめんなさい起こして。もう少し眠ってください」
「う…ん。良太も……」

 少し起き上がった俺を、また自分のところに抱え込んで、先輩はそのままスースーと眠りに落ちた。可愛いな。

 俺の世話で疲れたのかな? クリスマス前も仕事で忙しそうだったし、この休暇、俺だけのために時間を作るのは大変だったのだろう。

 そんな愛おしいつがいを見て、またつがいの胸の中に入り込んだ。安心するこの男の匂いを確認して足まで絡めて、まるで二人で一つのような感覚におちいって、そして先輩の寝息を聞いていたら自然とまた目が閉じて深い睡眠へと導かれた。


 ◆◆◆

 良太が眠ったのを見計らって、目を開けた。

 俺にぎゅっと抱きついて足まで絡めてきた時には、また下半身に熱を帯びようとするのを意識して耐えた。昨夜は無理をさせた。スイートに良太が喜んでくれたというのに、部屋も何も見せずにまっさきにベッドへと運んだ。

 あの事件から良太ががらりと変わって、俺への愛情を惜しみなく出してくれるようになったのが目に見えてわかる。

 部屋に入る前から、俺が欲しいというローズゼラニウムの可愛らしいフェロモンがふわふわと漂っていた。エレベーターでは、荷物を運ぶホテルの人間でさえもソワソワしだしていた。俺以外にもほんのり香ったのだろう、つがいの俺には耐えきれない香りの強さに、あの狭い空間はやばかった。

 いや、夜景を見たあたりから良太の色気が隠しきれなくなっていた。あんなに可愛い良太を街に出すわけには行かず、すぐにホテルに来たがフロントもボーイも赤くなるほど、良太の魅力があふれ出ていた。

 相思相愛になったにも関わらず、俺は良太に関するとあまりに余裕がないのは変わらない。結婚したらもう少し余裕がでてくるのだろうか? 発情期でもないのに抱き続けるのは良太の体には酷ではないか? 本当は明け方でも目が覚めたのならそのまま抱きたかった。

 あまりがっつきすぎて嫌われても困るので、最近では良太をできる限り誘導して、良太から俺を欲しがってもらえるように努力をするようにしている。

 ただ、控えめな良太がそんな行動に移せないのもわかるから、悩みものだ。

 しかし俺にくっついて寝ている良太は天使だ。本当に愛おしくて可愛い。このまま俺の中に閉じ込めておきたい、そんな独占欲とこれから何度戦うのだろうか。俺は寝ている良太のおでこにキスをして、バスルームへと向かった。

 翌朝良太が目を覚めたのを確認したら、コーヒーをベッドに運んで良太に渡してキスをした。

 いつもの恥じらいいっぱいの良太は、それはそれで可愛かった。

「先輩、疲れてるでしょ? せっかくの休暇なのに、僕のお世話までありがとうございます」

 良太は照れながらそう言うので、俺は良太のおでこにキスをして、良太の世話ができる喜びを精一杯伝えたら、良太がますます顔を赤くして俯いてしまった。

「朝から、そんなに可愛い顔見せたら襲いたくなるから、自重してね?」
「だったら、襲ってください……ッ」

 ん? これは合図か? 抱いて欲しい合図なのか?

 良太は熱を持った目で俺を見てきている。寝起きでまだねぼけているのか? でも襲っていいなら襲いたい。俺は恐る恐るキスをした、だんだんと舌を絡めていった。良太の熱も上がってきていて、朝の反応なのか、キスでなのか、良太のかわいいペニスも硬くなっていた。そこを手で包み込んでいくと、良太のいやらしい息遣いが聞こえてきた。

「はんっ、」

 その声を聞いてキスも続けた。そして扱く手も緩めなかった。そしたら良太の腰が揺れて、俺のじれったい動きに催促をしているように思えた。

 これは、そのまましていいのだろう。そう判断した俺は可愛い良太を抱いた。

「きもち…いい、好き、好き、大好き先輩ッ」
「俺も大好きだ、くっ!」
「イクっ、あっ、あああああ」

 良太の目が昨夜よりもさらに熱くなっている。すこし目が赤い、泣かせすぎたか? それともまだ良太は自分自身と戦っているのだろうか。俺は気付かないふりをして、良太の限界まで泣かせて俺のせいで泣いている良太を作り出した。

「目が、赤いね。きつかった?」

 情事が終わりまどろむ良太の目の下をそっと親指で撫でた、かすかに涙の跡も見られた。

「いえ、あっ、余裕がなくてごめんなさい。でも……僕はすごく幸せでした」
「そうか、なら良かった」
「せっかくのステキなお部屋なのに、僕まだベッドしか見ていません。勿体無いな、夜景も見てみたかったです」

 微笑みながら、少し気だるそうに話す良太は最高に綺麗だった。

 ここの部屋は二日間とっているので問題ない。たしかにこういうホテルを良太に楽しませたかったのに、やっていることはいつもと変わらないなんて可愛そうなことをしたか?

「もう一泊とってあるよ、今夜はゆっくり夜景も見ようか」
「えっ! この部屋、今夜も泊まれるんですか? すごい……」

 何が凄いのだろうか。良太の感覚は俺と違うからたまに理解はできないけど、喜んでいるのはわかる。

「嬉しい?」
「はい。僕、こんなに嬉しい日があっていいのかな。これも……びっくりしたけど、でも凄く嬉しい、先輩大好きです」

 そう言うと照れたように、自分の左手にはまっている指輪を見て微笑んだ。気づいていたのか、起きた瞬間から抱き続けたから、それを見る余裕なんて無かったと思ったけど。

 俺の手にもはまっている、お揃いの指輪を良太は撫でて、俺に向けてはにかんだ笑顔を見せた。俺はその顔を見たらたまらなくなってキスをした。良太はそれにそっと答えてくれた。

「愛してる、良太、卒業したら俺と結婚してほしい」

 良太は驚いていたが、それを言われるのは時間の問題だけで、当然そうなるのはわかっていたはずだ。だからか戸惑いながらも微笑んでくれた。それを答えとしてとって良いんだろう、俺はそう理解した。
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