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第2章 幼少期

2.24.2 レオノーラ・クロスロード

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 痛み止めが効いているのか、多少なり安らかな表情になった。

 僕は、薬の代わりにおばあさまを喜ばせるため異世界から高級化粧品を召喚した。

 こちらの世界には無い化粧品だ。
 ミレーユさんが使い方を知っているので呼び出して化粧をしてもらった。

 女性は幾つになっても女性だったようだ。
 おばあさまは大変喜んでくれた。
 このところ顔色も悪く、回復魔法も効かない状態だった。

 化粧をした姿は、昔を思い出すきれいな顔だった。

 そしてその日の夜、化粧をしたきれいな姿のまま、ソファーに座ったまま目を閉じた。
 そのまま目を覚ますことは無かった。

 その日悲しくておばあさまの隣で一晩中泣いた。

 僕は泣きつかれたら、悲しさを通り越したのか吹っ切れた。

 意外にすぐに冷静になる自分に驚いた。

 夜、かあさまは達がいない時に、おばあさまの体に超音波スキャンのイメージして体に魔力を直接流し込み、魔力の可視化も併用し鑑定能力まで含めて体の中を見ようとした。

 すると、何と無く体を透かして中を見ることができた。
 体のあちこちに黒く感じる魔力の流れない異常な何かがあった。
 僕は、その物体がガンだと確信した。
 赤ちゃんの頃に聞いたことのあるメリーナ様とは違う声が頭の中で響いた。
『診断魔法を得た』

 良くは解らないが、鑑定とは違う体の異常を見つける魔法のようだ。

 一番大きな黒い塊を聖魔法の治癒と土魔法の応用で分離し体から取り出す。
 多少失敗しても既に死んでいるので今のうちに試しておきたかった。
 今回の方法では内出血があるかも知れないが、大きなガンの塊が取れた。
『手術のスキルを得た』

 勘所がつかめたので、そのうち動物実験でもすべきだろうか。
 手術のレベルは上げておきたい。

 回復魔法は、体の治癒力を高めて細胞を増やしたり繋いだりする。
 もちろん小さな異常細胞を殺すことでガンになる前に消すことも治癒力の向上で可能だっただろう。
 しかし異常細胞がある程度の大きくなると自己治癒力の向上では治せない。
 なので回復魔法が効かなくなる。

 塊が大きくなったら、今の様に体から取り出し、取り出し中に傷ついた部分を治すことで治療が出来たのだろう。

 だが、それらを行うには病状を正しく、それも初期で判断できなければならない。
 術のやり方はわかったが、手術のレベルから考えるに初期で見つけなければ助からないだろう。
 すべてを魔法で解決できないのだなと言う事を意識した日だった。
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