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第4章 10歳王都編
4.1.2 ブルンスワードへの移動
しおりを挟む町が見えたところで、このまま入ると黒狼と白銀の狐に民が怖がる。黒狼の太郎は小さくなり、白銀の狐コハクは人型に変わってもらい、僕らも予備の馬に乗った。
到着した町はとても貧乏な様子だった。宿屋が無かったので困った僕らを町長の家に泊めてくれたのだ。
きちんと人数分の金銭を払ったので、泊まった町長はホクホク顔で状況を説明してくれた。
話によると、以前は近くの湖周辺で取れる薬草を売買することで生活の補填としていたが、数年前に薬草の販売を禁止され資金不足になっているとのことだった。
この町には他に特産品もなく、生活が貧窮。若者はこの地を離れ山の下に移動して行き、ここには年寄りばかりが残っているそうだ。
それにしても、取引が禁止された理由がわからないのか。オブスレイさんによると王都でも回復薬の供給力が減って値上がりしているらしいが、不作だと聞いていたそうだ。
実際には取るのを止めていたのか。
「薬草の生える地帯を回復させているのではないの」
「我々は、薬草を根こそぎ取るようなことはしません。長年引き継いできたルールにのっとり、きちんと次代に受け継ぐように管理しておりました」
なるほど。
「もしかしたら回復薬を作る薬師が不足して、作れる以上に取らないようにしているのかもしれないな。いずれにしても、領主が決めたことだろう。あなた方ではどうしようもないのだね。ただ、状況を知ることができたし、改善策はある。
実は新しくクロスロードに直接出れる道を作ったんですよ。我々がきたのは、街からではなく、山の方からだったでしょ。
僕らはそこを抜けてきたのです。クロスロードとブルンスワードでは今まで直接の取引が無かったけど、これからは交易ができる。領主から許可がでれば薬草をクロスロードに売ることができるかもしれない。確約はできませんが、この後でブルンスワードの領都に行くので提案だけはしておきます。それがダメになっても、交易が始まればここには多くの商人が訪れるようになるかもしれません。そうなれば多少なり生活も改善するでしょう」
「おお、それはうれしい話です。ですが、山を越える新しい道ですか。あのお山の頂上はいつも雪に閉ざされています。道ができたとしても超えるのは大変では」
「ああ、山を越えるわけじゃない。山の中心部に穴を開けたんだ。魔法で。だから高い山を越えるわけじゃないんだ。普通に馬車で行けるよ」
「は?」
「まあ、魔法を使えばできたんだよ。すごいよね魔法って。
今すぐに改善とはいかないかもしれないけど、春には取引ができるかもしれない。気になるなら誰か見に行くかい。まあクロスロード側に検問所を作っていないから僕の書いた印を持っていくと良いよ」
「ありがとうございます。誰かを確認に出しましょう。しかし、クロスロードはすごいのですね。あんな山に穴をあけられるのですか」
僕の直筆のサインを入れた書状を作った。彼らは魔物が出た場合を考えて10人で見に行くそうだ。
陸の孤島と思われているところに道ができたのだ。この地の重要性が変わるのは必然だろう。逆に言うと道を繋いだ先の治安に問題があるとクロスロードも治安が悪くなる可能性がある。今のうちから治安を良くする行動は将来の事を考えると必要な事だ。
気楽に道を通してしまったが、通す前にやり取りが必要だったなあと後悔した。そう思った後で、以前の事を思い出した。
そういえばクロスロードの役場に来ている貴族たちに昔トンネルを通さないのか聞いたことがあったのだ。だが彼らは全員無理だと否定した。
だから、通す前に通告しても笑われ、信じない。道を通してから言っても大丈夫だろう。
気にしても無駄だし、言われたらその事を言えばよいだろう。
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