転生者はめぐりあう（チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー）

第4章 10歳王都編

4.1.6 ブルンスワードへの移動

「バンガロール子爵、回収してきましたよ。
庭に吐き出しても良いですか」
「ああ、頼む」

　庭の一角に回収した物を吐き出した。毒は渡さない方が良い気がしたのでマイストレージに入ったままだ。
「船が多いのですね」
「そうですね、理由は知りませんが、ところで鉛が解け出たと言ってましたが、どの程度だったのですか、その取れた金属を見る限り大半が銅、鉄、錫ですけど」
「え、わかるのですか。
私は鉱石を溶かした時に融点の低い物を垂れ流しにしていたのを聞いただけで、実際に鉛なのか判断はつかないのです」
　英知のスキルを使って異世界知識を検索する
「代表的な融点だと、錫230度、鉛300度、アルミニウム650度、銀960度、金1060度、
鉄は1500度ぐらいです」
「では、解けたのは錫だと？」
「まあ、そうなんでしょうね」
「そうですか、中途半端な知識で必要のないことをしていたのですか。お恥ずかしい」
「いえ、危険性をすぐに判断して止めたのは領地を守る者としては正しいと思いますよ。
ついでに、取れた金属はできる範囲で分離しておきましょう」
　魔力を流し込んで物質別に小分けする。
　残念ながら鉄はあまりなかったが、わずかだが銀と金も取れた。
「いがいに金が多いですね。
湖の底からかき集めたらしいから、長年の積み重ねでしょうか」
「そうですね。一番重い金属ですから。これでわが領地も助かります。金属製の農機具を配ったことで減税されてはいるのですが、やはり税を納められない状況は心苦しく思っていたのです」
なるほど、金属農具を配ると一時的に領地を治める者の資金が減るから減税されていたのか。もしかしたら借金してたりして。
『その、もしご存知だったら、輪作式農業の事もご存じなら教えていただきたいのですが。
前世の知識チートと言っても特別な知識も無く、スキルも無いのです。
ジルベール様ほどの加護をもらえなかったので』
　日本語で話しかけてきたが、別に隠す必要は無い。それを完成させたのは僕ではなくヘイゼルさんなのだから。

「輪作式農業は、わが領地にいるヘイゼル・サイレーン子爵が完成させた農業法です。彼は長らく王都で植物学者をやっていましたが、近年クロスロードで研究を続け最近ようやく完成したのです。
クロスロードでも、土地を耕す農業ができていませんでしたから、そこから地道に改良しようやくです」
「そうですか、そのヘイゼル様ももしかして」
「普通の貴族ですよ。魔法もそれほど得意ではありませんが、妻のクインさんは魔法が得意です。僕の膨大な魔力を使って改良し鉄の農具が無くても耕せるようになったのです」
「魔法で耕せるのですか」
「ええ、できますよ。でも魔法で耕す農法は、普通の貴族だと効率が悪いようです。ここまでできているのなら大丈夫でしょう。種に魔力を込めるだけで十分収穫量の増量が期待できるはずです」
「そうですよね。魔法魔法と頼っても」
「ええ、僕も最初に魔法を使うのはしょうがないと思ってますが、後のことは僕抜きでできるようでなければ続きませんからね」
「ジルベール様は、良くお考えなのですね。
さすがです。
女神の寵愛を受けるだけのことがありますね」
「では、ヘイゼル・サイレーン子爵の書いた書物は置いていきますが、来年の春には彼か、代理の者を派遣させましょう。
その代わり、クロスロードからここへの交易路の確保にご協力くださいね」
「ええ、もちろん。もちろんですとも。
メリーナ様に誓って、是非とも協力させていただきます」