転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
275 / 532
第4章 10歳王都編

4.6.3 お披露目会

しおりを挟む
 王家が揃った後で、10歳の子供たちが入場してきた。ロベールを筆頭に皆が次々に入場し全員が入場し並ぶ。皆、婚約者が決まっていないのだろう、エスコート役は父親や母親、もしくは兄や姉のようだ。
 第3王子が一歩前にでて、僕の方を見た。僕は彼の後ろについて10歳の子供の列に向かった。ロベールの前で良いのか解らないが、並びをチェックしている従者が示した位置なので大丈夫だろう。
 陛下からの開会のあいさつがはじまった。

「今年も、未来の世を統べる子供たちが無事に10歳を迎えることができた。
この場に代表として集められているのは高位貴族の子供ばかりだが、この場に居ない他の子供たちも含めて祝辞を伝えたい。おめでとう」
 そのあとで、国の状況やいろいろな話があったが、あまり重要な話題は無かった。
「では、これからの世界を作る子供たちに期待する。
そのために、我々が未来に続くよう努力しよう」
 はあ、ようやく長い挨拶が終わった。

 そして、宰相であるメリルディーナ公爵が10歳の子供全員を紹介する。それが終わると乾杯の音頭を取ってお披露目会のパーティが始まった。

 僕ら10歳は、先に王家や公爵家へと一人ずつあいさつに行くのだ。
 王家や公爵家へ一人であいさつに行けるのは10歳と成人の時ぐらいだ。それも上位貴族でなければこういう機会は無い。
 普段もこんな事をしても一組15秒で流れるようにあいさつしても、1時間で200組前後だ。数時間をかけて、そんな流れるように挨拶をしても意味はないだろう。
 普段のパーティでも、あまり沢山の人から挨拶を受ける事はない。だからこうして直接挨拶ができるのは貴重な経験なのだ。

 まずは、陛下と王妃に挨拶に行く。第3王子が先に行き、僕が続く。
「ジルベール、先ほどの威圧は少し強すぎるぞ。
軽くと言ったであろう。あれはわしでも腰が引けたぞ。危うく倒れるところじゃった」
「スキルを使ったから強弱ができませんでした。
そんなに強すぎたのですか。
使いどころが難しいですね」
「私は少ししか感じなかったわ。
陛下が驚きすぎたのではなくて」
 第1王妃が答える。
「敵意や疑念、疑惑を抱いていると感じやすいのではないかしら。
わたくしなんともなかったわ。
エミリアは、まだ疑念を抱いているでしょう。
ルカ王子の立場を考えての事でしょう。
でも、ジルベールは両金眼で、英雄の称号を持っているでしょ。
そういった種類の威圧スキルがあると聞いたことがあるわ」
 第2王妃が助言をする。
 神格化を覚えた時に使えるようになったスキルだから神格化に付随したスキルだとおもったが、どうやら英雄の称号から派生していた可能性がでてきた。
 そして、陛下が敵意を持っているとは思えないが、疑念や疑惑を持っているのは第2王女と婚約するせいだろうか。第1王妃は第1王子が次期王になれない可能性を恐れているのかもしれない。そんな気は無いと言ったのだが。
「じゃあ、マリアテレーズにふさわしいか男なのか見極めようと思っていたせいかしら」
 あれ、ルカ王子の件では無かったようだ。
「そうじゃろう。
わしはジルベールにスザンヌまで取られるのかと思っておったからじゃろう」
「陛下、わたくしが妹の婚約者を取るなど考えられませんことよ」
「いや、ジルベールは公爵になる事が予定されておる。
婚約者は同時に二人選べるのだ。
正直に言うとお主の国内での有力候補はジルベールが最後じゃ。
あとはかなり年上か年下。もしくは国外しかない。
今日はしっかりと見極めなさい」
 陛下から変な話を振られたが、次が来ているのですぐにその場を退席した。そして、よくわからないままに3公爵家の夫婦全員に挨拶をして回った。

 全ての夫人の中で一番記憶に残っているのは第1王妃だ。スーパーモデルも真っ青な美人でスタイルも良かった。第2王妃も超絶美人だったが、あれよりも上の存在があると言うのが驚愕だった。
 そして、カトレア様の娘達全員を確認できた。第3王妃とカルスディーナ公爵、オルトディーナ公爵の第2夫人がカトレア様の娘だ。オルトディーナ公爵第2夫人ルーナ様はサフィーナ様の母親でもあり、カトレア様とおそろいのピンクの髪。そしてカルスディーナ公爵の第2夫人セルニア様は第3王妃と同じく黒髪だ。禿げて白髪になっているがファール様は恐らく黒だったのだろう。
 ルーナ様とカトレアはどちらかと言えば美人系。第3王妃はかわいい系だ。姉妹でも少しタイプが違うようだ。

 セルニア様の子供は9歳のクリシュナ様。母親の後ろでにっこりとしていた。彼女は父親に似ているのだろう、銀髪に金眼も同じなのでスザンヌ様によく似ている。マリアテレーズ様よりもスザンヌ様ににているので、こちらの方が姉妹に見えるぐらいだ。

 一通りの挨拶が終わった後で、アメリ母様とレイブリング父様の所へと移動した。そして二人から10歳の祝福を受け、談笑していたらそろそろ第1王女の所へ戻るように言われた。
 どうやら子供たち全員の挨拶が終わっているようだ。フィリップ王子は既にエレノアの隣でちゃんとエスコートをしていた。
 そういえば、エスコート役だった。まずい。

 第1王女は女性のお友達と話をしているところだったので、すっと隣に立って前から居ましたと言うごまかしをしたのだが、バレバレだったようだ。

「ジルベール様、食事の方へ行きましょうか。
一つまみした後でお茶が欲しいわ」
「はい、姫様」
 きちんとエスコートしながら料理の方へと向かう。
 料理は大人たちと未成年の子供用に別れている。僕らは子供用の方へと向かった。

 そこには侍女役でコハクがいた。僕の姿を見て皿を持ってきた。見るとイシスとガルダが妖精体でフワフワと浮いていた。二人とも人には見えないと言っていたが見えないことをいいことに、何が楽しいのか、ここにいる侍女や子供達の周りを好き放題に飛び回っていた。

 コハクから皿を受け取り、給仕係からお肉を入れて貰った。ローストビーフだ。久しぶりに見た。クロスロードの領内は塩漬けされたビーフしか入ってこないので嬉しい料理だ。
 コハクが、ナイフとフォークを探しているようだ。別の侍女が見かねてコハクに渡してくれた。そしてそれを急いで持って来てくれた。

「ありがとう、コハク」
 声をかけたら、話をしても良いと思ったらしく、コハクも話しかけてきた。
「先ほどのジルベール様の威圧はとても素晴らしい物でした。
以前のコテツ様と同じ物です。
僅かな時間でしたが僅かに神力を混ぜた威圧は、私達精霊の力を持つ者には求心力を高めるもので、とても心地良いのです。
ですが敵意を持つ者は倒れ、疑念を抱く物は傅かずにいられなかったでしょう。
さすがです」
 やっぱりあれは神力が発動するタイプだったらしい。メニューにあるスキルはあまり使ってはいけないようだ。
「ジルベール。
あなたは自分の侍女にこのような格好をさせるのですか。
元の容姿が良いので似合っていないわけではないけど、斬新ね」
「え、格好って。メリルディーナ公爵家で使われている侍女服だと思うけど」
「侍女服?
少し動いている気もするし、できが良いのね」
「もしかして耳の事?
この耳は、引っこまなくなっただけなんだけど」
「引っこむ?」
「彼女は人間の姿をしているけど、幻獣だよ」
「この姿は女神アロノニア様から頂いた姿です。
以前は尻尾も耳も隠せたのですが、復活以降は調子が悪いのです。
尻尾は消せたのですが、なぜか耳が消せなくなってしまいました」
「げ、幻獣?」
「彼女のパートナーだった聖獣を僕の召喚獣として登録したのだけど、そのパートナーは力を蓄える為にしばらくお休み中でね。その間、僕の世話をしたいと。
ファール様を通して陛下には伝えてあるのですが、第1王女様は聞いていませんか?」
「聞いていないわ。
カトレア様が、かわいい妖精がいると言っていたのは聞いたけど」
「ああ、それはこっちだね」
 近くにいたイシスがすぐに飛んできた。
「イシス、姿を見せて、スザンヌ様の所に」
 イシスが妖精体のままで具現化し、スザンヌの前に現れた。手を出したスザンヌ様に自ら捕まり抱っこされた。満足なようだ。なぜかイシスは抱っこが好きだ。ガルダは絶対に抱かれようとしないのだが、性格の違いだろうか。コテツはどんな感じなのだろう。

 僕は、肉を食べ終わり、お腹が少し落ち着いた。
 皿を返しお茶でも飲もうかと思ったら、コハクがちゃんと持って来てくれた。第1王女の分もちゃんとある。
 うん、おいしい。
「おいしい紅茶だね。淹れ方も上手い。ありがとう」
「そうですか、良かったです」
 コハクは、ちょっと嬉しそうな顔をした。

 お茶を飲んでいたら、ロベール君が近くにきたので話しかける。
 彼の話によると、第3王子のフィリップ様と同じ年と言うことで、今までも王城に集まって勉強会やいろいろな催しがあったそうだ。
 第1王女も情報を補足してくれたが、3人の王子が年代が近く従者となる子供も年齢が被る。子供同士の相性を見る為に、3人のお友達役として頻繁に集まっていたそうだ。

 僕がそこに参加しなかったのは、10歳まで両金眼がばれないようにするためだ。皆も目を見て解っているのだろう、誰も突っ込んだことを言わない。

 人よりもスタートが遅いが、みんなと仲良くなりたいものだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...