転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

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第4章 10歳王都編

4.10.5 大聖堂の奇跡

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 その日の夜。
 皆で魔力操作の練習後に、時間を取ってもらいスザンヌ様とマリアテレーズ様の3人で一部屋に集まった。
 シュミット様は、あの後侍女に渡そうとするとむずかり、なかなか離すことができなかった。本格的に眠るまで待つと遅くなるので、抱っこしたままだ。
 僕らだけで一つの部屋にいる事はできないので、空気のような存在ですと言い張る王女達の侍女が入り口に待機し、ソファーの近くにはコハクだけがいる。
「一つ確認です。ラキシス様は、スザンヌ様がスーレリア様の魂を持つと言ってましたがご自覚がありますか?」
「あるわ、わたくしには300年前の記憶があるの。私だけが生まれ変わりだと思っていたけど、貴方もなの?
でも、マリアは前世の事を知らないわよね」
「スザンヌ様は300年前の記憶があるんですね。残念ながら僕らは、この世界の300年前の記憶はありません。まあ偶然ながら僕は少しだけ手に入れることができましたが、マリアテレーズ様は全く無いと思います」
「はい。その記憶はありません」
「スザンヌ様。300年前のシン様、マリ様は、この世界ではない別の世界からきたことはご存知ですか」
「ええ、そう言っていたわ、確かに。こちらの習慣と違うところが沢山あったし、嘘ではないと思っているわ」
「ラキシス様によると、僕らはシン様、マリ様の魂と同一らしいのです。
シン様、マリ様が300年前に亡くなり、その魂はアロノニア様によって保護された状態で再び異世界に戻り、向こうで生まれ変わる。そこで僕は成人し、マリアテレーズ様は成人前まで育ちました。残念ながらその世界でも僕らは殺されメリーナ様によって再びこちらに戻ったのです。僕らが覚えている前世は、直前の異世界での記憶です。特に覚えているのは死ぬ直前にマリアテレーズ様を救えずに死んだことです」
「わたくしも、覚えているのはジルベール様がおっしゃった世界での事です。ジルベール様が私の先生だった事を覚えていますけどこちらの世界の事は…」
 その後で詳しく状況を説明し、スザンヌ様は納得してくれた。

「ジルベール様の家には他にも異世界からの転生者の方がいるのですよね」
「僕のところには、同じ異世界から転生した人が4人います」
「え、ジルベール様の周りにはそんなに」
「ここに移動するときにも会ったバンガロール子爵も異世界からの転生者でした。ですので、僕とマリアテレーズ様を含めて7人が確認できている転生者です」

「そう、転生者って結構いるのね」
「まあ、人は似た者同士で集まると言いますから、そういった人が特定の場所に集まるのは自然な流れなのかもしれません。でもお姉さまのようにこちらの世界の転生者もいるのですね」

「そうね。この国は貴方達をここに導いたメリーナ様を信仰している人が多いから異世界からの転生者が多いのかもしれないわね。わたくしはラキシス様が転生させたと言っていたでしょ。ラスク王国やアルフォンス王国に比べるとこの国はラキシス様を信仰している人が少ないから、私と同じようなこの世界の転生者が少ないのかもしれないわ。
とりあえず、あなた達が300年前の記憶を持っていないのは残念だけど、時を超えて再び会えたのは嬉しいわ。このことは3人だけの秘密にしましょう。お父様たちに前世があるとばれるのは良くない気がするわ。
でもお母様やファール様にはばれるのでしょうけど。指摘されるまでは黙っていましょう。
わざわざ言う必要はないでしょ」


4.10.6  大聖堂の奇跡

「そうしましょう。
ところで、スザンヌ様のようにこの世界の転生者と言う存在を確認できたので思い浮かんだ事があります」
「なにかしら」
「おそらくリリアーナ母様もこの世界の転生者では無いかと。
そう考えると母様の態度に納得感があるのです」
「どういう事?」
「僕は、割と小さいことから転生者として目覚めていたので大人びていました。ですがリリアーナ母様はそんな僕を特別な事と思っていない。逆にそういう事が当たり前のように育ててました」
「つまり、自分が転生者だから子供が転生者であっても異常とは思わず、転生者としての能力をさらに伸ばすように育てたと言う事ね」
「ええ、そうです」
「そう。じゃあ、わたくしの母、第2王妃もそうかも。前世の記憶が戻ったころの対応がとてもスムーズだったし、マリアテレーズの時も」
「ああ、そういえば。わたくしも記憶が混乱した時に対応してくれたのはお母様じゃなくて、エマーシェス様だったわ。だからだったのですね」
「この世界は割と転生者が多いのかもしれない」
「私の感なのですが、その子。シュミットも転生者だと思うのです。たまに日本の歌をリズムを刻んで鼻歌で歌っていることがあるし。でも日本語で話しかけても反応が無いので記憶は戻っていないと思うのです」

「シュミット様はまだ幼いから、普通は覚醒してない年。マリアテレーズ様が記憶を思い出したのがついこの間でしょ。スザンヌ様はどうだったのですか」

「私はある日突然思い出したわけではないわ。一番古い時で5歳ぐらいだったのかしら。
大半は夢で前世の事を見るの。7歳ぐらいからは毎晩見るようになって、そのうち夢ではなくて前世なのだと気が付くの。そのあとは昔の知識も思い出せたわ。
だから完全に覚醒したのは8歳から9歳にかけてね。だから、覚醒はスムーズだったわ。
それまでの私と、成人した意識はゆっくりと統合された感じね。ジルベール様はどうだったのですか」
「僕は生まれた時から前世の記憶がありました。
ただ前世で成人した記憶があっても、精神年齢は現世の体に依存するのです。
だから、赤ちゃんの時は眠る時間が多かったし、こちらの言葉も解らなかった。ふつうに赤ちゃんとして生きてましたよ。その後も、割と子供の遊びを好んでいたし。3歳からはバーニィが来てくれたから魔法を研究する時だけ成人の意識が強くなる感じだったかな。
最近も10歳よりは精神年齢が高いと思うけど、やっぱり子供の意識の方が強い時があるかな」

「それは私もです。やっぱりこの年齢よりも少し上ぐらいで抑えられている感じ。
意識があっても、体が心は多少同期するみたい」
 スザンヌ様が答えてくれ、マリアテレーズも答えてくれる
「私もですね。まだお母様に甘えたい気持ちが強いです。でも先生の前に立つと昔のドキドキした気持ちを思い出すのです」

「マリアはジルベールにぞっこんなのね。私は、ジルベールを見てもそこまでは。まあかっこよいとは思うけど。記憶にあるシン様とはちょっと違う感じ」
「あ、そうなんですね。
僕は初めてスザンヌ様を見た時には思わず2度目のプロポーズしそうになってしまいました、マリアテレーズ様の件があったので自嘲しましたが、危なかったです」

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