転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
333 / 532
第4章 10歳王都編

4.14.5 王都からの帰還

しおりを挟む
 朝、起きて宿屋で朝食を済ませる。出発まで時間があったので、宿の前に並んでいる露店を見て回った。
 男性組が外に出ると、女性組は既に市場を回っていた。さすが女性。しょうも無い物しかなくても、買い物好きだな。ティアマトも、エイミーも市場を回っていたので僕の護衛はトシアキだけだ。

 市場を見回すと、爺さんと怪我をした子供が店番をしているところにイザベラ様がいた。
 少し気になって隣に並んでみた。
 イザベラ様はツンデレキャラを発揮しながらも、その店で結構な買い物をしていた。護衛を2人残して、お付の侍女が荷物を持ってそこを離れた。イザベラ様も別の店に移動するところだったので、手を差し出しエスコートしながら移動した。
「イザベラ様は優しいのですね」
「そんなことないわ。ちょうど欲しいと思ったから買ったのよ。でもジルベール様は思っていたよりも厳しい方なのですね」
「僕が買わないからですか?」
「いえ、ジルベール様は回復魔法が使えると聞いています。誘拐された子供は助けたのですよね。あんな幼い子供が怪我をしていたのですから、治すのではないかと思ったのですけど」
「そうしなかったからですか」
「ええ。でも解るのです。まあ理由は察しますよ。誰も彼も治療できるわけではないですから。自分の領地の民ならまだしも、幼いと言うだけで他領の子供を治療することは無いですよね」
「うーん、時と場合によっては治しますよ。でもあの子は治せませんからね」
「そうなの。見た目以上に酷いのですね。かわいそうに」
「いえ、彼は治すところがありませんから。
どちらかと言えば、おじいさんの方が治療が必要でしょうね」
「治すところが無い?」
「ええ、あの子は怪我をした格好をさせられているだけですよ。
それで売り子をすれば売り上げが増えるのでしょう。
それに、売る時を含めて会話の中で怪我をしているとは言ってなかったでしょ」
「そういえば」
「きっと、あのおじいさんは自分が小さいころに実際に怪我をさせられ、それで店番をして大きくなったのですよ。そして、あの幼子は自分の子供ではなく、拾った子供でしょう。
自分の経験上であの格好をさせれば売り上げが増える。それなら幼子一人ぐらい面倒を見られるだろう。それで、あの格好をさせているんですよ。きっと」
「え、それでは、私は騙されたのですか?」
「彼らは騙していないでしょ。イザベラ様が勝手にそう思っただけ。ただ、おじいさんの片足は動かないし、左手もあまり動かない。怪我をしていると言うなら一人はそうですよ。きっと小さい時にやられた後遺症でしょう。それでも幼い子供を実際に怪我させていないのは高評価だと思いますよ。僕的には」
「そうなのですか。そこまで解っていても、ジルベール様は何もなさらなかったですよね」
「おじいさんの方は怪我が古すぎる。王宮魔導士のシシリーさんでも治療は厳しいです。
それに怪我が治って幸せとは限らない。
彼は怪我をしているから、幼子と共に生きている。
怪我を治せば、彼は幼子を捨てるかもしれない。
怪我をしているからこそ、育てた幼子が将来面倒を見てくれるかもしれない。
未来は解らない。何が幸せなのでしょうね。
そう考えると、彼らは現状が良いのではないでしょうか。
資金があれば楽になるでしょうけど、それはイザベラ様が成されました。
イザベラ様がさっき買った分で、彼らは一月ほど楽な暮らしができますよ」
「そうですか、では良い事をしたと思っておきましょう」
 うん、ツンだな。
 血筋だからだろうか、彼女はやっぱりスザンヌに似ている。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...