転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

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第4章 10歳王都編

4.15.7 王都からの帰還

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 カーリンサンチェ・フィンレワードは、今日も友達の女子3人組イザベラ様、アマーリエ様と一緒に馬車で移動中に女子話で楽しんでいた。
 昨夜飲み過ぎたと護衛がダウンするという、あり得ない事が起きた朝だった。護衛には悪いが、気分が悪くても出発しなければならなかった。
 次はいよいよ、フィンレワードの領都なのだから。
 上手くいけば、今日中に城に辿りつける。不順調でも近場の宿屋なら少し高級な所に泊まれる。出発時間が遅くなるとたどり着けない恐れがあり、そちらの方が問題だ。

 幸い、出発後にすぐにジルベール様が護衛達を回復魔法で癒して頂けたのでその後は順調に進んでいた。
 ジルベール様は、今はクロスロードと言う中領地の侯爵家嫡男だが、将来は公爵。同期では筆頭の出世株。なんと王女様とも婚約した。他の同級生と比べても大人びているし、下手をすると大人よりも優秀だと思う。
 どちらかと言うと同期で比べる方が間違っている。規格外として考えないと自分の候補者を選べなくなるぐらいだ。
 3人で楽しく話をしていたのだが、アマーリエ様の馬車が壊れてしまったらしい。女子全員イザベラ様の馬車に乗っていたので、特に問題ないのだがジルベール様が護衛の数が最低限にならないようにしたいとおっしゃられた。ジルベール様によると、昨夜のお酒の段階からなんだかおかしいのだと。このまま襲撃を受ける可能性を考えて行動するように言われた。
 アマリーエ様は、ご自身の馬車に戻りジルベール様達と一緒に待つことになったのだ。なんだかんだで私も自分の馬車に戻り、先へと進む。他にも男性の侯爵家の方も2名いるので、護衛は全部で4家分が揃っている。イザベラ様の護衛は10名ほど。私達の方も6名前後が付いている。過剰と思えるほどの戦力。普通の盗賊ならば問題なく撃退できる。

 休憩所について、馬車を降りようとしたのだが、護衛からストップがかかった。海からの襲撃だと声が聞こえた。
 すると、海岸沿いに泊まっていた船から数十名の者達が降りてきて戦闘が始まったのだ。
 だが、おかしなことにあちらの魔法は使えるのに、こちらの魔法が使えない。先制攻撃をくらい、護衛の足並みを乱される。次々と遠距離攻撃で護衛が倒れ、数が減った後で剣での攻防が始まる。
「くぞ、こいつら全然酔ってないじゃないか」
 などと言う声が外から聞こえる。私はイザベラ様と馬車の中で待つしかなかった。だがそれも数分の事。あっと言う間に馬車の扉が開き外に連れ出された。
 護衛達は全員が倒れている。魔法でやられた者が多いのでしょう。切り傷では無い魔法による傷が大半だった。
 そして、私達は侍女と共に捕まり小型船に乗せられた。数隻の小型船があったが、1隻を残してすぐに出発した。
 噂の人さらい。それは海賊だったのか。私は口を塞がれしゃべる事も出来ずうなだれた。これからの事を絶望した。
 ただ、唯一の救いとしてジルベール様が近くに居るはず。あの異常な力を持っている方ならもしかしたら助けに来てくれるかもしれない。それは単なる希望でしかない。
 20人ほどいた護衛騎士と完封した敵と戦えるのだろうか。ジルベール様は魔法が得意だとおっしゃっていた。だけれどもあの時は魔法が使えなかった。危険を冒してまで助けに来てくれるのだろうか。

 私達はすぐに母船に移された。双頭の不思議な船た。地元でも見たことが無い帆はたたまれているが、船が動いている。そもそもこの冬に船を動かせるのだからラルクバッハの船とは全く違うのだろう。
 私達は、すぐに船の中に入れられた。寒かった外よりはましだが牢の様な場所は狭く、そこまで暖かくも無い。そして何よりもくさかった。
 牢に入れる時に、海賊たちが私達子供は牢に閉じ込め、侍女達は夜に遊ぶのが楽しみだと言ってどこかで行った。
 男子2名は殴られた痕もあり、気絶している。なぜかイザベラ様は顔は無事だが気絶している。男子と同じように戦闘をしたのだろうか。この人は本当に無茶をする。
 侍女達が悲しみに暮れているなか、私が一所懸命励ますのだ。
「きっと、ジルベール様が来てくれます」
 そう言うと、侍女達も大人しくなった。
 だが、そんな状態は長くは続かない。10分ほどした時に、船が大きく揺れ始めた。きっと外洋にでたのだ。どんどん陸地から離れている。
 イザベラ様は、その揺れで目が覚めたらしい。
「今の揺れは、外洋に出てしまったのね。ああ、もう、誰も助けになんて来ないよ。お父様。助けて!」
 意外な事にイザベラ様はお父様っ子だったらしい。ここでお父様が出て来るとは。イザベラ様が泣き始めてしまい、侍女達もつられて泣き始める。
「大丈夫よ、ジルベール様がきっと助けに来てくれます」
 私が励ましたのですが、イザベラ様がそれを否定するのです。
「いくら聖獣をお持ちでも、聖獣を召喚するには大量の魔力が必要なのですよ。婚約者でも無い私達の為に、貴重な魔力を使うと思いますか。それにカーリンはお兄様が粗相したばかりではないですか。やさしいジルベール様と言えども、こんな海上に居る私達を助けてくれるわけがないわ」

 そういわれるとそうなのだが。希望を持っても良いじゃないか。
「頑張って助けに来たんだけど、ジルちゃんの事を信じてないなら助けるの止めようかな」
「誰?」
 暗くてはっきりとはわからないけれど、声や影から女性騎士だと解った。
「ジルベール様の筆頭護衛騎士、エイミーちゃんだよ」
 陰でしか見えないけれど、なにかかっこよいポーズをしているみたい。
「エイミー様。きっとジルベール様が助けてくれると信じてました。ここ、ここを開けてください」
 イザベラ様が手のひらを返したように、声を出された。すごい切り替えの早さだ。
「うん、うん。そうでしょ。特別にエイミーちゃんが助けてあげよう。あれ、男の子はダウンなの」
「ええ、懸命に戦われたようで、ダメージが大きいみたいです」
「そっか、さすが男の子。頑張ったんだね。私が抱えるよ」
 エイミー様は、両肩に男の子を抱え、私達は無事に牢から出る事ができました。
 侍女が、他の牢を開けて回りました。
 船内の揺れは大きく、満足に歩くこともできません。私達は結局その場に座り込んでいました。
「ちょっと、この子達見ておいてね。僕は下も確認してくるよ」
 エイミー様はそんな揺れに構わず、下の階層を確認しに行きました。そしてすぐに幾人かの敵を縛り引きずって戻ってきました。
「そろそろ上の方も終わったみたいだね。行こうか」
 そういえば、揺れが小さくなっていました。
「上は、どうなっているのですか」
「ジルベール様とトシアキの二人で全員を捕縛しているはずだよ」
 エイミー様は、再び男子二人を両肩に担ぎ、進みました。
「え、お二人だけで」
「そうだよ、ティアマトは竜になって空を飛んでいるし、イシスは海。ガルダも空で待機している。太郎は護衛に残して来たし。でもあの二人が居れば十分でしょ。なんか剣士は少なくて、魔法使いばっかり。力の強そうな人はいなかったしね」
 上に上がる時に知りましたが、エイミー様がお一人で下に居た50人程を捕縛されたそうです。上に到着したらお二人で同じぐらいの人数を捕縛していました。
 そして、船からはフィンレワードの海岸は見えず、だいぶ離れた所に来ていることが解りました。
 ジルベール様が空から救出に向かわれたからこそ、たどり着いたのです。もしジルベール様がいなければ私達は連れ去れ、外国に売られていたでしょう。
 聖獣様の力を使えると言っても、それには膨大な魔力が必要なはず。惜しげもなく魔力をつぎ込み助けれ頂いた事に感謝の念が絶えませんでした。
 兄上が犯した失態にも関わらず、私の救出。お父様とお母様に、感謝の思いを告げジルベール様にお礼をしていただかないと。
 そして私は、イザベラ様とは違うタイプ。武のカルスディーナ一門の中では文官。ジルベール様がメリルディーナ公爵となられた折に、側近として働けるようにより一層の努力をしよう。今回の事件を気に、私はそう誓うのだった。
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