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第4章 10歳王都編
4.16.1 フィンレワードにて
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フィンレワードの港に着き調査が始まって少しすると、突然20名ほどの集団が目の前に現れた。どうやらティアマトが連れて来た王都の人達のようだ。先頭をみると、カルスディーナ公爵本人だった。責任者を呼んで来るって聞いていたけど最高責任者が直接乗り込んできたよ。さすがティアマト。
集団の後ろの方に居るベールを被っている女性と子供が一人いる。顔が見えないので鑑定で名前の表示を見たら、なんとコハクとマリアテレーズ様だった。彼女達も来たのか。
「ジルベール、ご苦労だった。この者達はこの数年、この近隣国を荒らしまわっていた海賊だ。高速船を持っているので我々の船では追いかけられなかったのだ」
「今、フィンレワードの兵団が船の中を調べています。盗賊は全部で100人ぐらい。半分の50人以上が貴族並みの魔力を持っています。船の中に大量に魔力封じの枷があったので使いました。ラルクバッハで使っている枷とは種類が違うみたいですよ」
「イントラ帝国の系譜だろう、それにしても魔力持ちが多いな。貴族50名など小さな領地を治められる人数がこの船にいたのか。ならば我々の船が追い付けないはずだ」
「速度はそうでしょうけど、疑問があります」
「なんだ」
「補給を受けなければ食料や水が足りないはずです。捕まえられないのは解りますが、どうやって補給していたのでしょうか」
「補給の時に捕まえられるだろうと言うことか」
「まあ、そういう事です」
「漁師から買っていた場合もあるだろうが、少し離れた島が中立の地になっておる。海賊だろうが海軍だろうが商人だろうが、そこでは戦闘行為が禁止されておってな。補給はそういうところを使っていたのだろう」
「なるほど、中立地帯があるのか」
出口で見張ればと言う考えもあるだろうが、全方位の海域を見る事はできないだろうし、そういう所は、他船の近くをうろうろとする事が禁止されているのだろうな。
「おお、イザベラ嬢、他の皆も大丈夫か」
カルスディーナ公爵は、イザベラ様だけ名前で呼んだ。まあ彼女が先頭を歩いたから一番目立っただけかもしれない。
「はい、わたくしを含めて他の侯爵家の子供達全員、仕える侍女も無事でした」
「怪我はしておらぬか」
「私と、男子2名は少し。ただあちらに残っていた者達の方がひどいかと。我々は人質でしたから、抵抗した時に気絶させられただけです」
「そうか、やはりイザベラは戦ったのか。女性なのだから引き際は見極めるのだぞ、顔を怪我しなかったのは単なる幸運だぞ。ではコハク殿、治療を頼みます。ジルベールも彼女たちと一緒に居ると良い」
カルスディーナ公爵は、兵士を連れて船の中に入って行った。
残されたのはコハクとマリアテレーズ様、それに二人の護衛と思われる女性騎士ともう一人。
「マリアテレーズ様とコハク、それに、バーニィもきたの」
「ジルベール様は大丈夫ですか?」
「今回は自重無しで聖獣を2体使ったからね。割と安全な戦いだったよ。もちろん怪我は無いよ。馬車を守っていた他の侯爵家の護衛達の方がひどいかな。さっきは魔力を残したかったから、最低限しか治療してないし」
「では、マリアテレーズ様練習を兼ねて、そちらの方々の所へ急ぎましょう」
「それは良いけど、そのベールと下に仮面まで付けてるの?」
「はい、コハク様が活躍されていた頃の治療師は皆こういう仮面を付けていたそうです。
仮面には清浄の魔法を付与され患者からの病気を貰わないように保護していたそうです」
「私の仮面は私が人と一緒に生活していた頃に使っていた物です。ベールは、エミリア様が付けるようにと。私達が兵士の前に立つなら必ずと言われました。仮面を付けると言ったのですが、ベールも付けるように進められました」
「へー。まあ僕もエミリア様の言う通りにしておいた方が良いと思うわ。じゃあ行こうか」
侯爵家の護衛達を集めて、本格的な治療をすることを伝えた。
「では、マリアテレーズ。あなたは今日は診断だけです。治療はまだダメですよ。診断結果を私に伝えて」
「はい」
マリアテレーズ様が診断を行って、コハクに伝える。全体を診断し治療する部分を丁寧に診断。コハクも診断をしながら治癒の魔法を使う。治療中も変化を確認するためにマリアテレーズ様は診断を続けるようだ。
こうやって、実地勉強をするのか。僕ではこんなに丁寧に教える事はできないな。本を読んで、あとは実戦と言うな。間違いない。
集団の後ろの方に居るベールを被っている女性と子供が一人いる。顔が見えないので鑑定で名前の表示を見たら、なんとコハクとマリアテレーズ様だった。彼女達も来たのか。
「ジルベール、ご苦労だった。この者達はこの数年、この近隣国を荒らしまわっていた海賊だ。高速船を持っているので我々の船では追いかけられなかったのだ」
「今、フィンレワードの兵団が船の中を調べています。盗賊は全部で100人ぐらい。半分の50人以上が貴族並みの魔力を持っています。船の中に大量に魔力封じの枷があったので使いました。ラルクバッハで使っている枷とは種類が違うみたいですよ」
「イントラ帝国の系譜だろう、それにしても魔力持ちが多いな。貴族50名など小さな領地を治められる人数がこの船にいたのか。ならば我々の船が追い付けないはずだ」
「速度はそうでしょうけど、疑問があります」
「なんだ」
「補給を受けなければ食料や水が足りないはずです。捕まえられないのは解りますが、どうやって補給していたのでしょうか」
「補給の時に捕まえられるだろうと言うことか」
「まあ、そういう事です」
「漁師から買っていた場合もあるだろうが、少し離れた島が中立の地になっておる。海賊だろうが海軍だろうが商人だろうが、そこでは戦闘行為が禁止されておってな。補給はそういうところを使っていたのだろう」
「なるほど、中立地帯があるのか」
出口で見張ればと言う考えもあるだろうが、全方位の海域を見る事はできないだろうし、そういう所は、他船の近くをうろうろとする事が禁止されているのだろうな。
「おお、イザベラ嬢、他の皆も大丈夫か」
カルスディーナ公爵は、イザベラ様だけ名前で呼んだ。まあ彼女が先頭を歩いたから一番目立っただけかもしれない。
「はい、わたくしを含めて他の侯爵家の子供達全員、仕える侍女も無事でした」
「怪我はしておらぬか」
「私と、男子2名は少し。ただあちらに残っていた者達の方がひどいかと。我々は人質でしたから、抵抗した時に気絶させられただけです」
「そうか、やはりイザベラは戦ったのか。女性なのだから引き際は見極めるのだぞ、顔を怪我しなかったのは単なる幸運だぞ。ではコハク殿、治療を頼みます。ジルベールも彼女たちと一緒に居ると良い」
カルスディーナ公爵は、兵士を連れて船の中に入って行った。
残されたのはコハクとマリアテレーズ様、それに二人の護衛と思われる女性騎士ともう一人。
「マリアテレーズ様とコハク、それに、バーニィもきたの」
「ジルベール様は大丈夫ですか?」
「今回は自重無しで聖獣を2体使ったからね。割と安全な戦いだったよ。もちろん怪我は無いよ。馬車を守っていた他の侯爵家の護衛達の方がひどいかな。さっきは魔力を残したかったから、最低限しか治療してないし」
「では、マリアテレーズ様練習を兼ねて、そちらの方々の所へ急ぎましょう」
「それは良いけど、そのベールと下に仮面まで付けてるの?」
「はい、コハク様が活躍されていた頃の治療師は皆こういう仮面を付けていたそうです。
仮面には清浄の魔法を付与され患者からの病気を貰わないように保護していたそうです」
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「はい」
マリアテレーズ様が診断を行って、コハクに伝える。全体を診断し治療する部分を丁寧に診断。コハクも診断をしながら治癒の魔法を使う。治療中も変化を確認するためにマリアテレーズ様は診断を続けるようだ。
こうやって、実地勉強をするのか。僕ではこんなに丁寧に教える事はできないな。本を読んで、あとは実戦と言うな。間違いない。
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