転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
402 / 532
第5章 シドニア訪問編

5.8.6 エミリアの母と

しおりを挟む
 エリンの事は、なぜか当事者である僕を蚊帳の外に放り出し、勝手に決まって行った。
 エリンは卒業後は半年間シドニアの王宮で勤める。その間は、ロマーニャ様付きの侍女になるらしい。その後は、ラルクバッハでも半年間務める。その1年間が教育期間になるらしい。それが終わると、僕に仕えるそうだ。
 勝手に決まったのが釈然とはしないが、文句は無い。

 その後は、グランフェスタ様の見合いに関する話になるそうだ。ちょうどロマーニャ様との面会時間も終わったので、僕らは退席した。

 僕は、久しぶりのスザンヌとマリアテレーズとのデートだ。エリンとの話もあったのでご機嫌伺は必須だ。
 と、言うわけで、二人を連れてシドニア王都の街を回っていた。もちろん、護衛も一緒だ。
 いかにも貴族と言う風体で街を回っているので行ける場所はそれなりのところだけだ。

 そして、王都にある有名な宝石店に入店する。
 店に来訪は伝えてあるが、身分はあかしていない。子供3人の来店だがとても上品なもてなしを受けた。
 上客が来たと解ったのか、あるいはすべての客にそうなのかはわからない。

 そこで、スザンヌとマリアテレーズに似合う物を購入した。
 やはり想定外なのか、高い物が売れて店員のテンションが上がる。
「お客様、普段は見せないのですが、質の良い原石がございます。いかがでしょうか」
 僕らが買ったのはすでに加工されて既製品だ。
 この言葉は最初からデザインしたオーダー品を作らないかと言うお誘いなのだろう。
「僕らは旅の途中なんだ。加工を頼むほどの時間は無いんだ」
「そ、そうですか」
「もし、原石のままで売って貰えるなら見させて貰いたいが」
「わが店で加工までお任せ頂けないのは残念ですが、石との出会いは運命でもあります。気に入った一品がありましたら、ぜひお買い求めください」
 商売上手なのか、本心なのか解らないがなかなかに良い言葉だ。
「では、見せて貰おう」
 そう言うと店の奥から綺麗な宝石箱を持って来てテーブルの上に丁寧に並べた。
 そこには色とりどりの宝石が並べられる。
 かなりの高級な石だ。今、店に並べられていた既製品には使われていない大き目の石がごろごろと並べられた。いったいいくら分あるんだ。想像もできない。

「ジルさま、こちらも購入しましょう」
 一つの石をスザンヌが指さす。
 それは、緑色の石だった。
「それは、スーに似合わない色合いじゃないかな」
「エリンにですよ。ジル様」
 答えたのはマリアテレーゼだった。どうして? と言う顔で指摘された。
 つまり、なぜエリンに? と聞いたら怒られるんだろう。
 これは、買うしかないか。

 ふと、その原石の近くにある赤い石に目が行く。

「これは?」
「」
「ルビーですが、これだけの赤の濃さは珍しいでしょ。お客様はお目が高い、これは非常にレアな品です」
「そうなんだ」
「とても良い品ではあるのですが、これほどの一品になると、付けられる人を選んでしまいます。残念ですがこのままでは半分に砕かなければ売れないのですよ」
「砕くの?」
「ええ、とても勿体ないのですが。そもそもこのサイズをカットできる技師も国内にはいませんから。せっかくシドニアで出土した品なのですが」

 僕なら、魔法で加工できる。だけど、確かに指摘された通りこの色の石が似合うのはだれだろう。
 僕の知っている中で一番の美人はラルクバッハの王妃達。だが3人ともこの色の宝石を使っていない。
 他に、この石が似合いそうな人は思い浮かぶが、石に顔負けする。
 ふとルビースカリナ様の顔が思い浮かぶ。
 この赤は、あの目の色と同じだ。
 だけどあの人の為に僕が買うのはおかしいよな。僕との接点は無い。

 だが、買った方良いと言う予感がする。なぜだろう。

 まあ、よくわからないが、もしもの為に買っておくか。

 結局、その店でエリン用の原石と一緒に購入する。
 そして、平和に、二人とのデートを終えることができた。二人の機嫌も良い。ミッションコンプリートである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...