転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

文字の大きさ
412 / 532
第5章 シドニア訪問編

5.10.6 シドニア学園攻防戦

しおりを挟む
 僕らは、安全を確認しながらエリンのいる方へ進んだ。
 その近くに見知った学生が倒れていた。
「うわ、トルステン様。魔法以外に特別な能力は無いはずなのに。剣を持って周りの人よりも傷ついて。何してるこの人は」
 鑑定で詳細を調べると体力値が限界だ。これはやばい、瀕死の重体じゃないか。
 死者蘇生と言う魔法はあるが使うような状態で成功する確率も低い。放置はできない。
 急いで致命傷の治療をする。
 トルステン様をコハクと僕で治療を始めたが他にも倒れている学生が見える。そちらも血が流れトルステン様ほどでは無いが重体であることに違いはない。早く治療をして傷をふさがないとまずい。
「コハク、トルステン様の治療は僕がやるから他の学生を頼めるかな、出血を防がないと間に合わない状態になってしまう」
「そうですね。ところでジルベール様、幸いこれだけの精霊が集まっています。大規模な精霊魔法が行使可能です」
「え、精霊魔法。あれか。コハクの負担はないのか」
「精霊魔法を使えば全員を助けることができます。わたくし一人だけで魔力を負担すると大変ですが、ジルベール様の神石を貸してくだされば大丈夫です。実行しますか?」
「ああ、わかった。『コハクへの使用を許可する』 これを使って」
 僕が女神に貰った神石は、自分しか使えない保護がかかっていた。だから僕以外は使えないと思っていたが、コハクからそういう種類の保護は本人が許可を出せば別の人が使えると教えて貰った。
 神石は最初は木の杖に付けていたが竜王であるバハムート様との戦いで剣と魔法を総動員しなければならない時に杖と別けていた時に使えなかったので剣に付けていたこともある。
 だが他の人に貸し出せると解ったので、この旅の前に腕輪に付け替え貸し出せるようにしたのだ。
 コハクは、神石の腕輪を付け、先日と同じように舞を踊りながら歌い始めた。

 精霊魔法は踊りや舞が始まってすぐに発動した。淡い光が治療が必要な部位に集まり、全員の怪我をした部位すべての治療が同時並行で始まった。
 コハクの舞と歌は治療が終わるまで続く。コハクの舞は美しく、歌声も綺麗だ。
 女神の降臨とは異なるが本当の女神を見たことがなければこれこそが女神だと思えるだろう。そんな光景が続いた。
 どうやらこのエリアにいる治療を必要とする者は敵も含めて50名前後いたようだ。
 軽い怪我だった者はコハクが舞っている最中に目を覚ましたので、彼女の姿を見ている。ボーと焦点が合っているのかあっていないのかと言う状態でコハクを見ている。
 治療が上手くいっていないのかと思って鑑定で見てみたが治療済みだった。
 ただ、彼女を見ているだけのようだ、そのまま夢だと思ってくれると良いのだが。

 始まりから終わるまでは10分ほどだったろうか。前回ロマーニャ様を治療したよりもかなり長い時間だった。
 トルステン様の治療は僕の回復魔法と精霊魔法の効果で一気に治った。
 トルステン様から手を放し立ち上がる。そこにエイミーが神具を拾って僕のところに持って来た。
 危険なので、僕は手に取らずそのままストレージにしまう。

「エイミー、犯人たちの治療も終わったみたいだ。コハクに見惚れてボーとしているうちに縛って」
「えっと、犯人って?」
「うーん、あの辺の人だけど。とりあえず、制服を着てない人は縛って」
「はーい」
「あ、騎士服着てる人は学園の護衛だよ」
「はいはい、わかってまーす」
「エイミーその方は学園の護衛だ。シドニアの制服ぐらい覚えておけ」
「トシアキは細かいなー。コハクちゃんの近くに行きそうだったから捕まえおけば良いんだよ」
「なるほど。この目をみると、そうかもな。じゃあ、この学生の足も縛っとくか」
 エイミーとトシアキは、学生は足を、他は足と胴回りの2か所を縛って行った。
 縛られていないのはトルステン様とステパン様以外だった。

 治療が終わって、最初に立ち上がったのはステパンだった。
 さすが剣帝か。
 精神力も体力もけた違いだ。もっとも倒されても、致命傷を負わないようにしていたのかもしれない。
 彼は誰かを探してきょろきょろと。そして目当ての人物を見つけて駆け寄ってきた。
「トルステン様、大丈夫でござるか」
 ステパンがトルステンの横に来て、トルステンを抱きしめる。ではなく、まだ目を開けていないトルステン様のほおを叩いた。
 え? いきなりそれ!?
「ステパン殿、トルステン様の怪我は治したけど、それじゃあ刺激が強すぎる。彼はさっきまで死にかけてたんだ」
 と突っ込みを入れるが、再び叩いた。
「痛、痛いわ。何度も叩くなバカ」
「ああ、良かった。良かったでござる。あんな無茶をするとはなんて、ほんとに馬鹿でござるよ。ここは、あなたが主人公の物語では無いのでござるよ」
 もしかしたらステパンはトルステンが転生者と言うことを知っているのか?

「ステパン、彼女たちはどうなった」
「さあ、トシアキ殿が来たのを確認して倒れやしたから。でもジルベール様が治療してくれたと言うことは勝ったんじゃないですかい」
 トルステン様は、周りを見渡した。
「ああ、そうみたいだな。二人とも無事だ。良かった」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...