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第5章 シドニア訪問編
5.10.7 シドニア学園攻防戦
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エリンとその隣にルビースカリナ様。
いや、正しくはルビースカリナ様の隣にエリンが立っていると言うべきなのだろう。どう見ても主人公はルビースカリナ様だ。
うーん、さっきの物語発言を引きずるな。
僕は、トルステン様から離れ、二人の方へと移動する。
「お二人とも大丈夫ですか」
ルビースカリナ様は、僕の方を見て少し考えるような感じがした。
「お前は、ジルベールだったか。それと、その聖女殿はそなたが連れて来たのか」
「聖女、ああコハクのことか。ええ僕が連れて来ました。それで、なぜこのような事が?」
「ふむ、なぜそなたが都合よくここに居る? そなたは国境に居るはず。ではなかったか」
「え」
質問に質問で答えられた。予想外だ。
それも堂々とこちらを疑って来た。さすがルビースカリナ様だ。
「この者達はシドニアの主力が居ないこの時を狙って実行したのだと言っておった。お前、本当に味方なのか」
おお、そう来たか。
「都合よく僕が戻って来たのは、ラルクバッハの第1王女スザンヌ様がルビースカリナ様とエリンが襲われる事を予知されました。ですから僕らだけ転移で応援に駆けつけました。間に合ってよかったです」
「予知。都合の良い言葉だ。だが嘘ではないようだな」
ルビースカリナ様の看破の力だろうか。彼女には嘘なのかどうかわかるようだ。
「ルビースカリナ様は、こんな状況でも冷静に落ち着いて分析をされているのですね」
「……落ち着いて。そう見えるか」
「まあ」
「前世の修羅場に比べればこの程度。そなたもそうであろう」
「え、僕に前世があると知ってるんですか」
「何を驚く。わたくしは女王だったのだ。前世持ちが存在することは知っている。お前がそうであることは見ればわかる。わたくし自身が転生を経験するとは思わなかったが」
「なるほど。えっとエリンは大丈夫かい」
たぶん、ルビースカリナ様と話しても先に進まない気がしたので矛先を変える。
「はい、ジルベール様もおかげで助かりました。ありがとうございます」
ルビースカリナの後ろからエリンが丁寧にお辞儀をした。声をかけられたが彼女の前にでるそぶりはない。
「おお、礼だ。そうだったな。そなたら大儀であった」
え、そうくるの。
「あ、はい。それで、えっと、質問しても良いですか、なぜお二人が襲われたのですか。わかる範囲で教えてください」
二人に質問をしたが、やっぱりルビースカリナ様が話すようだ。
「襲って来た理由か。その緑の服を着た男がわたくしを連れて行くと言ったのだ。どうやらわたくしに惚れていたらしい。いつものことだが、迷惑な。頼んでもおらぬのにわたくしを連れ出し女王にすると言っておった」
ルビースカリナ様が選ばれた理由は予想の一つだった。その行動に理解はできないが。
しかし、連れ出して女王にするって。
記憶があろうが血筋ではない。
王族は血筋を重要視する。記憶があるからと連れて行って女王にできるわけがない。
そもそも処刑した女王だ。受け入れられるわけがない。そう考えると王位を奪うには軍隊を使って戦争をするしかないはずだ。
捕まえた人々を見る限り、魔力がほとんどない素人ばかりだ。そんな人しか集められない組織で戦争。そんな事ができるはずがないのだけど。
エリンは精霊を集めることが知られていたんだろうな。だが精霊が見えるようになったのはつい最近のことのはず。どういう伝手で知ったのか不思議だ。
捕まった人を尋問して解ると良いのだが。そして神具のことも聞かないといけない。
「この事件は不可解だ。わたくしを狙うなら、家に戻る時に馬車を襲った方が成功したはずだ。その者を連れ出すにしてもこのような昼間に襲った理由が解らぬ」
「あの、わたくしはなぜ狙われたのでしょうか?」
「そなたは、あの魔道具を動かすのに必要だったのだろう」
ルビースカリナ様が僕の代わりに答えた。
その話の途中で待ちきれずにコハクがエリンの隣に行き、腕をつかんだ。
「エリン様、腕を出してください。その腕輪を外しましょう。それが精霊を集めているのです」
「でも、これ外れませんよ」
「外れないのは呪いがかけられているからです。聖魔法で解呪すれば外れます」
コハクがエリンの腕輪に触れ解呪を始めた。
僕は横から鑑定で腕輪を調べてみた。
「その腕輪がエリンの力を強制的に発動させていたのか。それで精霊を集め、さっきの神具が集めた精霊を暴走させる。そういう仕掛けか」
今回、昼間に堂々と誘拐しようとしたのは、この神具の能力を使うことが前提だろう。こんな聞いたことも無いような魔道具を前提で作戦を立てるとは。
その自信がどこから来るのか不思議だ。
だが、発動に自信があったのは間違いない。この神具を前提にルビースカリナ様とエリンの二人をターゲットにした作戦を立てたのだろう。
そうか、魔法を無効化できるなら、魔法があまり使えない兵士が多くいる場所で襲うよりも魔法力の高い護衛が少人数で守っている学園で誘拐するのが一番成功率が高い気がする。
いや、正しくはルビースカリナ様の隣にエリンが立っていると言うべきなのだろう。どう見ても主人公はルビースカリナ様だ。
うーん、さっきの物語発言を引きずるな。
僕は、トルステン様から離れ、二人の方へと移動する。
「お二人とも大丈夫ですか」
ルビースカリナ様は、僕の方を見て少し考えるような感じがした。
「お前は、ジルベールだったか。それと、その聖女殿はそなたが連れて来たのか」
「聖女、ああコハクのことか。ええ僕が連れて来ました。それで、なぜこのような事が?」
「ふむ、なぜそなたが都合よくここに居る? そなたは国境に居るはず。ではなかったか」
「え」
質問に質問で答えられた。予想外だ。
それも堂々とこちらを疑って来た。さすがルビースカリナ様だ。
「この者達はシドニアの主力が居ないこの時を狙って実行したのだと言っておった。お前、本当に味方なのか」
おお、そう来たか。
「都合よく僕が戻って来たのは、ラルクバッハの第1王女スザンヌ様がルビースカリナ様とエリンが襲われる事を予知されました。ですから僕らだけ転移で応援に駆けつけました。間に合ってよかったです」
「予知。都合の良い言葉だ。だが嘘ではないようだな」
ルビースカリナ様の看破の力だろうか。彼女には嘘なのかどうかわかるようだ。
「ルビースカリナ様は、こんな状況でも冷静に落ち着いて分析をされているのですね」
「……落ち着いて。そう見えるか」
「まあ」
「前世の修羅場に比べればこの程度。そなたもそうであろう」
「え、僕に前世があると知ってるんですか」
「何を驚く。わたくしは女王だったのだ。前世持ちが存在することは知っている。お前がそうであることは見ればわかる。わたくし自身が転生を経験するとは思わなかったが」
「なるほど。えっとエリンは大丈夫かい」
たぶん、ルビースカリナ様と話しても先に進まない気がしたので矛先を変える。
「はい、ジルベール様もおかげで助かりました。ありがとうございます」
ルビースカリナの後ろからエリンが丁寧にお辞儀をした。声をかけられたが彼女の前にでるそぶりはない。
「おお、礼だ。そうだったな。そなたら大儀であった」
え、そうくるの。
「あ、はい。それで、えっと、質問しても良いですか、なぜお二人が襲われたのですか。わかる範囲で教えてください」
二人に質問をしたが、やっぱりルビースカリナ様が話すようだ。
「襲って来た理由か。その緑の服を着た男がわたくしを連れて行くと言ったのだ。どうやらわたくしに惚れていたらしい。いつものことだが、迷惑な。頼んでもおらぬのにわたくしを連れ出し女王にすると言っておった」
ルビースカリナ様が選ばれた理由は予想の一つだった。その行動に理解はできないが。
しかし、連れ出して女王にするって。
記憶があろうが血筋ではない。
王族は血筋を重要視する。記憶があるからと連れて行って女王にできるわけがない。
そもそも処刑した女王だ。受け入れられるわけがない。そう考えると王位を奪うには軍隊を使って戦争をするしかないはずだ。
捕まえた人々を見る限り、魔力がほとんどない素人ばかりだ。そんな人しか集められない組織で戦争。そんな事ができるはずがないのだけど。
エリンは精霊を集めることが知られていたんだろうな。だが精霊が見えるようになったのはつい最近のことのはず。どういう伝手で知ったのか不思議だ。
捕まった人を尋問して解ると良いのだが。そして神具のことも聞かないといけない。
「この事件は不可解だ。わたくしを狙うなら、家に戻る時に馬車を襲った方が成功したはずだ。その者を連れ出すにしてもこのような昼間に襲った理由が解らぬ」
「あの、わたくしはなぜ狙われたのでしょうか?」
「そなたは、あの魔道具を動かすのに必要だったのだろう」
ルビースカリナ様が僕の代わりに答えた。
その話の途中で待ちきれずにコハクがエリンの隣に行き、腕をつかんだ。
「エリン様、腕を出してください。その腕輪を外しましょう。それが精霊を集めているのです」
「でも、これ外れませんよ」
「外れないのは呪いがかけられているからです。聖魔法で解呪すれば外れます」
コハクがエリンの腕輪に触れ解呪を始めた。
僕は横から鑑定で腕輪を調べてみた。
「その腕輪がエリンの力を強制的に発動させていたのか。それで精霊を集め、さっきの神具が集めた精霊を暴走させる。そういう仕掛けか」
今回、昼間に堂々と誘拐しようとしたのは、この神具の能力を使うことが前提だろう。こんな聞いたことも無いような魔道具を前提で作戦を立てるとは。
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だが、発動に自信があったのは間違いない。この神具を前提にルビースカリナ様とエリンの二人をターゲットにした作戦を立てたのだろう。
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