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第5章 シドニア訪問編
5.12.10 防衛戦後の始末
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メリルディーナ公爵家の自分の部屋に着くとベルを鳴らして侍女を呼んだ。
公爵家の人達は僕がいつも転移で来るのを知っているので幽霊が来たと言う誤解は無い。
部屋に近くにいた侍女がやって来て扉を開け、礼をして入って来た。
魔力感知で確認していたが、急いで走って来たはずだが、コレットとは違う。さすが公爵の侍女。そもそも絨毯の毛足が長く、足音がしにくいのだ。それはシドニアの王宮も一緒。逆に言うと、なぜコレットだけ足音がするのか不思議だ。
「いらっしゃいませジルベール様。本日の御用はなんでしょうか?」
「ファールじいちゃんに会いたいのだけど家に居る?」
「本日はまだ城に出立されていないはずです。お呼びしますので、応接に移動してください」
そう言って、侍女さんは走って行った。いや走っているように見えないが素早い早歩きだ。そうか、侍女さんってこうやって移動するのか。やっぱり音がしない歩き方があるんだな。
「どうしたのジルちゃん」
「いや、急いでいる時の侍女さんの歩き方をね」
「なんのこと?」
エイミーに王宮で叱られていた侍女さんの事を話した。
「ふーん、そんなの気にしたことなかった。兵士は走るのが仕事だしね。そっか、侍女さんとは急ぎの時の走り方が違うんだ。あれ、そういえば淑女教育で習ったような気がするな」
「気がするって、エイミーもあの歩き方できるの?」
「もちろん、僕の身体能力を持ってすれば習得は簡単さ。ただ面倒だからやらないけどね」
意外なことにドレスを着させた時のエイミーは淑女の礼も、ダンスも完ぺきにできる。ただ大人しい時間が短く、すぐに飽きて淑女から騎士の立ち振る舞いに戻ってしまうだけだ。
そんな無駄話をしながら応接室に移動した。
中に入るとすでにファールじいちゃんが座っていた。おそらくこの部屋の近くに居たのだろう。
「お待たせしました」
「いや、わしも今来たところだ。登城まであまり時間が無いのだが、どうした」
「昨夜? あれ寝てたからその前かな。シドニアとグランスラム帝国の国境で戦いが発生して国境の壁が一部壊れました。こちら側の建物もいくつか破壊されました」
「なんと、陛下達は無事なのか?」
あ、さっきと同じやり取りだ。
「陛下達は無事です。すでに戦いも終結しています。ラルクバッハの国王陛下とシドニアの国王陛下は共にその地で指揮を執っております。王妃様と第1王子以下皆さまは安全のためにシドニアの王都に転移で連れて行きました」
「そうか、しかし、ジルベールが居てそれだけの被害を出すとは敵の戦力がそれほど大きかったのか?」
同じ話だ。
「えっと、転移能力者が20人いたのです。ですから、シドニアの王都でも戦いが同時に起きて、僕は両方に手を出しました。国境の方は、最初にティアマトの同族の竜が呪いを使われて操られており、それを撃退。その後も大型の地竜を倒しました。僕はその後シドニア王都に移動して戦ってました。国境は、僕が移動した後でワイバーンが襲って来たそうです。ティアマトと僕が置いて行ったガルダが防衛してくれたので戦いは終結しました。被害はティアマトが居なければもっとひどかったと思います」
「話が複雑だな。転移者が20名も居るのは厄介だな。まあ戦いが終わっておるなら詳細は後で確認しよう。まずは救援じゃな。国王や王妃様は何か言っておったか」
「王妃様は緊急時のマニュアル通りにすると。シドニアへの派兵は、ゴヤロードに待機させていた戦力を移すそうです。クロスロードとヤンロードの兵士をゴヤロードに出して欲しいそうです。クロスロードには僕が依頼書を渡してきました。ヤンロードとブルンスワードにはルカ王子が頼みに行くそうです。その為に、転移門は設置済みです。第1王妃はあまり僕に頼らない方が良いと考えていたみたいなので、王宮やファールじいちゃんへの伝言は頼まれてません。ここへは僕の判断で来ました」
「ふむ、王妃様の判断は間違っておらん。ジルベールの力に頼るのは一時的にはメリットがあるが、軍や戦ごとにはかかわらん方が良い。たった一人の転移能力を戦に取り込むのは間違っておる。敵が20名も転移能力者を育てたのは脅威ではあるが、それでもそなたの力に頼りきりではこの後が続かん」
「軍の弱体化に繋がる可能性があるからですか」
「そうじゃな。とはいえ、このまま待っておると第1王妃の負担が気になるな」
ファールじいちゃんが少し考えこむ。
「うーむ、一月でもレイブリングが現場に行ければ良いのじゃが。元将軍じゃからな。現場にあやつがいれば。じゃがアメリの出産があるし、親子が共にシドニアに居るのも良くない」
「そうですよね。王妃様が疲れた感じだったけど、どうしようもない」
「うむ、のちの事は転移門が繋がったなら文官を募って転移門で行かせるか。今はとりあえずアンジェリカを行かせよう」
「え、第3王妃様をシドニアに出すのですか?」
「まあ、すぐに動けて実務ができ、決済までできるのは第2王妃かアンジェリカだけだろう。少なくとも第1王妃様が続けるよりはるかにましじゃ」
第1王妃様、書類仕事が苦手なのかな。
「でも、シュミット様のお世話は」
「シミュット様も、マイアーロッセ様も、ついでにニナシスティも連れて行くが良い。子供の面倒をエミリア妃が見て、アンジェリカが実務をやるのが一番良かろう。こっちは第2王妃一人いれば仕事は回る。優秀な大臣が沢山いるのだからな。あやつらをこき使えばよい。では王城に行くぞ」
公爵家の人達は僕がいつも転移で来るのを知っているので幽霊が来たと言う誤解は無い。
部屋に近くにいた侍女がやって来て扉を開け、礼をして入って来た。
魔力感知で確認していたが、急いで走って来たはずだが、コレットとは違う。さすが公爵の侍女。そもそも絨毯の毛足が長く、足音がしにくいのだ。それはシドニアの王宮も一緒。逆に言うと、なぜコレットだけ足音がするのか不思議だ。
「いらっしゃいませジルベール様。本日の御用はなんでしょうか?」
「ファールじいちゃんに会いたいのだけど家に居る?」
「本日はまだ城に出立されていないはずです。お呼びしますので、応接に移動してください」
そう言って、侍女さんは走って行った。いや走っているように見えないが素早い早歩きだ。そうか、侍女さんってこうやって移動するのか。やっぱり音がしない歩き方があるんだな。
「どうしたのジルちゃん」
「いや、急いでいる時の侍女さんの歩き方をね」
「なんのこと?」
エイミーに王宮で叱られていた侍女さんの事を話した。
「ふーん、そんなの気にしたことなかった。兵士は走るのが仕事だしね。そっか、侍女さんとは急ぎの時の走り方が違うんだ。あれ、そういえば淑女教育で習ったような気がするな」
「気がするって、エイミーもあの歩き方できるの?」
「もちろん、僕の身体能力を持ってすれば習得は簡単さ。ただ面倒だからやらないけどね」
意外なことにドレスを着させた時のエイミーは淑女の礼も、ダンスも完ぺきにできる。ただ大人しい時間が短く、すぐに飽きて淑女から騎士の立ち振る舞いに戻ってしまうだけだ。
そんな無駄話をしながら応接室に移動した。
中に入るとすでにファールじいちゃんが座っていた。おそらくこの部屋の近くに居たのだろう。
「お待たせしました」
「いや、わしも今来たところだ。登城まであまり時間が無いのだが、どうした」
「昨夜? あれ寝てたからその前かな。シドニアとグランスラム帝国の国境で戦いが発生して国境の壁が一部壊れました。こちら側の建物もいくつか破壊されました」
「なんと、陛下達は無事なのか?」
あ、さっきと同じやり取りだ。
「陛下達は無事です。すでに戦いも終結しています。ラルクバッハの国王陛下とシドニアの国王陛下は共にその地で指揮を執っております。王妃様と第1王子以下皆さまは安全のためにシドニアの王都に転移で連れて行きました」
「そうか、しかし、ジルベールが居てそれだけの被害を出すとは敵の戦力がそれほど大きかったのか?」
同じ話だ。
「えっと、転移能力者が20人いたのです。ですから、シドニアの王都でも戦いが同時に起きて、僕は両方に手を出しました。国境の方は、最初にティアマトの同族の竜が呪いを使われて操られており、それを撃退。その後も大型の地竜を倒しました。僕はその後シドニア王都に移動して戦ってました。国境は、僕が移動した後でワイバーンが襲って来たそうです。ティアマトと僕が置いて行ったガルダが防衛してくれたので戦いは終結しました。被害はティアマトが居なければもっとひどかったと思います」
「話が複雑だな。転移者が20名も居るのは厄介だな。まあ戦いが終わっておるなら詳細は後で確認しよう。まずは救援じゃな。国王や王妃様は何か言っておったか」
「王妃様は緊急時のマニュアル通りにすると。シドニアへの派兵は、ゴヤロードに待機させていた戦力を移すそうです。クロスロードとヤンロードの兵士をゴヤロードに出して欲しいそうです。クロスロードには僕が依頼書を渡してきました。ヤンロードとブルンスワードにはルカ王子が頼みに行くそうです。その為に、転移門は設置済みです。第1王妃はあまり僕に頼らない方が良いと考えていたみたいなので、王宮やファールじいちゃんへの伝言は頼まれてません。ここへは僕の判断で来ました」
「ふむ、王妃様の判断は間違っておらん。ジルベールの力に頼るのは一時的にはメリットがあるが、軍や戦ごとにはかかわらん方が良い。たった一人の転移能力を戦に取り込むのは間違っておる。敵が20名も転移能力者を育てたのは脅威ではあるが、それでもそなたの力に頼りきりではこの後が続かん」
「軍の弱体化に繋がる可能性があるからですか」
「そうじゃな。とはいえ、このまま待っておると第1王妃の負担が気になるな」
ファールじいちゃんが少し考えこむ。
「うーむ、一月でもレイブリングが現場に行ければ良いのじゃが。元将軍じゃからな。現場にあやつがいれば。じゃがアメリの出産があるし、親子が共にシドニアに居るのも良くない」
「そうですよね。王妃様が疲れた感じだったけど、どうしようもない」
「うむ、のちの事は転移門が繋がったなら文官を募って転移門で行かせるか。今はとりあえずアンジェリカを行かせよう」
「え、第3王妃様をシドニアに出すのですか?」
「まあ、すぐに動けて実務ができ、決済までできるのは第2王妃かアンジェリカだけだろう。少なくとも第1王妃様が続けるよりはるかにましじゃ」
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