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第5章 シドニア訪問編

5.13.5 グランスラムの情報

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「他に聞きたいことはありませんか?」

「精霊を暴走させた魔道具の事は」
「どこから出て来た物なのか詳しくは知らん。今回の作戦に使うように受け取っただけだ」

「では、竜を操る術については?」
「祈祷師が怪しい術を使うと聞いたことはありますが、申し訳ありません。魔物を使う部隊とは別の組織でしたので情報を持っていません」
「そうなんだ。だいたいどういった部隊に別れているの」
「我々は支援部隊です。物資の手配、医療、食事。まあいろいろと多岐にわたります。攻撃部隊は、陸と海でわかれ、中の分類は細かく軍属によって大きく異なるので。今回の襲撃は300番台の隊が一緒でした。詳しくは実戦側の部隊長に聞くのが良いかと」
 偉そうな人だから、いろいろ知っているかと思ったけど、情報に偏りがあるのか。自分に関係した部分は確信に近いところまで知っているが、軍の構成やそういった情報は無理そうだな。

「では、得意そうなところをもう少し聞かせてくださいな。使徒は死んだら終わりなの。もしかして生き返ったりしない」
 スザンヌがすごいことを聞いて来た。生まれ変わりではなく、死に戻り?
「ラルクバッハでは死人が生き返ることがあるのですか?」
「世間では物語と言う認識だけど、王家が把握している事例はいくつかあるわ」
「そうですか、では勇者が亡くなった時の処置をお教えしましょう。彼の死体は放置すると死霊になって暴れる可能性があると言われました。ですので、すぐに焼却しました。残った遺骨はすりつぶし粉にした後で海に流しました」
「やっぱり」
「今回は犯罪者として裁きですから、墓標すら作っておりません」
「転生の話を聞かなかった?」
 僕が質問をした。
「皇帝陛下の魂は転生し復活します。ですが皇帝以外にも転生者はたまに出ますからね。それは普通でしょう。ですが、あのくそ勇者は転生もしませんよ」
「なぜそこまで言い切れる?」
「聖剣で切られた者は復活できません。それは女神アークロン様が公言されたそうなので確かなのでしょう」
「勇者の近くに居たから聞けた話ってことなんだね」
「ええ、殺された死体を処分する時にいろいろと話を聞けました」
 この男が勇者と共に居たからこそ聞けた話だと考えるといろいろと聞き出せたのは運が良かったと言っても良いのかもしれない。

「じゃあ、最後に。貴方はこの後、どこでどうしたい?」

普通に世に出れば探し出されて殺されるでしょう。
軍に所属していれば、軍が守ってくれるのでしょうが、転移能力のある者達は攻撃性の魔法が使えません。使えないからこそそっちが伸びたと言えます。荒事が嫌いな者が多い。割と温厚な性格の持ち主です。だから、できれば戦いには関わりたくない。
できれば帝国が探せない田舎にひきこもりたい。平和に暮らせればどこでも良いのです」

「田舎暮らしとなると、結構生活は厳しいですよ。平民の生活と大差ない。いや余裕は
あまりなく、平民の暮らしそのものですよ」
「捕まっているのですから、貴族として扱われる事は期待していません。奴隷として鉱山で働かされる可能性もあるのでしょう。彼らはストレージが使えるのですから荷物運びならできるでしょう」
 あれ、この人自身は空間魔法を使えないのではなかったか。空間魔法が使える人のことしか言ってないな。
「空間魔法が使える人は便利だからね。どこに連れて行ってもそこまで待遇が悪くなることは無いと思うよ。でもあなたは空間魔法は使えませんよ。助命を嘆願したと聞きましたけど」
「わたしは処刑でしょう。助命したのは若い者たちのことですよ。聞いてませんか?」
「いや、あなた方全員のことだと思っていた。スザンヌはどう聞いてる?」
「わたくしもそう聞いてます。個別に判断はされますが、根っからの悪人で無ければ助命の対象だと思っていました。一般兵は返すこともあり得ると思いますけど、空間魔法を使う人は、今後の事を考えても戻せないでしょう。我が国に協力できる人材が残るのは他国の眼もあります。今回、このような作戦が実現できることが解りましたからね。おそらくは能力を封印してどう隔離するかが言えなければ、同盟国内に分散されるでしょうね」
「そうですか」

「帝国って、こうやって人材が流れ出すことを危険だとは思ってなかったの?」
「いえ、危険視してましたよ。だから毒を仕込まれていました」
「え、毒。大丈夫なの?」
「はい、ジルベール様が魔法禁止のエリアを作っていたのであの時に発動しませんでした。捕まった後で、首から掛けていたネックレスと腕輪。あれが魔道具だったのです。それを外されたので死ななかったのです」
「え、そうなの」
「はい」

「あと、彼らには常時薬が使われていました。定期的に摂取しなければ気が狂うたぐいの。まあいわゆる麻薬です。ですがこちらの医師が中毒を和らげる薬を処方してくれたそうなので、しばらくすれば抜けると聞きました。ですから助命したのですよ。せっかく助かるのなら生きて欲しいですからね」

「薬の中毒か。後でコハクに聞いてみよう。なんとかなるかもな。僕がどこまで関われるかわからないけど、あなたの情報は有益だったと伝えておきます」

 コテツやコハクが封印されていた土地に住まわせればどうだろか。
 あそこなら、転移能力が無ければ陸からの接近は不可能だ。なんと言っても数百年の間、人間が近づくことはできなかった土地だ。
 転移に転移板が必要なのだから転移先をクロスロードの一か所にすれば監視もできる。
 あそこなら僕と、ティアマト、バハムートぐらいしか行けないのだから。
 王妃様に提案しておくか。

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