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第5章 シドニア訪問編

5.14.1 シドニアからの帰還

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 翌日、朝食後に転移でシドニアの国境へ移動した。
 トシアキとエイミーはコハクの護衛にして、転移能力者の様子を見に行かせている。

 転移後に、兵士を捕まえて国王陛下達のいる部屋に案内してもらった。

「ジルベールか、どうした」
「アンジェリカ様に頼まれてこちらに来ました」
「アンジェリカ? エミリアではないのか?」
「はい、ラルクバッハからアンジェリカ様が応援に来ています」
「そうか、ジルベールが知らせに行ってくれたのだな」
「そうです」
「それで、伝言はなんと?」
「予定通りに帰還するので、こちらを3日後に立つようにとのことです。陛下は僕が迎えに来ます。先にシドニアの王城に移動してください。他の兵たちは公爵閣下と共に予定通りに戻るようにとのことです」
「わしだけ先に戻るのか。なぜじゃ?」
「移動の分で持って来た書類を片付けて欲しいそうです。アンジェリカ様がこっちにきているので、ラルクバッハの書類を持って来てます」
「鬼だな」
「持って行かせたのはファール様です」
「く、あやつ離れていても容赦ないな」
「では伝えたので、僕はティアマトのところに行きます」
「そうか、わかった」

「ジルベール様、ティアマト様達のところへ案内します」
 ここまで案内を頼んだ兵士がティアマトのところに連れて行ってくれるようだ。

「そう、では陛下これで」
「うむ、エミリアとアンジェリカに元気にしていると言っておいてくれ」
「はい」

 僕は、兵士に案内され別の塔へ向かった。
 案内された建物は、倉庫のような物だった。
「ここなの?」
「はい、こちら片付けて、捕縛の用意をしていましたので」
 捕縛?
 何のことだろう?

 兵士が扉を大きく開けて、中に入れてくれた。

 まず最初に見えたのは中央の床に書かれた魔法陣だ。
 鑑定によると特定エリア内で魔法を使えなくするタイプだ。
 そしてその魔法陣の隣に牢屋がある。一つの牢屋に2人づついるようだ。
 その前に沢山の兵士と、綺麗な女性が一人いた。
 女性が開いた扉に気づき、僕の方を向いた。

「ジルベール。来たのか」
「ここは何なの?」
「転移者を確保するために作ったのだ」
 そういうことか、転移後に魔法を禁止し逃げられないようにしていたのか。
「少し前に最後の転移者能力者を捕まえたところだ。良いところに来たな」
「じゃあ10人全員を捕まえたってこと?」
「いやもっとだ。空間魔法が使える者は全部40人を少し超えていたぞ。その中で転移ができる者は全部で13人だ。最後の転移能力者がさっき捕まえたあの2人だ。他に瞬転が使える者も若干名いたが、その者達は罪人に使う魔法封じの腕輪で防止できるから転移ができる者以外は普通の牢に放り込んでいる」
「あれ、転移板は全部で20枚じゃなかった。王都に10人いるんだけど」
「別の場所に3枚あった。そっちの10枚がシドニア王都で捕まえた者に合うか確認してくれ。ジルベールの鑑定ならわかるだろう」
「うん、わかると思う」
「まあ、こっちで捕まえた全員の証言でこれ以上は居ないと解っているが、念のためだ」

 話をしながら中央に書かれた魔法陣を見ると魔法陣の中心部に転移板が2枚置いてあった。どうやら、この魔法禁止エリアに転移して来たところを捕まえたようだ。

 王宮などに使う魔法禁止は、魔力操作の妨害が中心だ。特に体の外に出た魔法。魔力操作レベルが高ければ魔法は発動できてしまう。
 この魔法陣は僕が先日使った絶対魔法禁止エリアと同じ効果を持つ魔法禁止のようだ。 つまり魔法を使う分と同量の魔力を消費することで魔法を禁止する。だから身体強化を含めて全ての魔力を使うタイプを禁止できるのだ。
 ティアマトや僕のように相手よりも確実に魔力が多い者しか使えないが、逆に言えば僕やティアマトが使えば確実に禁止できる。
 さすがティアマト。こんな魔法陣までしってたんだな。書かれている文字も竜語だ。
 発動の条件が竜族になっている。だから、魔法陣の理論、竜語の両方を知らなければコピーできないようになっている。
「ティアマトはこの数日で大量に魔力は消費したんじゃない。大丈夫なの」
「魔力はかなり消費したが大丈夫だ。魔力を回復する薬を手に入れた」
「魔力を回復する? 竜の体に魔力回復薬は効かないのでは」
「ふふふ。実は帝国には私が使える魔力回復薬があったのだ。それも2種類。少量だが魔力をすぐに回復できる薬と、回復時間を早める薬。すごい発見だろう」
「へー、それはすごい」
「この薬だ。残りが少ないが、再現ができないか聞いてくれ。聖女には薬の解析をする能力があっただろう」
 そういえばマリアテレーズにそんなスキルがあったような気がする。
 薬の瓶を受け取り、自分の鑑定を使ってみた。
 すると驚きの結果が表示された。
「え、毒?」
「ああ、人間には毒だが、竜には効かないタイプだ。今まで人間やエルフが作った物しか試したことが無かったが、人と竜は耐久力が違うからな。人には毒でも竜の体力を持ってすれば薬の領域のようだ。私の鑑定では毒と表示されない。帝国には発想が普通じゃない優秀な研究者がいるようだ」
「だけど、こんなの良く飲んだね」
 僕は瓶をストレージにしまいながらそう尋ねた。
「ああ、そなたが助けた竜に使っていた薬だからな。ほら、こいつがあの時の竜だ」
 そう言って、近くにいた男を前に出した。
 髪が茶色で瞳は赤い。
 顔つきは15歳ぐらいの少年に見えるが背は父さんよりも大きい。
 周りにいる兵士たちよりも一回り背が高い。

「アルマイクと言います。助けて頂いてありがとうございました」
 意外なことに、丁寧なあいさつを受けた。
「そうですか、随分と長い期間捕まっていたのでしょう。意識を取り戻せて良かったですね」

「同士を見つけだし、元に戻せたのはジルベールのおかげだ。助かった」

 僕の前に来て言葉を発していたアルマイクを押しのけてティアマトが前に出て僕の手を取って嬉しそうにしている。
「それで、元々の目的だったアルマイクに呪いをかけていた犯人はどうなったのですか」

「見つけたぞ。だがその祈祷師は入院中だ」
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