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第6章 新しい命
6.2.6 アルフォンス王国の王子
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「竜の姫?」
「ああ、我が国に、いやジルベールのところには竜の国の姫様がいるんだ」
「ええ、私は竜族から500年以上前に書かれた魔法書を譲って貰えました。魔法陣の研究者だったオメガ・パテックス男爵が僕の元に来てくれていたので過去の魔法陣をこうして再現できたのです」
「では、ラルクバッハは500年前の技術を復活させたのか?」
「いえ、残念ながら解析ができたのはほんの一部です。実用的なところから手を付けていますがすべてを理解するのは難しいでしょう。現代には500年前の文字をちゃんと読める者がいませんから」
「まあ、そうだろうな。そうか、だからマジックバックやアイテムボックス以外に目立った魔道具が出ていないのか」
「納得しれくれたかい」
「ああ、ジルベール君の価値は解った。だが、僕らの国もその技術が欲しい。竜の姫を紹介してもらうことはできないのかい」
「それは難しいですわ」
答えたのはスザンヌだ。
「どうしてだ?」
「ティアマト様はジルベール様を強者と認めておいでです。ですからジルベール様に協力してくださるだけです。そもそも彼女はラルクバッハのために動いてくださっているわけではありません。たとえ剣帝クラスの方でも彼女を倒して協力を得るのは無理でしょう」
「剣帝? ジルベールはその年で剣帝よりも強いと」
「ジルベール様が得意なのは魔法なんだ。ただ剣はそれよりも落ちる。魔法は人外。剣は人の範疇と言うだけだがね。事実シドニアの剣客であるステパン殿と互角に戦えるんだ。そして彼女はステパンには興味を持たなかった。それが事実さ」
僕のかわりにルカディレック王子が答えてくれたが、さらっと僕の魔法が人外と言っていた気がする。
「まあこれは、彼女とシドニアで過ごした期間で得た感想だから間違っているかもしれん。それと、ここまで情報を提供したのはレイ君が誤った選択をしないようにだ。友としての手助けだからな」
「ふむ、わかった。どうやら僕は間違いを犯したと言うことか」
「そうだな」
「わかった」
「間違いついでに言うと、ティアマト様のことをジルベールに聞くのも間違っている。実は彼は彼女のことに関してろくな情報を持っていない」
「え?」
僕が驚いてルカディレック王子の方を見る。
「なんだい?」
だけど、笑顔で返された。
「いやいや、ティアマトのことでしょ。知ってますよ、もちろん」
「それって身長とか、強さとか、得意技とかだろ。例えば彼女の好きな食べ物が何か知っているか?」
「えっ、あれ?」
何を食べてた?
「あまいお菓子は好き。あとはピーマンが嫌い。大抵のものは出されたら食べる。はず……」
「好みの服の色は?」
「白じゃないの。いつも白を着ている」
「赤や青の飾りを着けることが多かったり、花をお部屋に飾られたり、ご存じよね?」
スザンヌからそう言われたが、そういえば髪飾りだったり、腕輪だったしていたような気がする。後は、部屋には入ったことが無いぞ。
「このように、ジルベール様は興味が偏っていますのよ。ただ周りの者の言うことは良く聞きます。ですから私とマリアテレーズのことは侍女がお伝えしているからかろうじてごぞんじなことが多いのです」
「ふーん、なるほど。すでに掌で転がされているのか。うん、ジルベール君のことが少しわかったし、僕では君の相手が無理なのも解ったよ。僕が好みから外れているのが良かったような気がしてきた」
ずいぶんと失礼な言葉だったが、納得しれくれたのならまあ良しとしよう。
その後も、当たり障りにない話をしたのちに、僕らは退席した。
「ああ、我が国に、いやジルベールのところには竜の国の姫様がいるんだ」
「ええ、私は竜族から500年以上前に書かれた魔法書を譲って貰えました。魔法陣の研究者だったオメガ・パテックス男爵が僕の元に来てくれていたので過去の魔法陣をこうして再現できたのです」
「では、ラルクバッハは500年前の技術を復活させたのか?」
「いえ、残念ながら解析ができたのはほんの一部です。実用的なところから手を付けていますがすべてを理解するのは難しいでしょう。現代には500年前の文字をちゃんと読める者がいませんから」
「まあ、そうだろうな。そうか、だからマジックバックやアイテムボックス以外に目立った魔道具が出ていないのか」
「納得しれくれたかい」
「ああ、ジルベール君の価値は解った。だが、僕らの国もその技術が欲しい。竜の姫を紹介してもらうことはできないのかい」
「それは難しいですわ」
答えたのはスザンヌだ。
「どうしてだ?」
「ティアマト様はジルベール様を強者と認めておいでです。ですからジルベール様に協力してくださるだけです。そもそも彼女はラルクバッハのために動いてくださっているわけではありません。たとえ剣帝クラスの方でも彼女を倒して協力を得るのは無理でしょう」
「剣帝? ジルベールはその年で剣帝よりも強いと」
「ジルベール様が得意なのは魔法なんだ。ただ剣はそれよりも落ちる。魔法は人外。剣は人の範疇と言うだけだがね。事実シドニアの剣客であるステパン殿と互角に戦えるんだ。そして彼女はステパンには興味を持たなかった。それが事実さ」
僕のかわりにルカディレック王子が答えてくれたが、さらっと僕の魔法が人外と言っていた気がする。
「まあこれは、彼女とシドニアで過ごした期間で得た感想だから間違っているかもしれん。それと、ここまで情報を提供したのはレイ君が誤った選択をしないようにだ。友としての手助けだからな」
「ふむ、わかった。どうやら僕は間違いを犯したと言うことか」
「そうだな」
「わかった」
「間違いついでに言うと、ティアマト様のことをジルベールに聞くのも間違っている。実は彼は彼女のことに関してろくな情報を持っていない」
「え?」
僕が驚いてルカディレック王子の方を見る。
「なんだい?」
だけど、笑顔で返された。
「いやいや、ティアマトのことでしょ。知ってますよ、もちろん」
「それって身長とか、強さとか、得意技とかだろ。例えば彼女の好きな食べ物が何か知っているか?」
「えっ、あれ?」
何を食べてた?
「あまいお菓子は好き。あとはピーマンが嫌い。大抵のものは出されたら食べる。はず……」
「好みの服の色は?」
「白じゃないの。いつも白を着ている」
「赤や青の飾りを着けることが多かったり、花をお部屋に飾られたり、ご存じよね?」
スザンヌからそう言われたが、そういえば髪飾りだったり、腕輪だったしていたような気がする。後は、部屋には入ったことが無いぞ。
「このように、ジルベール様は興味が偏っていますのよ。ただ周りの者の言うことは良く聞きます。ですから私とマリアテレーズのことは侍女がお伝えしているからかろうじてごぞんじなことが多いのです」
「ふーん、なるほど。すでに掌で転がされているのか。うん、ジルベール君のことが少しわかったし、僕では君の相手が無理なのも解ったよ。僕が好みから外れているのが良かったような気がしてきた」
ずいぶんと失礼な言葉だったが、納得しれくれたのならまあ良しとしよう。
その後も、当たり障りにない話をしたのちに、僕らは退席した。
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