転生者はめぐりあう(チートスキルで危機に陥ることなく活躍 ストレスを感じさせない王道ストーリー)

佐藤醤油

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第6章 新しい命

6.6.2 宝物庫の秘密

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 正面に黒くて四角い置物。
「お墓?」
 僕がそう呟いてしまった。
「これがどうしてお墓なの?」
「異世界、あちらの世界のお墓はこんな形でしたよ、お姉様」
 マリアテレーズが僕のつぶやきの理由を説明してくれた。
「あ、そっちの記憶ね。こっちの世界のお墓は上が丸いでしょ。こんな角ばってないわよ」
「そう言われると、そうですよね」
「なんだろう、近くに行ってみようか」
「ここに手を置くのでしょうか」
 両手のマークがあるから手を置けと言うことなのだろう。
「まず、僕からやってみるよ」
 僕は、両手を墓石のようなものの天井部分に書かれた手のマークに両手を乗せる。
 すっと魔力が引き出される感じがした。
『前回利用から100年以上経過しています。記憶されたメッセージを確認してください』
 それと共に頭の中に映像が流れてくる。
『エルフの説明によると、10年後の自分かもしくは転生して復活した自分が映像を見れると言う話らしい。10年後の自分へのメッセージと言われてもなあ、それにすでに2度目の人生だ、再び転生するとは思えんだが。まあ良い、そうだな、二度目の人生はまあ満足している。魔法が使える世界は科学とは異なる知識欲を満たしてくれた。だがそれと共にこの世界を知れば知るほどに新たな謎が生まれてくる。この世界は広い、魔法は科学以上に古くからの積み重ねでできている。つまり謎にあふれている。そうだな、もしもう一度人生があるなら王の縛りよりも世界を探索しろ。つまり、異世界転生の王道、冒険者だ。そもそもそれにあこがれて転移したのに、結局しがらみに縛られた生活だった。だからと言って今の生活が不満なわけでない。自由に生きれるなら自由を。縛られてしまったのなら、それもまた人生だ。今世は沢山の奥さんが居て、異世界ハーレムの王道をやっちまったわけだが、その人生も楽しい。平民の冒険者は自由だが、たくさんの妻を養うのは難しいぞ。まあなんだ、新しい人生を得られたなら楽しめ』
 は?
 何、今の?
『前回のメッセージが終了しました。他に御用があおりでしょうか? メッセージの更新は10年で一つです。現在新たなメッセージの記憶が可能です。次に来訪者の履歴情報閲覧、登録者情報の閲覧。新規登録用の魔石排出、新規登録、登録者の削除が可能です。いずれの機能を使用しますか?』
 今度はさっきとは違う文面が流れる。
 僕は最初の言葉が頭の中で繰り返されていた。『前回のメッセージ?』
 そう、前回だ
 つまりさっき流れた言葉は前の自分からのメッセージだった。つまりあれが前世の自分からのメッセージ。
 やはりこちらでの前世があるんだ。
 しかし、よりによって、なんでこんな役に立たないメッセージを残すんだ。
『ご用件はなんでしょうか?』
「あ、登録用の魔石を排出して欲しい」
『1回のご利用で1個の排出が行えます。再度の排出には同一人物からは1年間のインターバルが必要です。新規登録者は魔石も登録から1年間は魔石の排出が制限されます』
 そのメッセージが流れて、墓石の2段目に魔石が出現した。
 墓石から手を放して魔石を受け取った。
「どうでしたか?」
「前世の自分からのメッセージを受け取った。その後でシステム?からのメッセージが流れるから魔石排出を選んだよ」
「前世からのメッセージですか?」
「ああ、どうやら前世で登録されていたからここに入れたみたいだ」
「私も登録された記憶は無いのだけど」
「スザンヌも覚えてないのか」
「ええ、前世の記憶もすべて思い出せているわけではないですから」
「マリアも一緒なの?」
「はい、でも何となくですが記憶にあるような気がします、この感じ」
「まあ、良い。無害みたいだからメッセージを受け取って魔石を排出させよう」
「はい、次は私ね」
 スザンヌが手を置いた。
 外から見るとただ目を閉じて黙とうとしているようにしか見えない。
 やっぱり墓石だろこれ。
 少ししたら魔石が現れ、それを受け取ってスザンヌが離れた。

「どう?」
「なんだかうーんって言うメッセージでした」
「そう、やっぱり」
「ジルベール様もですか?」
「王になるより冒険者になれ。異世界転移のだいごみは冒険だろうみたいなメッセージだった」
「冒険ですか、ジル様と一緒の旅はしたいと思いますけど。私はジルベール様? 前のシン様がいかにかっこよいかずっと説明されました」
「それは、まあ何と言うかだね」
「じゃあ、最後、私が行きます」

 見守っていると、結構長った。
「マリアは、長かったね」
「はい、私はお二人と違ってわたくし、こちらで90歳まで生きたそうなので、いくつかのメッセージが残されていました。お二人が亡くなった後の話、シン様の子供が育った話など、沢山ありました」
「さすがマリアの前世ね。ちゃんと役に立ちそうな内容を残すなんて。あとで教えて頂戴」
「はい」
「じゃあ戻ろうか」

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