プラナ・ローカへようこそ〜お疲れ課長のヒミツの甘々リフレ~

槇木 五泉(Maki Izumi)

文字の大きさ
9 / 58
Prana Lokaへようこそ

9.リピーター

■□■

 プラナ・ローカは、一日に多くとも四組までしか客を入れないという個人経営のサロンである。だから、一週間後の夜の予約など、取れなくとも仕方がないと思っていた。
 しかし、そんな加賀の予想に反して、すぐに既読がついて帰ってきた曽根川の返事は、実にこころよいものだった。

『来週の十九時からですね。大丈夫ですよ。お待ちしております』

 拍子抜けするほどあっさりとしたそんな短い返答に、どれだけ救われただろう。と同時に、中途半端に愉悦を思い出したまま過ごさなければいけない一週間が、酷くもどかしく残酷な時間であるように思える。
 まあ、これも、残業を頑張る張り合いになるかと自分を納得させ、来週金曜の特別な時間を捻出するために、今まで以上に気合を入れて仕事に臨まなければならない、と気を引き締める。何せ、決算時期の経理部は戦場だった。派遣社員ですら週に何日かの残業を買って出てくれる状況で、部下だけは残業なしで早く帰してやりたいと思えば、その分の仕事は加賀が引き受ける他にない。部下たちも、常に遅くまで居残り仕事を続ける加賀に気を遣ってくれていて、『課長も、週に一度はノー残業で帰りましょうね』とまで言ってくれているのだ。
 ならば、部下のその厚意に少々甘えさせて貰おうと心に決めた。来週の金曜日まで仕事に取り組めば、そこには『ご褒美』のような体験が待っているのだと思えば。

『──そういえば、曽根川さんに教わったセルフケアも、しっかりやっておかないとな…』

 一人帰路に就きながら、帰り道のコンビニで、つい一本の缶チューハイを買ってしまう。今夜は、自分で作ったつまみを食事代わりに、晩酌で済ませたい気分だった。チェーン店の施術は激しいものではなく、特に、この後に酒を飲むなとも言われていない。この不完全燃焼を癒せるのは来週になるが、激務の中では、七日間などあっという間に過ぎてゆくだろう。そう信じて、革靴の硬い足音を刻みながら石畳の歩道の上を歩いて行った。

 女性をターゲットとした店の穏やかな施術では、直後に身体が汗ばむということもなく、汚れを落とすだけならシャワーを浴びれば十分だろう。だが、シャワーでさっと済ませるより、ゆっくり湯船に浸かった方がいい、という曽根川の言葉を思い出し、面倒でも浴槽に湯を張って身体を温めることにした。

■□■

「いらっしゃいませ、加賀さん。お待ちしておりました。また来て下さって、とっても嬉しいです。今日も、心を込めて施術させていただきますね…」

 そんなことをさらりと口にしても、全く嫌味でもないし、大袈裟であるとも思わせないのが、曽根川というセラピストの人となりだった。生成りの麻のシャツに黒のタイパンツ、明るい茶色に染めたショートヘアの幾筋かを赤く染め、派手なピアスを着けた曽根川は、相変わらず舞台俳優と見間違えるほどに整った、クールな容貌の男だった。朱い唇を引いてニッコリと笑みを向けられるだけで、同じ男である加賀さえ照れを覚えるほどだ。

 前回と同じく、着替えとタオルの入った竹のバスケット状の籠を渡された。施術着も、大量生産の化繊のガウンより、よく汗を吸い込む洗いたての綿の施術着の方が余程着心地がいい。中に下着を付けてはいけない、というルールに少々の覚束なさはあったが、曽根川がなぜそのような方針にしているのかは、身をもって深く納得した。
 さっぱりと汗を流した身体に直接リラクゼーションウェアを纏い、間接照明で程よい明るさに保たれた施術室に向かった。

「前回から、丁度二週間ですね。まずは全身、綺麗に老廃物を流してから、前に痛かったところを診せて貰います。…アロマオイル、どうしましょう。今日は気分を変えますか?」
「いや、前回と同じで構いません。…前回は、ええと、何だったっけな…」
「ジャスミンです。じゃ、今日もそうしましょう。仰向けになってお待ちくださいね…」

 曽根川はさらりと、加賀が前回選んだオイルの名前まで答えてくる。顧客ごとに作られるというカルテにメモがあるのかもしれなかったが、そんな気の利くところも、個人経営者としての手腕なのかもしれない。

 タオル地のシーツが掛けられた、セミダブル程度のサイズの広いマットレスの上に仰向けになり、ポットから漂ってくるジャスミンの香りに心を和ませる。その香りだけで、前回のとろけるような経験を思い出してしまって、背筋がゾクリと粟肌だった。
感想 5

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。