信濃の大空

ypaaaaaaa

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「単刀直入に言うと東条閣下には首相を辞めていただきたいのです。」
東条は頭を掻きながら言った。
「それはまた大きなことを。君の破天荒ぶりは関東軍の頃から変わっていないようだ。」
「お褒めいただきありがとうございます。」
「ほめてはいないのだが…。」
東条は困惑を顔に浮かべる。
「まあ。それは良い。それで先ほどの答えだが…。」
東条は間を置く。
「答えは、やれないこともないということだ。」
石原は驚愕の表情を浮かべた。
「どうした?そんなに驚くことかね?」
「いや、その。もう少し抵抗されるかと思っていましたので…。」
「そう思われても無理はないか。」
東条は立ち上がって外を見る。
「今、こうして本土が焼け野原になっていないのはマリアナでアメリカの反抗を打ち破ったからだ。だが、もし私が命令した水際作戦を実行していた場合壊滅していただろう。」
石原は東条が少しおびえているのに気付いた。
「私は、近衛閣下の尻ぬぐいのために首相になったに等しい。だが、時局は甘くない。適任者がやるべきだ。」
「ならば…もう少し、早く行動すればこんなことには…。」
石原がそこまで言うと東条が静かに言った。
「自分にも、できるのではないかと自惚れていた。」
「そんなことで、そんなことで何万もの将兵を死なせたのか!?」
石原は東条につかみかかった。
「それでいい。すべての汚名はこの東条が持っていく。だが、その代わり必ず皇国を臣民を陛下を守り抜け。」
東条の覚悟は並大抵のものではなかった。
それを感じ取った石原もそれに応える。
「この命に代えてでも、成し遂げます!」
東条の顔は何かから解放されたような、成し遂げたような表情だった。
その1週間後、東条英機首相は健康状態を理由に辞職。
そして臨時に開かれた選挙の結果、木戸幸一が首相に就任。
これにより、左遷させられていた将校たちが現場に復帰。
石原は陸軍大臣のポストが用意されていたが、自らは現場が似合っているとして阿南惟幾が就任した。
海軍大臣については野村 直邦に代わり連合艦隊司令長官の豊田副武がその席に着いた。
なので、空白となった連合艦隊司令長官には小沢治三郎、航空戦隊総指揮には角田覚治がそして第二航空戦隊長官には…。


「俺が第二航空戦隊長官に?」
阿部は角田からの辞令を聞き返す。
「あぁ、お前が以外に任せられる将校がいなくてな。」
「やれと言われればやるが、お前ほど私は度胸はないぞ。」
角田は口角を上げた。
「何をいまさら。マリアナの作戦はほぼ博打だろうが。」
「そういわれたらそうだが。」
「では、頼んだぞ。」
阿部は角田を見送って、これから圧し掛かる重責に身構えるのだった。
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