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再編
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「君が、次の信濃の艦長か。」
阿部は辞令表を見ていた。
「はっ!不肖ながらこの中曽根、信濃の艦長職を預かりました。」
「そんなに緊張するな。航空参謀から艦内の案内があるだろう。それまで部屋で休むといい。」
「ありがとうございます!」
中曽根が自室に戻っていく。
「なかなかいい青年だな。」
阿部は感想を口にしながら、航空隊の配備と出撃命令を確認する。
「戦闘隊を30機配備の代わりに艦攻と艦爆を1航戦に転属させる。当然と言えば当然か。」
次に出撃命令の方を見る。
「来月までに高雄に入港、その後詳細説明か。本国での政変でかなり司令部も変わった。そのせいでもあるだろうな。」
外は太陽が傾き、1日が終わろうとしている。
阿部は静かに残りの執務をこなしていった。
中曽根が着任してから3日後。
「中隊長、こちらです。」
坂井は柳谷に先導されながら中曽根の前に整列する。
「艦長、彼らが今日着任した戦闘機パイロット達です。」
「ありがとう。」
坂井は一目見てこの艦長は何か違うと感じていた。
中曽根は続ける。
「私が今、君たちに言えることは一つだけだ。生きろ!私の部下になったのならかならず生き残れ!」
ほとんどのものは少し驚いた。
これまでは死しても戦えと言われてきたからだ。
「私からは以上である。総員、訓練に励んでくれ。」
東条の退陣はそれまで左遷や予備役にされていた優秀な軍人を表の舞台に帰還させた。
今村均もその一人である。
「ご帰還、おめでとうございます。今村閣下。」
「おぁ、スカルノか。かなり日本語が達者になったな。」
今村は旧友にあったかのように喜んだ。
だが、次の瞬間彼の顔はひどく悲しい顔になった。
「すまなかった!私がラバウルにいってしまったばかりに…。」
スカルノの体躯は昔よりも小さくなっていた。
「閣下、私たちはあなたに帰ってきてくださっただけでいいのです。」
「ありがとう。」
今村は気を取り直し椅子に腰かける。
「先日、東条閣下が首相を辞された。だから私がここに帰ってこれたのだがな。」
「そうでしょうね。何もなくて日本政府に都合の悪い閣下を戻そうとは思いませんでしょうな。」
「なかなかひどいことを言ってくれるな。スカルノ。まぁそんなことはどうでも良くてだな。」
今村は少し間を置く。
「一時的に中国戦線の兵力を増強させるらしい。それに伴いここからもかなりの数の日本軍が引き抜かれる。その空白を埋めるべく、政府は現地民によるかなりの自治権を引き換えに現地軍を組織してもらいたい。」
「それは本当ですか!?」
スカルノは興奮気味になった。
「無論、少しは帝国の影響力は残るだろうがほとんど独立と考えてもらって構わん。」
「すぐに皆に伝えてきます!」
スカルノは部屋を飛び出していった。
阿部は辞令表を見ていた。
「はっ!不肖ながらこの中曽根、信濃の艦長職を預かりました。」
「そんなに緊張するな。航空参謀から艦内の案内があるだろう。それまで部屋で休むといい。」
「ありがとうございます!」
中曽根が自室に戻っていく。
「なかなかいい青年だな。」
阿部は感想を口にしながら、航空隊の配備と出撃命令を確認する。
「戦闘隊を30機配備の代わりに艦攻と艦爆を1航戦に転属させる。当然と言えば当然か。」
次に出撃命令の方を見る。
「来月までに高雄に入港、その後詳細説明か。本国での政変でかなり司令部も変わった。そのせいでもあるだろうな。」
外は太陽が傾き、1日が終わろうとしている。
阿部は静かに残りの執務をこなしていった。
中曽根が着任してから3日後。
「中隊長、こちらです。」
坂井は柳谷に先導されながら中曽根の前に整列する。
「艦長、彼らが今日着任した戦闘機パイロット達です。」
「ありがとう。」
坂井は一目見てこの艦長は何か違うと感じていた。
中曽根は続ける。
「私が今、君たちに言えることは一つだけだ。生きろ!私の部下になったのならかならず生き残れ!」
ほとんどのものは少し驚いた。
これまでは死しても戦えと言われてきたからだ。
「私からは以上である。総員、訓練に励んでくれ。」
東条の退陣はそれまで左遷や予備役にされていた優秀な軍人を表の舞台に帰還させた。
今村均もその一人である。
「ご帰還、おめでとうございます。今村閣下。」
「おぁ、スカルノか。かなり日本語が達者になったな。」
今村は旧友にあったかのように喜んだ。
だが、次の瞬間彼の顔はひどく悲しい顔になった。
「すまなかった!私がラバウルにいってしまったばかりに…。」
スカルノの体躯は昔よりも小さくなっていた。
「閣下、私たちはあなたに帰ってきてくださっただけでいいのです。」
「ありがとう。」
今村は気を取り直し椅子に腰かける。
「先日、東条閣下が首相を辞された。だから私がここに帰ってこれたのだがな。」
「そうでしょうね。何もなくて日本政府に都合の悪い閣下を戻そうとは思いませんでしょうな。」
「なかなかひどいことを言ってくれるな。スカルノ。まぁそんなことはどうでも良くてだな。」
今村は少し間を置く。
「一時的に中国戦線の兵力を増強させるらしい。それに伴いここからもかなりの数の日本軍が引き抜かれる。その空白を埋めるべく、政府は現地民によるかなりの自治権を引き換えに現地軍を組織してもらいたい。」
「それは本当ですか!?」
スカルノは興奮気味になった。
「無論、少しは帝国の影響力は残るだろうがほとんど独立と考えてもらって構わん。」
「すぐに皆に伝えてきます!」
スカルノは部屋を飛び出していった。
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