信濃の大空

ypaaaaaaa

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新型機受領

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紫電改を信濃が受領したのは1943年の12月27日だった。
信濃の甲板には整備員や搭乗員が集まっていた。
「これが例の新型か。」
坂井が自らの機体に触れていた。
「零戦を全ての性能で超えています。」
柳谷が補足した。
「今日が初飛行か。できるか?柳谷。」
坂井が意地悪く笑った。
「もちろんですよ。隊長こそ零戦に慣れすぎて発艦できないんじゃないですか?」
柳谷も意趣を返した。
「まあいい。そろそろだ。」
ブザーが鳴り、搭乗員たちが操縦席に乗り込む。
『1番機発艦始め。』
その号令と共に坂井の機体がプロペラの回転数を上げていく。
そして大空に舞い上がり機体の確認を行う。
速度は十分だ。
では旋回はどうだ?
操縦桿を右に倒す。
零戦ほどではないがそこそこいい。
柳谷も上がってきた。
「どうだ柳谷。使いやすいか?」
『かなり使いやすいです。これで一撃離脱も行えるというものです。』
その時だった。
『!?なんだこれ!』
柳谷の声に坂井は彼の機体を見る。
エンジンから黒煙を噴いていた。
「おい!緊急着艦だ!」


「黒煙を噴いています!」
中曽根が心配そうに叫ぶ。
「着艦スペースを空けろ!発艦作業は中止だ!」
阿部はすぐに命令した。
すぐに機体が避けられていく。
柳谷の機体が甲板を捉えた。
「着艦成功!」
その報告に阿部は胸を下ろしたのとこの機体を使っていけるのかという心配に襲われた。


「どういうことだ!」
坂井が整備員の胸倉を掴む。
「潤滑油が…悪いんです。国産のは特に…。工業製品の品質の低下も…深刻です。」
整備員がそう言うと坂井を手を離した。
「すまんかった。ついかっとなった。」
もう、仲間を失うのは御免だ!


「司令、坂井中隊長から『機体の安全性がある程度まで我が隊はこの機体を扱えない』という意見書が出ています。他の隊も連名で。」
中曽根の言葉は阿部を大いに悩ませた。
今回の事はおそらく潤滑油が問題だろう。
その潤滑油さえ高品質なものが手に入ったらよいのだが…。
それが出来ないから今こうなってしまっている。
どうしたものか…。
「司令、私に一つ考えがあります。」
中曽根が阿部の心を読んだように言ってきた。
「陸軍の疾風は平均稼働率が紫電改よりも悪いものがあります。ですが、一部の部隊では87から100の稼働率を維持しています。」
それには阿部はとても驚いた。
「なにをやったらそんな稼働率が叩きだせるんだ?」
「飛行時間の管理や定期的なオーバーホールなど徹底的な整備を施した結果だそうです。」
「なるほど。定期的な交換か。ただそうすると部品の消費量が増えるだろう。」
そう言うと中曽根は阿部を正面に見据えた。
「部品など、作れば事足ります。ですが、人間はその一人一人に家族や友人が居ります。また航空機を動かすのは人間です。」
「…確かに君の言うとおりだ。ありがとう。私は人の道を踏む外さずに済んだよ。」
翌日から徹底的な整備が行われ、徐々に稼働率が上がっていきついに坂井は紫電改で信濃の上空を飛んだ。
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