29 / 67
太平洋艦隊の再編
しおりを挟む
1945年1月2日。
ミッチャーは真珠湾で自らが指揮する第2機動群の訓練を甲板上で見守っていた。
マリアナでの一連の海戦により、結局米海軍は6隻の空母を失い数々の損傷艦を出した。
ミッチャーは軍法会議にかけられると覚悟をしていたが、ニミッツとスプールアンスが彼を庇い降格処分に落ち着いた。
「司令、スプールアンス長官から出頭命令が出ております。」
ミッチャーについてきたバークがミッチャーの横に立つ。
「分かった。君も付いてきてくれるか?」
「もちろんです。」
「大統領は早期の戦争終結をお望みだ。」
スプールアンスの言葉にミッチャーは驚く。
「現在、太平洋は拮抗状態です。それに日本は中国に対して事実上勝利し兵力の厚みは増しています。」
「それを突破するのが我々の役目だ。」
スプールアンスは語気を強める。
「欧州戦線ではあと少しでドイツ本土に入る。ここからいくらか空挺兵や歩兵、戦車部隊を引き抜き太平洋の攻勢作戦に使用するというのが大統領のシナリオらしい。」
ここでバークが口を開く。
「いくら優勢だからと言って部隊の引き抜きは危険なのでは?」
スプールアンスは頷く。
「だが、サイパン上陸戦の際に海兵隊を6万人喪失した。これはかなり痛い。その補填の意味もあるのだろう。」
ミッチャーはおおむね理解ができた。
「それで、私たちには何をしろと?」
「話が早くて助かる。君達には牽制としてビアクを攻撃してもらう。」
ビアク。
あの作戦が狂い始めた根源の島。
「南洋に日本軍が展開できないようにするためですか。分かりました。」
ミッチャーは立ち上がってバークと共に艦隊へ戻った。
「あの空母艦隊について何かわかったか?」
ミッチャーは出撃準備に追われている艦隊をよそにバークに尋ねた。
「1隻は隼鷹で、もう1隻についても新型空母の大鳳だということは分かりました。ただ…。」
バークは言葉を濁らせる。
「ただ?」
「ただ、航空機の数がそれだと合わないのです。」
普通に考えれば基地航空隊からの増援と考えるだろうがあの時、その方角に航空機が離着陸できるような大型な島は無かった。
つまり空母からの艦載機だったということだ。
そう考えているとバークが半信半疑な様子で言った。
「…これは潜水艦からの報告なのですが、大和級の船体を見たと。」
「大和級か。それはただの護衛の戦艦ではないのか?」
それを裏付けるようにその時、武蔵は動向が分からなかった。
「その可能性が高いでしょうが、一応頭の片隅に置いていただければ。」
バークは自信なく言った。
ミッチャーは真珠湾で自らが指揮する第2機動群の訓練を甲板上で見守っていた。
マリアナでの一連の海戦により、結局米海軍は6隻の空母を失い数々の損傷艦を出した。
ミッチャーは軍法会議にかけられると覚悟をしていたが、ニミッツとスプールアンスが彼を庇い降格処分に落ち着いた。
「司令、スプールアンス長官から出頭命令が出ております。」
ミッチャーについてきたバークがミッチャーの横に立つ。
「分かった。君も付いてきてくれるか?」
「もちろんです。」
「大統領は早期の戦争終結をお望みだ。」
スプールアンスの言葉にミッチャーは驚く。
「現在、太平洋は拮抗状態です。それに日本は中国に対して事実上勝利し兵力の厚みは増しています。」
「それを突破するのが我々の役目だ。」
スプールアンスは語気を強める。
「欧州戦線ではあと少しでドイツ本土に入る。ここからいくらか空挺兵や歩兵、戦車部隊を引き抜き太平洋の攻勢作戦に使用するというのが大統領のシナリオらしい。」
ここでバークが口を開く。
「いくら優勢だからと言って部隊の引き抜きは危険なのでは?」
スプールアンスは頷く。
「だが、サイパン上陸戦の際に海兵隊を6万人喪失した。これはかなり痛い。その補填の意味もあるのだろう。」
ミッチャーはおおむね理解ができた。
「それで、私たちには何をしろと?」
「話が早くて助かる。君達には牽制としてビアクを攻撃してもらう。」
ビアク。
あの作戦が狂い始めた根源の島。
「南洋に日本軍が展開できないようにするためですか。分かりました。」
ミッチャーは立ち上がってバークと共に艦隊へ戻った。
「あの空母艦隊について何かわかったか?」
ミッチャーは出撃準備に追われている艦隊をよそにバークに尋ねた。
「1隻は隼鷹で、もう1隻についても新型空母の大鳳だということは分かりました。ただ…。」
バークは言葉を濁らせる。
「ただ?」
「ただ、航空機の数がそれだと合わないのです。」
普通に考えれば基地航空隊からの増援と考えるだろうがあの時、その方角に航空機が離着陸できるような大型な島は無かった。
つまり空母からの艦載機だったということだ。
そう考えているとバークが半信半疑な様子で言った。
「…これは潜水艦からの報告なのですが、大和級の船体を見たと。」
「大和級か。それはただの護衛の戦艦ではないのか?」
それを裏付けるようにその時、武蔵は動向が分からなかった。
「その可能性が高いでしょうが、一応頭の片隅に置いていただければ。」
バークは自信なく言った。
6
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
小日本帝国
ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。
大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく…
戦線拡大が甚だしいですが、何卒!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる