藤本喜久雄の海軍

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戦間期

電探活用の模索

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藤本は一人、執務室で大いに悩んでいた。
(いくら航空機が戦艦を沈められないと言っても、傷は負う可能性がある。目視で気づければそれに戦闘機などの援護は得られるかもしれないが、それに限度がある…)
彼はその答えを探して海外の文献を読み更けていた。
すると興味深い記述が目に入った。
「レーダー…?これを装備すれば目視できない距離からも敵を認識できる…これだ!」
藤本は息も着かせぬ間に技研に雪崩れ込んだ。
「いきなりだね…どうしたんだい?」
技研の長である箕原は丁寧に応対した。
「技研でレーダーなるものを開発しておりませんでしょうか?」
箕原は少し考えてから手を叩いた。
「確か電探と言う名前で開発していたはずだ…だが何分予算が少なく思うように研究できていないがな」
藤本は少し肩を落とす。
(何ということだ…!早急に開発せねばならない!)
「電探がどうしたのかね?」
箕原は少し怪訝そうにそう聞いた。
「いえ、他国ではすでにその電探を艦に搭載していると聞きました。我が国も負けていられないと思い立った次第です」
箕原は頷く。
「我が国は電探関連の技術に関して言えば遅れてはいる。だが、土壌はしっかり整っているから十分な資金と人材冴えあれば3年以内には満足の行く電探が量産できるはずだ」
この言葉に藤本は俄然勇気づけられた。
だが、翻って箕原は暗い顔をする。
「1936年にも電探開発の予算増額を申し出たんだが、却下された。艦のマストにかんざしのようなものを装備しては威厳が無くなるからだと聞かされた。海軍のお偉方はそう簡単に首を縦に振らんよ」
藤本は少し考えてから言った。
「試作の電探はございませんか?」
「試作機なら何機かある。どれも一品物で量産には向かんが性能としては欧米のそれに劣るような物ではない」
藤本は膝を叩いて喜んだ。
「でしたら、その中の1基を艦政本部にお譲りいただけないでしょうか⁉」
箕原は驚きはしたものの、すぐに頷き電探を手今日することを約束したのである。


藤本は提供された電探をすぐに重巡加古に搭載することを決めた。
「何をしでかそうとしているのですか…?」
副官のような立ち位置である渋谷の問いに藤本は笑みを浮かべながら答える。
「この電探と言うものの有用性を海軍のお偉方に見せつけて、予算をふんだくってやろうと思う!」
加古はすでに一線級の重巡とは言えず、軍令部はすでに加古に電探を搭載することを了承していたのである。
「それは何と…面白いことではありませんか!」
渋谷も同様に顔に笑みを浮かべた。
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