さよならの音がする

乃咲昼

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1.音がきこえない

不協和音

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「それじゃあこれが最後の曲になります。最後まで盛り上がってこうぜ!」

狭いビルの地下2階にその会場はあった。使わなくなったバーを改装し、未だ芽の出ることのないバンドやシンガーが曲を披露する。
給料はもちろん発生しない。
それでも演奏がしたくて、俺らはここ2年バンド活動を続けていた。



Honey Distanceハニーディスタンス


それが俺らのバンドネーム。
そこそこ人気もあってファンクラブもあるし、自分たちでCDを作って売ったりもしている。
オリジナルの曲を作る楽しさもあった。未だ誰かが聞いたこともないようなロックミュージックを世の中に広められたらどれだけ良いことなのだろうかと俺らは夢を語り合った。

それが、18歳
高校3年の思い出であり、青春のひとつである。俺らの学校の生徒でHoney Distanceのことを知らない奴はいなかったし今までバレンタインにチョコを貰わなかったこともない。

一言で言うなら順風満帆。
この人生をこの言葉以外で例えることが出来ない。

「小太郎ー!!!」
俺を見て多くの女の子達が叫んだ。


寿 小太郎ことぶき こたろう

それが俺だ。
俺はHoney Distanceのギター担当で、この高校で、一番人気だった。
それはそうだろう。俺は音楽の才能だけじゃなくて顔もいいんだから。




俺は全てに恵まれた。
音楽、見た目、仲間。
おまけに、ちやほやされるしモテるし俺は今、最高に青春を送ってる。



「小太郎、お前またサイン書いてたろ」
ボーカルのリュウヤ、同じく高校3年生である。

「まあな、サインなんて書き慣れてねぇわ」
俺は少しドヤ顔で言った。


「俺たち、人気がさらにでてメジャーデビューとかしちゃったりして??」

ベース担当のリキが言った。

「メジャーデビューしたらどうする?紅白出ちゃう??」

ドラム担当のマキオが言った。


夢だった。
俺たちはこんなところで、小さいスタジオで止まるほどヤワではない。
俺たちには大きな夢があった。
一緒にメジャーデビューして、テレビに出て、有名になって、紅白に出よう。

ライブがある度、俺らはそんな夢を語りながら笑いあった。

俺は高校3年生の受験期を迎えていても

その夢を持ち続けていた。

俺には才能がある
勉強だけはできないけれど、それでも音楽という才能がある。

大丈夫

大丈夫。


きっと大丈夫







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